○松井道夫君
只今岡田君から詳細に亘りまして今日の問題の反対論がございました。由來この問題を論じますには三十分や一時間じや不可能であります。時間の制限があるのでございますからして、要点と思われる点を二三指摘して見たいと思うのでございます。
申すまでもなく私は供出後の自由販賣に
賛成する者であります。(
拍手)私は自由党ではございませんから、決して党派的の多少の感情とい
つたようなものを差挟むことなく、素直にお聽取り願いたいと思うのであります。
私は供出後の自由販賣、これは單に
主食のみなに限らず、生鮮の食料、或いはその他の諸物資にも適用できる。物資によりましては
例外もございますが、
原則として取上げてもいい制度である存じておるのであります。
元來統制は自然の経済
原則に反しまして或る目的の到達を企図いたすのでありますが、これは食糧品についていいますと、結局先ほど自由党の方がいわれたように、生産意欲を阻害いたす結果と相成る。從
つて生産量を減らす結果と相成るのであります。この統制に一面自由の面を附與することによりまして生産意欲を阻害せず、從
つて生産を増大いたいつつ統制の目的を達することができるのであります。(
拍手)この社会状態におきまして自由のみで行くということはできないことは明白であります。併し自由がいけないからとい
つて、ぴんからきりまで統制を貫こうといたす
ところに行過ぎがあるのであります。統制に自由の面を附與するということを考えて戴かなければならないのであります。(「社会党よく聞け」と呼ぶ者あり)敗戦後における
主食の状況を観察いたしまするに、生産の絶対量は遥かに消費に足らず、
國民を賄うに足らず、連合國から相当莫大な数量の
主食を輸入さして戴いておるのであります。我々はこの際におきましてなにに重点を置いて考えなければならないか、勿論絶対量が不足なんでございますから、乏しい物に統制を加えまして、その價格、配給の面の上におきまして統制を加えますことは、これは必須でございますが、併しながら重点は生産それ自体を増大いたすという
ところになければならないのであります。(
拍手)(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)その観点に立ちますれば先ほどいいました生産意欲を振起し、生産絶対量を増大いたします
ところの施策が講ぜられなければうそであります。決して統制を廃止しろとは私はい
つておるのでないことは皆さんの勿論御
承知の
通り、統制を統制として貫く。要するに割当をやりまして、その割当は生産の諸條件を考えまして無理ない割当をいたすのであります。農民はいかに耐乏生活を絶叫いたされましても、その生産物によりまして、汗と泥にまみれまして勤労の結果得ました
ところの、その生産物によりまして農業の再生産に備えなければなりません。又人間の人間性から出ております生活欲求、生命の欲求も或る程度満たさなければならないのであります。割当を無理のない程度にいたしまして、勤労の結果によりまして農民が得ました余剰物は、その農民の
自由処分に委せることこそ、正しい人間性に立脚いたしましたる現実の政治であるのであります。(
拍手)(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)この結果によりまして初めて生産意欲を振起し、生産を増大する。割当の完遂を促進しまして、出廻りを多くすることができるのであります。
諸君、流通面に出廻らない生産物は、こけは画いた餅と同じであります。産地で腐りますお芋は、消費者に取りましては無と同じでございます。このことを十分にお考え戴きたい。勿論
只今社会党の岡田君から述べられました種々の弊害は、これは考えて見なければなりません。自由党の
諸君におかれても、決してそれを野放図に自由にすると言うておら
なつた。(「そうだよ」と呼ぶ者あり)食糧営團々ということを言われたのをお聞き落としあ
つたのじやないかと存ずるのであります。私は岡田君の所論は、要するに供出後の自由販賣に反対します岡田君の所論は、現実の状態に余りに目を取られており過ぎるのであります。私は終戦後直ちにこの制度を実施いたしましたならば、今日この状態に立ち至らなか
つたであろうということを確信するのであります。この間、生鮮食料品につきまして、我が平野力三大臣は、(笑声)供出後の自由販賣を研究されておるというように御
答弁に相成
つたのであります。私は実に年來の主張が採り上げられておる。練達であられる
ところの平野さんに採り上げられておるということを知りまして欣快に堪えなか
つたのであります。これはできるだけ早くその方針を開明いたしまして、できるだけ早く今の割当をやりまして、そうして農民に一生懸命にな
つて作
つて貰い、生産を増大するより外に手がないのであります。岡田さんは
只今現下の状態に目を蔽われておられる。この食糧政策の失敗後、直ちにこの制度を実施いたしまするならば、これは振子が左へ行
つたものを又右の方へぐつと持
つて行くようなもので、そこにどうしても無理がある。失敗後の今日
只今やりますならば、どうしても或る程度の規正を加えなければならんことは、これは当然であります。私は元來、これを実施しなければならないのである。できるだけ早く実施しなければならんものであるということを皆様に訴えたいのでありまして、平野さんに御考慮願いたいと存ずるのであります。
只今直ちにこれを実施するとしますならば、先程自由党の
諸君が言われましたように食料営團の介入を認めることも考えられます。又公共市場を作りまして、そこで賣買させるということも考えられます。或いは指定の業者をして集荷販賣に当らせる。特定の店舗において販賣に当らせる。或いは生活協同組合を活用いたしまして、これに集荷配給せしめるとい
つたような種々の方策が考えられるのでありまして、この際直ちに野放図に自由にしてそれでよろしいと私は主張しているのではありません。
原則として、理論として、それが正しいのであるということを主張するのであります。成るほど英國あたりでは非常に配給制度がうまく行
つておるということでございますが、これは経済の客観的状態と、又
國民の知識水準、思想傾向というものがそれに伴
つているのでありますから初めてできるのであります。今日漸く石炭の公営とかなんとか喧々囂々と言われておるような状態におきましても、
日本におきましてはやはり供出後の自由販賣が本当であると申上げます。ソビエットでもこれと似かよ
つた制度が採られてあるということを聞いております。それによ
つて増産の結果を挙げておるということを聞いておるのであります。時間が参りましたからこれで失礼いたします。(
拍手)