○
政府委員(
愛知揆一君)
金融機關再建整備法の一部
改正法律案について
逐條的に御
説明いたしたいと思います。御
參考のために
只今謄寫板刷りのものをお
手許に配付してございますのでありますが、それと
法律案とお見較べの上お聽きを願えれば仕合せと存じます。
この
改正の
法律案は
金融機關の
再建整備をいたしまする
最終の
處理の
段階に入りまして、
株主に
確定損を負擔させまする場合に、若し未
拂込がありまする場合にその未
拂込を
懲收しなければならないわけでございます。その場合における未
拂込の
資本金の
懲收を
規定いたしましたのがこの
改正法律案の
骨子にな
つておるわけであります。
尚第二點といたしましてここに
本案の
大綱という中にも書いてございますように、
再建整備中に解散する
金融機關の
措置に關しまする
規定も、新たに挿入いたしたのでございまするが、この點はむしろ
本案といたしましては
重要性は未
拂込資本金の
懲收に較べてずつと少ないのでございまして、實は
再建整備中に解散する
金融機關というものは、
事實問題としてこれは豫相されないのでございます。萬一さようなものがありました場合の
法律的な
措置を念のために
規定せんとするものでございます。從いま島てこの
改正法律案の
骨子はまず未
拂込次本金の
懲收に關する諸般の
規定である。こういうふうに御
了解願つて差支ないかと存ずるのであります。
條文から申しましてもここに書いてございまするように、第二十
五條の二から第二十
五條の十八まで二十
五條關係の全部と第五十七條の二と殆んど大半はすべて未
拂込資本金の
懲收に關する
規定でございます。ここに
大綱としてプリントいたしてございまするように、未
拂込資本金の
懲收につきまして大別いたしますると、ここに掲げました三つの項目がその
内容にな
つておるわけでございます。
逐條的に申上げまする前に、まず以てその點について御
説明いたしたいと思います。その第一點は未
拂込資本金の
拂込責任の問題でございまするが、これは
指定時、即ち
昭和二十一年八月十一日午前零時というのが
指定時にすでに
法律上決ま
つておるわけでございまするが、その
指定時に現在いたしました
株主がこれを負うところという
原則を確立いたしまして、その
指定時前に
株主でありました者、それから
指定時後に新たに
株主になりました者には
拂込の
責任はないというのが第一點でございます。ただ併しながら
指定時の後に新たに
株式の
讓渡を受けました者、即ち
指定時後の新
株主が場合によりましては
拂込の
催告に積極的に
應じたいという場合もありうるわけでございますので、さような
指定時後の新
株主の要求がありまする場合には
拂込をなしうるようにチヤンスを與えるということにな
つておるわけでございます。若しさような
指定時後の新
株主が
拂込をしなか
つた場合には、新らしい
株主は
失權をいたしまして、その所有しておりました
株式はすべて
指定時の
株主に歸屬いたしまして、その歸屬いたしたところによりまして、
拂込の
催告が
指定時の
株主に對してなされるというのが第一の點でございます。
それから第二の點は
指定時後の新らしい
株主が
拂込に應じたものという例外的なものを除きましては、すべて
指定時の
株主が
拂込の
責任を負うのでありますが、その
責任の
態様もその
株主が
個人でありまする場合、
法人でありまする場合、又
法人の中におきましても、
閉鎖機關でありまする場合、それぞれの場合に應じまして、その
態様を異にするわけであります。即ち
個人と
閉鎖機關とは
失權によりまして、
拂込責任をも免れるのでありまするが、
閉鎖機關につきましては、後に
逐條的に申上げまするが、現在特殊の
處理が進行中でございまするので、その
關係を願慮いたしまして、買戻の
機會を更に
一定の
期間だけ認めるということに相成るわけでございます。それ以外の
法人につきましては、
拂込債務は免れ得ないということになるのでございまするが、更にその場合にも
二つの例外があるのでございまして、御承知のように
特別經理會社と
会融機關との
拂込の
債務は
舊勘定に屬せしめられまするので、すでに
