○板野勝次君 院議を以ちまして茨城縣
水害地
調査のために派遣されましたのは、民主党の小林勝馬君、自由党の柴田政次君、
緑風会の大山安君と共産党の私の四名でございました。九月十九日より二十二日まで
調査目的達成のために行動したのでございまするが、併し
水害直後の混乱の際でもあり、加えて
通信、交通、
連絡等極めて困難な時でございましたので、更にその上に我々一行の自動車事故もありまして、不十分にしか
調査できなかったのでございまするけれども、
調査班各人の
調査結果をここに綜合いたしまして、
概要を御
報告申上げたいと存ずるのであります。
私たち一行の
調査目標と
現地調査の
範囲は、第一にその
調査の目標を、應急
金融措置の問題、
復旧救済費の問題、
生産用及び生
活用必需物資の特配の問題、主食供出割当の減免、租税の減免、治山治水の根本
対策、
対策機関の
構成等、七項目を
中心調査目標としたのでございまするが、この線に沿いまして縣当局並びに
調査地の
地方事務所に資料の提出を求めまして、不備の点には要望して置くに止ま
つたのでございまするが、眞に我が
調査班が
民間の率直な声を聴く機会を得なかったのは、誠に私たち残念に存じてお
つたのでございます。
現地調査の
範囲は、
水戸市、久慈、眞壁、猿島、新治の四郡でございました。
次に
被害の
状況でございまするが、縣当局の説明を
中心にいたしまして御説明申上げますると、茨城縣は本年六月中旬より約七十日の長
期間に及びまするところの旱魃で、縣下農作物に甚大なる旱害を受けておりまして、その
被害面積は約七万
町歩に上りまして、これがため減收によります損害総額は実に六億六千万円に達しまして、この中、米の減收高は約四十七万石を
見込まれていたのでございまするが、九月十五日夜半より
台風の影響を受けまして、風速十六メートルの強風に加えて豪雨となりまして、利根那珂、久慈、小貝、鬼怒、藤井、園部、戀瀬その他の大小の河川は急激に増水氾濫いたしまして、縣下全般に亘
つて水害を蒙
つたのでございました。その
被害は道路七百七十三箇所、堤防一千百十一箇所、橋梁二百五十七箇所の
流失、
決壊を見まして、田畑の
冠水は三万八千三百六
町歩に及び、田畑の
流失、埋没も少からざる数字を示しまして、
流失家屋は二百九十四戸、全壊
家屋百二十四戸、半壊
家屋百四十八戸、床上
浸水一万一千九百九十六戸、床下
浸水九千五百十三戸、罹災戸数
合計二万二千戸に達したのでございます。これらの損害
見込総額は十五億余万円に達するのでございまして、又死傷者、行方不明者
合計七十八名でございまして、その
被害は実に莫大なものがございました。
先きの旱害と今回の
水害との総損害額をあらゆる面から
合計いたしますると、実に二十二億円の多額に上るものと予想されるのでございまして、
被害状況は実に惨憺たるものがございました。殊に猿島郡
地方の穀倉地帶の農作物
被害の甚大なる点は、眞に憂慮すべきものがあると思われたのでございます。先般の本
会議におきまして、丙務、農林両大臣の
水害状況報告の際におきまして、縣当局よりの
報告が遅れましたためか、茨城縣のみは不明と
報告されたのでありまするが、
被害は以上のごとく大きかったのでございました。
今救護
應急対策の
状況を御
報告申上げますると、
罹災者に対しまするところの救護物資が少く、ただ晒粉等の消毒剤の配給はやや良好なるもののごとく傳えられたのでございまするが、その他の諸物資はいずれも備蓄が少くて
應急対策ができていなかったのでございます。主食のごときも
警察署長の証明を得て一人一日二合三勺を配給する、その配給
期間は僅かに三日間を原則としておるのでありまして、情勢に應じましてその都度
決定する程度の官僚の独善的な
措置に止ま
つてお
つたのでございます。從いまして
