○玉置吉之丞君 私は
税源の問題を論ずる前に、
徴税方法につきまして二三の意見を申述べまして、各位の御批判を仰ぎたいと存ずるものであります。
過般
大藏大臣が本議場におきまして、税務事務の強化を図るために、全国に亘
つて六十七ヶ所の税務署並びにこれに要する収税官吏を二万四千人殖やすと、こういうことをお申述べにな
つておりますが、私は
予算の内容を
承知いたしませんけれども、この二万四千人の人員を増し、六十七ケ所の税務署を設置するということによ
つて、今日の金額といたして約十億円くらいの
予算を要するものと思うのであります。私は
かくのごときことをするよりも、むしろこの際に、民主的に下から盛り上がる
ところの税を取ること、又國民をして喜んで納税をせしむるの
方法を採ることでなければならんと思うのであります。(
拍手)その
方法といたしまして、各財務局並びに税務署ごとにおきまして、すでに前年度において各
業者が納税をいたしました納税金額が判明いたしておるのであります。これに基ずいて納税者をして得心の行くような納税をさすために、
財政の
方針に基ずいて、例えば一税務署管内におる医者二十人お
つて、前年度において百万円の納税をいたしておるとすれば、その医師会の役員なり幹事の者を税務署に呼ぶか、或いは税務署が出向いて、昨年度の医者仲間の本税務署管内における納税額は百万円であるが、本年はその三割増の百三十万円を課したいと思う。それを君らの方で適当に公平に按分して、一つ自治的に案を持
つて貰えんか。こういう相談をしてやりましたならば、私は喜んでこのことを纏めて持
つてつて参ることと思うのでのあります。又木材
業者がその税務署管内に十五人おる。これに対して前年度において三百万円の税を取
つてお
つたとすれば、これに対しても、又その三割増の三百九十万円を適当に君らの方で協議をして、いつ何日までに税務署え申告して欲しいという相談をしたならば、必らず纏まると思うのであります。現に私は和歌山県におきまして
商工会議所のお世話をいたしておる者でありますが、常にこの納税の方面に対して税務署に協力をいたして、あらゆる面に
業者と税務署の間に立
つてこれらの纏めをいたして来ました事実に徴しましても、このことは行われると思うのであります。私は今日の世間の
現状を見ますと、前刻山田さんからも御指摘に相成
つたように、税金に追い倒されておるということが蔽うべからざる事実であると思うのであります。そこでこの税を納めなければならんということも、國民はよく
承知いたしておる。併しながらこの税率の中に極めて不合理なものがあるということは、これ亦私共の経験した事実から考えられるのであります。例えば百万円の資本金の会社が十万円の利益を上げたときに税金を納めて残る
ところの金と、三十万円儲けて税金を差引いて会社に残る
ところの金とがやや等しいというような税率を課しておるのが、今日の営業所得税の
現状であります。
かくのごときことを行います上においては、現下の
生産を増さんと欲すれば、
資材は盡く公正なる道から入ないということも事実である。闇の物を買わなければならん。無理な手をして
資材を獲得せんければならんのであります。而も人的の問題が、非常に労働
組合の強化によ
つて起こ
つておる。このときに、何を苦しんで事業家が
生産の意欲を盛り上がらしめて、
生産の増強に努めるかということを私共は考えなければならんのであります。それよりも私は、例えば十万円の利益に対しては一定率の課税をする。それより以上の、十万円以上百万円まで儲けたものは、これを均一にその半額を納税しろ。それだけは取る。こうはつきりいたしたならば、そこに一つの希望を抱き、楽しみを持
つて、この
企業の経営者が
生産の増強に力を盡すと思うのであります。こういうふうに明朗な、明確な、わかりやすい税率に改めなければならんと思うのであります。又勤労所得の上におきましても、今日の勤労者に課しておる
ところの税金がその当を得ないために、労働の意欲が上がらないという事実が各方面に起こ
つておるということは、すでに御
承知の事実であります。最近
石炭の国管問題を繞りまして、我々はあらゆる観点よりこのことの研究に没頭いたしております中に、すでに御
承知のごとく、炭鉱において熟練せる坑内鉱夫が一万円の仕事をするよりも、八千円で止めおいた方が実収が多いということが事実の上に現れておる。又は衆議院の
鉱工業委員会におきまして、社会党の岡田春夫君はこの点について詳細なる数字を挙げて指摘しておる。私はかような不合理な、
生産の増強に支障あり、勤労意欲を昂める上に生涯のあるこの勤労所得税に対しては、私はこの際断じて改善せんければならんと思うのであります。又今日の勤労者に課しておける基礎控除であります。これは五百円と相成
つておりますけれども、戦時中はこれは五十円であ
つた。然るに今日の諸物価に比べて果たしてこの五百円が妥当であるかどうかということは、常識を以て判断すれば火を見るより明らかなる事実であると私は思うのであります。私は勤労者に課しておる所得税のごときは、私の主義としてはこれは撤廃すべきものである。かような信念をもつものであります。(
拍手)併しながら今日の我が国の国家
財政の
現況に考えまして、これ亦止むを得ざるものと涙を呑んで承認いたすといたしましても、今日の基礎控除の額を、一躍これを私は絶対二千円に引上げる必要があると固く信ずるものであります。(
拍手)すでにこのことにつきまして、前刻山田君からもご指摘相成
つたように、一ヶ月五千円の所得を有する人、即ち一ケ年六万円の所得を持つ人が、各般の税金を差引いて、その実収が一ヶ月二千円になるかならんかというこの一つの問題を取上げましても、私は今日の我々國民生活の中において、僅かに五百円や何ぞの基礎控除というものは当を得ておらんと思うのであります。私はそこでこの勤労所得税の
