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政府委員(
奧野健一君) それはこの前に引続きまして「第五章後見」の所から御説明を申したいと思います。
後見の章で、特に全般の問題として御説明申いたし
事柄は、
從來後見の
監督については、親族会というものがありまして、親族会が相当強い
監督権を持
つてお
つたのであります。尚その外に、後見があれば必ず後見
監督人というものを設けて、更に
監督をするということにな
つておりましたのを、親族会については、母の親権の制限がなく
なつた
関係上、殆ど仕事の大半が失
つたのと、一方家事
審判所ができまして、家庭
事件に深く相談相手になる機関ができることになりましたというような
関係から、親族会というものをやめたわけであります。又後見
監督人というのも、特に遺言等で指定された場合を限定して、必ずしも後見
監督人を置かなくても、そういう仕事は家事
審判所が行うということに
なつた点が今までの後見の内容と余程違
つて來たわけであります。
先す八百三十八條でありますが、これは現行法の九百條と殆んど同じでございます。即ち後見の開始は、未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないときに後見を開始する。又禁治産の宣告があ
つたとき後見を開始することになるのであります。
次の八百三十九條は、現行法の九百
一條と大体同じであります。ただ現行法の九百
一條の第二項が八百三十九條の第二項に変
つたわけでありまして、現行法の九百
一條の第二項というのは、「親權ヲ行フ父ノ生前ニ於テ母カ豫メ
財産ノ管理ヲ辭シタルトキハ父ハ前項ノ
規定ニ依リテ後見人ノ指定ヲ爲スコトヲ得」ということにな
つておりますのを、今度は父母が共同して親権を持つということに
なつた
関係上、この
規定をこの二項のように変更いたしたわけであります。内容としては殆ど変
つておりませんが、共同親権の結果こういうことに変更いたしたものであります。
次の八百四十條と申しますのは、九百二條に該当するのでありますが、これは現行法の九百二條の第二項に該当するわけで、現行法の九百二條の一項はこれは止めたわけであります。即ち現行法では「親權ヲ行フ父又ハ母ハ禁治産者ノ後見人ト爲ル」というように法定的に当然後見人に親権者がなることにいたしておりましたが、これは後見人がどうしても二人ではいろいろ都合が惡い
関係もありますので、これは当然親権者が共同して後見人になるという
考え方を取らないで、この場合は後見開始として家事
審判所が後見人を決めるというふうに持
つて行
つたのでありまして、そういう
意味で現行法の九百二條の第一項を止めて、第二項に該当するのが八百四十條に
なつたわけであります。
次の八百四十
一條、これは九百三條であります。御承知のように、現行法におきましては、戸主が結局法定の後見人になることにな
つておりましたが、戸主を止めた結果、要するに後見人となるべき者がない場合には、戸主ではなく家事
審判所が決めるということにいたしたのが、八百四十
一條であります。でありますから、結局後見人というものは、遺言で後見人を指定しておる場合、或いは又夫婦に一方が禁治産の宣告を受けたときは他の一方が後見人となる、この場合だけが法定的な後見人ができるわけで、それ以外は八百四十
一條で、すべて家事
審判所が後見人を選任するという建前にいたしたわけであります。
次の八百四十二條は現行法の九百五條に該当いたすわけであります。即ち現行法の九百四條というのは削除いたしたわけであります。即ち親族会を止めましたので、親族会が後見人を選任をするという権限があ
つたのを家事
審判所に持
つて行
つたわけであります。而して八百四十二條は現行の九百五條に該当いたしますが、これもやはり親族会を止めたり、或ひはいろいろな親権の
関係等が変
つた関係上、文字はやや異りまして、
裁判所を家事
審判所にしたり、いろいろ内容の文字は変りましたが、
趣旨は現行法の九百五條と同様であります。
それから八百四十三條は、現行法の九百六條と同樣であります。
