○鬼丸
義齊君 私は前囘の
委員會におきまして、司法大臣から御
答辯を伺
つたのでありまするが、
憲法第四十條によりまして、不當拘束者に對しまする補償の方法は、刑事
訴訟法の
改正と相俟
つて作られる筈である。その豫定であるということを御
答辯になりました。ところがこの
憲法の四十條によりますると、拘禁或いは抑留等によりまして、抑留されましたる者が、後に裁判の結果無罪となりましたる場合のみに對して
賠償の
責任のあることに
規定されております。先程來
委員の方より
質問されましたる
勾留状による檢束によ
つて、勾留によ
つて、それが後に全然罪なくして勾留されてお
つたということがはつきりいたしました場合には、やはりこの本則によ
つて國は
賠償する、こういうふうに先程御
答辯がありました。これは大變私は紛更を來す
ような感がいたします。同じく不當拘束に對しまする
國家の
賠償が、一つは不當であるが故に、刑事
訴訟法の
規定により、新しく新法を作られますその刑事
訴訟法の中に作られまするとすれば、今の刑事
訴訟法でありまするが、その法によ
つて賠償をし、然らざるものの不當拘束は
賠償によ
つて賠償をするということになりますると、同じ不當拘束なるに拘わらず甚だ兩者條件も違いまし
ようし、或いは又いろいろな場合が生じて參りますので、非常に紛更を來す
ような感がいたしまするが、この點に對しまして、政府は
憲法四十條によ
つて、そのいわゆる
規定の結果として定められまする
賠償の
規定はどの
範圍において定められる御
方針であるか。或いは又、
只今御
答辯のありました如くに、四十條に
規定されたる結果として定められる
賠償法のことは、これは起訴後の無罪に對しまするもののみを含むものでなくて、その他總べてやはり
賠償法によ
つて責任ある場合には
國家が
賠償すると、こういうふうに解してよろしいものであるか、私は違法とか、或いは
故意過失という問題はしばしば論じられたところでありまするから別といたしまして、違法という問題に對しまする先程來の
政府委員の御
説明によりますと、ますます私は不可解なことが生じて參ると思います。例えば單り檢事の勾留に拘わりませず、例えば
只今の
勾留状の
規定によりまして、勾留については
原則として二ケ月以上に及ぶことができないという
ようなことがありました場合、逃走若しくは證據湮滅等の場合の外に概して拘束をせないということが刑事
訴訟法の
原則であると思います。それにも拘わりませず、二ケ月の期限が終りまして、幾度かこれを更新されておりますことが現在の實際であります。現在も殆んど各
裁判所は、滔々としてこれを行われておりますることは明らかなる違法であります。法の目的とするところは逃走或いは證據湮滅というものを防がんがために勾留を許されておるのであります。然るにも拘わりませず、最初から總べての
事實を認めておりましても、更に逃走の虞れも何もない者に對しまして、數ケ月、甚だしきは年を越えまする
ような
事件が澤山ございます。これらのものは明らかにこのいわゆる先程來の
政府委員の御
答辯に從いまするならば、やはり檢事の不當拘束の場合と同様に
國家は
賠償の
責任を負わなければならんことになると思います。そこで私は
憲法の四十條によりまする
ような場合は、これは
當然無過失責任によ
つて、
國家が
賠償の責に
任ずるようなことになると思います。
憲法の趣旨に從えば、無罪の結果を得ればそれを
賠償するというのでありますから、これは
當然無
過失の
規定になると思います。
只今政府委員の御
答辯にありまするが如くに、檢事の勾留が
犯罪ありとして搜査にかか
つたところが、勾留せられた結果は遂に罪がなか
つたという
ような場合に、國が
賠償の責めがそのままあるといたしましたならば、やはりこれはその間に或いは
故意過失という條件が加わることによ
つて賠償の
責任があることになりますると、非常に大きな實は結果となりやしないかと憂うるのであります。私はその
行爲自體が、職權によ
つて例えば
勾留状を發する、その
勾留状を發すること自體それが違法でないとしても、いわゆる結果が無罪の
事件だ
つたと假にいたしましても、いわゆるそこが違法という第二の要件に掛
つて來ることによ
つて賠償の
範圍が非常にこれは少くなるのじやないかということを憂えるのであります。先程來の御
答辯によりまして、そうした場合において、
犯罪搜査權によ
つて勾留状を發し得るということは、そこらは職務
行爲であるが、去りながら、裁判の結果無罪である、無罪の者を掴えて入れたということは違法であるということになれば、
責任があるということになりますれば、これこそ大變なことになると思います。例えばそれとやはり刑事
訴訟法におきまする
勾留状の更新以後におきまする
行爲の如きも、擧げてやはり
違法行爲とういことになるとも思います。その點に對しまする政府の確たる一つ御所見を伺いたいと思います。
尚又私は、先囘の
委員會において司法大臣が
答辯されておりました如くに、不當拘束によりまするものは、
只今も小川
委員の申されましたる如くに、警察の拘留におきましても、檢束におきましても、苟しくも不當なる拘束というものは擧げて一つに纏めるか、然らざれは
憲法四十條の
規定の結果によります
賠償にいたしましても、いずれか一つに、私は全部不當拘束がそれに入る、或いは又、これらは格別に
規定するのでなくして、總て一括して
國家賠償の法というものを纏めて
規定するということが
考えられないのであるかどうかということにつきましては、非常な責は国家として私は大きい問題だと
考えます。即答、若しなんといたしましたならば、即答がどうかといたしまするならば、特に私はこの點は尚愼重に御研究を要することじやないかと存じます。御所見を伺い得ますならば伺いたいと思います。