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證人(吉山眞掉君) 私吉山でございます。私共の組織しております財團法人東京市政調査會は過去二十六年の歴史を持
つておりますので、それ以來
地方自治につきまして中正不偏な見地からいろいろ都市問題を調査研究して參
つております。この度
證人として御召請を得ましたことは誠に感激に堪えない次第であるのであります。
私共は、この
地方自治法が使命とするところは、先ず
憲法の精神に則
つて、戰時中彼の
地方行政簡素化と申しますか、そういう線に副
つていろいろ
地方自治が畸型化されておるということをこの際認識を新たにして、そうして
地方自治というものを本然の姿に囘復をするということが、この際我々の目的とせなければならんと固く信ずる次第であります。然らば現在のこの
地方自治法がこれらの要請に應じておるかと考えますというと、なかなかそうは行
つていないのであります。その點は大體五點あると思います。
第一は、まだ
中央官廳の
行政統制というものが
地方自治を著しく阻んでおる。
地方自治の領域を侵している。この點が第一點である。それから第二點は
地方團體の
財政源というものが末だに獨立していない。そうして事ごとに
國家というものがいつも
地方財政を犠牲にしている。その忍從、犠牲を強いているという點であります。それから第三條は、
國家から
地方に
委讓さるべき
權限というものは大部分まだ
國家に保留されておるということが第三點であります。第四點といたしましては、現在の
地方自治法の構成というものが、果してこれが本格的の
地方制度であるや否やということについて相當疑問を有するのであります。いろいろこの點について後刻申上げたいと思いますが、第五點といたしましては
地方制度の全體の構成、内部構成と申しますか、その構成について或いは人事の點であるとか、或いは内部の各區制、或いは
特別市制と申しますか、そういう點に至りますというと、まだまだ解決すべき點を殘しておると思います。
先ず第一點の
行政官廳の
地方自治を阻んでおる、この點を極く簡單に一例を取
つて申しまするならば、先程もお説が出ましたが、例えば
地方商工局と申しますか、そういう
出先機關というものが、どのくらい
地方自治の領域を侵しておるかということは、これは丁度御案内のごとく、各地に
商工局があ
つて、そうして戰時中より一切の統制をや
つております。それに對する資材の配給というものが含まれておる。その資材の配給というものは、未だにすべてこの
地方商工局がや
つておるのであります。そのことは
地方の
商工行政というものを非常に阻害しておるということははつきりしている問題である。御案内のごとく
日本のこの中小工業というものは戰前において、その六割というもの、中小工業者の生産の平均の六割というものは外國は輸出されてお
つたのであります。今後
日本の將來を立て直すためには、この中小工業の生産に依存しなければならんものが相當多いと考えます。然るに拘わらず、
地方、道
府縣知事或いは
市町村長の各位は、これに對して何らの權能も持
つていない。いかに中小工業を振興すべきやということになりますというと、主要資材の何一點もその統制力を持
つていない。
權限を持
つていない。これでどうして
日本の今後の産業を振興し、貿易を振興することができましようか。丁度
地方の各位は浮いておる、こう言
つていいのであります。これは勿論戰時中にいろいろ資材の面において統制を要することがあり、その他集中的に、重點的にいろいろ考えなければならんこともあつたでありましようが、今日に至りまして、こういうことを繼續するということは、いかに
地方分權と申しましても、その實のないことを現わしておるのでありまして、これは將來ともに十分お考えにならなければならんと思う次第でございます。それからその外いろいろそういう事例はありますけれども、この中小工業振興の一點をお取りにな
つても、今後いかにこの
出先機關の
整理ということが、緊急であるかということを實證し得られると信じます。
それから第二點の
財政源がない。獨立の
財源を得ていない。
地方が獨立の
財政源を得ていないということは、これは先程もお述べに
なつたように存じておりますが、例えば、これを一例を取りますれば、今日各都市における住宅の問題、庶民の住宅の問題は皆樣非常に御心勞のことと考えられます。御案内のごとく戰爭によ
つて日本の九十一都市というものは爆撃を受けて、そうして相當なる被害を受けております。それから又百十五の町村、市を含めての數でありますが、それも相當の被害を受けておる。そうして大體平均被害率と申しますか、それは五三%の被害を受けておるのであります。これを將來いかに復興するかということは、これは
地方の當事者各位の非常な御苦心と私共は信じております。これを復興せしむる
