○帆足計君 先程来の御討議によりまして、
官廳機構の刷新という一点につきましては、民主
政治の確立を念としまする
議会の各位、殆んど意見の一致を見ておるということを承わりまして非常に心強く感じた次第でございます。このような次第でありまするので、私は角度を聊か変えまして、現在の官職
機構の根本に遡りまして、第一には、立法に対して、
行政の比重が非常に大貫なものにな
つておる。これはいかなる理由であるか、これに対して我々はどう措置すればいいか、これを第一点といたしまして、第二点は、
官僚の独善、又は
行政の過重、これを裏から見まするならば、政党並びに
議会及び
國民機構の無力弱体を反映するものでありまするが、この点についていかなる
改善策が必要であるか。第三には、我が國の
官僚機構の基盤をなしております
一つである
厖大なる
國営事業の民主化を、どのようにいたし、又これらの事業を
行政から
分離し、独立採算、能率経営にいたすのには、どのようにすればいいか。この三点につきまして考えておりますことを述べたいと存じます。申上げるまでもなく、
議会が最も華やかなコースを辿りましたのは、資本主義の黎明期並びにその発展期でありました。当時
議会は封建專制
政治に対抗いたしまして、憲法並びに法律を楯といたしまして、
國民の自由を守りました。
行政は簡素な程よいとされましていわゆる安價なる
政治が要求されました。
國民生活並びに
経済活動には廣汎な自由が與えられました。
議会政治の確立は正にこのような
社会的基盤の下においてのみ円滑に行われたのでございました。然るにその後歴史は移りまして、資本主義は発展し、成熟し、そうして独占的
段階に達し、又はいわゆる帝國主義的
段階に達しました。この
段階に達しますると、一方におきましては恐慌が勃発し、又資本主義体制は國際的に大きな
危機に面しました。かくして一方におきましては労働問題が起り、
社会問題が起り、又は
社会化その他の問題が
日程に上りました。他方におきましては、この矛盾を強行的に解決しまするために、いわゆる独裁
政治並びにフアツシスムがその勢いを盛り返しました。かくして一時
議会政治並びに自由主義は下火になるかのごとく見えまし先。今や独裁
政治とフアツシズムは倒れました。独占と軍閥は倒れました。而してその廃墟の中から再び
議会主義と自由主義が歴史の脚光を浴びるに至りました。併しながら、然らば現在、過去において資本主義
経済が十分に驥足を伸ばし得た時代とそのままであるでありましようか、敗戰の結果、
経済界は混乱に陷り、そうして好むと好まざるに拘わらず国民
生活の末端に至るまで、
統制その他が行なわれておりますが故に自治
経済の華やかなりし頃に比べまして立法は比較的小さな
機能を果すものとなり、而して
行政の権能は実に大きなものにな
つております。これは
一つの客観的事実でございます。例えば物價
統制につきまして
議会が法律を決めます。それに從いまして何千何万の物價につきましては、これは
官廳が独断的に決めることにな
つております。物資
調整につきまして簡單な法律が決まります。
厖大なる物資需給計画は
官廳の手にあまねく委ねられてあります。先般來この
議会におきまして生鮮食料品の問題が討議されました。これにつきましての国民並びに町
議会の世論は概ね一致しております。然るに現実の政策におきましては殆んどこれらの
國民の要望は無視されております。(
拍手)
國民生活に至大な関係のある一切の事項は立法の直接の
監督下に置かれると申しまするよりも、
厖大なる
官廳機構によりまして運営されております。これに対しまして
議会も
國民も殆んど
発言の機会を持たないというのが現状でございます。
このような点から考えますると、私共は民主憲法の伴奏の下に、
厖大なる
官僚警察
國家を作りつつあるのではなかろうかという不安の念にすら襲われる現状でございます。(
拍手)ドイツにおけるワイマール憲法の悲劇が、異なる形態において我が國において成熟しつつあるのではあるまいかというような氣さえするのであります。私はこのように過大なる
行政権力の下におきましては、
議会の職能も、欝蒼たる
官僚機構という大樹の上に止まつた蝉ぐらいのものではあるまいかというような感じすらするのでございます。然らばこのような現状を
改革し、眞に憲法の精神に基ずく民主
議会を確立し、民主
政治を確立しまするためには、どのような手が打たれなければならんか、それには先ず
議会の
権威を確立することであります。
議会の運営、
機構、それを技術的にも実際的にも充実することでなくてはならんと思います。私はこれにつきましては、先ず
選挙制度の合理化、
議員の常勤制、歳費の適正化、調査費用の支出特に交通
機関の完備、統計資料の十分なる把握、これらの点が急務中の急務でありまして、即刻議院運営委員会におきまして、これらの問題を取り上げて頂きたいと思うのであります。(
拍手)現在
厖大なる物資需給計画、祖
國再建の
経済計画は、殆んど数人の
事務官によ
つて握られております。
國会議員の中の一人としてその全貌を把握しておる方があるでありましようか。このようなことで
國会の任務が果せるでありましようか。資料統計の蒐集把握、これは先ず我々がなさねばならんことであると思います。これと共に
民間の
機構を見て参りますると、
民間の
経済圏体は今や民主化の途を辿りつつありまするが、併しながらこれらの
民間経済團体の活用につきましては幾多の難関に逢着いたしております。從いまして、若しこれらの
民間経済團体を活用することができません
事情にありますならば、一歩進んで、これらの