罹災者として最低限度の満足を得る程度のものは保障されていないごとくに見えたのであります。食糧営團保管米の一千二百二十八俵、
政府手持米一千五百三俵、
合計二千七百三十一俵の
被害に加えまして、輸入食糧の半数以上が水浸しとなつたことは誠に遺憾の極みでございまして、この
責任の所在は当然明らかにされなければならないものと存ずるのでございます。
罹災地に対しまする應急諸
対策も、例えば民族自衛上の軍備があり、
民間の民主的結合組織が眞に活動し得る機会が與えられておりましたならば、不十分ながらも救護諸物資、應急処置
資材の運搬、
應急対策作業等も迅速果敢に行われたのでありましょうが、
官僚独善の弊はここにも現われて参りまして、
災害現場は政治の香りはどこにも漂ようことなく、当時そのまま放置され、ただ
浸水家屋の跡片附けに懸命な罹災民諸君が、農民諸君が
冠水地に舟に乗りまして稻の刈取りに忙しく、又膝まで没する泥水の中で懸命に働いている涙ぐましい
努力の姿が目に映じたのであります。(
拍手)
以上の
状況から緊急に
要請されまするものは、茨城縣
罹災者一万六千世帯及び茨城縣において救済しなければならない
埼玉縣側
罹災者四万七千人に対しまするところの日常生活必需物資の無償特配、懸念住宅六百戸の建築並びに一万二千戸の修繕に要しまするところの
資材の特配、消毒剤及び予防剤等の医藥品の特配、
復旧並びに再
生産に要しまするところの食糧の確保、
被害有畜農家に対しまする飼料の確保、
作業衣、收穫用農具、
資材及び運搬用具の補給、
流失肥料、種子の無償特配、電力の
供給等は勿論のこと、租税の減免、
金融措置、殊に農家
復旧資金に対しまするところの特別低利長期融資、更に主食供出割当の減免のごときは、收種時におきまして
被害現状以上の減收が予想されるので、特に
愼重適切になされなければならないと思うのでございます。かくして急速なる
復旧がなされなければならないのでございまするが、この際地位を利用し、
災害時を利用して利益を貪らんとするがごとき行爲は断乎排除されなければならないと考えたのでございます。
治山治水等に対する
対策について申上げまするが、我々一行の
調査範囲におきまする堤防の
決壊個所は河川が蛇行しておりまして、その水勢が当るところの脆弱なる
部分がいずれも破壊されまして、その堤防の土質はいずれも砂質でございまして、堤防構築の際土質水系について十分科学技術的な研究がなされなければならないことが痛感されたのでございます。久慈郡佐都村の堤防は、その蔭堤の破壊個所を見まするに、幅員約一間以上、長さ約十間ほどのところは、徑五六寸より尺五寸ぐらいの大石を以ちまして、それに目潰しの砂利を入れて積み上げた程度でございまして、破壊されなかった両側はコンクリートで施工してあったという点よりいたしまして、
復旧資材は水勢に対し耐久力あるものが必要とせられることを示しておったのでございます。又
利根川沿いの猿島郡
中川村の二百メーターに及ぶ
決壊個所から逆流しました水は、
中川村、長須村、森戸村、七重村、岩井町、猿島村に及んでいたのでございまするが、この堤防は、從前は完全であったそうでございまするが、
内務省が干拓のために堤防を切り開きまして
排水口を作
つたのでございまするが、その
排水工事は、枠はコンクリートでございましたけれども、
排水扉は未完成のままで、板切れに
土俵が当てられてあった程度のものでございまして、破堤の
現場より見まして誠に遺憾の極みであったのでございます。而も
内務省の直轄であるというので、濁流が逆流するままに委せられて、何ら
應急措置が講じられていなかったという有様でありました。猿島郡五霞村は
利根川を隔てて
埼玉縣に隣りしておる村でありまするが、この場合は権現堂川に通じた用水口を同時に
排水口に使
つておりましたために、それを閉鎖することができないで、権現堂川の水がこの
排水口より流入しまして田畑が
冠水したのでございました。以上の諸点よりしまして、今回の大