財源というものは果してどこに求めるのでありましようか。いろいろこれに對して私共は調査研究を重ねてはおりますが、假りに東京都の例を取
つて見ましても、東京都は今後大體七十八萬戸くらいの住宅を建設しなければ、到底この現状を克服することは困難であります。それに要する金額と申しますのは大體千四百九十億というふうな計算であります。これを假りに十五年によ
つて實行いたしまするにしても、年々相當の費用を要することは明らかなことであります。これらの
財源を今の現状の
財政組織で以てどういうような建前で復興するかということに思い及びますならば、非常に私共は危惧に堪えないのであります。有力なる
財源というものは、
國家に取
つて入場税
一つをこれを都市のために返すということは、まだまだ他日の問題であろうと思うのであります。そういうようなことをいろいろ考えて參りまするというと、都市復興或いは
地方の復興、
都道府縣の復興ということは容易ならざることだと信じております。こういうときに當
つて我々の考うべきことは、
財政權を獨立させるということは、要するに
地方と國との
財源の
調整をどういうふうに考え、そうして有力なる
財源を國より
地方に渡すということであるのでありまするが、私はこういうふうな
調整問題以上に考えなければならん、それは何であるかと申しますと、丁度國の税を
地方で取
つて、そうしてすべての税は
地方においてこれを收納し、そうして
國家に渡す、今までの租税の徴收
方法を逆に持
つて行くというような程度にまで考えなければ、到底
地方は有力なる
財源、
財政權を得られない、こういうふうにまで私は考えておるのであります。
それから又に第四の
地方自治制それ自體の構成というようなことにな
つて參りますると、現在の
地方自治法というものは、
選擧、或いは公共國體それ自體の
議會の構成、或いは
理事者の構成というようなものまで一連の法規にな
つておりますけれども、
財政に關する點につきましては、
地方自治法に何ら
根本的の
規定がないのであります。こういうこともやはり
地方自治法の中に
財政に關する
根本規定を挿入して、そうして一連の體制を整えなければ完全なる
地方自治制とは申されないのであります。そういうようなこと、或いは
議會と
理事者との
關係、その他についても、まだまだ研究すべき餘地が殘されておるように思います。
それから又
地方公共團體の法制上の内部のいろいろの問題は、全部現在の
地方自治法によ
つて解決されておるとは決して申されないのであります。只今お説にも出ましたが、例えば附則第七條と申しますか、それにはやはりまだ若干の
官吏という制度が殘
つておるのであります。
それから又東京都で申しますれば、東京都の都、各區、特別區の問題、これも完全に私共はその
關係が
調整されておるとは信じないのであります。
さようないろいろ問題が殘されておる。要するにそういう問題を
根本的に解決して、そうして
地方の自主權を確保することこそ、
地方自治法の本來の使命である。こういう本來の使命が徹底的に
根本的に解決されないときに、ここに僅か本年の五月の三日より
施行されて、試錬を經たことが七ケ月であ
つたのであります。この七ケ月の
期間にしか過ぎないこの
期間に、重大なるこういう
根本的の問題が殘されておるにも拘わらず、ここにこの自治法の一部を
改正するということは、いろいろの
事情もおありになることを思うのでありますけれども、私はやや早計の感に堪えないものがあります。何率この點についても十分にこの前提で
一つ御
審議をお願いしたいと存じます。併しながらこういう前提はいろいろ申せば時間がかかりますので、要するに本日は
證人としては、現に
國會に
提出されておりますところの
地方自治法の
改正部に對する御諮問と考えますので、その部分についていろいろ申上げたいと思います。
先ず第二十五條でありますが、第二十五條は同時
選擧の原則を決めております。これは
選擧を能率化し或いは棄權を防止するというような上から見まするならば、一應肯定さるべき制度と考えます。併しながら弊害は又これに伴
つておると信じます。一人にして
都道府縣或いは
市町村の
議員となる、或いは都で申せば區會
議員、區長というものに立候補できるということに相成るのであります。これはいろいろの點において
選擧の實際を考えますと、去る四月
選擧におきましても、或いは費用の點、或いは會場の點、或いは宣傳用諸印刷物の點について、自分が力を注ごうというところの
選擧に主力を注ぐというようなことが、結果においていろいろの弊害を齎すのではないか、そうしてその結果、自分が情勢によ
つて有利なところにそれを持
つて行く、そうして他の立候補の點は樂にそのままそれでいいというような結果になる、これはどうしても兼職の禁止の
範圍を擴張し、それによ
つて解決して行くということが一應考えられるのであります。或いは名簿式というよすな投票
