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政府委員(山添利作君) 山林開放という問題につきましては、現在行な
つております農地改革が昨年決まりましたときに、農民組合等の要求といたしましては、一
町歩の保有地をなくする。それから山林原野に対する開放、このことが要求をされ、又やかましく論議をされたのであります。その後安定本部等におきまして、石炭増産のための坑木、これを伐採するというようなことを考えられたときにも、やはりなんらかそこに山林が特別の措地を受けるのじやないか。結局山林開放というような誤解を起し、そういうようなことで、断えず山林開放ということが世間の噂にな
つておるのでありまして私共聞いておりますところによりますと、中には山林が今に開放になるのだから、今の中に賣
つておいたらいいだろうとかなんとか、いろいろなことを言う人があるらしいのであります。その都度
政府はこれを否定しておるのであります。これはこの
法律を出します事柄と、この
法律の中に含まれておりまするところの山林に関する利用権の
保護並びに設定という事柄は、いわゆる山林開放とは全然
関係のないことでありまして、ただこういうことは言えると思うのであります。そのようにいわゆる第三次農地改革の名を以て呼ばれますところの山林開放の問題、これをよく考えて見ますると、成る程國土資源を最もよく使うことは必要なことでありまするが、さて農地と同じように所有権の移轉をする。或いは分割するというような形における改革というものは、これは山林に適用すべからざるものであり、山林の面から申しますれば、國土の保安、森林資源の涵養、この事柄をいたしますためには、相当の
面積を計画的に
施業をして行く。そのティピカルなものは先程も
お話されとおりましたが、結局
國有林等の大きな
経営でありまするし、そういうことが望めないにいたしましても、小所有者の持
つております山林を
森林組合等の形で協同
施業をして行く。協同
施業はできないにいたしましても、一定の
施業計画に基いて
施業をして行くという形、いずれにいたしましても、これはもう申すまでもありませんが、森林は補足的な
経営をしなければならない。年々幾らか伐採をして、幾らか殖えて行く。そういう補足的な
経営をしなければならない。そのためには大きな
面積が要るということでありまして從
つて農地もそうでありまするが、山林も非常に分割され過ぎておるのじやないか。それに対する考え方といたしましては、そういうような森林自体の要求から考えるべきものと思うのでありまして、ただ問題はそういうことでなくて、
農業経営と密接不可分の
関係にあるもの、即ちこの
農地調整法の中に今回取入れました落葉を取るとか、或いは枯枝を取るとか、或いは炭鉱がありますところに限りましては原木を採取する。そういう自家用燃料の問題又家畜の飼料とするための草を採る問題、或いはは推肥原料にするための落葉なり、下草なりを取る問題、かような山林を山林としてでなく、
農業経営と密接不可分な資源の供給地としての問題、これは当然農地乃至は
農業経営との関聯において一体的に考えていかなければいけない。こういう事実に基きまして、
農地調整法に、今回の山林をそういう
農業上の利用という問題を取り上げたのでありまして、從
つて私はこういう山林に関する
農業上の要求というものは、この
農地調整法に書きましたように、山林自体の
経営ということは全然別個に、山林自体の
経営は飽くまでもその方向において造林をされ、補足的な
経営もできるようにや
つて行く。そうして
農業上との
関係において、今申しましたような落葉、下葉、或いは又枯枝、又炭鉱のありますところでは
薪炭原木、こういう利用権の
保護、若しくは設定という形で処理をすべきものである。こういう考え方に基いておるのでありまして、從
つて御
質問の趣旨から申せば、いわゆる山林原野の開放という問題は、むしろ問題がはつきりして來るのではないか。こういうふうに考えておるのであります。