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1947-08-15 第1回国会 参議院 本会議 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年八月十五日(金曜日)    午前十時三十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十一号   昭和二十二年八月十五日    午前十時開議  第一 皇室経済法施行法案内閣送付)の審査を付託するため特別委員会設置の件  第二 日本國憲法八條規定による議決案内閣送付)の審査を付託するため特別委員会設置の件  第三 参議院緊急集会規則案下條康麿君外五名発議)(委員長報告)  第四 在外同胞引揚に関する感謝とその引揚促進に関する決議案矢野酉雄君外二十一名発議)(委員会審査省略要求事件)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。去る十三日予算委員出淵勝次君より病氣につき、又同日運輸及び交通委員岩傳一君、決算委員西園寺公一君より、理由を附して、いずれも委員辞任の申出がございました。許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。つきましてはその補欠として渡邊甚吉君予算委員に、西園寺公一君を運輸及び交通委員に、兼岩傳一君を決算委員に指名いたします。      ——————————
  5. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより本日の議事日程に移ります。議事日程変更につきお諮りいたします。議事の都合により日程第一及び日程第二を後に廻したいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  7. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 日程第三、参議院緊急集会規則案下條康麿君外五名発議)を議題といたします。先ず委員長報告を求めます。議院運営委員長木内四郎君。    〔木内四郎登壇拍手
  8. 木内四郎

    木内四郎君 只今議題となりました参議院緊急集会規則案委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。参議院緊急集会に関しましては、憲法第五四條第二項及び三項に規定があるのであります。即ち第五十四條の第二項におきましては、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、國に緊急の必要があるときは、参議院緊急集会を求めることができる。」と規定しております。又更に同條の第三項におきましては、「前項但書緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の國会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その效力を失ふ。」ということが規定いたしてあるのであります。ところが御承知のように新憲法におきましては、旧憲法の第八條緊急勅令というような規定はございません。又旧憲法の第七十條の財政上の緊急処分というような規定もございません。又第七十一條の前年度予算を施行するというような規定もないのであります。而してこれに対する救済策の一といたしまして、参議院緊急集会という制度を設けておるのであります。或いはこれは、只今申しましたところの旧憲法の三箇條のような規定がないことに対する唯一の救済策であると言つても差支えないかと思うのであります。從いまして参議院緊急集会制度は確かに新憲法の特色の一つでございまして、條文は極めて簡單でありまするけれども、参議院の最も重要なる機能の一つであると思うのであります。然るにこの憲法規定を受けまして、國会法においてはどういうことを規定しておるかと申しますと、ただ單に三箇條の極めて簡單なる規定を置いておるに過ぎないのであります。即ち國会法の第四條におきまして、「参議院緊急集会を求めるには、内閣総理大臣から、集会期日を定めて、参議院議長にこれを請求しなければならない。」ということを規定いたしております。又更に第三十四條におきまして、「参議院緊急集会中、参議院議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、参議院の許諾がなければ逮捕されない。参議院緊急集会前に逮捕された参議院議員は、参議院要求があれば、緊急集会中これを釈放しなければならない。」ということを規定いたしております。更に第百十四條の第二項におきまして、「参議院緊急集会中は、前項規定を準用する。」ということがあるのですが、この前項規定というのは、「國会会期中各議院の紀律を保持するため、内部警察の権は、この法律及び各議院の定める規則に從い、議長が、これを行う。」これを参議院緊急集会中に準用するという規定があるだけであります。その只今申述べました三箇條の外には、緊急集会に関するところの手続の規定は全く缺けておるのであります。從いましてこの規定を作らなければならんのでありますけれども、この前の参議院規則を作ります際におきまして、その中に入れたらどうかという考もあつたのでありまするけれども、併しこの問題は只今申しましたように、むしろ法律によることが適当であるとさえ思われるような程重要な規定でありまするので、むしろこれは独立の規則にした方がいいという考えに基ずきまして、この前の参議院規則の制定の当時にはそれが入らなかつたのであります。併し議院運営委員会におきまして愼重に研究いたしました結果、一つの成案を得ましたので、各派共同提案としてここに提出されたのであります。  その規則案の内容について簡單に御説明いたしますが、緊急集会國会の常会、臨時会、或いは特別会と異なりまして、召集ということはございません、内閣総理大臣期日を定めて、参議院議長集会を請求するということになつておるのであります。そこで議長は、この請求を受けた時は、議員にこれを通知し、議員は指定された期日の午前十時に集会するということをこの規則案の第一條規定いたしてあるのであります。更に緊急集会には会期というものがございません。そこで緊急の議案がすべて議決された場合におきまして、議長緊急集会の終つたことを宣告するということを第二條に規定いたしておるのであります。更にこの第三條においては、議案可決された場合に、その取扱について規定いたしております。更に第四條におきましては、参議院規則の中、緊急集会の性質上、適用されないところの條章、即ち参議院規則の第二章の内閣総理大臣の指名とか、第三章の開会式、第四章の会期の決定、延長及び國会の休会、或いは第十二章の衆議院との関係、第十五章の資格爭訟に関する規定條章、こういうものを除きまして、その他参議院規則はすべてこれを緊急集会に準用するということに、この第四條において規定いたしておるのであります。  本案の付託を受けました議院運営委員会におきましては、更に愼重審議をいたしました結果、全会一致を以ちまして本案可決すべきものと決定いたしたのでございます。甚だ簡單ではございますが、これを以ちまして報告といたします。(拍手
  9. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。委員長報告可決報告でございます。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を請います。    〔総員起立
  10. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  11. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 日程第四、在外同胞引揚に関する感謝とその引揚促進に関する決議案、(矢野酉雄君外二十一名発議)、(委員会審査省略要求事件)、本件は矢野酉雄君外二十一名から委員会審査省略せられたき旨の要求に接しております。その要求通り審査省略し、直ちに本案審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明発言を許します。矢野酉雄君。    〔矢野酉雄登壇拍手
  13. 矢野酉雄

    矢野酉雄君 決議の案を冒頭に朗読さして頂くことにいたします。    在外同胞引揚に関する感謝とその引揚促進に関する決議   連合國が五百五十余万同胞帰還を実施され、さらに未帰還者に対し許す限りの待遇を與えられていることは、感謝にたえないところである。   しかも異境にあつて、故國の空を望みつつ帰りえない同胞が、今なお百万近くもある。これらの人々敗戰以來心身共に疲れはて又着のみ着のままの生活をするものさえあつて、果してこの冬をつつがなく越せるかどうかまことに憂慮にたえない次第である。本院は、これらの残留者帰還が年内に完了するよう連合國の格別なる配慮を懇請してやまない。   われらは全國民と力を合わせ、乏しきをわかち、同胞帰還に備え、あい共平和國家の建設に努力せんとするものである。政府もまた、この心を以て心とし、同胞ひきあげのために万全の方策を講ぜられたい。   ここに参議院は全議員総意を以て右決議する。 特別委員会は北條君、淺岡君、星野君、中平君、木内君の五名によつて小委員会を結成いたしまして、数回に亘りこの案文を檢討いたしまして、この結論に達した次第であります。  皆さん、すでに五百五十余万の同胞が懐かしの祖國に恙なく引揚げて参りました。これに対する連合國各位計画並びにその実践に対する御盡瘁の程は、これ言語に絶するものがございます。私みずから昨年の六月の末に動乱の地から祖國に帰りました。あの大滿州の動脈とも言うべきその鉄道の秩序が保全せられた場合においてはともかくとして、何時その動脈たる鉄道が破壞せられるか分らない。否、現に各地各所において破壞せられているそのさ中に、日本人の全体を恙なく日本へ送還せしめられるそれまでの当局苦心というものは、実に想像に絶するものがありました。私たち引揚げ立場から得てして不平に陥り易いものでありますが、一歩送還する責任者立場に立つてその送還の計画並びに実践ということを考えるときにおきましては、実に苦心の存するところであります。その一切の苦心を超えて、困難を乗り超えて、恙なく五百五十余万の日本人日本に送還せられるに至りましたる連合國各位に対しては、私たちは心から感謝を捧げなければらんと信ずるものであります。國を挙げて先ず我々は赤心を披瀝して、これらの御労苦に対し深甚の感謝と、又將來に対する御努力懇請をしなければならんと信ずるものであります。