制定されておりまする
再建整備法の
原則に從いまして、それらは
打切整理をされるわけでありまするから、
拂込債務という問題は起らないということになるわけであります。
それから第三の
原則は、
指定時後に新たに
株主になりましたものが、
善意でその
株式を取得した場合は、その
株主が
失權によ
つて蒙
つた損失を直前の
讓渡人に對して求償をなし得るという第三の
原則があるわけでございます。
指定時後に新
株主になるものにつきましては、いろいろの場合があるわけでありまするが、
當然拂込を
催告されるであろうというようなことは全然豫想しない
善意でその
株式を取得したというような場合には、その起
つた損失を
讓渡人に對して請求をなし得るということにな
つておるわけであります。
以上申上げました三點の中第一點と第二點が主たる
内容になるのでございます。それから先程申しました如く、
事實上の適用は殆ど豫想したしておらないのでありまするが、一
應再建整備中に
金融機關が解散する場合、これについての
規定が元の
法律には落ちておりましたので、その點をここに三點だけ追加
規定することにいたしたのでありまして、第五十三條の二と第五十三條の三がその
規定でございまするが、その
一つは
解散金融機關の
清算人の作成いたしまする
財産目録と
貸借對照表竝びに債權者に對する
債權申出の
催告とい
つたようなものは、その
金融機關の新
勘定に屬するものについて行えば足りるということを法定したわけであります。又第二點は新
勘定に屬する
債務の辯濟を禁止する。第三點は
再建整備完了後も
一般原則によ
つて清算措置を進行する。かようなことに相成るわけであります。
以上で全體についての一應の御
説明を
終つたのでありますが、以下各
本條につきまして、
簡單に
逐條的に御
説明いたしたいと思います。
まずこの第二十
五條の二に入りまする前に、
法律案の方の、『第二十
五條第一項第三號中「
勅令の定めるところにより」を削り、同條第五項を削る。』というふうに相成
つておるわけでございます。元の
法律の第二十
五條と申しまするのは、いろいろ決まりました方式によりまして、
損失整理負擔の
處理の
順序が決ま
つておるのでございますが、第二十
五條の第三號におきまして、「
資本に未
拂込金があるときは、
勅令の定めるところにより
拂込をなさしめ」という
規定が元の
法律にあ
つたわけでございまするが、その「
勅令の定めるところにより」を削るというのがこの
趣旨でございます。又「同條第五項を削る。」とございまするのは、その削られます第五項には、「第一項第三號の
規定による
拂込の場合に關しては、他の
法令又は定款にかかわらず、
勅令で特別の定をなすことができる。」というふうに
規定されてあ
つたのでございます。その後新
憲法の施行ということになりましたので、未
拂込株金の
徴收というがごとき
個人或いは
法人の權利の得喪に非常な
關係のある問題を定める性質のものでございまするので、「
勅令の定めるところにより」を削り、又「
勅令で特別の定をなすことができる。」とい
つたようなことは全部これを削りまして、
當時勅令で
制定を豫想しておりましたことを、この
法律によ
つて、
法律として御
制定頂きたいと、こういうふうに考えたわけでございます。
さて第二十
五條の二でございまするが、これには「前條第一項第三號の
規定により」というふうにな
つておりますが、これは即ち元の
法律の第二十四條の第一項第三號のことを言
つておるのでありまして、その第三號の
規定と申しまするのは、「
資本の
金額の九割に相當する
金額まで、
株主において
確定損を負擔するものとする。」という
規定でございます。その
規定によりまして、「各
株式につき
拂込をなさしめる
金額は、各
株式につき計算された
確定損の
整理負
擔額から
當該株式の
拂込濟金額を控除した
金額を超える
金額でなければならない。」、要するにこの
整備の
最終段階におきまして、未
拂込を取るところのその限度をここで
規定したものでございます。このプリントの方の
説明の所を御覧頂くと分るのでございますが、ここに擧げましたような例におきまして、