水害は單なる天災とのみ見ることはできないのでございまして、國並びに縣の負うべき
責任の重大でありますると共に、治山治水
対策の万全が期せられなければならないと存ずるのでございます。今回の茨城縣におきまする
被害に鑑みまして
利根川、那珂川、久慈川等の水系治水
計画の急速な樹立
実施、中小河川改修の進行、霞ヶ浦、北浦の洪
水位を低下するために北
利根川、常陸川筋の改修、その他治水遺憾なきを期するためにも國庫助成の緊要なるものがあることが痛感され、尚
水害頻発の
状況よりいたしまして、予め破堤個所となる危險ある
地域には土嚢、
土俵等が常時
水害に備えられていなければならないことが考えられるのでございます。
次に、新治郡柿岡町で七ヶ町村の村長若しくは有力者の
会議に列席した際に、そこに居合せておりました人々はいずれも地主層の人々であったように見受けられたのでございまするが、今回の
水害が偏に山林の濫伐にあることが言われまして、山林の濫伐は、山林原野が第三次農地改革の対象となって解放しなければならなくなつたという宣傳のために、すでに耕地は解放させられたのに、今又山林原野が解放されるならば、今の中に伐り倒して売つた方が利益であるというのでどんどん伐採した。これが大きな原因であると主張されたのでございます。山林の濫伐もその一原因には相違ないのでございまするし、治山
対策も亦重要でございます。
調査班も、山林原野の解放はしないという農林大臣の言明があるのだから安心して濫伐をしないようにしたいという
意見もございましたし、私のごとく、山林原野が大地主温存の拠点となっておるから、かくのごとき濫伐が行われたのだから、國有化こそ治山
対策を講じ得る唯一の途であるという
意見に分れてお
つたのでございます。以上簡單に
報告を終りまするが、
水害状況の詳細は
議長のお手許まで資料を提出して置きまするから、それについて参照され、尚
関係常任
委員会におかれましても慎重に
諸般の
復旧対策を考究されまして、尚本年度追加予算
決定に当りましても
復旧対策上万遺憾なきを期せられますることを切にお願いする者でございます。
最後に私は今回の茨城縣に派遣されました私たち一行に対しまして、紙上我々の不始末が宣傳されたのでございまするが、それは明らかにデマ宣傳であることをここに御
報告申上げたいのでございます。尤も私たち一行の中の大山安氏一人残りまして、これは軍政部長並びに縣当局に
報告の
責任があるというので参られました。併し一行が参っておりまする間におきましては、何ら非常識なる行爲がないばかりか、我々は何ら追究されても公明正大であったと申上げることができるのでございます。ただ大山安氏が茨城縣会を訪問いたしました際の態度は、私たちは存じておりません。併しながらあの人が一風変つた、非常に変つた性格を持っておられたという点は我々一行の認めるところでございますけれども、酒を強要するがごとき卑劣なる性格でなかった(
拍手)ことを、私はここで皆さんに御
報告申上げます。茨城縣会がかくのごとき問題を取上げる前に、今回の
水害対策について万全の処置を講ずることこそ、今日罹災民の上に、罹災民を救済しなければならない上に課せられた茨城縣会の大きなる任務ではなかろうかと存ずるのでございます。(
拍手)從いまして私たち一行にして若し誤つたところがありまするならば、我我は喜んで懲罰を受けることを甘んじて受けるのでございます。併しながら省みまして私たちは何らやましいところはございませなんだ。大山安君が参議院の名誉のために何を言つたかは存じませんけれども、このことはただ上手な言葉を言つたか、率直に
責任を追究したかという、その態度の問題でございまして、
國会議員の体面が云々されるべき問題ではなかろうと存ずるのでございます。以上の
報告を附加えまして茨城縣の
水害状況の
報告を終らして頂きます。(
拍手)