(拍手)然るに政府当局苦心もさることながら、七千数百万の我が同胞が心を一にして、それぞれの宗派々々の立場において祈りを捧げながら、まだ残留するところのわれら日本兄弟たち帰還が一日も早く完了するようにと今日まで参つておりますけれども、尚百万になんなんとするところの同胞は、北に、南に、大陸に、その中には今尚生存のほども確證することのできない相当多数の人々がおるのであります。一昨年の今日、私は熱河から万難を排して奉天に帰り、重大なる放送のあることを聞き、あの藤浪町の奉天第二中学の前の田中邸の一室におきましてその重大なる放送を承わつた時の私自身の心境を顧みると共に、今私はこれら百万の同胞帰還を一日も早く実現して頂くために、國民を代表する聖なる参議院のこの壇上から、天下万民にその赤誠を披瀝する自分の今日の境遇思い合せますときに、更に私は今尚残つておるこれらの百万の兄弟が、祖國の空を憧がれながら焦躁の感に打たれて、一日も早くそれぞれの港に我らを運ぶ船が來てくれるようにと念願しておることを思いますときに、果してこれが幻であるか。現実であるか。私自身実に感無量なるものがございます。(拍手)三人の男子を國に召され、二人の子は帰りましたが、甚だプライヴエートの問題を申上げますが、今尚矢野家の次男は帰つて参りません。何ら当局から一本の葉書も頂戴しておりません。生死の程も分りません。この議席にいらつしやるところの各議員諸公の御家庭にも、それぞれそれに類する境遇の方々がいらつしやることを思いますときに、私の心は碎けんとするものがあります。今帰りました人の偽らざるその告白の一節を、いかがと思いますところは全く割愛いたしまして、その一節を披露したいと思います。「(省略)何ら日本に対して知るすべのない我々は、百鬼夜行、とんでもない最惡の場合も想像して見たのでした。然るに乗船以來皆樣から、この力強い明朗日本の新しい発足を聽き、この目に見せて戴いて、どんなに嬉しく思い、どんなに祖国の皆樣に感謝したか知れません。私共も今日からこの香りの高い日本の土を踏みしめて、皆樣と共に新日本建設のお仲間入りをさせて頂く歓びに震える腕に鍬を握つて故郷の山をおこしましよう。そうしたらどんなに樂しいだろうなんと考えております。」百万の同胞を還すためには、私たち参議院みずからが乏しきを分ち合つて、それを迎える全き受入れ態勢をここに作つて置かなければならんと思うのであります。(拍手)然るに諸君、耕さんとするためには鍬が要る。農具が要るが、果して我々はこれらの人々に対して鍬を與え、鎌を與えるだけの周到なる準備をしておるのでありましようか。今調査いたしましたその調査はほんの一部でありますが、千名についてこれは調査したのでありますが、迎留者の年齢は大体平均三十一才になります。日本を建設する中核となるべき青年壯年期の人が、迎留者の大部分であることを考えなければなりません。而もその留守宅家族の収入は、収入ありと統計されるものが、全体の僅かに四三%である。五七%はみずから生活のできない、補助を求めなければならない、そうした実情であります。さて故山に帰つて見て自分の身の振り方をどうするか。身の振り方を託するに足る人々は僅かに三七%であり、六三%の人々自分の身を落着ける頼りになる所はないのであります。帰還後、住むに家ある人々は五四%であり、全く家を持たざるところの者は全体の四六%になつております。これらを考えて行きます時に、我々は命をかけてその帰還の一日も早からんことを祈り続けると共に、その祈り受入れ態勢の実現のために誠をいたさなければならんことを、切実にこれらの生きた資料を通して痛感するのであります。(拍手)(「同感同感」と呼ぶ者あり)これは豈ただ政府当局のみの責任でなくて、殊に國家最高機関たるところの議会は、今や民衆から権威を失いつつあるこの時この際、絶対にこの問題に向つて積極的の計画努力をしなければならないのでありますまいか。皆さん。(拍手)(「そうだ」と呼ぶ者あり)  更に私は今大部分諸君が‥‥あの終戰の当時は夏でありまして、勿論私はここにいろいろ生きたる材料を‥‥或る一つの國を敵國視したり、或いは我が國民に対して敢えて敵愾心をここに挑発せんために申さんとするのでは絶対にありません。これからこそ、我が日本は一人の敵を作ることなく、あらゆる世界民族兄弟の交りを持ち、而してその世界民族から尊敬と信頼を受けるがごとき民族的一大訓練と教育をしなければならんことは当然でありますが、あの夏のままの姿で、果して零下三十度、零下四十度‥‥ハルピンまではまだ本当の滿州ではないのです。あの北安から、或いは孫呉から、ブラゴヴエシチエンスクをすぐ対岸に見る黒河から、ハイラルから滿州里、各所思いをいたします時に、全く冬までも凍るあの寒さにこの冬を持越させるならば、さなきだに三九%、四五%の栄養失調に陥らんとするところの人々は、生活力低下し而も防寒具の設備とても乏しいことを思いますときに、私はこの日本建設の中堅となるべき青年壯年期人々の大部分が、いかに陥るかと考えますときは、私はこの上ながら、非常なる御援助と保護を受けております立場に立つておるその日本でありますけれども、更にマツカーサー元帥に対しても、スターリン元帥に対しても、父であり夫であらせられるその胸に対して、一日も早くこの冬を越させずしてお帰し下さるように、万般のお手配をこの上ながら懇請することは、決して分を越えたお願いではないと存ずるのであります。(拍手)あれやこれや思いをめぐらしますときに、初めに、私たち連合國各國に対して心からなる感謝を捧げると共に、先ず本院みずからがこの帰還促進に対する打つて一丸となる大同團結の決意をここに堅くし、そうしてその基盤に立つて、七千五百万の我が國民の志をここに一点に結集して、それらの一線の基盤からして誠を傾けて連合國各位懇請を申入れたい次第でございます。(「賛成」と呼ぶ者あり)と共に、政府を中心として事業資金のごとき、住宅のごとき、更には汗と油を流して二反三反と人が残してくれたが、帰つてみれば田も農地改革によつて全部不在地主としてこれは取られてまつておるのです。(拍手)中には開拓戰士なりと遠く大陸の地に送られて苦心経営しておる中に、自分の意思にあらざる無上の命法で戰場に立たせられ、遂に生命を絶ち、その夫の遺骨を首にかけながら帰國して見れば、その大事な夫を葬るべき墓場さえなきこの現状が、果して農地調整法第九條の第一段の正当なる理由の中にこれらは加えることができないかどうか。これこそ私は人道の大問題であると思うのであります。(拍手)法は人を生かすのが根本であります。法は人を殺すときに惡法となります。一切の眞理は民の心を獲得することにおいてのみそこに立つて行くのです。我が日本敗戰は、國内民心を得なかつたことと、大陸民族の心を得なかつた。そこに道を外れたところに、かかる必然の結論が來ることを、我々は省みなければなりません。もう再び私たちはこれらの過ちをしたくないのであります。かく考えますときに、私は、政府國民議会、三位一体となつて受入れ態勢に万全を盡すことがおのずから連合國各位の積極的なる愛の御手をお伸ばし下さるところのその誘因になることを固く信ずるのであります。(拍手)ここに百万の兄弟たちが‥‥皆さんがお送り下さいまする、而も各派々々を超えて滿場一致を以つお送り下さいまするこの眞心は、海を越え、山を越えて、百万の兄弟の胸に、心臓に、私は直接に感應しておることを信じます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)(拍手)その百万の人々、一人に五人の家族関係ありとすれば、総計五百万、すでに帰つておる者五百五十万、その中二百万人が家族つての進出であつたとして、約五百万の人々が五人の家族といたしましただけでも、三千万の多きに達し、ここに約三千五百万人の人々の心がこの議会に結集しておることを思います時には、私たちは欣然としてこの決議案を御可決になつて頂きますときに、必ずや一方にはクレジツトの設定となり、緊急食糧緊急放出となり、あの大陸の一角から赤々として六日輪が今や出でんとする、あのほのぼのとした夜明けを、我が日本の前途に私は感ずるのであります。今私は、一人の母親自分の子を待つておりまするその氣持の一二を紹介いたしまして、そして壇を降りたいと思うのであります。守永礼子さんというこれは奥さんの立場から、「生きてあり君生きてありと日に幾度ものにつかれし如く口ずさむわれ」。「七年を留守守りつつ子と三人ほとほとつらし生きるということ」。市川五月さんの、「凍死餓死耳をおおえど傳え聞く涙たぎり落つ狂わしきがな」。「留守守る六年の月日長かりきかくて老いたり母のいのちは」。  四月に五万九千八百八十八人、五月に五万七千四百十二人、六月に四万九千九百四十二人、七月に約四万の帰還者がございました。この計算からいたしますと、來年一杯もだめです。再來年も中頃を過ぎなければ、この百万の人人の帰還の完了は不可能であります。三人の子を國に召されたその母親が、兄帰り、弟帰り、夫帰り、ただ一人の子の帰らないことを詠つておる一篇の詩があります。「白いユニホーム姿で、颯爽と空に向つているあなたの写眞が一枚、床の真にいつまでも立つて居るはげしい寒さに負けず、白梅は香り高く咲いた。そしてあなたたちを祝福してくれた。その時あなたの側には、父も兄も弟の写眞も飾られていた。やがて新緑は庭の樹々を深め、南瓜の花も咲きはじめた頃、サンタクロースのような顔で、あなたの父も玄関にあらわれた。——浩思をつれてかへれなくてすまぬ。随分手をつくしてさがしたがさつぱり手がかりがなくて、あなたの写眞の前で、父と母は顔をそらした。湯氣の立ち上るおさつや栗が供えられるようになつても、あなたは食べようともせず、いつまでも一人、空に向つてつている。」こんな母、こうした夫、こうした父、こうした兄、こうした妹が、まだ何百万とおることを思召し頂きまして、我が敬愛するところの、而も第一回の新しき歴史をここに創造しつつある我が参議院が、滿場一致を以てこの感謝決議し、引揚促進の案を決議いたしますときには、必ずや天なる偉大なる絶対者も應えてくれるでありましよう。まして況んや片山総理を初め政府諸公が、この議会と力を合せて、この問題の解決に全力を傾倒せられますときに、必ずや期待すべき結論を想像することができると信じます。以上提案理由説明いたしまして、滿堂各位の御賛成を切にお願いする次第であります。(拍手
  14. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 討論の通告がございます。淺岡信夫君。    〔淺岡信夫君登壇拍手