舊株が四十五圓の
拂込濟みであ
つて、
確定整理負
擔額は四十二圓五十錢で、ある場合におきましては、
舊株については、殘りの五圓についても
拂込を取る必要はないわけでありまするが、第一
新株については、
確定損が四十二圓五十錢に對しまして、
拂込濟額が四十圓でございますので、その
差額二圓五十錢、これを越える額を未
拂込として
徴收しなれけばならない。で、
端數整理とか、將來の
資本構成とか考えまして、これを三圓にするも可でありまするし、或いは五圓ということにな
つても結構である、かような
規定でございます。若し第二
新株について申しまするならば、その
拂込濟額が二十五圓ある場合、
差額は十七圓五十錢になりますので、十七圓五十錢を一錢でもオーヴアーする
金額、例えば十八圓でも、或いは二十五圓でもこれを
徴收してよろしい。「但し、
當該株式の未
拂込金額を超えることができない。」これは當然のことでございますが、これだけのことを
本條におきましては
規定いたしたわけでございます。
次は第二十
五條の三でございます。第二十
五條の三は、いろいろの
規定がございますのでありますが、一口に申しまするならば、かくいたしまして
減資をいたしまする等の場合におきまする
株券の
整理の
規定である。又第二項、第三項等におきましては、
減資の
效力の
發生の時期等のことを
規定いたしておるのでございます。
再建整備によ
つて減資しなければならない
金融機關で、
株券を發行しておりまするものは、その
株券を
一定の
期間内に提出せしめまして、
減資後におきましては、
券面金額等を改訂して返還せしめるということにするわけでございます。ここにもございまするように、
株主及び
登録質權者は、一ヶの
月範圍内で決められました
期間内に、
株券の提出すべきものを
報告するわけでございます。そうして囘收しました
株券につきましては、その
記載事項の中で、一株の
金額その他の
事項に
所要の
變更を加えるわけでございます。例えばその他の
事項と申しますのは、
資本の
總額等でございまして、その點は
商法二百二十
五條の
規定に照應して決めるわけでございます。それから新たなる
株券を交付いたしまする時期は、
減資の
效力が
發生いたしました
期日の後ということになるわけでございます。かようにいたしました囘收いたしました
株券に、
所要の
變更を記載せしめまして返還をする、それを以て新
株式とするというようなことは、一株の
株金額が、先程の例でも申上げましたように、例えば五圓とか七圓とか、
商法の要求するところと異
つて來る計算になるのでございまするが、その
變則的な
事態は、いずれにいたしましても、すでにできておりまする
金融機關再建整備法の第三十一條の第三項によりまして、
減資後一ヶ年を限るという特殊の短
期間の變態的な
事項でございまするので、早晩どつち
みち株券等の
變更を要しまするので、現在の
用紙不足等の
事態に鑑みまして、かような
變則的なことを認めようとしたものでございます。
それから次は、
法律案の二項の二行目になるのでありますが、この
條項の第三項は、
減資の
效力の
發生の時期を謳
つておるのでございます。これは、ここに他の
條項をいろいろと引ひておるのでございまするが、
簡單に申しまするならば、未
拂込株金を
徴收しない
金融機關の場合と、それから未
拂込株金を
徴收する
金融機關との場合に分けまして、未
拂込株金を
徴收する
金融機關につきましては、
拂込の
期日に
減資の
效力が
發生をするわけであり、それから未
拂込株金を
徴收しない
金融機關につきましては、
株券を發行しておる普通の場合には、この
條項の第一項の公告によ
つて明らかとなりまする
株券の
提出期間の滿了したときであり、又は
農業會その他のごとく
株券を發行しておりませんときには、新
舊勘定の區分の消減をした日というふうに
規定してあるわけでございます。すべて先程も申しましたように、
減資の場合の
株券の
處理と、或いはその
效力の
發生の時期とい
つたようなことを、この二十
五條の三では
規定いたしておるわけでございます。
次は二十