民間團体が單に経営者代表のみならず、労働代表、科学技術代表、消費者代表等を参加させまして、業種別の
産業協
議会を設け、これらの国民の自活能力の補助によりまして
官僚独善
統制を牽制し、そうして
調整する必要があろうと存じます。
更に私は皆樣と今後是非御討議して頂きたいことを痛感いたしておりまするのは、本來三権分立の思想と申しまするものは、それ自体としては極めて重要な且つ曲ぐべからざる原則でありまするけれども、それ自体はやはり相対的なものでございます。その
中心となるものは飽くまで
議会でなくてはなりません。然るに現在におきまして
議会政治、政党
政治は確立しておりまするけれども、政党が
内閣を取りました場合には、
厖大なる
官僚機構の禿げ頭の上に一匹の蠅が止
つている。このような状況を呈しているのでございます。即ち
大臣だけが官職に入りましてもどうすることができましよう。これに対しまして、私共は立派に
権威を確立する必要から、曾ては参與官の、廃止、次官の廃止すら主張いたしました。先般も松岡さんが
行政制度調査会に参加されますことも、我々は皆樣と共に否定いたしました。併し私はその後この問題をつくづく考えました。これにつきまして若干懷疑的にな
つているのでございます。私は
議会内閣であり、政党
内閣でありまする以上は、政党
内閣は
議員並びに党員を引連れて参與官、次官と共に、
行政の
責任をもとるべきではなかろうかと存じております。又
行政と
議会との関係を審議すべき重要なる委員会、又は物資需給計画の委員会、物價
統制の委員会等には、或いは專門家として或いは
議員として出席することも、議院の議決の下に或いは必要ではあるまいかという氣さえする次第であります。この点は先般議決されました趣旨にも若干反することでございまするので、愼重なる御審議を願いたいと存じます。これを要しまするのに、
官僚独善は
官僚のみの
責任ではございません。
官僚をして相対的に独善的ならしめている我々政党、
議会並びに
國民各
團体の無力の表明であることを知らねばなりません。この点につきまして、一大刷新が行われない限り、我が國における民主
政治の確立する日も亦遠いと私は痛感いたすものでございます。
これと並びまして
國営事業の問題がございます。現在
官僚機構の最も大きな基盤とな
つておりまするものは、
厖大なる
國営事業、國策会社並びに國有財産でございます。これらのものを
國民の手に移し、能率的な経営に切り替え、相して
行政から完全に
分離した独立採算
制度を採ることが必要であろうと存じます。(
拍手)安價なる
行政というプリンシプルは不滅の眞理であると私は信じております。つまり鉄道、電信、電話、預金部その他の金融
機関、電力、その他の国策会社、又曾て
農民から收奪したところの
厖大なる國有林、これらのものは
行政から
分離し、独立会計に移し、民主的経営に移し、科学者、技術者の能力を借り、そうして模範的経営をすべきものであると存じます。
行政とビジネスとは範疇が異な
つておると存じます。ビジネスには能率が第一でございます。サービスが第一でございます。
責任も亦守らねばなりません。私は現在の
國営事業の非能率をよく存じております。然るが故に無
條件で
官僚國営に賛成するわけには参りません。併しながら歴史の現
段階におきまして、
國営事業を完全なる営利民営にすることは不可能であろうと存じます。然るが故に、民営と
官僚國営の丁度中間であるところの能率的な民主的国営の形態を我々は皆樣方と共に愼重に探究せねば私はなるまいかと存じます。
國営問題につきましては全面的批判の声も我々は聞いております。併し曾てアダム・スミスが、個人金業ならば個人の利益と一致するから非常に能率が挙るが、お雇重役の経営するところの株式会社は到底能率が挙るまいということを断じたことを書物で見ました。この一点だけは確かにアダム・スミスの錯覚でございます。アダム・スミスの存命中は、殆んど株式会社は倒れました。そうして個人会社、合資会社が発達しました。併しスミスの歿後三十年、英國の紳士道が普及し、コンモンセンスが高くなり、その教育と文化が高くなるに連れまして、いわゆる紳士道の確立となり、
産業騎士道の確立となりまして、偉大なる株式会社
制度が発達し、そうしてやがて全世界を席巻するに至りました。教育と科学と文化の進歩によりまして、企業形態も亦進化するものであろうと私は観察いたして、おります。現在日本の大多数の加工工業におきましては、明らかに国営は時期尚早であります。当面民主化、能率化が必要でございましよう。併しながら
從來の国営事業等につきましては、これを簡單に民営に移すというのではなく、模範的の新タイプの民主
國営を我々探究せねばならんと存じます。
結論といたしましては、いずれにいたしましても一面におきましては政党並びに
議会運営の強化が急務中の急務であります。即刻議院運営委員会におきましてはこの問題を取り上げて頂きまして、我々の
自由討議を
自由討議として終らしめず、
議会政治確立のための一歩前進にして頂きたいと存じます。同時に
労働組合、経営者
團体、文化
團体等の
機能を強化し、国民が自主的にみずからを処理し得る問題については、みずから自発的に処理することが必要と存じます。同時に
厖大なる
國営事業その他を独立採算
制度に移し、
行政から完全に
分離することが必要であろうと存じます。そうして残りました
官僚機構を国民の公僕とし、簡素なる
行政難関とし、こうして初めて民主
政治の確立が行われるものであろうと存じます。
〔駒井藤平君
発言者指名の
許可を求む〕