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政府委員(
奧野健一君)
訴訟費用等臨時措置法という
法律がございまして、これは
民事、
刑事の
訴訟費用、及び
執行吏の
手数料等についてのこれらは元來は
民事訴訟費用法、
刑事訴訟費用法、
執達吏手数料規則という
法律で各々決
つておるのでありますが、
戰時中諸物價の昂騰の結果、特に臨時的の
措置として、
訴訟費用等臨時措置法というのを設けましてこれが
増額をいたしておるのであります。
ところがその後昨年の九月に、やはりこの
訴訟費用等の
増額をお願いして現在
増額いたされておるのでありますが、その当時と更に又一年後の現在と比較いたしますのに、
物價指数等によりましても大体約三倍に昂騰いたしておるのであります。それで
民事、
刑事の証人、或いは旅費、日当、
宿泊料というようなものが非常に現在では
物價と比較いたしまして低廉に失するのでありますし、又
執行吏のいろいろな
手数料、いわゆる競賣、
差押え等に関する
手数料も極めて少額でありますので、又
物價に應じて大体三倍
程度の
増額をお願いしたいというために
本案を提出いたした次第であります。
そうしてその
内容を申上げますと、この
條文だけを見ると如何にも分りにくいのでありますが、お手許にに差上げておるのかと思いますが、第
一條につきましては、
執達吏とあるのを
執行吏というふうに
裁判所法で改めたのでそれを改めただけであります。ただここで
ちよつと御
留意を願いますことは、
執達吏はすべて
執行吏と改めましたが、
執達吏手数料規則という
法律までは当然に
変つてないと解釈せざるを得ませんので、第四條の
ところで
執達吏手数料規則というのはそのままにいたしておるのであります。この点が
ちよつとおかしいようでありますが、やはり
執達吏手数料規則というものがそのままの名称として残
つて、他で
執達吏が
執行吏と変
つたとい
つて、その
法律の名前まで変らないというのでありますので、甚だ不揃いでありますが、
執達吏手数料規則というものをそのままにしております。
一條はそれだけの
改正であります。
第ニ條は
民事訴訟費用法のいわゆる書類とか或いは図面の書記料、飜訳料等の
増額であります。大体現行のニ・五倍に引上げたのであります。これは
物價指数を標準としてニ・五倍引上げたのであります。それで今までは「百分ノ九百ヲ増加ス」というふうな立て方にな
つておりますが、今度ニ・五倍引上げるのをそういうふうな例で書きますと百分の二千九百を増加すということになりますので、余り体裁が惡いので今度書き替えまして、「二十五倍ニ相当スル額トス」というふうに分り易く書いたわけであります。要するに現行のニ・五倍を引上げたにすぎないわけであります。
それから第三條でありますが、これは
民事訴訟費用法、
刑事訴訟費用法とも当事者証人の日当であります。
從來十五円でありましたのを四十五円に上げたわけであります。この十五円を四十五円に上げました
理由は、
從來十五円以内というのは大体三級官の
官廳職員の日当に相当してお
つたのでありますが、三級官の日当が本年の七月七日以降四十円に改ま
つたのであります。これは
昭和二十二年総理廳令第二十一号というのでそういうふうに改ま
つたのであります。この改ま
つた額は
大藏省の給與局において
関係方面の了解の下に、合理的な根拠のあるものというふうに考えられますので、
物價指数をも考慮いたしまして、当事者及び証人の日当も最高四十円、現行の約ニ・七倍に当嵌まるのでありますが、四十円といううふうに引上げたのであります。
それから次の
民事訴訟費用法第十
一條と
刑事訴訟費用法。第三條の日当と申しますのは、これは鑑定人、通事、鑑定者、
説明者の日当の
増額であります。これは
從來親任官の日当が三十円の時代から四十五円にな
つてお
つたのであります。
ところがこのたび
官廳職員の中で大臣、政務官、次官というような特別の職にある者の日当は、現在最高八十円まで
増額いたしましたので、これを現行及び
物價指数をも考慮いたしまして最高百二十円、
從來の約ニ・七倍を引上げることといたしたのであります。
それから次の
民事訴訟法十
二條、
刑事訴訟法五條の当事者、証人、鑑定人、通事及び鑑定書の
説明者の
宿泊料であります。これは
現行法の下では一日最高四十円であ
つたのであります。この四十円というのは大体
官廳職員の二級官の止宿料が四十円から五十円というふうにな
つており、三級官の止宿料は三十円から三十五円というふうにな
つておる、その中間に相当いたしてお
つたのであります。
ところが
官廳職員の止宿料は、やはり本年七月七日以降六大都市、いわゆる甲地といいますが、六大都市におきましては二百円、それから乙地、その他の地では百五十円というふうになりまして、これもやはり
大藏省の給與局で最小限度の必要費を基礎として、
関係方面の了解の下に決めた合理的なものであるというふうに考えますので、この当事者、証人等の止宿料の額も、
物價指数を基準とはしないで、これと同額の百五十円、二百円というふうにいたしたのであります。
次の
民事訴訟費用法十三條、
刑事訴訟費用法四條の旅費、これは鉄道或いは汽船を通じないものについては、現在一里毎に三円以内ということにな
つておるのであります。これは大体
官廳職員の二級官の車馬賃と三級官の車馬賃の中間に相当いたしてお
つたのでありますが、これもやはり今年の七月七日以降
官廳職員の車馬賃は原則として一キロにつき二円以内ということに
改正いたされましたので、