次の八百四十四條というのは、現行法の九百七條に当るのでありますが、九百七條では、「後見人ハ婦女ヲ除ク外左ノ
事由アルニ非サレハ其任務ヲ辭スルコトヲ得ス」というので、いろいろな場合を掲げておりますが、それを一括いたしまして、八百四十四條で「後見人は、正当な
事由があるときは、家事
審判所の
許可を得て、その任務を辞することができる」と、正当な
事由のある場合に辞任することができることを認めて、現行法の九百七條のように、「軍人トシテ現役ニ服スルコト」とか、いろいろな要件のある場合にのみ辞任することができるというのを、正当な
事由があるときは家事
審判所の
許可を得て辞任ができるということにいたしたのであります。
次の八百四十五條は新らしい
規定でありますが、これは後見人に不正な行爲、著しい不行跡その他不適任な
事由があるときは家事
審判所が解任ができる
規定であります。これによ
つて家事
審判所が後見人に対する強い
監督権を持つことにな
つておるのでありまして、これは現行法の九百八條の第八号に「
裁判所ニ於テ後見ノ任務ニ堪ヘサル事跡、不正ノ行爲又ハ著シキ不行跡アリト認メタル者」は「後見人タルコトヲ得ス」という
規定がありまして、これによ
つて大体同じような結果に、いわゆる後見人に対する免黜の
訴えというのがありますが、それに該当するのでありまして、この八百四十五條というのは、現行法の九百八條の八号を
一般化いたした
規定であ
つて、
一般的に家事
審判所が解任をいたすことができる
規定をいたしたのであります。
次の八百四十六條は、大体現行法の九百八條と同樣であります。
次の八百四十七條は、現行法の九百九條に該当する
規定であります。
次の「後見
監督人」でありますが、これは先程もちよつと申しましたように、現行法に於きましては、九百十
一條で、必ず後見
監督人というものがなければならないことにな
つておるのでありますが、今度は必ずしも後見
監督人を必要としない。
從來後見
監督人というのは、なければならんとはいいながら、実際は後見、
監督人はなくして、而も殆ど実績を認められないものがありましたので、今度は後見
監督人は任意機関といたしまして、必須機関といたさないことにいたしたのであります。尤も遺言で後見
監督人を指定した場合だけ後見
監督人ができるということにいたしたのであります。これは八百四十八條、現行の九百十條であります。
次の八百四十九條というのは、今
言つたように、「指定した後見人がない場合において必要があると認めるときは、家事
審判所は、被後見人の親族又は後見人の請求によ
つて、後見
監督人を選任することができる」ということにいたしまして、必ずしも後見
監督人を選任しなければならないものとしなか
つたわけであります。その点がやや違
つて來たわけであります。
尚現行法の九百十二條から九百十三條の
規定は、そういう
意味でこれを抹消いたしたのでございます。即ち後見
監督人が必ずなければならないという
規定の九百十二條、それから同じ
趣旨の、後見人の更迭の場合に必ず後見
監督人を選任しなければならないという九百十三條の
規定等は、そういう
意味で当然不必要になりましたので、これを削除いたしたものであります。
次の現行法の九百十四條に該当するのが八百五十條であります。
それから八百五十
一條は、現行法の九百十五條に該当いたします。
次の八百五十二條は現行法の九百十六條に該当いたします。
條文等の整理が多少あるのであります。
次の「後見の事務」につきましては大体現行通りでありますが、非常に細かいことまで現行法で
規定しておりますが、
一般的に家事
審判所が
監督権を持つことになりましたので、余り細かい点は現行法から落して行
つたということになろうかと思います。即ち八百五十三條は現行法の九百十七條でありますが、ただ現行法の九百十七條の第三項の、
財産目録を調製しなか
つた場合に、親族会はこれを免黜することができるということにな
つておるのを止めまして、
一般的な家事
審判所の
監督いわゆる解任ができる
規定によ
つて賄い得る
考えから、この
規定を止めたわけであります。
八百五十四條は現行法の九百十八條そのままであります。
次の八百五十五條は、現行法の九百十九條に該当いたしますが、やはり後見人免黜に関する第三項の
