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鬼丸義齊君
最高裁判所の問題につきまして午前に伺
つたのでありますが、
司法省としては
裁判官の
任命につきまして、
定員だけの
指名によ
つて名簿を
内閣の方に提出すれば、それで差支えないという御
解釈をと
つているであろうか、或いはそれともそれ以上の
名簿の提出を望まれるのであるか。曾て今の
内閣でありますか、前
内閣であるか存じませんが、
最高裁判所から
裁判官の
指名をする場合には、その必要のある
定数だけのものでよいというようなことの内諾があ
つたように私は聞いております。ところが今度
最高裁判所から
名簿を送りまして、それが世間に発表され、その後に発表と異
つた任命がありましたのについて、いろいろと
最高裁判所の
在り方について非常な疑義を持
つておるように聞いております。若し
最高裁判所が詮議の結果
指名し、
名簿を送
つた場合においても尚且つ
内閣の方で以てそれを支持し得ずというようなことになるのであるならば、
最高裁判所の力は非常に弱いものであるというようなことで以て、そこでたださえ非常な生活脅威を受けております
司法官の今後に対しまする
見通しについて非常な絶望的の
考えを持
つておる者もあります。今度の問題につきまして
最高裁判所がすでに
指名をして発表し、更に私の聞くところによりますれば、すでに公文までも発送をして、
任命の辞令を交付するために呼ばれたというようなことまでも聞いております。そこまで行
つておりまして、恰も晒し者にな
つたようなことになりまして、このことが非常な大きな影響にな
つております。この際
大臣としてその点に対しまする
はつきりした見解を伺いたい。それが第一点。
それからそれにちよつと附け加えて置きますが、先程もお願いいたして置きましたが、先囘の七名を発表したのは
最高裁判所において発表したのであるか、いずれの場所において発表したのであるか、ということを
一つ嚴密に御調査を願
つて、
委員会の方に聞かして頂きたいということを、重ねてお願いいたして置きます。
それから第二の問題としまして、
憲法改正によりまして、いろいろ
刑事訴訟法或いは民事
訴訟法等の大法典の改正は今年一杯にしなければならん必要の中にあるのであります。民事
訴訟法の法案、それから又
刑事訴訟法の法案、それらに対しまする今後の
方針はどういう御
方針によ
つて進められるのであるか。
新聞の報道するところによりますれば、この特別
議会も更に延長するというようなふうに聞いております。若しも延長されることがあるといたしましたならば、一氣に提案され、
委員会に囘されましても審議は非常に困る、そのときに対しまする
見通しを
一つこの際御予定を伺
つて置きたいのであります。
司法省として今後予定しておりまする提案の法案につきましての大体要旨を伺いたいのであります。
それから先程保護事業に対しまする御質疑が同僚の方よりございました。これにつきまして私は特に
大臣に伺いたいと実は
機会を待
つてお
つたのでありまするが、これまでの保護事業は概して官営の保護事業が多い。概して社会事業につきまして民間の方の保護團体がございまするが、その他の場合においては概して官設の保護事業に携わ
つておるものが多い。例えば檢事正、檢事長というようなふうで、元來この保護事業に対しまして、概して
司法官の檢察官の人が直接指導の任に当
つておる。私は
曾つて吉益俊次氏が名古屋の控訴院の檢事長をしており岩村通世代が檢事正でありました当時、私は会長をいたしておりました。丁度愛知縣に愛知自警会というのがありまして、これが大体檢事正が主宰しておりまする財團法人であります。免囚保護事業をしております。御下賜金がありまして、その傳達式に私共招かれまして、その式の終りました後に、それぞれ何かの話をせよということで以て、
最初檢事長が立ちましたときに、丁度集ま
つておりまする囚人は千三四百名でありました。教会堂みたいの所でありましたが、それに集まりましたときに、傳達式をいたしたので、看守はずつと壁に沿いまして配置されておりました。ところが檢事長、檢事正の講話中に、非常な大きな荒い息をいたしましたり、或いは咳をする、明らかに反抗の態度をありありと私共見ました。檢事正の立ちましたときのごときは暫く
お話ができなか
つたというようなふうの状況であ
つた。看守は固より所長も、大きな声して、非常にたしなめまするけれども、何さま荒い息をいたすのでありまするから、どうしても靜止の仕樣がない。而も
一つには殿堂でありましたために、声が籠
つておりまして、どうしても話が進められない。私も立ちまするとうんと彌次られると思
つて臨みましたところが、これは又本当に寂として声なく、而も檢事長、檢事正の講話中には、我々は罪を憎んで、断じて人を憎むのじやない、誠に甘き、柔らかき、本当に撫するがごとき講演があ
つたにも拘わりませず、それを聞き流して、依然として反抗的に彌次
つておりまする態度を見ました。ところが、私は勿論個人としてでなく、会長として参
つたのでありまするが、私の話は檢事長、檢事正に全然反対でありまして、七千万、八千万の國民中、君らのごとき姿をしておる者が幾人あるとか、随分、荒つぽいことを実は申しまして、一場の挨拶を終
つたのでありまするが、その間、本当に寂として声なく終りまして、刑務所長の主催によりまして食事が出ました席上、いろいろ話があ
つたのでありまするが、吉益さんも檢事正も、実は自分らに対する彼らの感情というものが著しく尖
つておる、これに反して弁護士というものに対する彼らの信頼というものは、彼らは殆んど弁護士の懐に飛び込んでおるのだということを、まざまざと実は見せられた、故に保護事業というものは、大体弁護士がやるべきものじやないか、檢事正とかいうふうの、これまで彈劾の立場にある者が長にな
つてやることはいけないのだ、というようなことをその席で以て共に眞劍に語
つた事実があります。忽ち帰りまして、会員にも話し、何とかして弁護士会の手によ
つて保護事業をやりたいということで、年來微力をいたしておりまするけれども、今日までそれを実現することができなか
つたのでありまするが、それのみならず、全國の弁護士としてこれまで保護事業に携わ
つておりまする者、或いは会としてこれに鞅掌しておりまするものは極めて少い。少いというよりはむしろ皆無であります。これは先程も岡部
委員の御説のごとくに、行刑の効果に対しまする問題は、これがそもそも狙いであるのであります。このよろしきを得るということによりまして、私は判決を言い渡しまするものの
意味が初めて加
つて参るかと思うのであります。私はこうした被告人などに接しまする弁護士、これを私はこの際うんと活用することが極めて必要なことではないかと存じまするので、幸い御経驗を持たれる
大臣にこの際御所見を伺
つて、これを対しまする今後の御
方針等も併せて伺いたいと思います。