物價指数或いは都電の電車賃等も考慮いたしまして、当事者、証人等の旅費の額も、一里につき八円、要するに一キロ二円の割合に引上げたのであります。尚予審判事というものがなくなりましたので、この際予審判事という文字を削り、又受託判事というのは、
裁判所法の
関係から受託裁判官というふうに
整理いたしたのであります。次の四條、これは
執達吏の
手数料であります。これは先ず第一に書類の送達の
手数料が五十三銭とあるのをこれを上げて、要するに現在では五十三銭を増加することにな
つて、一通につき六十銭が現行にな
つておるわけであります。これを五倍引上げたのであります。これは大体三倍
程度の
増額をするのに、五倍に引上げましたことは増加率が高いようでありますが、これは送達の場合の送達
報告用紙を調製して印刷する費用は、すべて
執達吏が自らこれを負担しておるのでありまして、その費用とそれから送達の距離が
執達吏役場から一里以内のときは旅費は受けないことにな
つております。これは
執達吏規則の第十八でありますが、そういう場合が非常に多いので、非常に氣の毒であるというのと、又若し
執達吏を使わないで郵便で送達をする場合には、距離の如何に拘わらず書留郵便によるのは外特別取扱料として十円を要するのであります。これとの比較、又
執達吏は非常に今收入がなくて困
つておるのでありまして、
執達吏の取扱件数の中で大体この書類の送達というものが六割以上を占めておるので、これを増加いたしますと、
執達吏の收入に大きく影響して來るというような諸点を考慮いたしまして、送達
手数料を六十銭から三円に上げたわけであります。それから
執達吏手数料規則の十四條は、これは書類の謄本、供託の届書、或いは第三債務者の爲す陳述の筆記の書記料等であります。これは
現行法の下では半紙半枚、十二百二十字詰で五十銭であります。これを
物價指数を考えまして、三倍に引上げたわけであります。次の十五條の
手数料と申しますのは、これは告知、催告の
手数料であります。これは現在では一円二十錢であるのをやはり三倍引き上げたわけであります。次の
執達吏規則第三條一項の
手数料であります。これは有体動産の差押、仮差押に関する
手数料でありますが、これは執行すべき債権額の多寡に應じて決められておりまして、
現行法では債券額を一万円以下六段階に分けてありますが、この分け方は現在の取引の
実情からこれを見ますと、余り細かに過ぎまして、現在の大部分を占めている債権額が一万円を超えている場合に、余り細かに過ぎますのと、それから現在大部分を占めております債券額が一万円以上超える場合に、適当な段階がないことにな
つておりますので、その
手数料の算定に適正を欠く憾みがありましたので、これを五万円以下として六段階に分けて、各段階について適当な
手数料を決めたのであります。理論上申しますと、
物價が昂騰するに伴いまして、その執行すべき債権額も自然上昇して参りますので、別にこの
手数料を上げる必要もない。自然に債券額が上
つて來るから、
手数料が上
つて來るではないかということも考えられるでありますが、それでは十分でありませんので、今回はその債券額をこういうふうに改めましたのと、それから
手数料を大体最高は三倍、平均して一・五倍、一倍半だけ
手数料を割合から見ると上げるということにいたしたのであります。これは一律に三倍ではなく、大体一・五倍であります。その次の
執達吏手数料規則の九條の
手数料と申しますのは、これは動産、不動産及び船舶の競賣の
手数料であります。この
手数料はやはり競賣金額の多寡に應じまして定められておのでありまして、
現行法ではこの競賣金を一万円以下六段階に分けておりますが、今言
つたのと同じような
理由から五万円以下は六段階に分けて、各段階に適当な
手数料を決めることにいたしたのであります。それから次の
執達吏手数料規則十
七條の日当と申しますのは、証人、鑑定人の日当でありまして、これは
執達吏が執行行爲をする際の立会証人に支給する日当であります。これは現在六円でありますのを大体三倍に上げたのであります。或いは又競賣の場合の鑑定人に支給する日当、これは
現行法では十五円以内であるのを三倍に上げた次第であります。
次の
執達吏手数料規則の十八條の止宿料と申しますのは
執行吏が役場又は出張所から一里以上の土地に至
つて職務を行う場合の旅費でありますが、
現行法の下では一里毎に三円以内ということにな
つております。又止宿料は一泊について三十円以内とあるのを
民事訴訟費用法、
刑事訴訟費用法の証人の止宿料及び鉄道汽船を通ずる水路以外の旅費におけると同樣官廰
職員の例に倣いまして、旅費は一里毎に八円以内、六大都市は二百円以内その他の所では百五十円以内というふうに引上げたのであります。それからその他の
執達吏手数料規則で定められておるその他の
手数料立替金というのがありますが、これはいろいろ細かい場合を
規定しておりますが、大体におきまして
現行法の三倍に上げた次第であります。最後の第五條におきましては
執達吏が一年内に收入した
手数料が一定の額に満たないときは
國庫からその不足額を支給することにな
つております。のそ一定額というのは勅令で決めておりまして、現在六千円であります、六千円に満たない場合にはそれに達するまで
國庫で
補助することにな
つておるのでありますが、この額につきましもて大体
從來一ケ月五百円という時代のものでありまして、この点はやはり大蔵省と
折衝いたしましてこれを
増額することにいたしたい考えておりますが、現在六千円以下の收入しかない者は
執達吏の中の大半でありまして、
執達吏は現在二百人ぐらいおるのであります。その中で百七十何人かは月五百円以下の收入しかありませんので、
國庫から不足額を支給されておるという状態であるのであります。