方法を新たに包含して、この弊害をなくするということに相成るのであります。これは實際兼職の禁止の
範圍を擴張することによ
つて相當解決されると思いますけれども、要するに振返
つて同時
選擧の利弊というものをもう一度御研究願いたいと存じます。これは御案内のごとく、政黨法案を今日御
審議にな
つておるように伺
つておりますが、それとも又重大なる
關係があると信じます。彼此この際この點について御檢討を願う必要があるのじやないかと考えます。
それから次に第八十四條でありますが、第八十四條の但書は、無投票によ
つて地方公共團體の長なり
議員が
選擧されたときには、一年未滿においても解職の請求ができるという制度であります。而して第五十八條に但書を加えてそういうことにすることは、一面五十五條によ
つて一般の
選擧によ
つて當選された人と、無投票によ
つて當選された人と、待遇を異にして處理するということに、若干の疑問を持
つておるのであります。元來無投票の當選制度という問題は、一定數以上の
候補者がなくて、事實上多數決法によることができないという場合に、これに代る補充
方法として消極的に
選擧人の一致の意思というものを擬制するのでありますから、その結果というものは、消極的ではありますけれども、
法律上は同一の
立場によ
つてその職を得たのであります。でありますから、當選したその人に、假りに無投票でありましても、その
資格には何らの優劣がなく、何らの差異がないと思うのであります。然るに拘わらず、ここに突然として無投票當選者は一年以内においても解職の請求ができると相成りますと、甚だ
法律上、實際上當を得ない優劣の差を附するということに相成ると思うのであります。これらは
一つこの際御
審議を相願いたいと思うのであります。いわんや今度この法案におきましては、五十三條と六十五條と二つを御
改正にな
つて、そうして立
候補者が
期日までに一人と
なつた場合は、五日間を延しで、そうして
選擧の間際までに徹底的に多數の人口の立候補を促しておるのであります。そういう法令を一方に
改正しつつ、一人と
なつた場合に當選した者、無投票の場合には一年以内でも解職することができる、こういう優劣の差を附することは、どうも五十三條、六十五條の
改正の點から考えましても平仄が合わんように私共考えるのであります。どうぞこういう點も民主主義に反しないという
意味を十分にお考えにな
つて、
一つ御檢討を相願いたいと思うのであります。
それから第九十七條に一項をお加えにな
つて、「
議會は歳入歳出の
豫算については増額して、これを議決することを妨げない。但し、
普通地方公共團體の長の
歳入歳出豫算の
提出の
權限を侵すことはできない。」、これも先程御説が出ましたようでありまするが、どうも
増額修正の議決を
法律上認めるということは、これはどうもいろいろ從來とも行われておつたようにも考えるので、突然のことではないと思います。併しながらいろいろ外國の立法令その他を調べましても、増額の
修正を許すということは、例えばニユーヨークの制度を見ましても、これは認めていない。例えばニユーヨーク市制の百二十四條の二項に、「
法律により決定若しくは議決したる金額又は收税若しくは市債の利子、若しくは元金を除くの外、市會は市
理事會によりて採用せられたる
豫算における項目の費額を削除することを得るも、その項目を追加し、若しくはその金額を増し、又はその明記せる名稱を説明若しくは條件を變更することを得ない。」、こういうことが明記されております。
豫算の増額の
修正ということは、但書の末項にありまする、公共團體の長と
議會との間にいろいろの問題が起るではないかと思うのであります。これを置きまする結果は、この
規定にもあります通り、百七十六條或いは百七十七條の
關係を生じて、いろいろの紛議を釀す種になるんじやないかと思うのであります。そうして一般の市のお役人共は、大體
發案權の内容とが意義とか限界というものについては、はだ十分の認識がおありにならん、淺いものであるように私は考えておるのであります。それでありますから、これらの
關係も十分にお考え下さいまして、若し本條の
改正を認容せられる場合におきましては、所轄
行政廳、今度申しますというと自治
委員會になりますが、そこらあたりでこの解釋例というものを以定して、そうして紛議の讓成をなくするというふうな點についても、御配慮を合せてお願いしたいと思うのであります。
それから第百條を
改正して、
議會の調査研究機能を充實するということは、非常に結構なことだと思います。大都市とか或いは市とか町とかいうものにつきましては非常にいいのでありますけれども、村ということになりますと、圖書室を置くというような大きな組織をいろいろ心配はいたしますけれども、極めていい制度でありますから、先ずこういうところから出發されることは結構と思います。ただその百條の第七項に