  15. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 只今、本参議院引揚同胞に関する特別委員会矢野委員長より微に入り細に亘りました御趣旨説明を拝しまして、私は日本自由党を代表いたしまして、心から賛意と敬意を表するものでございます。  今日我が参議院におきましてこの問題がとり上げられ、今正に全各位の御審議の結果、この決議案が採択されようといたしております。又一方衆議院におきましては、特に本日本会議が開かれまして、同樣にこの問題がとり上げられ、而も決議されんといたしております。この立法府、國会におけるこの動きは、北は北海道、南は九州、この全國津々浦々の國民総意の結晶であると私は信ずるのであります。と共にこの決議がやがて地を打ち、天に通じ、連合國各國の多大なる御好意をより以上動かし得ると固く信ずるものであります。今より滿二年前、冷嚴なる敗戰の事実を知り、終生忘れ得ざる陛下のラジオを私は大陸上海にありまして聽きました。そのときに蒋委員長からの暴に報ゆるに徳を以てせよというこの名放送を、私は上海において聽きました。集中区におりました私たち、海外におる六百四十余万の同胞はらからが、虚脱状態にあつて、果して懐かしい祖國の地がいつ踏めるか、祖國の山河にいつ見ゆることができるか、四年かかる、五年かかる、否六年かかるというようなことが集中区の声でありました。ところが丸二年の今日、この六百四十余万の中、五百五十余万がこの祖國の大地を踏みしめておりまするこの現状思いまするときに、私は連合國各國の多大なる御好意感謝の誠を捧げたいと思う者であります。私は二月の初めに中國代表朱世明中將に在外同胞に関するお話を種種いたしました。ところが靜かに聽いておられた朱代表、私は氏の來るのを知りませんでしたが、ところが三月の六日の東京都の新聞を見まして、実に感激措く能わざる一事に遭遇したのであります。当時の東京都の新聞、これは日本経済新聞その他にも書かれておりますが、その記事を読んで見ましよう。「わが引揚復員対策討議、対日理事会、第二十七回定例対日理事会は五日午前十時から丸ノ内明治生命館開会ビシヨツプ臨時議長司会の下にマクマホン・ポール英テレヴイヤンコ蘇連朱世明中國各代表出席、中國最初提案による引揚復員の諸対策及び計画議題として討議行つた冒頭朱世明中國代表議題提案理由として復員引揚対策日本社会経済に及ぼす重大影響を指摘し次のように述べた。本問題に関する日本政府関心は、第三者の我々から見れば非常に不十分と思われるが、本日の問題がまたまた本理事会で論議されることにより、日本政府のみならず日本國民全体の注意を喚起することを望んでいる。とにかく過去において、本理事会は一部から單なる各理事國宣傳機関或いは討論会であるとの批判を受けているが、本日の議題の論議に当つて十分檢討を加え、我々連合國がいかに日本の問題に対して関心を持ち、ポツダム宣言の各項を完全に遂行すべく努力しているかを、日本ばかりでなく世界に明示すべきである。これに対しビシヨツプ臨時議長は、朱中國代表の熱意ある発言に應え、一時間半に亘り詳細に引揚復員問題に関する総司令部並びに日本政府の採つた処置を説明、終つてマクマホン・ポール英代表は、本問題の重要性に鑑み更に檢討を加える必要ありと思うので次回に持越したい、と述べたが朱中國代表は、必ずしも次回と限らずいつでもこれを再審議することにして如何、と提議、各理事これに賛成、同十一時三十分散会した。」私はその後更に朱世明代表にお目にかかりまして、その当時の模樣を詳細に聽きました。私は今日六百四十万のこの在外同胞の中、その九割までが二年経たずして今日五百五十余万余、九割になんなんとする数が還されたということに対しまして、連合國各國に対して、深甚なる敬意を捧げたいと思う者でございます。(拍手)併しながら靜かにこの現実を見ますると、未だ北に南に九十五六万、百万になんなんとするはらから、お互の同胞がおります。この人たち祖國の山河を夢見つつ、或いは一家の支柱を失つた妻が、夫の帰りを待ち侘びておりまするその心情、老いたる母が我が子の名を呼び続けております心情、或いは又頑是なき子供が、私はお父さんの顔を知りません、戰爭も済んだ今日、二年にもなんなんとしておる今日、私はお父さんの顔を知らない、僕の友だちはお父さんと一緒に映画も見た、或いはどこどこに行つた、僕のお父さんは何故帰つて來ないんだろう。こういうことを聞くにつけ見るにつけ、胸の張り裂ける思いがいたすのでございます。(拍手)私はどうしてもこの百万になんなんとする同胞に、この冬越さしめてはいけない、どうしても一刻も早く引返えさして貰いたい。これには全國民の結集したその総意を立法府に反映せしめて、そうして連合國に要請する。これ以外に私は途はないと思うのであります。諸君各位の驥尾に附して私は今後共この問題に勇往邁進いたしたいと思う者でございます。引揚問題に関する幾多のエピソードはあります。私はその一を紹介いたしまして降壇いたしたいと存じます。  私の郷里廣島、廣島の新聞、中國新聞に載つておりました一エピソードで、あります。一挿話であります。南方から復員して來た引揚の列車が、今將に廣島の駅頭に著かんといたしました。列車の中におる復員者が、おい、見ろ、原子爆弾でやられた廣島だ。おい、廣島を見ろ、家が建つておるじやないか。あの家が建つておるじやないか、あの数を見ろ、廣島は復興して來た。七十年間草一本も生えないと聞かされておつた廣島、世界的に話題になつておる廣島、その廣島があんなに立派に建設されておるじやないか、おい、見ろ。誰が言うとなく、誰が集めるともなく集つた金が数百円、汽車が廣島駅にぴたりと停つた。つかつかと降りた七、八人の人たち、一人の代表者が駅頭におりまする助役の前につかつかと出て行つて感謝します。私共は南方から引揚げて來た復員者です。原子爆彈でやられた廣島が、こんなにまで建設されておる、立ちのぼる朝餉の煙を見たとき、私共は民主日本、平和日本のその曙を見ました。私共を日本の建設に挺身さして下さい、これはほんの僅かでありまするが、私共の貧者の一燈。助役は驚いて、皆さん御苦労さまでした、本当に御苦労さまでした。よくお帰り下さいました。引揚復員者の皆さんでは、そんなものは受取れまん。いや受取つて下さい。受取れません。爭つております中に列車は発車した。代表はその数百円の金をプラツトホームに置いて走り、列車に飛び乗つて、しつかり頑張つて下さい我々も頑張るぞ——、しつかりやれ——、列車は出て行く、その列車の後ろ姿を見ておつた助役の頬は、熱い涙で濡れたのであります。この挿話を見ました私は、その後廣島駅におきまして、その助役の人たちから親しくその話を聞いた。諸君、將校と雖も、引揚者は五百円、下士官、兵隊に至つては二百円、三百円、而も自分が郷里に帰つて、家が戰災で燒けておるかも知れません。明日の金がどうなるか、明日の職業がどうなるか、そういうことを顧みる暇もなく、この日本を建設したい、その一心から集めた数百円、私はこの帰つて來る人たちの氣持、迎へる人たちの氣持、一廣島駅頭の小話ではございまするが、これが凝つて平和日本、民主日本の建設復興であると信ずるものであります。私はこの八月十五日を期しまして、皆さんが御参画願つておりまする同胞救護議員連盟、これが外廓團体に呼び掛けまして、今日は北は北海道から南は九州の果まで、全國各地に膨湃として引揚促進の大会が開かれておる。院外において然り。院内においては、今日参議院衆議院におい決議案が上程され、今將に可決されんといたしております。私はこの一本になつた願い、全國民七千余万のこの悲しき願いが、地を打ち、天に轟き、必ずや実現するものと固く信じておる者でございます。どうか議員諸公の今後における御鞭撻をひたすら願いまして、この問題解決に一段の御盡力をお願いいたしまして、私の賛成演説に代える次第でございます。(拍手
  16. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 河崎ナツ君    〔河崎ナツ君登壇拍手
  17. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 只今在外同胞引揚に関しまする感謝と、その引揚促進に関しまする決議に対しまして、私は社会党を代表いたしまして賛意を表したいと思う者でございます。日本には曽て身上相談時代がございまして、私もそれに参加しておりました一人といたしまして、七万通程の手紙を受け取つた者でございます。それらの相談の九九%までは主婦、母親、又勤労婦人などの社会生活、家庭生活においての封建的な重圧にひしがれました歎きの声でございました。それらが反映いたしまして、人事調停法が置かれまして、そうして今度は調停の上に婦人調停委員が又全國に置かれまして、実際問題といたしまして取上げておつた次第でございます。ポツダム宣言の受諾と共に、今日私ども女を主といたしまして、人民の生活が明るい新らしい立場を示されましたので、曽てのそういう相談内容が今日は殆んど少くなりましたが、新たな相談内容、それが今日國民の新たな歎きといたしまして、在外同胞の方への限りない心遣いの数々の相談が、又新たに私が到る処で受取つておることでございます。そのために私は村の藪蔭の小さな家に、老夫婦の侘びしい生活の途の立て直しをはげましに出かけて行つたこともございますし、又そのために私は三人の子供を抱えて、夫の留守を守つておりました裏町のおかみさんの、子供は託兒所に連絡をつけ、おかみさんには職業の世話をしに出かけましたこともございます。又そのめに私は、娘を雄々しく嫁として送り出しましたばかりの母親の、狂わんばかりの驚き、歎きをはげましに出かけました。在外邦人六百五十万人を囲んでの家族縁者の数々の歎き、悩み、そういうふうなものを相談内容といたしまして、私が到るところで受取つたのでございました。ですが、連合諸國はそれらの在外者に対しまして、許す限りの待遇を與えて下さることをおいおいに知るようになりまして、分けても連合國が船、車を整えまして、日に日に帰還を実施され出しましてからは、歎きの相談はぐんと減りまして、又感謝の心がだんだん増して來るようになりました。すでに五百五十万人までも帰還を実現されました。國民感謝は言葉では盡せません。私の老いたる兄も二人の子供に手を引かれまして、妻と三人の子供の骨を抱きまして、昨年九月二十七日に帰らして頂きました。又私の一人の兄嫁は、夫の骨を抱いて昨年の六月の三十日に大陸から帰らして頂きました。沢山の教へ子の中で一つの例を申しますれば、幼い三人の子供を女手に抱えまして、夫を残さなければならんことになりまして、今年の四月二十一日に北方から帰らして頂きました。又親しい友だちは丁度壞れ易いガラス器のような七十歳の老母と二十歳の娘を連れまして、昨年の六月に私の隣の家へ夫を残して帰つて参りました。今は皆平和に、一心に立ち上るために働いております。私の近い周囲だけでもこの明るさでございます。帰還者五百五十万人を囲む國内到るところの明るい生活感謝生活はどんなでございましよう。ですが、私の教へ子の夫、親友の夫、私の妹の長男はまだ帰らして頂いておりません。こうした故國の空を望みつつ、多くの帰らして頂けない同胞が、尚百万人近くもございますという報告を受けております。この人たちは、先程矢野さんの言葉にもございましたが、この冬を恙なく越せるかどうかと、この人たちに繋がります國内数百万の縁者たちの憂慮を思いますと、私たちは尚胸の塞がるのをどうすることもできないのでございます。どうか尚残留するこの人たちが、この年内に帰還を完了させて頂きますように、連合國の格別なるが御配慮を私は謹んで懇請申上げたいと存ずる者でございます。(拍手)それにしましても、この帰還人々がともどもに平和日本の建設者として、しつかり立ち上れますように、私ども又國民も、矢野さんのおつしやいましたように、しつかり受入れ態勢を拵えなければならんことも勿論でございますが、政府当局におかれましても、施策を講じて下さることを私は願いたいと思うのでございます。御存じのように引揚者を喰い物にして、親方だけの新円肥りはないでありましようか、(拍手)又貿易再開に直面いたしまして、見返り品作製に動員されております多くの帰還婦人、その帰還婦人の人の技術と労力を、ほんの小遣銭ぐらいで追つ拂らいまして、そうして企画者、経営者が新円成金を目論んで、諸方に暗躍しておるのを、政府はいかなる手をお打ちになるのでございましようか、私らはそのことも考えて参りたいと思つております。(拍手)先日政府御発表の経済緊急対策第八に勤労者で組織する生産組合的な企業形態を制度化して、その助成につとめたいとございましたが、政府は今こそ速かにこの策を実施推進して下さるべきではないでございましようか。これはお考え願いたいと思います。  以上謹んで連合國への感謝と、懇請の心を披瀝いたしまして、併せて私ども國民の決心を語り、又政府対策促進を望んで止まないのでございます。これを以ちまして賛成の心を述べさして頂きます。(拍手