五條の四でございます。第二十
五條の四は、
指定時の後の新
株主に對する
催告でございます。冒頭に用しましたごとく、未
拂込の
徴收の
催告を受け、又その
責任をしよう者は、
指定時の
株主でございまするが、この第二十
五條の四では、
指定時後の新
株主に對しましても、
拂込に應じない場合には應じさせるというチヤンスを與えると申したのでありますが、その場合を
規定しておるわけでございます。從いまして、この
法律文のプリント制のもので申上げまするならば、三頁の三行目の直ぐ上下が括弧にな
つておりまするちようど眞中に「以外の
株主」とありますが、この「以外」というところに意味があるわけであります。即ち
指定時において
株主として
株主名簿に記載されたもの以外の
株主に對しては、「前條第一項の
期間内に決定
最終處理方法書に定める
當該株式の未
拂込株金の
拂込をなすべきものを
催告し」とある通り、
指定時後の新
株主に對する
拂込催告の
規定であります。若しその
株主が
拂込に應じません場合は、その
催告が初めからなか
つたものとみなしまして、それと同時にその
株主は
失權をいたします、又その
株式は
原則としては
指定時の
株主に歸屬するわけでありまして、
指定時の
株主が存しない場合又は
指定時の
株主が現在失格しておる場合等には、遡
つて未
拂込株金徴收金融機關それ自體に歸屬せしめるわけでございます。信託の場合とか或いはその他の
規定がございまするが、一口に申しますれば、今申したところに盡きるわけであります。次は第二十
五條の五について申上げたいと思います。第二十
五條はこれは愈々本格的な
指定時の
株主に對する
拂込催告に關する
規定でございます。前の
規定によりまして第一囘の
拂込催告が
效力を失いました場合には、その
拂込期間の滿了後二週間經ちましたときから一箇月以上二箇月以内の範圍内で
指定時
株主の
拂込期日を定めるわけであります。そうして
拂込の
催告をいたすわけでございます。たで問題になりまするのは、冒頭に總括的に申しましたように、
金融機關と特經會社につきましては、現在それぞれ
再建整備、或いは企業
再建整備等の
法律によりまして、現在新
舊勘定に區分して
整理を實行中であるわけであります。
舊勘定に屬する
株式の未
拂込株金を
拂込催告に應じて新
舊勘定の區分の存續中に
拂込むことは、法規上もこれは禁止してあるわけでありますし、又適當でもございません。從
つて金融機關又は特經會社の
拂込期日は、その
催告が新
舊勘定の存續中にあ
つた場合は、その區分が消滅いたしましてから一箇月を經過した場合ということにな
つておるわけでございます。その點がこの二十
五條の五の第四項によ
つてはつきりといたしておるわけでございます。
次は二十
五條の六について申上げます。第二十
五條の六は
失權の
規定でございます。
指定時
株主に對する
拂込催告のありました場合に、その
株主が
個人又は
閉鎖機關である場合には
失權を認めるというのが、この
規定の
骨子でございまして、信託等の場合におきましてはやはり委託者が
個人又に
閉鎖機關である場合には、この
原則を適用するわけであります。この二十
五條の六はただそれだけのことでございまして、注文にもございまするやうに、左の各號の一に該當するものである場合において
拂込がありません場合には、その
株主は
拂込の義務を免れ、
失權をするということでございまして、そのものというのは、
法人以外のものの所有する
株式と、
閉鎖機關令によ
つて指定された
閉鎖機關の所有する
株式、要するに
個人と
閉鎖機關の
失權の場合の
規定でございます。ここで何故に
個人と
閉鎖機關だけ
失權を認めるような考えをと
つておるのかということについて
簡單に附加えて置きたいと思います。
個人につきましてはすでに財産税の負擔等を大きく背負
つておりますることと、株金
拂込の負擔力が
法人に比して小さいこと、又これ以上特殊の負擔を強制することは酷に失すると考えまするのみならず、又これを強制することは却
つて全體の
再建整備を遲らすというふうに考えたからでございます。それから
閉鎖機關につきましては、前にもちよつと申しましたように、
