○
政府委員(
奧野健一君) 大體の
改正の要點だけを御説明いたしたいと思います。
現行の
戸籍法は相當
條文がありますので、更に
改正の點を追加いたしますれば非常に
條文の數が多くなりますので、大體
戸籍の
内部の
事務、
戸籍を受付けて、それを記入するとか、その
戸籍吏員における
内部の
手續きと思われる點は
施行細則の方に讓ることにいたして、
條文を成るべく少いようにいたしたことが第一と、それから全體の
方針といたしましては、そういつたふうに
外部關係に缺くべからざるものを大體
法律に殘しておきまして、
内部關係で
行政事務的に考えられるものを成るべく本法から落して
施行細則に入れたいというような
方針で
参つたのであります。第一章、
從來は、
戸籍法事務の管掌というふうな標題でありましたのを總則といたしまして、これは要するに
戸籍事務をどこで取扱うか、要するに
從來通りこれは
市町村長が管理することにいたしております。そうしてその
監督系統は
從來は
區裁判所でありましたが、今度は
司法事務局、これは
司法省の
民事局、即ち
司法事務局におきましては、
裁判所と
司法省が分離いたしました結果、純粹な裁判に關する
事柄を
裁判所が扱う。
戸籍とか、登記とか、公體とか、供託とかいつたような司法的であるけれども、尚
行政事務と考えるものを、やはり
司法省の
行政事務として殘すことにいたしまして、それからの
事務は
從來の、
供託局とか、或いは
登記所とか、そういうものを一本に集めた
司法事務局というものを設けております。それは各地方
裁判所毎に現在
司法事務局というのがありまして、
從來の
區裁判所毎に
司法事務局の出張所というものを設けて
登記事務を扱
つておりますが、そういう系統がこの
戸籍事務の監督をすることにいたしたのであります。これはもうすでに
裁判所法の
施行令によりまして、そういうことに改ま
つておるのを實は
整理したに過ぎないのであります。それが第三條であります。それから第
五條、これは
地方自治法の制定に伴いまして
條文の
整理をいたしたのであります。ただ
從來ありました
戸籍吏員の第三者に加えた
損害賠償の義務については、
國家賠償法で配慮されておりますが故に、
從來あつたそういう
規定を削除いたしておるのであります。
第二章は
戸籍簿に關する
事柄でありますが、
從來の
戸籍簿は、御承知のように
戸主を中心として家毎に作成いたしたのでありますが、今度は家、
戸主、
家族という
關係がなくなりましたので、どういうふうな
方針で以て
戸籍簿を作るべきかということが、實は重大なる問題にな
つて來たわけであります。考え方によりましては、各
個人ごとに一枚ずつの
戸籍簿を作るということも考えられます。併しながらこれは例えば父と母、それから
子供と別々に一枚ずつの紙にいたしますと、
相互の
關係を
おのおのの用紙に記入して、その他そういう
相互の
關係を悉く
おのおのに記入するということは非常に
煩雜でもありますし、
相互の連絡が非常にむずかしくなります。又一方現在の紙の
状態から見て、そういつたようなことは到底
事實上できないことに
なつております。然らばどういう
標準で、どれだけの
程度に纏めて、
一つの
戸籍に編製するかということになりますと、結局やはり一
夫婦、及びそれらの
子供という、その團體で
戸籍を作るということが最も妥當でありますし、又一方實際の現在の
親族協同生活の上からにも、相當即應しておると思われるのであります。そういう意味で
夫婦と
子供ということで、
一つの
戸籍を作ることにいたしたのであります。ここで御注意申上げたいことは、
夫婦と
子供だけで
戸籍を作るので、孫までは入らないということに
なつております。要するに御祖父さん、御祖母さん、或いは
自分の孫というスリー・ジエネレーシヨンス、要するに三代までの
戸籍は認めないことに
なつておりまして、二代までということにいたしたのであります。そこで第六條に要するに
一つの
夫婦と、これと氏を同じくする
子ごとに作るということに
なつております。この中には勿論
嫡出子の外に
養子、或いは認知された
子供というようなものは、やはり
民法の七百九十
一條によ
つて、認知された
子供が父の氏に入ることができますが、その場合にその間の
子供が父の
戸籍に入るということになるわけであります。妻が
連れ子をしたような場合も
民法の七百九十
一條を介して、その
連れ子の
名前を變えて、氏を同じくすることにして、
夫婦の間の
戸籍に入れるということになるわけであります。それが第六條であります。その外はずつと大
體現行法通りでありますが、第九條が新らしい
規定でありまして、今までは
戸籍を表示するのは、
本籍とそれから
戸主の
名前で表示しておりましたが、今度
戸主というものがなくなりますと、何々何番地というだ
けでは