都道府縣はその出版物、公報その他を
都道府縣の
議會に送れということでありますけれども、これはやはり情報の交換を十分にして、そうして相互啓發の實を擧げるためには、
都道府縣に對しても市の印刷物を相互交換するというふうなことをお加えにな
つて然るべきじやないか。非常に結構なことで、こういうことが端緒とな
つて、いろいろ都市の一般の氣分が、調査研究という科學的な取扱いに進むことを私共は念願しておる次第でありますから、合せてそういうふうなこともお考えを願いたいと思う次第であります。
それから第百五十六條の
改正部分でありますが、これは只今私が申上げました通り、
中央の
出先機關の
整理その他に關する御
改正であります。併しながらこの
改正につきまして、先ず想い起すことは、
地方制度調査會の曾ての御研究というものがどの程度に實現せられるかということが、具體的にその方向なりその機關なりの解釋或いは割振りというものを拜承しなければ、これに對する
意見を申上げることは困難であります。例えば戰災復興院の出張所というようなもの、それから又只今申しました
地方制度調査會において御
審議にな
つてそうして御答申にな
つておるうちの財務局の
地方部とか、或いは税務署、或いは
地方商工局、或いは臨時農地
事務局、營林局、
地方物價
事務局、或いは
地方專賣局、土木出張所、
地方經濟安定局、陸海軍病院であつたものが今國立病院にな
つておるものの
措置、
公共職業安定所、勞働基準局、
資材調整事務所、作物報告
事務所、海運局、こういつたようなものが曾ての
地方制度調査會におきましては、すべてその
事務の殆んど大部分を
府縣の所管に移讓すべしという御決定にな
つて、その部分が段々とそういう方向に向
つておるように承知しておりますが、又逆にこれを豁然と國に移したということも聞いております。只今も申しましたこれらの
行政機關というものが、今度のこの條項によ
つて百條の第三項によりまして、それが
都道府縣知事の指揮監督にな
つて來るという御解釋でしようか。或いは第四項によりまして、それは
國會の承認を得なければできないということで、新たにこれらの機關が
國會の議に掛かるということに相成るのでありましようか。これらの
關係が、全くこの條項そのものでは出て來ないのであります。これらは
參議院におきまして、十分に當局との御檢討を具體的に相願いたいと思うのであります。
それから又第五項に司法
行政及び懲戒機關というようなことを表現されておりますが、その司法
行政の中には、先に司法
行政調査會によ
つて、司法
行政の中の登記に關すること、戸籍に關すること、公證に關することは、すべて
都道府縣に移讓すべしということに御決定にな
つておる。今日第五項に、司法
行政は國の保留すると、こういうことがありますが、それは先に
行政調査會において決定せられた公證に關すること、戸籍に關することはもうそれは
地方に移すこととして、司法
行政は單なる司法に關する人事その他の
地方直接の
行政のみが國に保留されておるのであるかどうかというようなことがはつきりしないのであります。
それから又
行政調査會は、先に陸海軍病院であつた中のもので現に國立病院になな
つておるものを、これを
府縣に移すというように御決定にな
つておるように承知しております。ここでは國立病院及び醫療施設と單にあ
つて、そうしてその内容がどういうものが國に保留され、そうして
行政調査會の決定によります陸海軍病院で現に國立病院であるものは、
府縣に移すのだということがはつきりしていない。これらは十分御明確にされて御
審議を願いたいと希望するのであります。
要するに只今申上げましたいろいろの機關はこれはすべて
都道府縣若しくは市に歸屬して、そうして自治の綜合
行政の實を擧げることが、勿論當然なことでありますから、これらも十分に
一つ御研究を願いたいと思います。
それから第二百二十六條に一項をお加えになりまして、「
普通地方公共團體は、
地方債を起すについては、所轄
行政廳の
許可を必要としない。但し、第二百五十條の
規定の適用はあるものとする。」、こういうふうな
改正にな
つておる。そうして二百五十條に「當分の間」という字が附いております。これは現在の金融
行政、金融統制的の情勢いおきましては、
地方債を
許可するのに當分の間、やはりそれぞれの
許可が從前のごとく必要であるということは或いは止むを得ぬかも知れません。併しながら元來この
地方債というものは、起す事業の性質と公共團體の擔保力と申しますか、持
つておる力からい
つて、そして一定の限界を置いて不都合のないものは許して行く、自由にしなさいということが原則的にならなければならんと思うのでありまして、それから又現在の金融情勢から申しましても、
許可があ
つても現實に金を借り得ないということが現状であります。國としてこれに對して金融の斡旋とか或いは又