  18. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 中野重治君    〔中野重治君登壇拍手
  19. 中野重治

    ○中野重治君 日本共産党はこの決議案賛成するものであります。昨年この問題を他党に率先して取上げ、他の党派の諸君と共に國民大会をこの問題に関して開いた我々は、今日すでに数百万の同胞引揚げが完了したことを他の党派の諸君と共に心から喜び、又ここまで事を運んで下すつたところの連合諸國の盡力に対して、やはり他の党派の諸君と共に深く感謝したいと思います。併しながら我々の感謝は嚴粛でなければならない。すでに完了した数百万人の引揚げについて我々が感謝し、又更に新らしく百万に近は人々引揚げについてお願いするというのである以上、引揚げて來た数百万人を我我がどういうふうに遇して來たか、又新しく引揚げるべき人々に対して我々がどう迎える用意があるか、これを我々は考えて見なければならない。若し我我が引揚げて來た多くの人々に食う物、着る物、住む所、仕事、そういうものを十分に與えていないとすれば、又新らしく迎えるべき百万近い人々に対して十分な用意がないとすれば、更に正確に言えば、彼らに食う物、着る物、住む所、働き甲斐のある仕事を與えるために、それを十分にやつていないところの現政府に対して、正しい批判の用意がないとすれば、我々のこの決議案はうつろなものとならねばならんと思います。引揚げて來た数百万人、又引揚げるべき百万人という人々がどういう人々であるかということを我々は考えなければならない。その大部分について言えば、中にはいかがわしい者もあるけれども、それは別であつて、大部分人々は、第一に、天皇制の野蛮と帝國主義的侵略戰爭の害惡とを、犠牲を拂つてつた人々である。(拍手)第二に、彼らは諸民族、分けても民主主義諸國家生活、社会、政治を苦労して知つて來た人々である。即ちこの人々日本の民主主義革命を仕上げ、侵略戰爭の復活を防ぐために、特に貴重なる資格ある人々と我我は考えるのであります。そこでこの人々に、この意味での彼らの力量を十分に発揮して貰うことこそ、これから日本がやらねばならん大きな仕事の一つであると我々は考えるわけであります。(拍手)けれどもそのためには、この人々生活の土台をしつかりと與えねばならない。衣食住、働き甲斐のある仕事を與えなければならない。過去の三つの内閣がやつた働き振りを見ますと、この点で非常に不満足であります。そうして現内閣のこの点についてこの働きが、又やはり前の三つの内閣のやつたコースにさも似たコースを辿つておることを、誠に残念な事実と我我は考えるわけであります。現に政府は僣在、顯在一千万人の失業者を作る準備を進めておる。又國立病院を有料にして、多くの戰爭犠牲者を治療中の病院から叩き出そうとする準備を進めておる。特に許すことのできんのは、引揚げて來る我々の同胞の子供たちをも含めた全日本の青少年に対して、太平洋戰爭の責任者は誰であるか、太平洋戰爭の性格は侵略的なものであるということを明らかにするところの民主主義的な教育の仕事を疎かにしておることであります。(拍手)そのため、これは残念なことでありますが、我が青少年の間には、例えば中國とその民族とに対する全く誤つた昔ながらの考が未だに残つておるのであります。我々はこれを明らかに認めなければならない。そうして特に言論方面の追放者の処置を現政府が未だ講じていないことが、更にこの状態を惡化さしておる。若し我々が國民を戰爭に精神的に駆り立てた元兇、彼等の追放をサボタージユしつつ、無数の戰爭犠牲者を顔色も変えずに迎へ入れようとする政府を無批判に許すとすれば、我々は、我々のする感謝決議案を我々みずから裏切るものと言わなければならない。若しこういう事情をこのままに許すとすれば、あらゆる税金と同樣、平和條約によつて法制化される賠償の義務も、戰爭によつて儲け、敗戰によつて更に設けた上の方の手合には必らず薄く、戰爭によつてすべてを、或いは殆んどすべを失つた下の大衆には必ず厚く振り当てられるに違いないのであります。これでは決して民主主義の完成ということは望まれない。軍國主義、侵略主義の絶滅ということは望めんのであります。(拍手)  ポツダム宣言第九條は、日本の軍隊が完全に武装を解除された後、それぞれの家に帰り、そこで平和且つ生産的な生活を営む機会が與えられるのであろうということを記しております。このことを妨害するすべての政府、すべてのグループを駆逐して、軍國主義、侵略主義を絶滅し、民主主義の完成のために精進することこそ、我が國会全員の神聖な義務だと我々は考えます。(拍手日本共産党は、かかる政府、かかるすべてのグループを、働く全人民と共に徹底的に駆逐する用意あることをここに確認することにおいて、この決議案賛成するものであります。(拍手
  20. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 木内キヤウ君。    〔木打キヤウ君登壇
  21. 木内キヤウ

    木内キヤウ君 民主党を代表して八月十五日、日本國民が心に深く忘れることのでない八月十五日、平和愛好の國民に生れ更つた八月十五日、又今日衆議院参議院において一日も忘れることのできない戰災の中でも、最もみじめな罪を背負つたところの同胞の、今尚百万異境にあるその同胞引揚げのために、参議院全員の方が必ず満場を以て賛意を表し、そうしてこの上程された案を御可決下さることと信じて、自分の党の賛成を表すると共に、今胸が震えております。五百五十万、本当に戰災の、異國で以て悲惨な生活が繰り展げられました私たち同胞が、連合國と、司令部との人道的の、ポツダム宣言による御趣旨、又格別のところの御厚意によつて帰國することができました。郷里に何はともあれ帰つて生活が繰り展げることができたことは、本当に感謝感激、終生忘れることのできない私ども日本國民の御恩だと感じております。本当に平たい言葉で、私たちの言い現せない言葉で、有難うございます。だがまだ百万故國に帰り得ないで、家庭の人にならないで苦しんでおる者のあることを、私は殊に身近に自分がその仕事に携わつた関係で忘れることができません。安心した生活、信じて夜眠つたときに、先生先生、眼を開いて見ると、私子供がおりません。けれども、教え子が私の耳の許で先生と呼んでおるのは、私が曽て海外に発展しろと送り出した子供でありました。又父や老いたる母がその子を案ずると同じように、愛しい夫を妻が恋うると同じように、私はどうぞ日本國民が、今残つておるところのあの同胞のために大きな力と、それから政府がそのためにあらゆる万全の策を講じて頂きたいということを念願して止まない一人でございます。今日矢野先生がこの案を上程なさり、又衆議院においても先ず滿場一致可決され、そうしてこの感謝引揚の促進運動が成立すると、あの百万の残れる者がその胸に響くところの喜びは、どんなであろうかということを信ずるとともに、残つておるところの、或いは縁故を持つところの日本國民が、この決議が本当の実行になつて花が咲き実がなつたときは、どんな喜び、そうして再建日本の希望が一層の明るさを持つものではなかろうかと信じております。政府のお力、そうして國民の輿望を担つて立ち上つたところの皆樣のお力で、本当に議場における賛意だけでなく、実現における賛意を表して頂きたいということをお願いする次第であります。(拍手)  終りに、皆樣方のお机の上に堆くこういう歎願が來ておるであろと思われます。これは私の党の高知からお出になつた方の机の上に集められた歎願書であります。特別委員のお前の方にこれを廻すからと言つて、今朝程頂いたのであります。その中の一くさりだけ一つお耳を汚して置きたいと思つております。  「私共留守家族の中には、戰災又は震災にて無一物となり、幼兒を抱えて赤貧の中に帰らぬ夫を恋うる若き妻あり、天災蹂躙の陋屋に一人淋しく父を待つ哀れな孤兒あり、更に二子を戰野に失い残る一人子を待ち侘びつつ田畑を守る老いたる母あり、世相の混乱、経済状況の惡化の中に杖とも柱とも頼む肉親を求める家族の心情誠に切なるものがあります。」どうぞ一日も速く引揚のできますようにということを御賛成、御可決を願いたいと思います。(拍手
  22. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 星野芳樹君。    〔星野芳樹君登壇拍手
  23. 星野芳樹

