○岩間正男君
國民の代表としての我我
國会議員の
責任の名におきまして、私は遺憾ながらごの
國家公務員法案に全面的な
反対をせざるを得ないのであります。(
拍手)今日終戰後の軍閥がすでに解体し、又財閥も形の上ではありますが、解消を遂げつつあるさ中におきまして、
日本の
官僚制度は
國民の前にぎりぎりその対応を迫られておるのであります。過去の
官僚制度がこの戰争中にいかようなことをなしたか、そうして又その原因はどこにあ
つたかということについては、
國民は余りにもよくこれを了解しておるのであります。從いまして、この度民主的な
措置によ
つて國家公務員法案が新らしく設けられるとするならば、当然そのような過去の弊害を一掃し、眞に時代にふさわしいところの、
現実に適應したところの
法案の制定こそが望ましい次第であります。彼の今次水害によ
つて発生しましたところの櫻堤の決壊におけるところの官僚の取
つた措置のごときは、
國民が余りにもこれを知
つておる。僅か一時間半か二時間の時間を有効に使うならば、あの江東におけるところの五十万の罹災者を出さなか
つたということの反省は、
國民としましては何とも言えないところの
一つの後悔の念であり、残念に堪えない次第であると思うのであります。(
拍手)從いまして、このような官僚のセクシヨナリズム、縄張主義、更にいろいろそこから発生し來た
つたところのあの涜職問題、
人民に対する越権、こういうものを
根本的に除去するところの
法案の制定を、今日
國民大衆は要望しておると私は考える。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)(
拍手)然るにこの
公務員法案はこの要望に果して應え得ておるのであろうか、私は断じて否と言わざるを得ないのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)
先ず第一に、今次のこの
國家公務員法案における骨子となるものは、正に
人事院の
行政機構並びに
職階制にあると思うのであります。然るにこの
人事院の構成を見ますと、先程も述べられたのでありますが、その人員が三人の寡少な
委員によ
つて構成されている点、而もそれが越権に対しましては、僅かに総理
大臣の訴追によるところの
彈劾によ
つて免職するというところの、甚だ
國民大衆の意向を全面的に反映しない方式を取られております。然るにその
事務局、
事務総長の権限というものは、そういうようなものはすべて
人事院規則によ
つて独断的にこれがなされるような方式を取られておる。これを過去の
日本の官僚
政治の欠陷から見ますときに、今日十分にその弊害が除去されない現在において、この形が若しも取られますときには、明らかにそこに官僚勢力の一大厖大なものが残存されるこいうことを私はここで鋭く指摘したいと思う。恐らく今までのこの官僚
政治のあり方については、
國民自身がこのことを痛切に今日批判しておるのでありますが、これについて十分なる
措置が今のような
人事院の構成によ
つて私はなされるものとは断じて思えないのであります。こういう点について或いは穿
つた言い方かも知れませんけれども、今
國民の前にさらされておるところの過去の官僚の勢力を、何らかの形で合法的に温存しようとする
一つの現われであるということを私達は指摘せざるを得ないのであります。(
拍手)こういう点におきまして、而もここに私の
はつきりした見通しを以てするならば、厖大な
人事院を中心としたところの官僚の一大勢力が発生するであろうということ、そうしてそこから、今まで
從來最も官僚を貧血に陷れ、みすぼらしいところの、いじいじした卑屈な姿に導いたところの強大な権力
関係が発生するであろうということ、そうしてその権力
関係は
人民の公僕であるところの今後の
官吏自身の
民主化の問題とは、非常に深い
関係があるということ、つまりその強大な権力の下には、恐らく下級
官吏諸君の権力というものは圧倒され、今までのような権力
関係の下に連
なつた服從の義務だけが強いられる。そうしてそこから官僚自身の眞に根強いところの
活動がなされない。そのようないじくした
関係に置いては、それは対人、
國民との
関係において恐らく権力を信ずる者は又同時に権力を濫使するものである。
從つて恐らくそれらの官僚
諸君は満たされないところの
一つの権力
関係を、
國民大衆の前に依然として推し及ぼすであろうということ、そこに
國民に対するところのいわゆる越権が、依然として離れないところの機構が、官僚、
人事院構成との一連の連関において発生することを私は憂えざるを得ないのであります。こういう点から考えて、この
人事院の構成そのものに私は断じて承服することができない。