資金の枠の設定を十分に當局と交渉して、そうして
地方の
資金枠の設定に苦勞しないようにしてやるということが必要である。それから又進んではこの協同の信用保證制度というようなものを作
つて、そうしていろいろの
地方の事業を金融上便宜にしてやるということが積極的に必要であります。そういうような、いわゆる
財政の
根本をなすような制度とか、或いは
地方債に關する制度が何ら確然としていないときにも
つて行
つてこの點だけ御
改正にな
つても餘り效果がないじやないかと思います。要するに今日の情勢といたしましては、當分の間なら止むを得ない。併かしながらこの當分の間は速かに撤廢して、一日も早く本然の姿において
地方が自由に起債を得るように、又得るような起債の段階に達するようになりますまで、國として十分の準備をしてやる、援助をしてやる、組織を新たにしてやるということが、必要ではないかと思うのです。
それから又こういう
規定の
許可をいろいろ取るということは、その前提においてやはり
財政上の
中央集權的の思想が殘
つておるのでありますが、本來自由にしていいものでありますが、一面においてこの
地方財政とか或いは
地方の政治というものを、
選擧民或いは住民に、公共團體それ自身が不斷に知らせて置くということが必要じやないかと思うのであります。これらに關しても、この
地方自治全般に、自分の政治をしておるその政治の
在り方とか、情勢とか、状況というものが住民とか
選擧民に知らされていない、不斷に知らされてない、これは非常に惡いのであ
つて、今後この
地方自治制を御
改正になる場合には、そういうことを公共團體の長の義務として不斷に物を知らす、殊に
財政のごとき状況は不斷に住民、
選擧民に知らすということに
一つ御按排を願いたいと思います。こういうことを考えますというと、先ず
地方債の自由な起債は許す、
財政上の状況を一般に知らすために、この際、経濟白書類の發表ということを、國で申せばこの間發表しましたこういうものの發表というものを義務付けたい、こういう感じをも
つておるのであります。そういうことからいたしますというと、例えばこういう條項を
一つお入れ下さるというと非常にその點はつきりするんじやないかと思うのであります。「
地方公共團體は
豫算が立成したときは直ちにその
豫算、前々年度の歳入歳出決算及び公債借入金及び財産の現在高、その他
財政に關する一般の事項について印刷物、講演その他
適當な
方法で
選擧人に報告しなければならない。前項に
規定しておるものの外
地方公共團體は少くとも毎四半期毎に
豫算の使用の状況、收入の状決その他
財政の状況について
選擧人に報告しなければならない。」、こういうような條項をお入れにな
つて、そうして
財政の状決或いは歳入歳出の状況というようなことが義務として一般
選擧民その他に知らされてありまするならば、この起債の問題は金融市場においてはその
財政状況が一般に明白にせられることでありますから、
金融機關においてもいろいろの判斷が付き得るのであ
つて、そう苦しまない結果を得るのではないか、こういうことに相成ると思うのであります。これらの點は丁度アメリカあたりの大都市においても、或いは洲においてもそういうような制度を取
つておるのであります。例えればアメリカの状況を御參考までに申上げるならば、各洲共
憲法又は
法律によ
つて起債に一定の
制限を設けておられるということは事實であります。併しながらその
制限は通常の態樣では都市の課税し得べき財産の評價額を基準として認めておるのであります。その基準は課税し得べき財産の評價額の大體、ニユーヨークで申しますれば一〇%、各洲の實例で申しますと最少一・五%から最高二五%、通常は五%から十%、課税し得べき財産の評價額、それで指定された都市の起債能力というものは自動的に分る、こういうふうな制度があるのであります。これに對して洲の評價額を不當に評價するというものもありましよう。そういう弊害も若干ありましよう。
又洲によ
つては一定の金額を捻出して、そうして實際の
制限というものを置いておるものもありましよう。それから又一ケ年の收入というものを標準にして、その限度を起債の限度としておるところもありましよう。こういうふうに自動的に一定の
根本基礎を定めて自動的に自分がその能力を發揮し、自由に得るような制度もこの際お考えにな
つて頂く方が便宜じやないか、そういうふうに考えるのであります。勿論これに對しては、例えば學校とか病院とか、或いは公益企業の收入の伴う事業については、それは全然
制限なく許されておるところもあります。要するに事業の種願とこういつた標準を置いて、そうして成るべく
地方のそれぞれの情勢において自由起債の制度をお認めになる方がいいじやないか、こういうふうに考えます。
その外いろいろ申上げたいこともございますけれども、又御質問によりましてお答えを申上げることにいたしまして、私はこれだけにいたして置きます。