○
政府委員(
山添利作君)
裁判所によるところの
小作調停が、すべての場合とは申しませんけれども、多くの場合にお述べになりましたような
色彩を持
つておることは、我々も実は遺憾としておる訳であります。そこで、そのようなことから、又
土地取上げの
取締等に関しましても、この
夏農林、司法、
内務次官名を以て注意を喚起したこともあります。我々といたしましては絶えず
司法省とは、いわゆる掛合はいたしておるのでありまするが、しかし今の
社会情勢からいたしまして、特に又
農地改革の影響もありまして、未だに
土地取上げという問題はなんら解決を見ておるような
段階に行
つておりません。そこで
建前といたしましてはこの
農地に関する紛爭の
調停は、
農地委員会で処理することを
建前としておるのであります。その判断によるべきことは妥当であるという
方針は持
つておりまするけれども、然らば今の
裁判所による所の
調停を一挙に廃止するかということになりますと、これはそういう
段階ではないと思うのでありまして、一方の
農地委員会による所の運営におきましても、一方の
裁判所による所の
調停を廃止して宜しいという程自信が持てない所もあるわけであります。そこで当面両立で行く。そうして
小作調停の方は内容的に改善したい。即ち
調停委員になる人の質が相当問題であります。それには理解のある人を
調停委員に選んで貰うというように希望をいたしておりますし、又
司法省でも実際そういう
措置をや
つておられる。
府縣によりましては非常にうまく行
つておる所もあると思います。併し概して申せば今御指摘のような
色彩が濃厚であるということは認められると思います。そこで
裁判所による所の
調停を廃して、
農地委員会一本で行くということにつきましては將來の問題として、機の熟する場合に篤と考慮をいたしたい。こういう
方針でおります。
それから今の
土地返還の
状況でございますけれども、
只今資料を持
つておりません。そこでこれにつきましての最近の
資料は、後に取寄せて差上げたいと思
つております。そこで、こういうような
状況もありますので、今回はこの
農地調整法第九條に「
合意解約ヲ
含ム」ということにいたしまして、そこに今まで
合意解約を含むが如く含まざるが如く、又実際の場合におきましては、
合意があれば
農地委員会へ掛けずに処置をされておる。それが正当なる
合意でありますれば、それは無論問題はありませんけれども、
合意に名を籍りて
眞正なる
合意でない場合が相当含まれておるということは、こういうことが十分あると思う。今後はそういう点は十分考慮したいと思います。同時に
小作調停におきまして、
調停が成立した。即ち
小作者の方から同意をいたしたという場合におきましても、それが
裁判所における……私は余り
裁判所に行つたことがないのですが、想像するのに、ああいう法廷の
空氣の中において、何らかの威圧を感じて、
調停が成立したというような場合であれば、これは勿論
農地委員会において再び
審議をなる得るということも、今回の
改正でなし得るわけであります。尤もこれは非常に異例の場合だと思います。そういう
運用上の点も
考えられておるわけであります。何れにいたしましても、この
農地改革を
廻つて、
土地取上げが非常に頻繁に行われておるということは、一方に非常にいいことでありながら、一方に非常に大きな
弊害を成しておるわけであります。この点につきましては、
取締法規の整備、
農地委員会の
運用、又
一般の自覚、これらの点を徹底いたしまして、事態を改善いたしたいという
考えでございます。