次に、この
法案の
反対理由の第二の要点としまして、私はこの
実施を受けるところの
公務員諸君、この
公務員諸君は同じく先程から申されましたように、勤労大衆であるということ、而も勤労大衆の目覚めを以てここに立ち上
つておるということ、而もこれら勤労大衆であるところの
公務員諸君に対して與えるところの基本的ないろいろな権益に対しては、甚だ薄く、これを強い、服從を強いる点において非常に厚いということ、つまり分限令、
服務規程、その他
政治上の制限拘束、その他いろいろこれを挙げることができるのでありますが、そういう面において非常に首枷を強力に加えながら、而もその基本的な生活権の上におけるところの、更に基本的な人権の上においての拘束が余りにも多いということ、この事柄は、決して
日本の眞の
公務員の
民主化は招來されないということを私は考えるものであります。今日全官公二百五十万の
諸君は労働組合を以て立ち上
つておる。このことは
日本民主化の中において最も特筆すべく、而も重要なる事柄であります。而もごの自覚は何であるか、つまり過去の
官僚制度の仲において彼等自信が権力の下に縛られ、服從を強いられ、がんじがらめにされ、そうりして貧血に陷り、人間的な基盤を失い、積極的な姿をと
つていたことに対し、これに対しましての基本的な人権の復活を目指し、豊かなる人間性を回復し、人間革命をなさんとするところの熱意の表現であると思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)このような労働組合の基本的な立ち上りに対して、当然この
公務員法案は、先程中野議員からも申された点でありますけれども、十分にこれを育
つて行くところの親心の発動としての、この
公務員法案が制定されなければならないに拘、わらず、これを双葉のうちに摘み取るところの方式によ
つて、この
公務員法案が與えられておるということは、私の断じて承服することのできないところであります。(「然り」と呼ぶ者あり)(
拍手)今日勤労
公務員諸君の自覚はどの点に達しておるかということを申上げるならば、例えば今次
公務員法案に対する全面的な
反対が、
公務員の労働組合を通じてなされたのでありますが、その中で彼ら自身が、いわば自分の不利益になるところの涜職、若しくは自分の勤務怠慢に対するところの
國民大衆の
彈劾権をみずからにおいて要求しておる。更に過去の
官僚制度の腐敗の
一つの原因であ
つたところの恩給
制度の全面的な廃止を、彼らが率先してこれを主張しておる。このような進歩的な立ち上りがなされておるのでありまして、こういう面を我々は十分に取入れ、この
意見を率直に聽いて、これを活かすところの方式をこそ
確立しなければならないのであるのに対して、これがこの
公務員法案には十全になされていない。こういう観点からいたしまして、時間の
関係上、尚細部に亘
つては申上げないのでありますけれども、以上のような観点におきまして
根本的な立場において、今日この
公務員法案が適用されるならば、恐らくこの
公務員諸君の今後の自覚的な立ち上りに対して、大きな障害をなすであろうということを私は思うのであります。果してこの
法案が、
現実的な
一つの把握からなされておるかどうか、我々は
現実に即應しないところの
法案を、我々の
責任と自覚の名において十分な
審議をなさずして、これを通過させることはできないと思う。その例を申上げまするならば、例えば今日社会の一大混乱を捲き起しておりますところの六・三制の
実施であります。これがもつともつと当局者において見通しのある眞に
現実に即應した方式を授けられるならば、この混乱はなか
つたと思うのであります。然るにこの方式を単に鵜呑み的に、経済的な基盤のないところに、十分な準備のない上に適用されたばかりに、今日校舎がない、机がない、腰掛がないというところの、あの悲惨な、いわば教育の崩壊的事実が発生しておる。この愚かなる姿を我々は再び繰返してよいであろうか。これと同じようなことを、この
公務員法案において今日我々は憂えざるを得ないのであります。我々は
政治の任に当る者としまして、
現実に対するところの的確なる
措置をなすと共に、
一つの遠い見通しの下に立
つて、知的な、眞に透徹した判断の上に立
つて、
日本の
民主革命の現代のさ中にあ
つて、いかなる
公務員法案をこそ制定となければならないかということを、率直に反省しなければならないと思うのであります。そこにこそ我々の職責があり、又
國民大衆の期待もあるということを冷静に反省することによ
つて、私は最初申上げました通りこの
法案に対して全面的な
反対を表明せざるを得ないのであります。
以上を以ちまして、私の
反対理由を終ります。(
拍手)