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政府委員(
山添利作君)
農業災害補償法につきまして御
説明をいたしますが、お
手許に
農業保險及び家畜保險制度新
舊對照表というのが配付してございます。それでは書類をお持ちにならん方もございますようでありますから、大體これに副
つて同時に又お持ちならない方も
差支ない
程度にお話をいたしたいと思います。
第一に變りましたのは、
法律の
名前が變
つております。今までは
農業保險法竝びに家畜保險法、この二つの
法制でございました。
家畜保險の方は可なり古くから
實施いたいしております。
農業保險の方は
昭和十二年でございますか、その當時から
實施いたしておるのであります。これを一本の
法制に纏めまして、今
囘農業災害補償法という
名前に
變つたのであります。次に、この一本に纏めました
理由につきましては、組織が
變つたのでありまして、
從來の點を申しますと、
農業保險につきましては一番
末端の共
濟事業を
市町村農業會が行う。それから郡に
農業保險組合を作る。それから
府縣にその
連合會を作る。それに對して國が超過再
保險を行う。こういう
制度でありまして、その間四
段階と申しまするか、
市町村農業會、郡の
農業保險組合、
府縣の
連合會、それから
政府、かように
なつてお
つたのであります。それから
家畜につきましては、郡の單位に
家畜保險組合がありまして、これに對して
政府が割合
保險をいたしてお
つたのであります。今囘はこの
農作物に關する
保險と、
家畜に關する
保險を
一つの
團體で行うということにいたしました。そこで新らしい
制度におきましては、
市町村の區域に
農業共濟團體を作る。この
農業共濟團體におきまして、
農作物に關する
保險竝びに家畜に關する
保險の、これは共濟と申しておりますが、引受をする。それから
府縣の
段階におきまして、その
連合會を作る。その上に
政府が
保險をする、こういうことに
なつております。そこで今までと違いました點は、
家畜の
保險と
農作物に關する
保險が一本に
なつたということと、それから
末端の
組合が今日ではそういうふうに
市町村農業會等が
水稻等について
行なつておりましたのを、今度獨立の
組合を作るということ、それから郡の
組合というものがなく
なつた。
家畜について言えば、これは
府縣の
組合の
連合會が取扱うことに
なつた。こういう點であります。かように申しましても、尚
危險を實際に負擔するかどうかという點につきまして、
從來と
違つた點だございます。
農作物の
保險については
市町村農業會が共
濟事業を行うと申しましても、
自分自身で
危險の
手持はしないのであります。今囘は一割だけ
自分のリスクでやると言いますか、
手持が一割ある、こういうことになります。それから
家畜については取扱はいたしますけれども、共
濟金の
全額を
都道府縣の
連合會に
保險するわけでありまするから、
手持はございません。即ち言わばただ取次のような
内容になるわけであります。
組合構成といたしましては、そういう點が變
つております。
その次に共濟の
目的でありますが、
農作物の
保險につきまして從来
行なつておりましたのは、
水稻、麥、桑の葉でございまして、そこで變りましたのは新らしい
制度におきましては、桑の葉に代うるのに、一歩進めて繭の
違作を共濟する。もとより
桑葉の
減少ということも
從來の
保險制度でありますと
桑葉の
減少も含んでおりますが、更に延長をして繭の
違作を
保險に取込まれる、こういうわけであります。尚
政令によりまして今度
陸稻竝びに芋類等に、即ち
主要食糧として
供出の
對象に
なつておりますものに、共濟の
範圍を可及的に早い
機會に
擴げて行くという考を持
つております。それから
家畜の方につきましては今までは牛と馬の
保險でございましたが、今度は牛と馬の他に山羊、緬羊、
種豚、こういうものが
保險の
對象に入
つて來たわけであります。これは共濟の
目的でございまするが、その次の共濟の
事故についてであります。この共濟の
事故につきましては、新らしい
制度におきましては、農産物について
氣象上の
原因によるもの一切を含めることにいたしたのであります。今まででございますと、この著しい例は
東北地方における
冷害は共濟の
目的に入
つておりませんでしたが、これを入れたこと、これが一番大きな
改正であります。その他に
鹽水の入
つて來ます害であるとかいうようなものも入れまして、凡そ自然的な
氣象上の
原因に
基ずく理由による
損害でございますれば、これを共濟の
對象にするということにいたしたのであります。尚ただ火山の爆發でありますとか、或いは
地震によるところの
損害、こういうようなものも共濟の
對象になる。昨年の暮でありましたか、南海の震災が起
つた時に、麥を播いてお
つたけれども、
鹽水が入
つてこれが駄目に
なつた。これは
地震によるものだというので共
濟金が支出できなか
つたのですが、今囘はそういうものも一切含めるということになります。結局
損害が起ることで、殘
つておりますのは
蟲害であります。病害は共濟の
對象になる。
蟲害はともかく豫防ができるわけでありまして、
人爲を以て豫防し得るわけでありますから、その方面で
豫防施設を完備して貰う、努力して貰う。その他の自然的な
災害は皆共濟を受けるこういうことであります。それから