閉鎖機關令によりまして特殊の
整理を實行中でございます。特殊の
整理をやりました結果、他の
債務を比較いたしまして株金
拂込に應ずる力がある場合はともかくでございまするが、然らざる場合は特に未
拂込株金を優先させるということは不合理であるというふうに考えましたので、
拂込を
閉鎖機關側の任意に委せることにいたしたのでございます。
次は二十
五條の七でございます。二十
五條の七の
規定は、未
拂込株金の強制
徴收の
規定でございまして、本
法律案中の
一つの重要な點をなしておるのでございます。第二十
五條の七におきましては、法文にもございまするように、全條各號に掲げるもの以外のもの、即ち
失權を認められない
法人その他の場合でありまする場合には、その
株主が
拂込期日までに
拂込をしない場合の
規定でございます。その際は未
拂込株金の
拂込をしない
株式を、
一つは競賣法の
規定によ
つて競賣をする、併しそれだけには限定いたしませんで、他の方法によ
つて賣却することも認めるということにな
つておるのでございます。以下
商法の
規定が澤山
關係して參
つておるのでございまするが、このプリントの方で御覧頂きまするように、その
株式の處分につきましては、大體
商法の滯納
株式處分手續に準じておるのでありまするが、處分の方法は今申しましたように任意賣却をも認めておるというところに特徴があるわけでございます。それから
指定時
株主から前の
株式讓渡人には一切
責任を負わせない
原則を取
つております。又
株式を處分して得ました
金額が滯納
金額に滿たない場合、未
拂込株金徴收金融機關は、
指定時の
株主に對してのみ不足額の辨濟を請求し得る、それから滯納
株式を處分できません場合は、
株主に對してその旨を通知し、その
株主を
失權させるということにな
つておるのでございます。それらは例えて申しまするならば、
商法二百十四條第二項及び第三項の
規定の準用という場合のことであるわけでありまして、即ち滯納
株式の處分によ
つて得た
金額が滯納
金額と違約金の合計額より多
つた場合は、その超過額は
株主に戻すという
規定が、
商法二百十四條第二項の規法でございまするがごとく、その點におきましてはこれを準用しておるわけでございます。それからこの
法律案の第三項、即ち八頁の二行目以下に書いてありまするところの
商法とか非訟
事件手續法の
規定というのが準用されておりまするのは如何なる場合かと申しますると、これは會社
整理の場合の株金の
拂込に關して認められた簡易手續による強制執行の手續でございます。即ち強制執行は通常の方法によりまする場合は、裁判所の判決を受けて、執行文を附した判決の正文に基かなければこれをなし得ないわけでございまするが、多數の
株主を相手としてこのような手續を取ることは、
實際問題としてできませんので、煩に堪えませんので、簡易な
催告手續を經まして、
株主の表によりまして裁判所の認可を得て強制執行がなし得るというようなことに相成る譯でございます。
次は第二十
五條の八について申上げたいと思います。第二十
五條の八は
金融機關指定時
株主が
金融機關である場合の特例でございまして、即ち
金融機關たる
指定時
株主が未
拂込株金の
徴收の
催告を受けた場合、その
規定をここに出したのであります。ここに第一項に、九頁の一行目でございますが、「當該
金融機關に對し第二十四條第一項第七號云云」の「
規定の適用があるときは、」と書いてございまするが、これは
金融機關再建整備法の本法によりまして御承知のごとく
確定損がございまする場合に、その損を誰がどういうふうに負擔するかということが一號から十號までに亙
つて、極めて詳細に
規定されている譯でございます。例えば益金があります場合に先ず益金がこれを負擔する、次は積立金、次は
資本金の九割、次は
法人の大口預金の割合というようなことを切捨てまして、いわゆる預金その他の
債務の七割の切捨計算がなされる譯でありますが、それらのことが
規定されておりますのが二十四條第一項七號又は第九號の
規定の適用があるときでありまして、この第七號によりまして、初めて未
拂込株金を
徴收しなければならん。それが
