○
岡部常君 私は、すでにこの
委員会におきましても問題にな
つておりまする
司法省の
存廃に関連する問題をお尋ねいたしたいのであります。
新聞紙上で承わりますると、すでに衆議院でもそのことが
質問せられておるように伺
つておりますから、そのことに対しましては重複を避けて、それに関連する
一つの問題を
質疑いたしたいのであります。
存廃は
如何ようともあれ、今回の
裁判所制度の改革によりまして、
司法省内部にいろいろな変動が想像せられるのであります。それにつきまして私は
行刑局の
將來、
行刑の在り方ということにつきましてお伺いいたしたいのであります。
或る
新聞の
記事によりますると、
行刑局はそのままとするが、特に
保護事業関係の
事務は拡大強化する方向に進めるということの
記事が出ておるのであります。これは
司法当局がお出しに
なつたかどうかは存じませんが、この後段の
司法保護事業関係の
事務を拡大強化するということにつきましては、私も非常に結構な考え方であると思うのでございますので、是非こうして戴きたいと存ずるのでありまするが、この文章で見ますると、
行刑局はそのままとするがというふうに出ておりまするので、何らかそこに軽重の差ができておるかのようにも取られるのでありますが、まさかそんなことはないことを私は確信いたします。又その半面といたしましては、
行刑はすでに
相当整備せられ拡大強化せられて、その必要はない、もう十分であるかのようにも取れるのでありますが、若しそういうふうな
意味がここに取られまするならば、大いに考えなければならないのではないかと信ずるのであります。
現在の
行刑の状況は、私が申すまでもなく、又日常現れておりまする状況で、
政府当局は勿論、世間でもよく御
承知であろうと存じまするが、極端に申しますれば、
行刑は正に破産状態に瀕しておると申しても差支えないのであります。甚だ悲しむべき状況に立至
つておるのであります。平素四万から五万位を上下しておりました收容者が、現在におきましては正に七万台を突破いたしまして台八万になんなんとするというような状況になり、而もその増嵩の勢いは底止するところを知らないのであります。而も戰災によりまして受けました被害というものが四割何分ということになりまして、收容力が著しく低下しているときに、かくのごとき收容者増嵩の傾向を呈しておりまするので、ここに非常な難問題が横わ
つているということは、皆さんの御
承知の
通りであります。私は平素でもそうでありますが、こういうふうな
國家非常時に際しまして、
行刑に対する
國家の考え方、やり方というものが、いかに
國家の治安に重大なる
影響を及ぼすかということを考えまして、
現状と照し合して寒心に堪えんものがあるのであります。私が申すまでもなく、外の部面がいかに改善せられまして充実せられましても、たつた
一つ行刑という一点で破綻ができなするならば、
國家はそこで崩壞するというようなこともないとは申せないのであります。遠くフランス革命の時に、
一つの小さい刑務所が破獄せられたことが導火線とな
つて、あの大革命が勃発したというようなことも、余りに有名なのであります。日本におきましては、刑務官が非常に苦しい立場に耐え忍んで、すでに数ケ所に起つた暴動のごときも、よく最少限にその暴動を喰い止めて、まあ大して世の中に問題を惹起しなか
つたのは、せめてもの幸いだと存ずるのでありますが、これはものには程度がございますから、恐らく
最後の線まで行
つているのではないかということを考えて、非常に心配しているのものであります。
そういう非常な時に際会しておりまするから、從前とてもそうした
行刑のことについては深き関心を持たれているとは思いますが、一度しくじりましたならば取返しのつかない線まで行
つていることを、私はこの際敢て断言いたすのであります。
將來どういうふうに
行刑を持
つて行かれるか、又根本的には、
行刑に対して
保護、或いはその外の裁判とか、或いは檢察とかいうようなものに対比いたしまして、どういうふうな重みを持たしたらいいかというようなお考を伺えれば大変結構であります。又今後
制度の上におきまして、いろいろな動き方がありといたしましたならば、いかなる方法に
行刑というものは持
つて行くのがよろしいかというようなことは、これは差当りの問題よりは、もつと根本的の
國家將來の刑政の大本を左右するものであろうと考えるのであります。十分に御考慮にな
つておることとは存じますが、お考えの一端でも伺えれば大変結構だと思
つておるのであります。