    ○星野芳樹君 私は無所属懇談会を代表いたしまして、只今上程せられました在外同胞引揚に関する感謝と、その引揚促進に関する決議案に対しまして、心からなる賛意を表する者であります。更に未だ帰らざる肉親を待つ留守家族に推されて本院の議席を汚し、又幾たびか引揚促進を切願する留守家族の息詰まるような大会に参列いたし、又あの子供を背負つたおかみさん達と共に、幾たびか街頭を練つて、歎願行進に参加した私として、今日ポツダム宣言受諾滿二年の意義ある記念すべきこの日に、衆参両院日を同じうしてかかる決議案の上程され、か弱き留守家族の血の叫びは、ここに遂に國論として取上げられるという感謝すべき事態に接して、誠に目頭の熱くなることを感ずる者であります。(拍手)  この機会に私が特に強調いたしたいことは、この感謝懇請は、單に外交辞令的なものではなく、怨みに怨みを以て報いざるという大精神を以て、連合國がすでに五百五十余万の同胞を、絶大なる精力を費されて送還されたことに対する感謝の情は、実に私どもの世界観をも変革せしめる底のものであり、又未帰還同胞本年中に帰して頂きたいという懇請は、こればかりは何としても叶えて頂きたいという切実なる懇請であるということであります。それは終戰滿二年を経て尚異境に疲れたる同胞に、三たび冬を越させるのは情として忍び難く、我々はこれら同胞を迎え入れて、乏しきを割いても共に國土再建に努めたいという至情に滿ちた懇請であると共に、又私ども心から平和國家を建設せんと欲する者の、止むに止まれん懇請なのであります。我々はいかなる困難の下も、平和國家を建設せんと決意しておるものでありますが、日本はあくまで武装を放棄して、平和國家として立つて行くべきであるという思想が、眞に全國民の血となり肉となつておるとは、未だ確言できないものがあると思います。この時に当つて平和國家が平和的手段を以てしては、遂に國民の生命をも守り得なかつたとしたならば、その結果はどうなりましようか。(拍手平和國家が平和的手段によつて國民の福祉と生命を守り得るということを実証されてこそ、全國民の真に希望を持つて平和國家を迎える氣運が釀成されるものと信ずるものであります。この意味において平和國家を本氣で建設せんと欲する私どもは、百万の同胞に三たびの冬を越させることなく、いかにしても今年中に全員引揚げせしめられたいと懇請せざるを得ないのであります。  私は、我々が永久に武装を放棄して、平和國家を建設して行くということは、單に理想として崇高であるのみならず、又これを実現し得る歴史的條件は、すでに與えられておると考えるものであります。これは科学の発達により、原子核内に包藏されておる巨大なエネルギーの開発法は日進月歩し、若し世界に再び戰爭が起り、これを破壞的武器として用いたならば、その惨禍は測り知り得ず、実に人類滅亡も免れ難いという冷嚴な事実に世界は直面せしめられておるからであります。故に世界の有職者の何とかして戰爭を避け、平和を保ちたいという切望は、以前とは違つて眞に迫つたものになつておる。この故に我々も平和國家として立ち得るし、世界の平和も保たれ得ると考え得ると思うものであります。併し理論の上からはそうでありますが、一方日々報ぜられる複雜多岐なる世界政局の動きを見ますときに、大丈夫世界の平和は永久に保たれると確信し難いものを感ぜざるを得ないのを悲しむものであります。併しこの度連合國が我々の懇請受入れられて、あの舞鶴の港に、函館の港に、百万の若人の帰り來る姿が続々と現われましたならば、これこそ世界恆久平和の保たれる明かなる萠しが現われたと、声を大にして叫んでも誤りないものと信ずるものであります。(拍手)これを以て安んずることなく、更に世界恆久平和の維持のために我々は不断の努力を拂うべきは勿論でありますが、連合國ポツダム宣言をその文字の上のみならず、その精神に徹して遂行され、我ら非武装民族の切望を容れて百万の生命を送り還して下さつたならば、世界に信義が打立てられ、人道は行われるということが明らかにされ、ここに世界文化史上不滅の金字塔が打ち立てられるものと信ずるものであります。世界に再び大戰が起これば人類は滅亡の外なく、戰爭を廃絶し、恆久平和が保たれるためには、先ず世界に人道の行われねばならないことを認めれば、この海外にある百万の若人を還して頂きたいという懇請は、單に情として止むに止まれぬ懇請であり、平和國家建設のための必死の懇請であるばかりでなく、又実に人類の存亡をかけたる懇請であるというても過言でないと考えるものであります。最後にポツダム宣言により要請せられたる日本の民主主義の徹底が眞に遂行されておるか否かを省みるとき、未だその足らざるものを恥ずるものでありますが、これでは更にかくのごとき懇請をするのはおこがましいじやないかという論も出るかと思いますが、私共はこの懇請連合國が聞き届けられることにより、日本の民主化は拍車をかけられ、我々民主化の徹底を望む者は勇氣百倍し得るものと考えるのであります。(拍手)以上申述べた理由により、乏しき中に同胞の苦難を忘れ得ぬ人々の子として、平和國家の建設と世界恆久平和を切望する平和主義者として、日本の民主主義者として、私はこの決議案に心からなる賛意を表するものであります。(拍手
  24. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて討論の通告者は終りました。討論は終局したものと認めます。これより本案の採決をいたします。本決議案賛成諸君起立を請います。    〔総員起立
  25. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 総員起立と認めます。(拍手)よつて決議案全会一致を以て可決せられました。内閣総理大臣より発言を求められました。許可いたします。片山内閣総理大臣。    〔國務大臣片山哲君登壇
  26. 片山哲

    ○國務大臣(片山哲君) 只今滿場一致を以て可決せられました本決議案に対しましては、政府はもとより諸君と同樣賛意を表するものであります。只今まで連合軍の好意によりまして無事帰還することを得ましたことに関しましては、深く感謝の意を表すると共に、尚残留されておりまするところの氣の毒なる同胞百万人の帰還につきましては、諸君と共にできるだけ早く促進の実を挙げたいと考えておるのであります。諸君の熱心なる御演説を拝聽いたしまして非常に感銘いたしました。この問題は、戰爭で犠牲を受けた尚生々しき状態を続けておられまする最後の百万人に対する深き國民的同情であると思うのであります。この在外同胞引揚促進に関しましては、政府諸君の意を体し、國民の意向に則りまして、できるだけの手を盡したいと考えております。一にこれは國民の温かき同情と深き理解によつて、その成果を挙げ得るものであると考えておるのであります。どうか諸君は党派を超越し、或いは理論や條件によらずして、同情と理解によつてこの問題が効果を挙げ得るように御協力願いたいと思うのであります。(拍手政府は必ず諸君の意を十分に伺い、且つ又國民の考えておりまするこの國民的同情を実現することに決して躊躇しないものであるということを、ここに明らかにいたすものであります。(拍手
  27. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて休憩いたします。午後は二時に開会いたします。    午後零時五分休憩      ——————————    午後二時十七分開議
  28. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 午前に引続き会議を開きます。日程第一、皇室経済法施行法案、(内閣送付)の審査を付託するため特別委員会設置の件。
  29. 北條秀一

    ○北條秀一君 只今議題となりました皇室経済法施行法案審査につきましては、二十名の特別委員を設け、その審査を付託するの動議を提出します。
  30. 天田勝正

    ○天田勝正君 北條君の動議に賛成いたします。
  31. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 北條君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。特別委員の氏名を参事をして朗読いたさせます。    〔宮坂参事朗読〕  皇室経済法施行法案特別委員    清水 武夫君  田中 利勝君    中村 正雄君  山田 節男君    今泉 政喜君  徳川 頼貞君    中川 幸平君  中山 壽彦君    大隈 信幸君  大島 定吉君    櫻内 辰郎君  岡本 愛祐君    河井 彌八君  小宮山常吉君    島津 忠彦君  島村 軍次君    寺尾  博君  徳川 宗敬君    山内 卓郎君  川上  嘉君      ——————————
  33. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 日程第二、日本國憲法八條規定による議決案内閣送付)の審査を付託するため特別委員会設置の件。
  34. 北條秀一

    ○北條秀一君 只今議題となりました日本國憲法八條規定による議決案審査を付託するため特別委員会設置の件につきましては、只今設けられました皇室経済法施行法案特別委員に併せ付託するの動議を提出いたします。
  35. 天田勝正

    ○天田勝正君 只今の北條君の動議に賛成いたします。
  36. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 北條君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  38. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 内閣総理大臣より発言を求められております。片山内閣総理大臣。    〔國務大臣片山哲君登壇
  39. 片山哲

    ○國務大臣(片山哲君) 私はこれからクレジツト設定に関する問題につきまして御報告いたしたいと思います。これは昨日機会を得ましたならば、衆議院同樣、諸君に御報告いたす予定でありましたが、その機会を得ませんでしたので、本日改めて諸君に御報告いたす次第であります。  数日前の極東委員会の指令に基ずく連合國総司令部の発表によりますれば、日本が保有しておりまする金その他の流動資産を担保といたしまして、特別の貿易基金が設定さるることとなり、それを基といたしまして、新たに資金を借り得ることとなつたのであります。その総額は五億ドルに上るということであります。これは元來賠償の対象となつているものを暫らくの間動かしまして、日本の平時の経済回復の誘い水にしようという、全く破格の好意に基ずくものに外ならないのであります。私は先ず諸君と共に、我が國に寄せられておりまするところの連合國の深い同情と援助の熱意に対しまして、心からなる感謝を捧げたいと思うのであります。(拍手)殊にこのために並々ならぬ努力を重ねられましたる連合國総司令官マツカーサー元帥に対しましては、國民と共に絶大なる謝意を表したいと思うのであります。(拍手)先きに政府は経済実相報告書を以て明らかにいたしました通り、戰爭によりまして國土を荒廃させ、基礎的な生産力は疲弊いたし、あまつさえ敗戰と共に健全な経済秩序をも混乱せしめたのであります。かような我が國にとりましては、経済をその直面する破局から救いまして、これを再建の方向に導くことが最も必要なことと思うのであります。これがためには、民主的に経済秩序を立て直すと共に、先ず輸出を促進いたしまして、これによつて食糧と枯渇いたしておりまする復興資材とを外國から輸入を仰ぐ以外に途はないのであります。  