家畜につきましては、
從來行なつておりましたのは
死亡保險だけであります。これを擴張いたしまして、死亡以外に疾病又は傷害、人間で言えば
醫療保險であります。これを行いますと同時に、
出産の
保險もいたす、この
出産といいますのは、流産或いは生れた子供で、これが一人前の
家畜保險につけるに至る
年齢に達しない間の、小さい間の
保險、これを含んでおるわけであります。尤もこの
出産に關する
保險は牛と馬に限るのであります。
廢用保險、
從來切迫賭殺と申しておりまして、ともかく死に掛か
つたとか、或いは足一本折
つて役に立たんから殺してしまう、これは
從來切迫暗殺と申しておりましたが、今囘はこれを
廢用保險という
名前で呼んでおります。これもそういう
用途が
從來の
用途に使い切れなく
なつたということにつきましての共濟は、
牛馬等について概ね行なうという
考え方をいたしておるわけであります。それから
責任期間というようなことについては特に御
説明申上げることはございません。ただ違いましたのは牛や馬は、今まで牛は十三歳を超えたものは
保險の
對象にはしない、馬は十七歳まででなければ
保險の
對象にしないということでございましたが、新らしい
制度におきましては、それを超えましても、前以てずつと二ケ年以上の長い間引續いて
保險の
對象に
なつてお
つたという場合におきましては、
年齢に制限なく、毎年
掛金を拂えば共
濟保險關係が續いて行く、こういうことにいたしたのでありまして、途中で牛や馬にい
つてぽつんと切れるというようなことはないようにいたしました。その次に
保險の
金額であります。これは先程の
保險事故の擴張は竝んで今囘の大きな點でございまするが、
從來水稻の
保險について申しますれば、
自作地につきまして
段當四十五圓、これは
昭和十八年當時決められたままに
なつております。これを今年におきましては、二石以上の田におきましては千二百圓、それから一石五斗以上の田におきましては
段當九百圓、一石五斗未滿は六百圓ということに改訂をいたすことにいたしておるのであります。何故今まで
水稻について
段當四十五圓というようなノミナルな
金額に止めてお
つたかということにつきましては、全體として
農家以外の
政府負擔になります共濟
掛金が凡そ半分ございますので、その
財源關係から今日まで極めて低い
保險として
目的を達することのできない低額に据え置かれたのであります。今囘は今年のものにつきましては只今申上げた
通りの額に
なつており、
制度といたしましては毎年
主務大臣が
段當の收穫
價格の半ばの五割を
標準として定めるということにいたしておるのでありまして、
從つて今後
米價が變動いたします度に、概ね
段當收穫高の五割を基準として定める、こういうことにいたしたのであります。これは毎年
物價状況に應じてや
つて行くということについての
保險金額を、一種スライデイング・システム的な
考え方を以て處理して行くということにいたしたのであります。それのできます所以のものは、畢竟
消費者の方に
政府の持ちます
保險料を負擔して貰う、轉稼をして行く、こういう
關係からそういうことが起
つて來たわけであります。
それから
保險金支拂の
程度について、これは
水稻につきまして、御承知のように
農作物につきましては三割以上の
被害があ
つた場合に共
濟金を支拂うことに
なつております。但し繭につきましては、四割以上の
減收を見た場合ということに
なつております。この
支拂方法を單純化して、三〇%以上の
損害がありました場合に
幾らの割合の時に
幾らと、こういうふうに決めてございますが、これを單純化したということでありまして、これは實行上の便宜であります。特に申上げる程のことはございません。
その次に
保險料算定の
基礎でございまするが、これは申すまでもなく過去の
實績によりまして定めるわけでありまするが、
從來水稻につきましては、
昭和七年から
昭和十五年、その他の
農作物も同樣であります。これを
危險率算定の
基礎といたしておりましたのは、今囘
水稻につきましては、
昭和元年から
昭和二十年、
麥類は
昭和元年から
昭和十九年、こういうように最近の
事實を取入れて計算をいたしました。その結果といたしまして、
保險料は相當
程度上
つております。と申しますのは、その主なる
理由の
一つは、最近の五ヶ年間に相當
損害が多か
つた。その事柄が
自然保險料算定の
基礎に繰込まれたということが
一つ。もう
一つは
保險料共済事故を擴張いたしました。
冷害或いは霜害というふうに擴張いたしました。その
部分で高ま
つておるのでありまして、そういう點から
事實に即することではありまするけれど、
料率そのものとしては高く
なつております。そこで新らしい共濟料といたしましては、お
手許にすでに配付してございまする資料に記載してあります
通りに、一番低いところで十二圓二十何銭ということに
なつており、平均して確か二十四圓ぐらいであ
つたと思います。それから最高が四十四圓、
水稻一段歩についての共
濟金が九百圓として、大體そういう共濟の率に相成
つておるわけであります。
それで共濟料金を
農家と
政府とが分擔するのがこの
農業保險の主義でございますが、結果から見ますると、全體の
農作物につきましては、
政府と
農家との負擔は
大凡半々に
なつております。
農家の方が
幾らか多いという
程度に
なつておりまして、この點は
從來と變りはございませんけれども、今囘はその