確定損の負擔をするという
順序がここに現われて來る、その場合を言
つておるのであります。かかる
催告を、
金融機關たる
指定時
株主が受けました場合におきましては、
金融機關再建整備法の
規定に從いまして、先程も申しましたように、その
拂込債務の切捨
整備をいたすのでございます。
金融機關が未拂株金
拂込の
催告を受けました場合には、その額につきまして、
拂込催告額についての打切額の計算をしたしまして、それに相當するだけの數の
株式について
失權をするということになる譯でございます。これが即ち法文で申しますると、「
催告のあ
つた株式を、
株式を發行した者、
株式の種類及び
拂込催告額の異なるものごとに區分し、」その「異なるものごとに、」ということがこの
法律に書いてある譯でございます。そうしてその區分の異なるごとに應じて
確定損の
整備負
擔額を計算する。而も計算した額を、當該區分に屬する
株式の一株あたりの
拂込催告があ
つて除して得た數の當該區分に屬する
株式について
失權をするというのがここで
規定されてあるのでございます。これを極く
簡單に單純な例で申上げますならば、
拂込催告額が二十圓のもの、而もその
株式が種類の異らざる同一種類の
株式につきまして、
拂込催告額が二十圓でありまして、その株の數が四株について考えまするならば、
損失の負
擔額は四十八圓となる譯でございます。その四十八圓を二十圓づつで割りますと、株の數は二・四株となるのでありまするが、これを一以下の端數がある時は端數を切上げまして三に切上げて三株だけ
失權をするということになるわけであります。尚又ここに區分の異なる毎に區分するとありますのは、發行いたしました
金融機關の別、それから
株式の種類というのは優先株、未拂株、議決權のない株とい
つた種類の株であります。それから
催告額が異なるというものについては特に申上げる必要もないかと思うのであります。要するに今申しましたように同一の區分の株であ
つて、確定の
損失の負擔總額を出しまして、その總額を
拂込催告額で割りました
株式の數、それに一以下の端數がある時にはその端數を切上げてその
株式について
失權さするということにな
つているわけでございます。非常にこういうことはややつこしいのでありますが、尚又必要に應じましては詳しい
説明によりまして御
説明いたしたいと考えます。第二十
五條の九は
只今申しました
金融機關の場合と大體同じでございまして、特に會社が
指定時の
株主とありまして、未
拂込株金の
催告を受けた場合でございます。即ち
指定時
株主特經會社が
拂込催告を受けました場合において、當該特經會社が舊債權の切捨
整理をしなければならん場合は、各
株式の
拂込債務について各株毎に
損失負擔率を乗じて、これを切捨てることの代りに、同一區分に屬する
株式は一活してその區分に屬する
株式の數に
損失負擔率を乘じて得た數の
株式を
失權整理するということで簡易なる方法によ
つて失權の株數を決めよう、こういう考でございまして、その
趣旨なり、立法の必要性は第二十
五條の八と全く同様でございます。それから次は第二十
五條の十でございますが、これは
金融機關が
指定時に所有いたしました特經會社の發行した
株式についてその未
拂込の
催告を受けて
失權整理を認められるのでございますが、それ以外の
株式については
催告額の全額
拂込に應じなくてはならないということでございます。
それから第二十
五條の十一は打切り
整理と
舊勘定の
關係を書いたものでござしまして、
金融機關が
最終處理の完了、即ち新
舊勘定の區分が消滅いたしました後に未
拂込株金の
拂込催告を受けました場合には、
最終處理完了前に
拂込催告を受けた場合と同様に
失權整理をするという
規定でございます。これは
金融機關が新
舊勘定の區分が消滅した後に
催告を受けますと、新
勘定でこれを全部負擔しなければならないということに一應はなるわけでございますが、左様なことになりますると早く
金融機關が
整理をいたしたものが却
つて負擔が重くなる。再出發いたしました
金融機關に對して後から
拂込催告があ
つた場合には特にそうい