終戰以來、正常な生産物の外、過去の蓄積や、原材料、素材まで手当り次第に輸出に向けて來たに拘わらず、今日までのところ、輸入は輸出の三倍に近い状態でありまして、國内生産の不振と更に輸出の不振という惡循環がありまして、このままではどうしても急速な解決を見出すことが至難な状況に置かれておるのであります。かような困難な状態に置かれておりまする際、御承知のように本日八月十五日を期しまして、貿易使節團の來朝によりまして、民間貿易再開の第一歩が踏み出され、日本國民は一同非常に喜んでおるところでありまするが、かような際に、はからずも今回これと時期を相同じういたしまして、輸出の原材料輸入のための資金の途が開かれましたることは、再建の苦難にあえいでおりまするところの我が國民にとりまして、誠に旱天に慈雨を得た思いをいたす次第であります。(拍手)由來勤勉を以て世界に認められておりまする我々日本國民は、必ずやこの快報に蹶起いたしまして、この好意に感激いたしまして、先ずみずからの力によつて貿易の振興を図り、以て生産の増強とインフレの克服とに邁進するでありましよう。実に我が國は終戰以來滿二箇年にして、ここに初めて経済再建の曙光を見ることを得たと言い得るであろうと思うのであります。(拍手)  併しながら我々は、ここで今回の基金の持つ意味を冷靜に考えて見なければならないと思うのであります。第一に、それは決して無償で貰つたものではないということであります。経済再建のための呼び水として、定まつた期間一時融通して貰つたものに過ぎないのであります。從つて與えられた金額と期間とをいかに我々が活用するかということによつて、初めてそれが再建に大いに影響して來るということを考えて行かなければならないと思うのであります。  第二に、それは何でも欲しいものを自由に購入できるというものではなくして、輸出品を製造するために必要なる原材料、資材を購入するために與えられたるものであり、定まつた期間の中にこれを製造輸出いたしまして、その代金から返済するという形で同轉するという点であります。從つて輸出の相手方を満足させることのできる立派な品質を持つた品物が急速に生産され、それが確実に輸出されなければならないという点を特に留意しなければならないと思うのであります。このことは、今回の基金が我々に取つて大きな喜びをもたらすのみでなく、又同時に眞劒な反省と決意とを促すものであるということを意味すると考えておるのであります。即ちこの基金を活用いたしまして、経済再建を速かならしめるためには、我々は合理的な貿易計画を立てると共に、輸出品の品質向上を図らなければなりません。更にその價格を引下げるために、企業経営の合理化を速やかに断行するの要があると思うのであります。又價格水準の安定を期するために、経済安定の綜合政策を一層促進しなければならないと思うのであります。これらの政策を実行に移す場合には、いろいろの面におきまして少なからざる摩擦を我々は覚悟しなければなりません。併しこれを踏み越えて前進するために、政府はあらゆる努力を惜まない決心をいたしておるのであります。  今日の基金が制定されましたことも、或いは経済再建に対する我々日本國民一致の懸命の努力が國際的に認めらるるに至つた結果であるということを信ずるものであります。(拍手)私はこの機会におきまして、國民諸君と共に、自分の國の問題は先ず自分でこれを処理しなければならない。全力を國民が盡して國家再建の衝に当らなければならない決意を固めるということが、最も必要であるということを深く感ずるのであります。(拍手)その信念の下にますます不退轉の決意を新たにいたしまして、以て連合國から寄せられておりまする限りなき好意と期待とに應えることをここに誓つて、この問題について皆樣に御報告いたしたいと思つておる次第であります。(拍手)      ——————————
  40. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 参事をして報告をいたさせます。    〔宮坂参事朗読〕  今十五日議員から左の議案を提出した。    民間貿易開始並に貿易基金設定に対する感謝決議案  右の議案國会法第五十六條によつて発議する。   昭和二十二年八月十五日発議者         佐藤 尚武         櫻内 辰郎         淺岡 信夫         岡田 宗司         中西  功         佐々木良作    参議院議長松平恒雄殿     …………………………………    民間貿易開始並に貿易基金設定に対する感謝決議  予て日本國民生活の実相を正確に把握せられ且つ公平に判断せられているマツクアーサー元帥は、連合軍の最高指揮官として、連合各國の政策をして、日本國を平和主義の理想の下に復活、再生せしめる為めに、人道的なる指導並に政策の実現に努力せられつつあるのである。既に第二回南氷洋捕鯨の許可並に食糧の大量放出等國民生活にとつて極めて有効、適切なる処置を講ぜられている。しかも、連合軍当局の指示によりこの日八月十五日を期し、民間貿易への途が開かれ、且つ又貿易基金設定の措置をも講ぜられ、我國が國際経済の一環に加えられたことは、洵に新生日本の前途に希望の光明を点ぜられたものというべきである。勿論、この施策が急速に大衆生活の安易を齎らすものでないことについては深き内省を要し、今後全國民の自主的な努力に、まつもの頗る多大なりといふべきである。しかしながら講和條約の締結に先だつて、將來平和世界に伍し、漸次恥しからぬ平和愛好國家たるに絶対に必要な國際経済への参加を、かような早い段階において許容せられることは、日本再建に対する並々ならぬ好意の表現と申すべく、我國民等しく心からなる歓喜と感銘を禁じ得ないのである。   ここに連合諸國に対し衷心より感謝の微意を表明すると共に、我等は終戰滿二年の日を迎えたるこの機会においてポツダム宣言の良心的履行に引続き努力する決意を有するものであることを宣明する。  右決議する。  同日佐藤尚武君外五名より左の議案につき委員会審査省略要求書を提出した。  民間貿易開始並に貿易基金設定に対する感謝決議案
  41. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 只今報告いたさせました佐藤尚武君外五名発議にかかる民間貿易開始並に貿易基金設定に対する感謝決議案本案につきましては、発議者佐藤尚武君外五名より委員会審査省略せられたき旨の要求に接しております。要求の通り委員会審査省略し、この際議事日程に追加し、直ちに本案審査に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。これより発議者に対し趣旨説明発言を許します。佐藤尚武君。
  43. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 本八月十五日を以て我が國の民間貿易再開が許可されたのであります。この機会におきまして、我々参議院といたしまして連合國側の並々ならぬ好意の表現に対して感謝決議をしたい。こういう考から我々発案者において決議案を提出した次第でございます。その案は先程参事から朗読を以て御報告をいたしたのでありまするが、何分取急いでおりましたために印刷も間に合わず、諸君の手許には廻つていないのであります。そこで重複の嫌いはございますが、私から今一應この決議案趣旨を御説明申上げる前に朗読いたしまして、諸君の御考慮を願いたいと考えるわけであります。どうぞお許しを願います。    民間貿易開始並に貿易基金設定に対する感謝決議   予て日本國民生活の実相を正確に把握せられ且つ公平に判断せられているマツクアーサー元帥は、連合軍の最高指揮官として、連合各國の政策をして、日本國を平和主義の理想の下に復活、再生せしめる為めに、人道的なる指導並に政策の実現に努力せられつつあるのである。既に第二回南氷洋捕鯨の許可並に食糧の大量放出等國民生活にとつて極めて有効適切なる処置を講ぜられている。しかも、連合軍当局の指示により、この日八月十五日を期し、民間貿易への途が開かれ、且又貿易基金設定の措置をも講ぜられ、我が國が國際経済の一環に加えられたことは、洵に新生日本の前途に希望の光明を点ぜられたものというべきである。勿論、この施策が急速に大衆生活の安易を齎らすものでないことについては深き内省を要し、今後全國民の自主的な努力に、まつもの頗る多大なりというべきである。しかしながら講和條約の締結に先だつて、將來平和世界に伍し、漸次恥ずしからぬ平和愛好國家たるに絶対に必要な國際経済への参加を、かような早い段階において許容せられることは、日本再建に対する並々ならぬ好意の表現と申すべく、我が國民等しく心からなる歓喜と感銘を禁じ得ないのである。   ここに連合諸國に対し衷心より感謝の微意を表明すると共に、我等は終戰滿二年の日を迎えたるこの機会において、ポツダム宣言の良心的履行に引続き努力する決意を有するものであることを宣明する。  右決議する。  只今片山総理大臣より重要な報告をこの壇上からせられたのでありまして、それは諸君においてお聞きの通りに、この日五億にも上る貿易上のクレジツトを設定する許可を連合軍最高指揮官マツカーサー元帥から與えられたということでありました。このクレジツトの意味がどれだけ大きな役割をなすものであるかということにつきましては、私から喋々申すまでもなく、すでに総理大臣の御説明の中に詳しく出ている次第であります。誠に我が國の將來に対しまして慶賀おく能わざるところのものでござります。先般來貿易再開の問題に関しましては、六月十日附のマツカーサー元帥の声明によりまして、その大要を知ることができたのであります。八月十五日を期して民間貿易の再開を許可する。勿論それにはいろいろな條件が附いておりまするが、とにかく日本が現在までの管理貿易から一歩を進めまして、そうして民間当業者間の自由な商談を成立させるというところまで参つたのであります。このことは日本再建の將來にとりまして、大きな意味を持ち得るものであろうと考えられます。勿論これはそのマツカーサー元帥の声明の中に元帥みずから言つておられるごとく、部分的な解決であつて、全面的な貿易上の問題の解決ではない。全面的な、つまり完全な解決は、講和條約の締結後に持つべきものである。併し條約締結前な能う最大限の措置が即ちこれである。こういう意味のことを言つておられますが、私は正にその通りであつて、占領下の日本といたしましては、これ以上のことを望むわけには参らんと考えておるのであります。すべては講和條約締結後に待つべし。而してまだ講和條約が成立していないに拘わらず民間貿易を再開せしめるという、そういう手段をとられたことに対しましては、連合國としても最大の努力をされたに相違ないと見受けるのでありまして、よしんばそれが部分的の解決でありましても將來性を持つものであつて、つまり日本の貿易の將來がこれを基礎として発表し得るということだけは、何人が見ても明らかなところであり、これ即ち我が日本にとりまして大きな意味を持ち、且つ又國民全般が非常な喜びを以てこのマツカーサー元帥の声明を受けたのであります。