戸籍を、何といいますか、直ぐ探し出すことができないので、やはり何か符牒がなければいけない。そこでいろいろ考えました結果、結局
筆頭に記載した者の
氏名と、そうして何處々々何番地というので
戸籍を表示するというより他に
方法がありませんので、大體
筆頭に記載した何々何番地と、それからそれに
いろは順で
戸籍を分けておりますから、そういうふうに探し出すためには便宜上やはり
筆頭に記載した者の
氏名と、
本籍で表示するというふうな
方法より他にないということで、第九條というものができたのであります。
それから後はずつと大體におきまして
現行法通りでありますが、第三章におきましては、この十三條というのが
戸籍の
記載法であります。各人について
氏名とか、いろいろのことを記載する。この他に尚
命令で、讓
つておりますいろいろのこと、例えば親權の
關係でありますとか、或いは後見の
關係でありますとか、相續人が排除されたような
關係でありますとか、いうような
事柄を記入するということが、第十三條の第八號に書いてあります「その他
命令で定める
事項」として豫定しておるわけであります。
第十四條が、誰を
筆頭者として書くかということになりますが、
夫婦と
子供ということになりますので、その場合に
夫婦の中のどちらを
筆頭に書くかと云いますと、
夫婦は
婚姻のときに夫又は妻となるべき者の何れの氏を稱することもできることに
なつておりますので、夫の氏を稱するときは夫、妻の氏を稱するときは妻を
筆頭者として掲げ、その次に他の
配偶者を掲げまして、それから子を掲げるという順序にいたしておるのであります。從いまして
戸籍を表示する場合には、
筆頭の者の
氏名と、其處の
本籍の番地で以て
戸籍を表示するということになるわけであります。
それから第十六條以下が新らしく入
つた規定でありますが、即ち
戸籍はどういうときに新らしく作るかという作り方の問題であります。これは
婚姻屆があつたときに、
夫婦につき新らしい
戸籍を編製するということにいたしたのであります。尤もその場合に、それはすでに例えば分
籍等をいたしまして獨身のときから分籍してお
つて、
自分が
筆頭のものである。その場合に
婚姻をして、妻がやはり
自分の夫の方の氏を名乗るというふうな場合におきましては、但書で別に新らしく新
戸籍を與す必要はないが、
原則として
夫婦が
婚姻屆を出せば、そこで新
戸籍を作るということが
一つの最も重要な新
戸籍編製の場合であります。
次に十七條で、
假命筆頭に記載した者でない場合でありまして、まあ
筆頭者及びその
配偶者以外のもので、その
戸籍がある者が
子供を儲ける、或いは
養子をするというふうに
なつた場合には、その者について新
戸籍を編製することに
なつたわけであります。即ち
夫婦間の
子供が、言葉が惡いのでありますが
婚姻して
子供を儲ければ、十六條でその者について新らしく
戸籍を作るのでありますが、その者に私生兒を拵えたという場合、或いはそういう者でも
養子をすることはできますが、
養子をした場合になりますと、結局三代の
戸籍ができることになりまして、この
法案では三代の
戸籍を作らないという
方針でありますから、そういう者が
子供を儲けたような場合におていは、その者について新らしく
戸籍を作るということを
規定したのであります。これは結局三代
戸籍を認めないという
方針から、三代に亙ような
戸籍ができそうになると新
戸籍を作るということにいたしたわけであります。十八條はただ
子供がどこの
戸籍に入るかということ、これは
民法等によ
つて氏を、摘出の子は父母の氏を稱することになり、それから摘出でない子は母の氏を稱することになり、
養子は養親の氏を稱することになりますから、それに對應して各々
規定を設けたわけであります。それから十九條がやはり新らしい
規定であります。要するにこれは
離婚若しくは
離縁によ
つてよ
つて元の舊氏に復氏する場合に、
戸籍をどうするかということでありますが、
從來は大體元の
戸籍に入るという
原則でありました。ただ
例外として元の
戸籍が全部除籍に
なつておる場合に、
一家創立で新らしく
戸籍を作ることに
なつておるのでありますが、大體その
方針を踏襲したのでありますが、ただ
例外としてその者が新らしい
戸籍を作りたいという申出があつたときは新
戸籍を作る、即ちお嫁に
行つた者が
離婚にな
つて歸つてきた場合に、その
從來の
實家、まあ昔の言葉で言いますと
實家の氏に復するか、或いは新らしく新
戸籍を
自分だけで作
つて貰いたいという要求があれば、新
戸籍を作ることができることにいたしたのが十九條であります。ただその外に第二十條で、前
二條の
規定に拘わらず、他の
戸籍に入るべき者に
配偶者あるときはその
夫婦について新
戸籍を編製するということにいたしておるわけであります。例えば
夫婦養子が