規定を止めたのであります。これはやはり大体先程の八百四十四條でこれを賄い得るからそういう必要がないと
考えたわけであります。
次の八百五十六條は、現行法の九百二十條そのままであります。
次の八百五十七條は、現行法の九百二十
一條の大体そのままでありますが、最後の親族会に関する
規定等をなくなしたわけでありまして、そういう場合について、親族会の同意を得なければならないということを、後見
監督人がある場合に、後見
監督人の同意ということに変えたわけであります。
次の八百五十八條は、現行法の九百二十二條に該当いたします。又この最後の九百二十二條の二項の、親族会の同意を得て禁治産者を瘋癲病院に入れ又は私宅に監置するというようなことは、親族会の同意を得て後見人が決めるという
規定を、改めまして「禁治産者を精神病院その他これに準ずる施設に入れ、又は私宅に監置するには、家事
審判所の
許可を得なければならない」ということにされたわけであります。
次の八百五十九條は現行法の九百二十三條、現行法通りであります。
次の八百六十條、これは特別代理人の
規定の準用でありまして、これは現行法の八百五十
一條の
規定をここに持
つて來たのであります。結局これは特別代理人の
規定を後見人にこれを準用することについて、後見
監督人のある場合に、後見
監督人がその相手方になるという
趣旨の
規定にいたしたのであります。
次の八百六十
一條はこれは九百二十四條に該当いたします。ただ余り細かい
規定である現行法の九百二十四條の第二項というようなものは、これを止めたわけであります。尚親族会の同意を必要としないことにいたしたわけであります。
次の八百六十二條は九百二十五條に該当いたしますが、但書を止めたわけであります。
次の八百六十三條はこれが家事
審判所が後見人に対して、
一般的に
監督権を持
つておるということを決めた
一般的な
規定であります。即ち「後見の事務の報告若しくは
財産の目録の提出を求め、又は後見の事務若しくは被後見人の
財産状況を調査することができる。」、第二項で請求若しくは職権によ
つて被後見人の
財産の管理その他後見の事務について必要な
処分をなすことができるというようにいたしまして、
一般的に
監督権を持たしたわけであります。これは現行法にいろいろな細かい
規定のある、いわゆる九百二十六條九百二十七條を削り、而も九百二十八
條等を一緒にして、この八百六十三條というもので
一般的な
監督を認めたわけであります。要するに九百二十六條乃至九百二十八條に代る
規定として、
一般的な
監督権を認めたものが八百六十三條であります。
次の八百六十四條は現行法の九百二十九條と大体
同一でありますが、親族会の同意というようなものを止めて、後見
監督人あるときはその同意、ないときはその同意も必要でないということにいたしたのであります。
それから八百六十五條、これは大体現行法の八百八十七條、これは現行法では九百三十六條の中に八百八十七條という
規定が準用されておりますが、それがなくなりまするので、特に現行法の八百八十七條のような
規定を
規定する必要が出て参りましたので、結局は現行の八百八十七條と同じ
規定をここに置いたわけであります。
次の八百六十六條は、現行法の九百三十條そのままであります。
次の八百六十七條は、現行法の九百三十四條に該当いたします。
次の八百六十八條は、現行法の九百三十五條に当るわけであります。
次の八百六十九條は九百三十六條に当るわけであります。
次の「後見の終了」でありますが、この八百七十條は現行法の九百三十七條に該当いたします。親族会というのを、家事
審判所に改めただけであります。
次の八百七十
一條は現行法の九百三十八條に該当いたす
規定でありますが、これは第二項の親族会の認可を必要とするという
規定を落したわけであります。尚勿論現行法では後見
監督人を必ず立会わすことにな
つておりますが、後見
監督人は、必須機関ではないことになりましたので、「後見
監督人があるときは」、ということに改めたわけであります。
次の八百七十二條は、九百三十九條現行通りであります。
次の八百七十三條は現行法の九百四十條そのままであります。