つたような不利があるということでは全體の均衡を失しまするので、
最終處理完了前に
拂込催告を受けたのであ
つたろうという程度にだけ、これは
失權を
整理するということにいたしたわけでございます。それから次は第二十
五條の十二でございます。この
規定は特經會社の新
舊勘定の併合後に未
拂込株金の
拂込催告を受けた場合でございまして、これは又二十
五條の十一と同じような立法
理由であり、立法の
趣旨にな
つているわけでございまして、
本條を設けました
理由といたしましては、新
舊勘定が併合されて
しまつて、
最終處理が全部完了したということによりまして、特經會社というものは、特經會社でなくなるわけでございます。從
つてその最後は、もしや打切り
整理をなし得なくなるわけでございますが、それでは折角新
舊勘定を併合して、
整備計畫を實行した會社の方が負擔が重くなるということになりますので、これの均衡を考えて、かようにいたしたに過ぎないのでございます。二十
五條の十三でございまするが、これはここにプリントに書きましたように、三つの場合がござしまして、
指定時
株主が
失權した
株式は、未
拂込株金徴收金融機關それ自體に歸屬するということをその
一つとして謳
つてございます。それから第二點は、すべて
株主の
失權によ
つて未
拂込株金徴收金融機關に歸屬した
株式は、決定
最終處理方法書に定めるところにより、競賣その他の方法によ
つて、處分しなければならないというのが第二點でございます。又第三點は、
指定時
株主、
閉鎖機關が
失權した
株式については、
一定の日まではその
株式の
拂込催告額に相當する
金額で、買戻しができるのでございます。でこの點は先程も申上げましたように、
閉鎖機關の
整理手續が完了しない間は、
拂込の事業を
閉鎖機關としては持ちませんので、止むなく
失權することになりまするので、
一定の
整理段階に達するまでに、買戻しの
期間を
閉鎖機關に認めておこう、こういうのが、この第三點の立法の
趣旨にな
つておるわけでございます。
次は二十
五條の十四でございまするが、二十
五條の十四は、
指定時の
株主であるまするところの
閉鎖機關が、前條の
規定によりまして、
失權をした場合に、その
閉鎖機關には議決權を殘してやりたいと、
失權によりまして發行した
金融機關の自己株と
なつた當該の
株式につきまして、
商法第二百四十一條の
規定に拘らず、即ち自己株については、議決權を有しないという
規定があるに拘らず、議決權を存在させたいという
規定でございます。そうしてその議決權の行使を當該
閉鎖機關の特殊
整理人に委任をするということにいたしたいと考えたわけでございます。
それから次は二十
五條の十五でございまするが、これは
指定時後に新たに
株主となりましたものが、
拂込の
催告を受けました場合は、必ずしも
拂込に應じないでもよいことにな
つておりますることは、先程申上げた通りでございます。併しながら
拂込に應じない場合には
失權をいたしまして、その
株式は
指定時
株主に歸屬するのでありまするが、それによりまして生ずるところの損害を前の
讓渡人について求償することができる。そうして求償によ
つてこれを保護しようということでございます。この
規定は順次
指定時
株主にまで遡
つて行くわけでございます。ただ併しながら
法人の場合と、それから證券業者というような專門の人、或いは又私共、その他この立案當時に參與いたしまして、かかる
事態が起ることを豫め豫知し得る地位にお
つた者というような者については、こういう求償權を認めてやる必要がありませんので、それらの者はここに省いたわけでございます。それ以外の者については、順次前の
讓渡人に對しまして、だんだんと求償させることを認めたわけでございます。尚ここに五月一三日と書いてありまするのは、五月一三日當時、
關係方面とかかる種類の交渉がまとま
つた日でございまして、その日以後におきましては、すべての人が先ずこういうことを豫知し得たであろうという、その時期にここに一線を劃したわけでございます。
それから第二十
五條の十六は、民法、
商法の相殺の
規定を排除いたしまして、特例を設けたものでございます。即ち