離縁に
なつたという場合においては、前の氏に復することになるのではありますが、その場合に
戸籍を、前の
戸籍に入るのではなくて、
夫婦については常に新
戸籍を作るという頭から新らしい
戸籍を作るというのが二十條であります。それから尚
夫婦について新
戸籍を作るというのが
原則、或いは
子供を持つた者について新
戸籍を作るというのが
原則でありますが、いわゆる分籍というものを二十
一條に認めまして、そういう
夫婦者であるとか子持ちであるというふうな者でない者でも、成年に達した者はいつでも分籍ができる。
從來の分家と同樣なものでありますが、これは勿論
民法上の何等の身分上の
法律的效果はない。ただ
戸籍簿を分けるというに過ぎないのでありますが、これは成年に達しさえすれば自由に分籍ができて、新らしい
自分だけの
戸籍ができる。その場合に細君を貰うというような場合に、その細君がやはり夫の方の氏を稱するというような場合には、別に新
戸籍を作らなくてもいいというのが、十六條の但書がこれに對應するわけであります。尚
最後の二十
二條で、例えば
國籍を取得したとか、或いは捨子の場合であるとか、新らしく
戸籍を就籍するといつたような場合に、二十
二條で新
戸籍を編製するということになるわけであります。要するに新
戸籍を編製する
婚姻を以て、或いは
子供を持つたとき、或いは
離縁、
離婚によ
つての場合、その他分籍の場合、その他
戸籍取得、就籍、いわゆる二十
二條の場合が新
戸籍を作るということにいたしたのであります。その後はずつと大
體現行通りであります。それから第四章は
屆出全般に關する
事柄でありまして、この點は大體
從來で
通りでありますが、この三十條というのが新らしい
規定と申しますか、
從來ではいろいろ
戸籍の變動の生ずる場合、その所どころで一々こうい
つた規定を設けておりましたのを、今度は三十條で通則として全部纏めて
規定いたしたのであります。要するに
出生の場合、死亡の場合、
婚姻の場合、或いは縁組の場合いつたような、
戸籍に變動を生ずる場合のすべての場合を網羅して、この三十條に
規定をいたしたのでありまして、
從來は各々のその場所々々でこういつたような
規定を掲げてお
つたのを、纏めた形式に外ならないのであります。それから三十
一條以下ずつと大
體現行通りを
口語體に改めただけに過ぎないのであります。
大體主な、非常に
變つた所は大體そういう所でありまして、その外は大體ずつと
從來に殆んど大した變更はいたしません。それから二節以下は、各別にこの屆出の、今度は各論に入るわけでありますが、
出生の點についても同樣であります。ただ四十九條の四項で、「その他
命令で定める
事項」というのは、これは
人口統計の必要上、
出生屆にいろいろな細つかい行政的な記載をいたさなければならないことに
なつております。これはいずれもその點は
ポツダム勅令に基く
司法省令で相當詳しい
屆出事項が記載されております。これをここに一々記載することは煩に堪えませんので、
命令で定めるということに譲つたわけであります。と同時に新しいことは醫師、
助産婦その他出産に立ち
會つた者の
出産證明書を添附せしむことに
なつております。これもすでに
出生屆については、すべて
一定の樣式で
屆出用紙が作られておりまして、それにいろいろ記入さえすればいいことに
なつておりまして、
出生證明書に關する
事柄も、記入すればいい欄がありまして、そこに醫者なり
助産婦なりが記入すればいいことになることに
なつております。
それから第五十條というのは新らしい
規定でありまして、
子供の
名前を付けるのに、
常用平易な文字を使わなければならない。これは漢字
制限等の非常な強い要求がありましたので、
子供に餘りむずかしい
常用平易でない漢字を付けないようにという要望に基いて作
つた規定でありまして、何が
常用平易な文字かというような範圍につきましては、大體この前の文部省から出ました常用漢字と同じような範圍を、
命令で出すことに
なつておるのであります。五十
一條もこれは
從來ポツダム勅命に基く
司法省命
昭和二十一年第四十七號で
規定されておつたいわゆる
出生、死亡は嚴格にその
事件の起つた場所で屆出なくてはならない、これは人口動態統計の必要上、司令部等の要求に基きまして、それに基く
司法省令でそういうことを
規定してお
つたのをこの中に入れたわけであります。
五十
二條は現在
通りでありまして大して變つた點はありません。認知の點も大體
從來通り條文の
整理等をやつたに過ぎないのであります。
養子縁組の點も通則に相當詳しく、先程申上げました三十條のような
規定を置きましたから、非常に簡單に
なつておるわけであります。それから
養子離縁も同樣であります。
婚姻につきましても非常に簡單でありますが、これは
婚姻の七十四條で「その他
命令で定める