内容におきまして元とひどく
違つたというわけじやありませんけれども、理論的に分析をして分擔割合を決めたというのであります。即ち全國に共通するところの
最低の
部分を先申しました十二圓何がし、米についての話でありますが、これは
農家の負擔とする。即ち
米價の中に含まれておるものと見まして
農家の負擔とする。それを超えてその
府縣で
通常標準被害率と申しておりまするが、そこまでに至るところの
標準以上
災害と申しておりまするが、この以上
災害に至る
部分につきましては今の
最低部分を超します
部分を
農家と
政府と折半して負擔をする、そうしてそれを超すところの超以上
災害、
具體的に申しますれば
東北地方の
冷害、又
關西地方におきましても非常に大きな
旱害等が起きました場合には、非常に高いものになりまするので、それに對應する
掛金の
部分は
全額政府が負擔をするということにいたしたのであります。
從來の
考え方といたしましても、或る一定の
金額を決めまして、何十銭以上は二分の一、何十銭以上は三分の二を
政府が負擔する、こういうことでありましたが、これと結果においてひどく違いはございませんが、今のように理論付けをした形において負擔割合を決めたということであります。この點が
從來と變
つております。
家畜につきましては別に
政府は
從來負擔をいたしておりませんが、今囘も負擔をしておらないのであります。
それから事務費の負擔でございますが、
從來も
農業保險におきましては
府縣の
組合及び郡の
組合につきましては、基準の事務費を國が負擔いたしておりました。今囘は
府縣の
組合竝びに
末端の
市町村における共濟
團體の基準事務費は、
政府が負擔するということに
なつております。而して
市町村の
團體に設置しまする職員の費用は、三分の二を國家が負擔するということに豫算上内定を見ておるのであります。尚
家畜保險につきましては
從來は事務費の負擔はなか
つたのでございまするが、今囘は
組合が一本に統合されますという結果によ
つて、その事務費につきましても國が一部負擔しておるという
關係に相成るわけであります。
大體以上のような點でございまするが、一體今年どう
なつておるかということにつきまして、見込でございまするが、申上げて見たいと思います。御承知のように
水稻に關する
保險につきましては、本年の稻作にもこれを遡及適用するということにいたしております。この點につきましては八月の上旬にそういう公の通牒をも出しておるわけでございまするが、尤も
法制が成立すればということとして出しておるわけでありまするが、今年の支拂見込といたしましては、大體
水稻につきましても十八億圓くらいは支拂うことになるのだろう。無論確定はいたしておりません。その他麥、桑等も合せますると十九億圓ばかりを支拂うということに相成ると思います。その内
政府の方から支拂いまするものは十二億圓見當であります。その差額が約七億ばかり生ずるのでありまするが、これはどうするか、固よりこれは
組合の
手持の
保險料から支拂
つて貰うものがございますると同時に、全體といたしまして七千萬圓くらいのそこに不足を生ずることに相成るのでありまして、これは縣の
組合竝びに郡の
組合、これは農林中央金庫から融通をして貰うという考をいたしております。大體そういう状況に相成
つておるのであります。今年
水稻に關する遡及します
關係の分として、
保險の特別會計に米穀特別會計から繰入れます分が五億九千萬圓、その他來年の麥等を考えますと、只今追加豫算に出ておりますのが約六億圓でございます。尚申上げて置きたいことは、この
法律によりまして原則として六億圓食糧管理特別會計から
保險の特別會計へ繰入れる。その繰入れた
金額はこれを食糧の
價格に織り込むということに
なつておるのでありまするが、本年度の措置といたしましては、これを
價格差補給金の方から支出をする。
從つて本來なら米について一石當り十九圓くらい掛かる筈でありますが、今年は掛か
つておりません。これは別の財源から本年の措置として出すことに
なつております。それが
法律の附則に、正誤表として今日あたりお
手許に配付をされたものがあると思いますが、そういうことに
なつておるわけであります。この
消費者負擔と申しますると、いかにも
消費者だけが負擔するごとくに見えまするが、
從來の方式におきましては大體三分の二を食糧管理特別會計から繰入れ、三分の一を一般會計から繰入れる、こういうことに
なつてお
つたのであります。ところが外國米を輸入する當時はそれでよか
つたのでありますが、そういうこともできなく
なつた今後は、
全額を食糧管理特別會計から入れて貰うけれども、これが
消費者の方の
價格に織り込まれるということになるわけであります。言い換えて見れば、これは
政府が米を買います
價格と、これを
消費者に賣ります
價格の間において、相當高い地方における
危險に對する負擔、即ち本來から言えば、その地方の
米價は高かるべき筈であるというようなものを、全體としてプールをしておるのだ、こういう觀念に相成るわけでありまして、
消費者負擔といいますことは、一面から見れば、米の生産費についての共濟
掛金に關する
部分を全國的にプールをして、
政府の手でそういうふうに生産費を高く買う代りに、一方に
消費者轉稼をしておる。こういう觀念を取
つてもいいのではないかと考えておるのであります。尚御質問によりまして御
説明を申上げたいと思います。