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政府委員(
奧野健一君) 御尤もな点でありまして、一應
從來の
遺産相続に関する
規定をそのまま採用いたしたのでありますので、その
共同相続人のある場合の
共有の
関係、それが又更に
分割される場合のいろいろな
関係については不十分な点があると
考えます。そこで成るべく近い機会にこういうものに対する根本的な再
檢討を加えて行きたいというふうに実は思
つておるわけで、
從來余り
家督相続ばかりで、
遺産相続というのが行われてなか
つたので、現在の
遺産相続の
規定が今度は本則になるということになると、現在のままでは或いは適当でないものが
相当あるのではないかというふうに考てえおるので、その点は更に再
檢討をいたしたいというふうに
考えております。
併しながら全然その点について
考慮を拂わなか
つたわけではないのでありまして、先ず
分割に関しては、例えば九百六條或いは九百
七條という
規定等も新らしく設けまして、いわゆる
分割は
共有関係が止んで
分割になる、その
分割はどういうふうな方針であるということを九百六條に掲げ、その
分割は第九百
七條で
共同相続人の
協議で先ず決める、
協議ができない場合に
家事審判所がこれに
関係して行く、その場合に
家事審判所は
遺産の全部又は一部について
分割を禁じで、例えば
営業用の店舗であるような場合には、これを
分割するということは実は適当でないというふうな場合もありましようし、又
相続人が皆幼少で一本立ちができないというような場合に
分割することは適当でないというような場合もありましようし、そうい
つたような場合に、
分割を
一定の期間禁止することができる途も開いたわけであります。そうして
分割につきましては九百六條にありまするように、
遺産に属する物又は
権利の種類とか
性質とか、各
相続人の職業とか、その他一切の
事情を
考慮してやるわけで、必ずしも現場を
分割するというふうなことじやなく、或いは或る一人に商賣をやらして、その外の者には金でやる、外の
財産をやる、或いは借金の形で他の
共同相続人に金を分配するというふうに、いろいろ実情に應じた
分割の方法をやり得ることを
考えたのであります。
勿論これだけでは不十分でありますから、
農地のようなものにつきましては、もうすでに御
審議中と思いますが、
農業資産の
相続の別例にする
法律を出しまして、或る
家産制度にやや近い
考え方を採
つた農地の細分による
農業経営の支障を除くための
特別法を拵えたわけであります。尚その
外商業その他の業務についても、そうい
つたような
特別法が要るかというようなことは、将來更に
研究いたしたいと思いますが、取敢えず
農地は
分割可能なものでありますから、これはどうしても手を打たなければならないというふうに
考えたのであります。
一般の
商工業のようなものは、これを
分割しよう
といつても
ちよつと
分割ができない。
農地のように幾らでも細分できる
性質のものではありませんので、それは恐らく当事者の
協議或いは
家事審判所の
アドヴァイス等によ
つて、適当にそこはうまく行くんではないかということで、取敢えず
農地だけについてそうい
つたような
特別法を作
つたわけであります。
それは
分割の場合の問題でありますが、それから
分割に至るまでの
共同相続の
関係、これは
共有の
関係になるのでありまして、その場合に
共同相続人が負担した債務は
分割されるのか、或いは
連帶的になるのかというふうな問題もありますし、そうして又
共同相続人の中の一人が
限定承認をする他の者が
單純承認をするというふうに、ばらばらにいたします場合には非常に
法律関達が混乱いたしますので、特に九百二十三條という
規定を新らしく設けまして、数人が
共同相続人である場合には、
限定承認は
共同相続人の全員が共同してのみこれがすることができるという
法律関係を一本にいたしまして、尚それに関聯いたしまして九百三十六條でありますとか、或いは九百三十
七條の
規定を新らしく加えたのであります。そういう
意味で
共同相続人の
共有関係に関する或る
一定の手当をいたし、又
分割の場合においても多少の
考慮を拂
つたつもりでありますが、今後更にこれらの点について再
檢討をいたしたいというふうに
考えております。