事項」、これにつきましては、やはりいろいろ詳しい
事柄がこの
婚姻屆出にはやはり樣式が決
つておりまして、行政的にいろいろ人口動態統計の必要上記載しなければならない
事項がありますので、それを一々ここに列擧することも煩に堪えませんから、やはり
命令に任したわけであります。それから
離婚についても同樣であります。
第八節親權及び後見につきましては、新
民法によりまして、親權の
規定がいろいろ
家事審判所等で決める場合があります。それを採入れたのが七十八條、七十九條、八十條という
規定が、新らしい
民法に基いてそれに即應するように
規定したのであります。その他の點につきましては大體これは
現行通りであります。ただ第十節の九十
五條、九十六條というのは、新らしく
民法の七百五十
一條、七百二十八條によ
つて、
婚姻前に復氏することができるとか或いは姻族
關係を終了させることができるということが
規定されております。それに即應した
規定が九十
五條、九十六條であります。
それから九十七條は
家督相續人排除ということがなくなりましたから一般の相續人排除に關する
規定、それから九十八條は入籍に關する
規定でありまして、九十八條、九十九條は新らしい
規定でありますが、これは
民法の七百九十
一條で父母と氏を異にする場合には
家事審判所の許可を受けて同じ氏を名乗ることができるという新らしい
規定が設けられ、又そういうものが元の氏に歸りたいと思えば歸り得るということが七百九十
一條の第三項で
規定されておりますので、これらの點は九十八條と九十九條で
規定したわけであります。それから十三節の分籍は先程申上げました分籍ができる場合の
手續であります。それが百條、百
一條であります。
それから次は
國籍の得喪でありますが、實は
國籍法は
憲法の趣旨から鑑みまして、相當これを
改正する必要があると考えるのであります。殊に
國籍離脱の自由を新
憲法で認めております以上、
從來のような
國籍法は内務大臣の許可等に掛
つておる
關係上、これを
改正しなければなりませんが、これは國際情勢等がありまして、急には御審議を願うことができません
關係上、一應はこの
國籍得喪に關する
條文は
從來のまま、即ち百
二條は
從來の百四十七條以下大體
從來通り踏襲した次第でありまして、これは
國籍法
改正の曉には、當然この點を修正いたしたいと考えております。
次に第十五節
氏名の變更、これは
從來改性名に關する太政官布告がありますが、これを
廢止しまして、氏及び名を變えることを緩やかにいたしたのが百七條であります。即ち名よりも氏を變えることがむずかしく、止むを得ない事由によ
つて初めて氏を變更することができる。それから正當な事由がある場合には名を變更することができることにして、いずれも
家事審判所の許可によ
つてこれを變更することができることにいたしたわけであります。
次の十六節の轉籍及び就籍は、これは大體
從來通りであります。
第五章の
戸籍の訂正につきましても大體
從來通りであります。
それから雜則につきして、
從來は
戸籍事件についての違法處分、不當處分に對する抗告は
區裁判所ということに
なつておりましたのを、
家事審判所に不服の申立をすることができることにいたしたのであります。その他
家事審判所に係らしめる
事件が百十九條で列擧しておりますが、このものについては、
家事審判所の適用については
家事審判法第九條第一項甲類に属する
事項として取扱うことにいたしたわけであります。百二十條以下は過料の制裁でありますが、これも
從來の非常に少い金額を高くいたしただけの
事柄であります。それから過料の裁判については簡易
裁判所の管轄にしたのが百二十三條であります。大體以上で以て本則の方は終りまして附則でありますが、これは
從來の
戸籍をどうするかという問題につきまして百二十七條、百二十八條等で、
從來の
戸籍は大體そのままにいたして置く。そしてこの
戸籍法の適用については、この新らしい
戸籍法で作られたものと擬制いたしたのであります。即ち百二十八條で、舊法の
規定による
戸籍は、これを新法の
規定による
戸籍と一應みなして、ただ新法
施行後十ヶ年内にこれを新法によ
つて改正して行きたいという
方針を表わしております。順次
改正されることになります。
即ち今後新らしい
婚姻ができるとか、或いは分籍があるとか、或いは新しく
子供を生んだ者があるというような場合には一々新
戸籍を編製して行きますので、大體十年も經てば全部新らしく變
つて行くんではないかというふうに考えておりますが、少くとも十年以内にこれを全部新らしくいたしたいという
方針を百二十八條で表わしておるわけであります。その外大體の新舊の移り變りの場合における
經過規定と、それから
廢止すべき法令が掲げておるのであります。甚だ簡單でありますが、大體以上がこの
改正戸籍法の大體の御説明であります。