(拍手)ただその声明を見たときに、國民はどちらかと言えば單純な考えを以つて、これで貿易が再開されるのであるという喜びを無條件に発表したかのように見受けられました。その後漸次落著きができて考えて参りまするというと、或いは日本國内には今生産が極めて縮小してしまつておる。輸出しようにもするだけの物資がない。商品がない。これでは折角貿易の再開、民間貿易の再開が許可されるにしても、それだけの実果を挙げることはないだろうかという心配がそろそろ出て参りまして、そうして一部にはむしろ悲観的な論さえ行われるようになつたのであります。輸入が伴わなければ日本國内において輸出に向けるべき商品を作ることはできない。これは無理からんことであります。然るに民間貿易の再開と申して、この八月十五日以後、四百名に上る当業者が外國から來られることになつたのでありますが、その人々日本國内における商品、つまり輸出向けの商品を見付けるためにやつて來るのではなからうか。却つてこの人たち日本の貧弱な実情を見せて、そうして失望を招くのではなかろうかということも考えられるのでありまして、輸入の伴わない、つまり資材の、原料の輸入の伴わない輸出というものは、極めて貧弱なものしかあり得ないわけであります。そこで原料の輸入ということが重要視されて参つたかのように私には考えられるのでありまするが、これをいかにすべきか。日本には原料を買うだけの資力もなし、管理貿易の結果も余り現在までのところ思わしくないように聞いておりまするし、いかにして原料を輸入し得るかということが実際大きな問題であつたに相違ないのであります。然るに果然只今片山総理から発表せられました通りに、連合國側においては非常な無理をされても、尚且つ日本にある金その他の宝石類を合せまして、それを基礎として輸入に当てるべき資金を蓄積することを許可されたということになりました。これで初めて我々は輸出にも目鼻がついて來る。日本の産業もこれによつて與り、これによつて輸出に充つべき品物を作ることができるというように考えられて参つたのでありまして、即ち六月十日においてなされましたマツカーサー元帥の声明が、ここに立派に生きて來ることになつたのであります。これは日本國民にとりましては正に大きな喜びであらねばならんのであります。併し我々といたしましては、この際是非反省しなければならんことが多々あろうと思います。輸出の途が開けたといたしまして、それで全部が解決するというわけのものでは決してないのであります。成る程輸出の途が開けたとは申せ、依然として管理貿易であるには相違ございません。本当の意味の自由貿易までに進むにはまだまだ先のことであろうと思われます。併しながら管理貿易の時期が過ぎて、或る日が参りましたならば、それはやはり当業者間の自由意思で以て成立ついわゆる自由貿易が再開されるであろうと考えられまするし、又是非そこまで日本努力しなければならんと考えるのであります。その時のことを私は今から申上げるのでありますが、自由貿易といつて、何でも彼でも安くて良い物さえ作ればどこにでも出て行く。又し得るものであるというように考えるのは、これ又私は非常に行き過ぎておると思うのであります。それは輸出貿易をなすに当りましても、第一の心構えは、日本人といたしまして、平和的な、國際協調的な、漸進的な、そういう考えを以て外國との通商を開かなければならん、こう考えます。実はこの問題につきまして、私は日本にとりまして誠に不幸な実例を目のあたり見ておりましたから、改めて諸君の前にこれを申上げて、そして諸君の御一考をお願いしたいと思うのであります。それはまだ日華事変などの起きない前、昭和九年頃から十年、十一年頃にかけての話でありましたが、日本の商品が非常な勢を以て、海外に進出しておつた時代のことを申上げるのであります。当時は日本の國力も充実しておりましたし、又海外市場の開拓という問題に関しましても、当業者は非常な勢を以て、又熱意を以てこの開拓に当つたのであります。日本の商品はとにかく安い。到る処にその販路を見付けることができ、殊に綿布類、雜貨類のごときがそうでありました。遠くはアフリカの内地、南阿方面、今まで日本の商品が入つたこともないような所まで非常な勢を以て進出して行つたのであります。綿布のごときは正にその尖端を参りました。而して市場の開拓に身を以て当つておる若い商人の人たちに当つて見まするというと、正に当時で申しますると爆彈三勇士のような意氣込を以て、そして南阿、アフリカの瘴癘の地まで飛び込んで行つて、そして市場を開拓しておつたのであります。その人たちの決意たるや正に涙ぐましいものがあつたのは事実であります。併しながらその人たち若しくは日本の当業者たちは、自分たちがそれだけ突進して行けばどこまでも開拓し得るということは知つてつたけれども、相手方が又これに対應するだけの防禦手段を講じ得るということを知らなかつたのであります。昭和の確か九年であつたかと思いまするが、或いは十年でありましたか、ロンドンで紡績業者の会合がございました。マンチエスターが日本商品の進出によつて非常に損害を受けた当時でありまして、日英両國の当業者が集まつて世界の市場に対して協調をしようということになつたのであります。日本からも著名な当業者が出て参りましたが、併し交渉は成立せず、そのまま未解決に終つて散会をしたのであります。私は丁度その時分パリーの大使をしておりまして、その当業者が帰路パリーを通りました時に会つて話を聽いたのでありまするが、いかにも突進的でありました。相手方の利益、相手方の事情等には一切目もくれず、考慮に入れることを肯んぜず、そして日本の品物を安くさえやればどこにでも進出し得る。日本の品物の販路にのみ力を注いだかのように見えたのでありまして、私はそういう政策は極めて危險である。世の中はすでに自由貿易の時代から離れて保護貿易の時代に移つておるということを知らなければならん。保護貿易が善いか惡いか、自由貿易でなければならんかどうかということは別問題として、実際の世相はそうなつておるということをあなた方は考えなければならん。從つてこの交渉が纏まらなかつたとすれば、相手方は必ずや自家防衞の手段を講ずるに相違ない。而もその打撃を受けるものは先ず日本の商品であるということを私は申したことがございました。果然その後一年か一年半を過ぎまして有名なオツタワの帝國会議となり、イギリス本國並びにドミニオン間の互惠優先的協定が成立つて日本品は殆んど完全に駆逐されてしまうということになつたのであります。これが又今回の戰爭の遠因をもなしたということになつたと私は感じております。今後來るべき自由貿易の時期に入りまして、我々は再び前轍を踏むようなことがあつてはならない。こう私は感じまするが故に、長々しく只今の御説明を申上げた次第であります。  我々はどこまでもポツダム宣言趣旨に則り、世界の平和、國際親善、國際協調、そういう精神で行かなければならんのでありまして、これは單に國際政治上の問題ばかりでなく、國際経済上の問題におきましても同じことでありまして、國際協調主義で行かなければならず、即ち相手方の事情をよく理解して、そうしてその間に我の主張との間に協調点を求める。それが即ち経済事情における國際協調主義であると私は信じます。それならば各國共安心をして日本と取引を継続するわけであります。これでなければ私は日本の將來というものはあり得ないと感ずるのであります。この点即ちこの決議にもあります通りに、この民間貿易の再開が全部を解決するのでなくて、そうしてその間には深い内省を要する問題であるということを書き加えましたのは、その意味でござります。とにかく併し今回の措置が我が國をして平和的な國際生活の中に一員として加えられる素地を作つたということだけは爭うべからざることでありまして、これは又平和條約締結前にそれがなされたということにおいて、我が全國民は大きなる喜びを感じ、その点において連合國軍総司令官であるマツカーサー元帥に対して心からなる感謝を表示するものであります。元帥はすでに先程も述べました通りに、我が國の國情をよく洞察せられまして、そうして國民生活そのものを健全な方向に向けて行くことに対して、完全なる理解を持つてつて下さると私は了解するわけであります。連合軍の最高指揮官としまして、そうして連合國の國策を、我が國に対する政策を、日本の平和主義の理想を復活し、日本をその意味において再生せめるという方向に多大の努力を続けて下すつたのであります。すでに南氷洋捕鯨の問題におきましても、去年に引続き又今年も第二回目の出漁の許可も與えられております。これは我が國にとりまして、蛋白質並びに脂肪分の獲得において非常に大きな意味を持つておるということは、諸君疾くに御存じの通りであります。又我が國は食糧の問題において極めて窮迫した事情の下にあります。すでに米の産地であつたところの昔の台湾、朝鮮からの主食の輸入の途が絶えました今日におきまして、國内においていかに努力をいたしましても食糧の絶対量において不足しておるということは、これ又爭うべからざる事実であります。而して自由な貿易が許されていない今日におきましては、又こういうような占領軍の占領下にある日本といたしましては、どうしても不足分に対しては占領軍の考慮を請わざるを得ないような情ない、実は情ない状態にあるのであります。食糧を外國に乞う。憐れみを乞うというようなことは、一國としてはむしろ恥ずべきことであるに相違はございません。平常の状態におきまして言うならば、日本は断じてそういうことはなさなかつたでありましよう。併し占領下の日本におきましては自由に輸入するということもならず、又資金の点においても、敗戰の結果外國から十分の食糧を持つて來るという力もなし、ここにおいてやはり占領軍の特別な考慮をお願いせざるを得ない状態にあるのは、誠に我が國といたしまして遺憾なことであります。こういう事情をよく洞察されまして、すでに度々食糧の放出を連合軍側としてはしておられたのでありますが、最近におきましては殊に大量の放出を許可せられまして、これによつてこの八月、九月等の危機をどうやら凌ぎ越すことができる目鼻が附きまして、國民一同心から一息ついた、ほつとしたというような氣持でおります。これは諸君疾くに御存じの通りでありまして、又この点において我々は連合軍総指揮官のとられた措置に對して深甚なる感謝の意を表する次第であります。本日は八月十五日、あたかも終戰後滿二年を経た記念日に遭遇いたしました。誠に意義ある日であります。ポツダム宣言の履行を受諾したその日であります。我々はこの機会において再び心を新たにして、そうしてポツダム宣言の良心的履行、完全な履行、これを是非共やらなければならんということをここに誓う次第であります。我が國が再び世界場裡に乗り出しまして、そうして世界の一員として受け入れられるということのためには、どうしても一旦與えた約束、即ちポツダム宣言の受諾というそのことは、完全に履行しなければならんのであります。これが先決の前提であります。申すまでもないことではありまするが、併しややもするというとこの宣言の内容を忘れてしまつたり、忘れることもありますまいが、これを重要視することを忘れてしまつて、ややもすればその履行が完全でないことを恐れるのであります。私はこれだけは是非共やらなければならん。そうでなければ、列國が我々を平和國家として又信義の國として受け入れることができないのでありまして、いつまで経ちましても、我々は依然占領下に置かれ、いつまで経ちましても我々は講和條約の締結、そうして講和條約の締結なるものは國際信義に基ずくものでありますが、講和條約の締結まで漕ぎつけ得ないという悲惨な状況に置かれるものと私は恐れるのであります。でありまするからして、是非共このポツダム宣言履行という約束だけは、できるだけ早く、又できるだけ完全にこれをなし遂げなければならんのでありまして、ここにこの日を迎うるに当りまして、私はこの参議院が再びその良心的履行を誓う。確認するということが是非必要であると心得る次第であります。これが即ち今回貿易再開の又根本をなすものであることは、先程一言申した通りでありまして、ここに心を新たにし、誓いを又新たにするということは、決して徒ら事ではないということを確信しておる次第であります。  以上が私共提案者といたしましてこの決議案を提出した趣旨でございます。どうぞ諸君の御賛同をお願いする次第であります。(拍手