次の八百七十四條は現行法の九百四十
一條に該当し、そのままであります。
次の八百七十五條は、現行法の九百四十二條に該当する
規定であります。
次の八百七十六條は九百四十三條に該当する
規定であります。
次の「扶養」は相当変更いたしたのであります。先ず扶養の範囲につきましては、現行法九百五十四條、尚この間でちよつと先程も申しましたように、親族会に関する現行法の九百四十四條乃至九百五十三條という
規定はすべて削除いたしたわけであります。
次に扶養の
関係でありますが、八百七十七條第一項は現行法九百五十四條の第一項と同樣でありまして、「直系血族及び兄弟姉妹は、互に扶養をする
義務がある。」という点は変りません。尚現行法の第二項は「夫婦ノ一方ト他ノ一方ノ直系尊属ニシテ共家ニ在ル者トノ間亦同シ」ということにな
つておりますが、先ず家に在る夫婦の一方と他の一方の直系尊属という「家に在る」ということがなくなるわけであります。而して家ということがなくなれば現行法の解釈でも扶養
義務があるかどうかということは非常に疑わしいことにな
つて参るのでありますが、一律的に夫婦の一方とその家に在る直系尊属との間において、必ず扶養
義務があるということは、むしろ実情に副わない憾みがあるので、一應扶養の
関係は直系血族と兄弟姉妹の間だけに限
つて置くが、特に実情から見て、扶養の
関係を認めてよろしいと思われる場合に限
つて、三親等内の親族間において、家事
審判所が特に扶養の
義務を負わすことができるということにいたしたのであります。即ち嫁と舅、姑との
関係におきましても、当然には必ず扶養
関係があるとは限らないので、特別の事情がある場合に特に家事
審判所が扶養の
関係を認めて行く、或いは又継親と継子の
関係、嫡母と庶子の
関係、この
関係はこの
法律では親子の
関係を法定的に規制することを止めたわけであります。親子の
関係があれば、当然一項の方で扶養の
義務があるのでありますが、嫡母庶子、継親子
関係に親子の
関係を認めないので、姻族一等親の
関係になるわけであります。そういう
関係におきまして、三親等内の親族になりますから、特別の事情があれば、家事
審判所が扶養の
関係を認めるということにいたしたわけであります。即ち直系血族と兄弟姉妹は、法定的に扶養
義務があるが、それ以外は三親等内の親族
関係に対しては、特別の事情があるときは家事
審判所の決定によ
つて扶養の
関係を生ずるということになります。尤もその
関係でも、事情が変更すれば
審判を取消すことができることにいたしたのであります。
次の八百七十八條と申しますのは、現行法の九百五十五條から九百五十八條の
規定を変更いたして一本に
纒めたわけであります。現行法におきましては、扶養の権利者の数人ある場合、或いは扶養
義務者が数人ある場合において、その順位等につきまして刻明に
法律で
規定して、特定不動のものにいたして置くことは実情に副わないものがあるのと、その順序等につきましても或いは個人の事情等から
考えて、適当でないと思われる場合がある、それと同時に、家事
審判所という家庭の面倒を見る公の機関ができましたので、扶養
義務者が数人ある場合、扶養権利者数人ある場合のお互いの順序等につきましては、一應当事者
関係の話合いで決めるが、話合いができないときは家事
審判所がこれを決めるということにして、家事
審判所に相当の権限を與えたわけであります。その順序のみならず、その扶養の
程度及び方法につきましても、八百七十九條におきまして、やはり一應は当事者の話合いで、若し話合いが整わないときには、家事
審判当がいろいろな一切の事情を考慮して決めるということに、八百七十九條においていたしたわけであります。
而して最後に八百八十條でそういうふうに一應話合いなり、或いは家事
審判所の
審判で決ま
つた場合といえども、尚事情の変更があ
つた場合は、その話合いの結果、或いは
審判の結果を変更若しくは取消すことができるということにいたしまして、大体において扶養の
関係は当事者の協議若しくは家事
審判所の
審判によ
つて決定することにいたしたわけであります。
八百八十
一條は現行法の九百六十三條に該当いたします。