商法二百條の二項の
規定によりますれば、
株券の
拂込については、相殺は認められません。對抗し得ないことにな
つておるのでありまするが、債權
整理に伴なう未
拂込株金の
拂込については、相殺を認めるというのが第一點であります。
第二點は、相殺は民法第五百
五條によりまして、辨濟期の到來したもので兩方共なければならんわけでありますが、この場合には、辨濟期前の債權を以てしても對抗し得る。未
拂込株金の
拂込について相殺することができるという
規定をいたしたものが第二點でございます。いずれもここに
條文に明かでございますように、
商法第二百條第二項その他の
規定の關連をここに謳
つてあるわけでございます。
次は第二十
五條の十六で、この相殺を認めた
理由でありますが、これは株金の
拂込は、現實に金錢を以てなされるということは當然の
原則でございます、併しながら
株主に現金がない場合、強いて現金徴集を
原則とするということにいたしました場合には、株金の徴収を困難ならしめるし、又
再建整備それ自體を遅延させる虞れがあるので、かかる特例を認めて頂くことを適當と考えたわけであります。
それから第二十
五條の十七でございますが、これは未
拂込株金の
拂込につきましては、相殺を前條で認める外に、更に國償、地方債その他の有價証券を以ても、その
拂込に充て得る特例を設けたのであります。これまたその立案の
趣旨は、先程申上げました相殺の
規定を置きましたのと全く同様でございます。
それから次は二十
五條の十八でございますが、これまた
商法の
規定の適用を、
再建整備法に基きましては、
原則として排除しまして、必要ある場合には、これを準用するに止めてあるのでございますが、
本條においては、
商法未
拂込株金徴収に關する
規定の適用排除をここに
規定いたしたのであります。これについては、他に附け加えることもございません。
次は第五十三條の二でございますが、第五十三條の二は、冒頭にちよつと申しました如く、
株式會社たる
金融機關が
再建整備中に解散した場合でありましても、
再建整備法の
規定の適用はあるのでございます。その
舊勘定は、
再建整備法の完了、即ち新
舊勘定區分の消滅いたしました後に行われることになるのでありますが、新
勘定については、清算の準備的
措置はと
つておく必要がございますので、
財産目録なり、貸措對照表の作成なり、債權者に對する
債權申出の
催告に關する
商法の
規定は、新
勘定について働くということを
規定したわけでございます。
次は五十三條の三でございますが、第五十三條の三は、
解散金融機關に關する
只今の
規定と關連するものでございまして、
解散金融機關の自主的の清算
措置が、
再建整備法及び
最終處理完了後は行われることになるのでありますから、それまでは、新
勘定に屬する
債務の辨濟を停止せしめる必要があるわけであります。ここに擧げました、
金融機關經理應急
措置法第十六條は、
舊勘定債務辨濟の禁止の
規定であります。この十七條は、債權特定の禁止の
規定でありますが、これらの
規定を
解散金融機關の場合の新
勘定の
規定に準用したのであります。
最後に五十七條の二は、信用組合
農業會、漁業會等いわゆる組合組織の
金融機關の會員又は組合員が未
拂込出資金の
拂込催告を受けてこれを免れて
失權をいたします。併しながら他の
金融機關の場合と異りまして、これらの組合員又は會員というものは資金の貸付を受ける權利なり或いは施設の利用なり商品の購入とい
つた別個の
金融機關として特殊の地位を持
つておりますので、
失權をいたした
株式會社である
金融機關に對する場合と異りまして、
失權をした後六ヶ月間を限
つてその特權を享受することを認めようと、こういう
趣旨でございます。
尚最後に「附則第二項の次に次の一項を加える」とございますのは、單純な讀替
規定でございまして、現在の有價證券業者について、證券取引法がまだ施行されておりませんので、その施行に至るまでは有價證券業
取締法に
規定してある有價證券業者を以て有價證券業者とすることにしようとこれだけのことでございます。大變長くなりましたのでありますが、以上を以ちまして
逐條的の
説明を終ります。