○
中西功君 本
院最初の
少数意見の
報告を申上げます。私並びに
共産党は、この
法案に対して
反対せざるを得ないのであります。何故かならば、これは徒らに
私的銀行を救済するに止まるに過ぎないからであります。そもそも
金融機構の
整備は、これは戰時中並びに
戰後に蓄積された厖大な
擬制資本を徹底的に
整理するというところに
根本の眼目があるわけであります。ところが
從來その
根本方針が常に曲げられて來ている。
保守勢力は
事ごとにこの
根本精神に対して抵抗を加えて來ている。
軍需補償の打切に
反対したり、或いは又折角捕捉した第二
封鎖をいつの間にか流してしまつた。その他いろいろのことがあります。水ぶくれ
評價によ
つてやろうとするのも、その
一つの手であつたわけであります。ところでこの
改正案が何故に必要に
なつたか、これの本当の
眞実を話せば、結局これは以前の
整備法案が通過する時に、大体
時價評價で通るだろうという
考えがあり、
從つて又
銀行が十分救済されるそう
考えておつたわけでありますが、突然その
評價基準が
帳簿價格に変つたということろで、非常に大きな恐慌が來て、結局これじやいかないというので、この
改正案が出たわけであります。こういう経緯を見ましても、そもそもこの
本案の
眞意がどこにあるかということが非常に
はつきりしていると思います。
從來戰爭中において、多くの
國民が非常に大きな
犠牲を
拂つて來ている。又
金融のこの
整備を見ましても、多くの
預金者が実際
犠牲を拂
つております。
戰災並びに引揚者その他の
戰爭犠牲に
至つては、非常に甚だしいのであります。こういうふうなものに十分な考慮を拂わずに、最も積極的に
戰爭協力した
銀行資本に対してだけは、今までの
保守勢力はあらゆる手段を盡して
保護し救済しようとして來ているのでありまして、こういうふうなことはまつたく現在の世相に反するわけでありまして、私たちといたしましては、どうしてもこういう
措置に対して
賛成することができないのであります。更にもう一歩進めて言いますれば、現在すでに私的な
銀行の
存在の
意味がなくな
つている、こういうことであります。
重要産業に対する
融資にいたしましても、殆んどすべてが
復金によ
つてなされてゐる。而も最近この
資本を更にもつと厖大しなければならない、そういう事情に当面している。その際、それじや
市中銀行が今まで何をして來たか、
市中銀行には
一つの原理がある。それは儲かるものには貸すが、儲からない
企業には貸さない。こういうふうな
はつきりした
建前があります。(「事実と違う」と呼ぶ者あり)そもそも
銀行の
人々は、
預金を預か
つている
銀行は公器である、こう申します。確かにそうであります。現在においても二千七百億を超える
國民の
預金を
銀行は預
つておる。これはまさに社会的に大きな仕事であります。而もそういうふうな事柄が僅かに現在では十億以下の
資本、この
資本を持
つておる
人々に動かされておる、このことは全く大きな
矛盾であります。この
矛盾の結果からいろいろの現在の不都合な状態が起
つて來ておる。
從つて銀行は今までのところただ儲かる所、闇屋さんだとか、或いは
インフレ産業その他にばかり投資しておる。そうして貸す場合にも
さつき委員長の
報告がありましたように、莫大な手数料を取
つておる。これは全く
金利をべらぼうに
引上げたのと同じであります。こういうことをしておる。こうして重要な
産業は皆
融資を
復金に委してお
つて何もやらない。現在の
市中で申しますれば、結局重要なところには
國民の
資金を使う。而もその
資金から、その
融資から流れて來た
資金を
銀行は集める。集めて以てそれを自己の打算的な目的のために使
つておる。こういうふうな
仕組が現在の
仕組であります。
從つて現在いわゆる
市中外銀行、私的な
銀行の
存在というものは
日本の
経済復興には殆んど意義はない。
反対に言えば非常な
障害である。こういう
障害物を今日強化するということが果たして妥当かどうか、これは全くそういう
意味においても、現在の必要から逆行しておると我々は
考えざるを得ないのであります。(「
宣傳は止めろ」、「独断だ」と呼ぶ者あり)それではいかにすればこの
金融界の
整備を徹底的に行い、又
産業復興に役立て得るか、これはもう言うまでもなく
即時國有國営を実現するものであります。二千七百億のこの
國民の
預金を、
個人の
資本家に委せて勝手にさして置くのではなくして、
はつきり
國家が預
つて、そうして責任を持
つて必要な時に必要な所に必要な量を供給して行く、そういう体制を採ることであります。而もこういうことは決して我々
共産党だけの主張ではありません。
社会党の
綱領にも
はつきりとそういうことが掲げられてありあますと共に、
日本の
勤労者の非常に多くがこの
考え方に
賛成しております。而もここで問題になるのは、こういうふうな
國有國営をやるといたしましたならば、現在が絶好のチャンスであるということであります。何故ならばこの度の
企業再建、
金融機関整備によりまして、
政府委員の
報告によりましても七割以上の
資本金が飛んでしまう。即ち
從來までの
日本の
金融資本、
銀行資本は拂込によりますと二十三億くらいしかないのであります。それが七割以上も飛ぶ。結局におきましては五六億の
資本金しか残らない。若し我々が
金融機関を本当に
國有にする氣があるならば、この時にやれるわけでありまして、僅かに五六億の金、こういうものは現在のインフレ時代におきましては、端た金であります。こういう端た金によ
つて國有ができ、これによ
つて日本再建の基礎が定められる、こういう時機であります。今日を措いて外に時機はないのあります。眞に
國有國営を
考えておる人ならば、今日必ず断行しなければならないのであります。で、私は
社会党の
人々にお聴きしたいのです。皆様が本当に
考えてやろうとしておられるのかどうか、自分の掲げられた
綱領を実行する氣があるのかどうかという点なんであります。併し勿論今日、或いは明日によ
つてこの機会が去
つて行くわけではない。今後大いにまだ時期は待
つておると思いますが、良識ある
社会党の
人々に猛省を期待して止まないのであります。
以上のような次第でありまして、私たちは即時
銀行、
金融機関を
國有國管にすることが、眞に
日本経済の
再建復興、そうして又この闇とインフレの克服のために、最も妥当な、而もも非常に容易な策であると
考えますが故に、
銀行を救済しようとする、勝手に
國民の
預金を使い減らすような、そういう私的な
銀行を救済するという
本案、この
法案はそういう時流から見ますれば、明らかに逆行する
法案であります。
從つて私たちはこの
法案に対しては絶対に
反対いたします。そういう次第であります。私の
報告を終ります。(
拍手)