改正に対しては、二千円を基礎控除として、二千円を超過する一千円に対しては、一割の課税をする。二千円を超過して五千円までの者には二割五分なら二割五分を課税する。これ亦前に申上げました営業所得税に対する課税の
方法のごとく、明確に、勤労者が働いて稼いだ金の中の何割かは必ずや今日の国家の
財政に考えて納めなければならんという、強く朗らかなる納税思想を織込む上においても、亦働くときには必ずや税金が付いておるという観念を持たす上において、私はこの税は明確に一目瞭然とわかるような式にしなければならんと思うのであります。私は今日の国民所得というものは凡そ幾らあるか。我が国の統計の上において、これを明確に把握することはできないのであります。併しながら仮に今日の國民所得を五千億円といたしましたならば、その四割に近いものを、我々が
政府の取上げる
ところの酒、煙草の税に等しいようなもの、その他の租税において負担せんければならん。即ち二千億円ぐらいの金は、我々はどうしても
政府え納めなければならん
ところの義務を持つということを、大体の観念として考えておるものであります。併しながらこの税を取る方が当を得ない結果、今日どういうことが起こ
つておるか。ずるい人は計理士を雇い、税務署上がりを雇い込んで、あらゆることを研究して、合法的に又は非合法的に脱税をすることを企てておる。正直な者だけが、最前山田君の申しましたように、家も宅地も全部取上げられるというような目に遭
つておるというのが今日の事実である。私はこの点からいたしまして、この税務機構において、即ち民主的に各税務署管内において、真に正しき民選による調査員を設けるという必要があると思うのであります。それらの人々と税務署の当局とが相協議いたして、そこに正しき民主的に立脚いたしたる税の基準を定めて、國民のおのおのをして不平不満を起こさせないように税金を取るということによ
つて、納税の意欲が昂揚して参ると思うのであります。私は
税源を求むる前に先ず税制の整理をせんければならんという建前を持
つているのであります。その
理由といたしまして、今日はすでにいかなる点より考えましても、前刻星君が申した
通り、税金はもう我々の鼻の下まで来ている。もう一つ行くと我我は窒息する。これが現下の実情である。何故に
かくのごとき事態が起こ
つたか。戦争によ
つてあらゆる都市が焼かれた。それに伴
つて物を失
つた。敗戦の結果、税の対象の相成る
ところのものが消えてしま
つた。そうして尚税の対象になる
ところのものが
生産されないという今日においては、勢いそうならなければならぬ。これも、これ亦止むを得ぬ次第と思うのであります。
そこで私は
税源をどこに求めるか。これは労働者が労働の意欲を高めるような、前申上げましたような勤労所得税に対する課税の
方法を変えて、意欲を増して貰うということと、
生産者が
生産をすればそこに税をかけて、そのことによ
つて生産者が又
企業の意欲を起し、経営に力を入れて物の
生産を増すということによ
つてみずからそこに
税源ができる。即ち税の源を先に養うということでなければならぬと思うのであります。然るに何ぞや、今の
大藏当局の考え方は、税金を取るために人を殖やすことばかり考えておる。今どれだけ
大藏省の管内に役人がおるか。我が国の警察官は今日九万七千五百人と聞いている。然るにこれに等しいだけの人間を
大藏省が持
つてお
つて、尚どんどん人を殖やして行
つて、これによ
つて國民に苛斂誅求をするというのが今日の建前である。私はこの意味におきまして、國民の
生産の力を養い、それを増やすためには、多少の赤字公債を発行いたしても、先ずこの場合は
税源を養うということでなければならぬ。いかなる人が考えても、この
税源というものを見出すことは極めて至難な問題であると私は思うのであります。私をして言わしむるならば、今日財産税を課し、又聞く
ところによりますと非戦災者の家屋に税をかけ、耕地にまで税を取る。即ち財産税の二重三重の課税をしても
税源がないというこの行き詰ま
つた状況において、何が残
つているか。私は各
生産の向上に持
つておる
ところの原動機、機械その他の設備ぐらいが、或いは見方によると税の対象物になるのでないか知らんと思いますけれども、
生産の働きをするその
根本の機械、原動力に税をかけるというような乱暴なこともできない。そうすると私は働きによ
つて生み出す
ところのものに税をかけるより外はない。その結果がどうなるか。今日は好むと好まざるとに拘わらず勢い大衆課税と相成
つて参ります。私共はこの大衆課税には反対であります。反対と雖もいかんせん、酒、煙草の引上げ、あらゆる物品税、消費税、ことごとく大衆課税である。又近く興行の入場税を引上げるということについて各所に反対の宣伝ビラがかかげられておりますが、私はこれらは窮余の悪税であると思いますけれども、ただこの際にこの税の取り方については、文化の潤いを全国等しくするために、私は都会と田舎の、即ち都鄙においてこの入場料に差を設けるということを
政府において考えられんことを望んでおるものであります。
私は最後に、今までに申上げました私の考え方の一つ一つに、若しも皆様が共鳴し得られる点ありとするならば、本国会の
自由討議が言いつ放し、聞きつ放しに終らないように、これを各常任
委員会に取上げて貰
つて、そこで更に検討を加えて、国家の政治の上に、このことが施していい、これを実現していいという考えが付きましたならば、この実現方に国会の各位が一丸とな
つて努力するということに、この
自由討議の意義があると思うのであります。どうかこの点につきましえは、私の申上げましたことに若し御
賛成下さるような節ありとすれば、何とぞその実現に一段のお力を賜らんことを切にお願い申上げまして、私の討議を終ります。(
拍手)
〔丹羽五郎君
発言者指名の許可を求む〕