  44. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 討論の通告がございます。一松政二君    〔一松政二君登壇拍手
  45. 一松政二

    ○一松政二君 諸君、本日は先程提案者の申されましたる如く、終戰丸二年の、我々の最も記憶すべき、感慨無量なる日であることは皆樣御存じの通りであります。而もその日を期しまして民間貿易の一部再開、即ち今日以後各國の貿易業者、当業者その他が続々と日本に到着いたしまして‥‥今日までいわゆる管理貿易はあつたのでありまするが、これは殆んど暗夜に手探りをするが如き状態におきましてなされたるところの貿易でありまして、約六年以上世界の市場から隔離されたるところの我が國の当業者は、あらゆる面において市場の実情を把握することができなかつたのであります。然るに今日以後、当業者の渡來せらるることによりまして、その点はいとも細かく向うの希望、或いは流行、嗜好、貿易上に必要なるあらゆるインフオメーシヨンをとることができるのであります。今日まで管理貿易が実施せられておりまして、当業者が今日以後直ちに輸出を増し得るとは考えられないのでありまするけれども、今後におきまして、この当業者の渡來せらるるによりまして、その実情報告によつて益するところは多大なものがあるだろうと思うのであります。のみならず、今回、昨日司令部から発表されましたところの一億三千七百万ドルに上るいわゆる貿易基金の設定であります。加うるに輸出綿布代金その他見返りとなるべきものは約二億ドルになんなんとするということであります。それを基礎といたしまして、いわゆるリボルヴイング・クレジツトの形におきまして、最終は約五億ドル前後の利用を許されるということであります。これは現在資材難にあえぎ、又輸出に用うべき優良なる原料が非常に不足しておるのでありまして、この方面に対して非常なる光明を與えたものと言わなければならんのであります。もとよりこの貿易基金の設定は、或いは一面においては今日まで俗な言葉を以て申上げれば、いわゆる何も彼もかかりうどで商賣をやつてつた、貿易をやつてつたのでありまして、その勘定尻におきましては、いわゆるその自分自身で幾ら残つておるかも知らずに、借り放しの状態であつたのであります。然るに今回これを自立経済に持つて行くための一助といたしまして、そうしてこの基金の設定になつたということでありまするから、考えようによりましては、我々は或る意味において独立の経済を持たなければならんということにも考えられるのでありまして、今後我々はかかりうどの時代よりも独立した経済の立て方として、我々國民は從前よりも一層緊張した氣分で貿易の問題に当らなければ相成らんと信ずるのであります。又この資金の点につきましては、今後続々と渡來せられますところの当業者によりまして、あらゆる日本の実情を把握され、いろいろな形において、いわゆる民間クレジツトというものが許容せらるる端緒を得ますることは、我々の最も期待するところでありまして、必ずや遠からず期間においてさような日の実現されることを私は信じて疑わないのであります。併しながら今日の我が國の現状を以てすれば、果して我が國民は天はみずから助くる者を助ける、みずから額に汗し、朝に星を頂いて夕に星を頂いて帰ると古人の言われたことく、或いは世界の人が日本人を評するがごとく、いわゆる勤勉なる國民と自負することができるかどうか。この点につきましては、私は聊か自信を持たないものでありまして、その点を今後政府は勿論、國民一般としまして、深く我々は反省せなければならんものと信ずるものであります。司令部におかれましては、いろいろの事情があつたにも拘わらず、第二回の南氷洋捕鯨船の出勤を許可せられ、或いは適時食糧の放出を許可されまして、我我の食生活をともかくも今日まで維持し、或いは今後も辛うじて維持し得るあらゆる便宜と御厚意を我々に示されておるのでありまして、この点につきましては皆樣と共に、或いは國民諸君と共に、我々は深甚の謝意を表する次第であります。尚今日いわゆるポツダム宣言の忠実なる履行、言葉は簡單でありまするけれども、いわゆるデモクラシー、これは最もむずかしいのであります。殊にアメリカ流のデモクラシーという言葉は頗るむずかしいのでありまして、これを我々は忠実に履行すべき義務があり、且つ我々は決議案にも述べられましたように、これを忠実に履行する覚悟があるのであります。即ちこの個人の尊嚴と個人の権利と自由、この点につきまして、我々は十分に反省をいたしまして、そうしてこの今日の決議案に我々は十分の反省を以て努力せなければならんと相信ずるのであります。甚だ簡單でありまするけれども、これを以ちまして私の賛成演説に代える次第であります。(拍手
  46. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて討論の通告者は終りました。これにて討論は終局したものと認めます。これより本案の採決をいたします。本決議案賛成諸君起立を請います。    〔総員起立
  47. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて感謝決議案全会一致を以て可決せられました。水谷商工大臣より発言を求められました。水谷商工大臣    〔國務大臣水谷長三郎君登壇拍手
  48. 水谷長三郎

    ○國務大臣(水谷長三郎君) ポツダム宣言受諾滿二箇年目の今日、この第一回國会におきまして、本日を期して許可せらるることになりました民間貿易再開に関しまする連合軍最高司令官の厚意に対しまして、感謝決議をせられましたことは、貿易を主管いたしまする商工大臣といたしましても、誠に感激おく能わざるものがございます。この機会におきまして聊か貿易再開につきましての所信を申述べたいと存じます。  元來我が國の経済事情は高度の貿易依存性を示しておりまするが、終戰後は一層貿易に依存する度合を増して参りまして、今日までの滿二箇年間におきましては、度々政府の発表いたしました統計等ですでに御承知の通り、例えば食糧につきましても、米國よりの輸入食糧によりまして昨年もしの危機をば切抜け、本年の食糧危機も解決されようとしておる程でございます。その他綿花等の輸出品原材料の輸入から、更に本年に入りましては、銑鉄、製鋼用重油等の生産再開用基礎資材の輸入も始まつておる次第でございまして、このような輸入物資の種類と数量の増大に関しての連合軍司令部の厚意ある取扱に対しましては、我々として衷心より感謝に堪えない次第でございます。然るにこの輸入の見返りである輸出はどうかと申上げまするならば、戰前における輸出の大宗でございました生糸の賣れ行きが誠に捗々しくなく、國産輸出品である茶も今年度は必ずしも好調とは申せない状態でございます。本年に入りましては、米棉による製品が三十数箇國に輸出され、大いに今後の発展を期待しておる次第でありまするが、尚且つ今日までに相当額の入超を示しており、殊に米國よりの入超額が大きいという状態でございます。一方國内の事情といたしましては、一日も早く生産を振興せねばならず、そのための資材の輸入も亦又急を要するものがあるのでございます。從つて我が國といたしましては相当内需を切り詰めても輸出に努めまして、必需物資の早急なる輸入を実現せねばならんところであります。日本品の輸出振興につきましては、從來とも司令部におかれては種々盡力せられておりまするが、貿易というものは、やはり賣手と買手とが直接意思の疎通を図ることが必要でございまして、まして我が國のように永年海外市場から隔離されておりまして、最近の世界における需給状態や流行の変遷等が全く分らなくなつておる場合には、このことが特に必要なことでございます。司令部におかれましてもこの点をよく認識せられまして、今年一月二日、商業通信の制限を一部解除せられ、更に今般諸外國から四百名の貿易代表國を迎えて直接商談を行うことを許されましたことは、誠に喜ばしいことでございまして、この結果我が國輸出関係者といたしましては、外國市場の状況、流行意匠の変遷等がはつきり分りまして、何をどのように作り、どこへ向ければ一番よく賣れるかということが見当が付くわけでございまして、從つてこれを機会に相当の増加が期待することができると存じておる次第でございます。政府といたしましても、先般発表の経済緊急対策に引続きまして輸出振興対策の具体化に努力しておりまするが、経済界全般におかれましても、この際特に生産諸條件を整え、價格体系の凹凸を是正して、為替相場の決定と、眞の意味の世界貿易参加への準備期間たらしめるように努められたいのでございます。更に貿易関係業者の方方に対しましては、今般の貿易再開が、日本人及び日本商品の眞價を世界に拡める絶好の機会であることをば十分御認識せられまして、海外貿易代表團を迎えるに当りましては徒らに競爭し合うことなく、品位と誠意を以て接し、良質且つ誠実の籠つた輸出品を提供して下さいまして、この際我が國商品の高い声價を示す礎を築いて頂きたいのでございます。  一言簡單ではございまするが、御挨拶に代える次第でございます。(拍手
  49. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて本日の議事日程はすべて議了せられました。次会は十八日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十四分散会