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政府委員(
福田赳夫君) それでは
貯蓄運動を開始してからの
状況について御
説明申上げます。御
承知の
通り、昨年の三月三日に
金融緊急措置という非常の
措置をとりました。あの
措置は
通貨の
信任という問題から論じますと、極めて重大な問題であ
つたわけであります。
大藏當局といたしましては、最後までああいう
措置をとるということにつきまして、非常な逡巡をしてお
つたわけでありますが、諸般の
情勢上ああいう
措置をと
つたわけであります。果せるかな、この
措置をとりました後におきましては、
通貨に對する
信任という
見地から見ますると、非常に重大な問題と相成りまして、その後
預金をするという
傾向が極めて貧弱なものとな
つて參つたのであります。從いまして、三月以降におきまして、毎月六、七十億という金額が
通貨増發として出まして、そうしてこの勢は決して底止するところなしいうような
状況でありますと、結局いつの日にか
通貨全體の量というものが非常に
多額な量に上る、非常に
通貨の
増發ということになりますれば、そのこと自體だけでも、
通貨の
信頼感という
見地から見ますと、これは破壞的な問題とな
つて來るというふうに
考えれるのであります。尚、
終戰後の
經濟全體の
建直しの
見地から見ましても、
國民全體がその日その日の
生活から幾らかの
蓄積を殘して行く、
産業にいたしましても、その日その日の
企業經理の結果というものが、何らかの形でプラスにな
つて行くというこで、これは
企業のいわゆる
生産擴大ということにはならないのでありますが、さような
見地から見ましても、その裏をなすものは、
貯蓄ができる、
資金の
蓄積ができるという問題であるのでありまして、これは
貯蓄という問題を進行して行くことが必要であらうということを痛切に感するに
至つたのであります。幸いに昨年の夏の
議會が開かれております間におきまして、
衆議院を
中心といたしまして、
議會方面におきましても、これは
通貨の
信任、
再建という問題で、非常に
關心を拂はなけりやいかんということに相成りました。
共産黨以外の當時の五黨の
決議を以ちまして、
通貨安定決議案というものが
衆議院に提出され、その
決議を見たわけであまりす。たまたま
政府におきましても、
只今申上げた
通り、さような趣旨のことを
考えておりますので、
議會、
政府一體となりまして、この問題を
推進するということに相成りまして、今日に至
つておるわけであります。
さような氣運の起ります時までにおける
預金の
趨勢というものは極めて貧弱であ
つたのでありますが、
衆議院におきまして
通貨安定の議が起りました頃から前後いたしまして、
預金は相當
増加の
趨勢を示しております。即ち十月には七十七億圓の
預金の
増加を見ておる、十一月には七十二億圓、十二月が百五億圓、更に今年に入りまして、一月に六十八億圓、二月に七十八億圓、三月に百三十四億圓、四月に六十三億圓、五月に九十五億圓、六月に百十億圓、かような數字が出て參
つておるのであります。昨年の十一月からこの
貯蓄増強ということを本當に計畫といたしてや
つたのでありますが、十一月から三月までの
貯蓄増加の
目標は五百億でありますが、それに對しまして、達成した
貯蓄の額というものは四百五十四億、即ち九〇%の
成績を
收めておるわけであります。尚、本年度におきましては、
自由預金の
増加目標額を月百億圓と決めておるわけであります。百億圓と決めましたのでありますが、これをいかに使うかという問題でありますが、これは百億圓のうち五十億圓は
一般の融資に使う、即ち
産業資金としてこれを
銀行から貸出す金に當てられるわけであります。それから
財政の
所要資金といたしましては二十億圓、そのうち
國債が十五億圓で、
地方債が五億圓であります。それから
復興金融金庫の債券を買う
資金といたしまして十億円豫定し、それから更に
封鎖預金の引出しの財源といたしまして二十億圓を豫定し、合計百億圓というふうに相成るわけであります。かような計畫を以ちまして百億圓の
貯蓄計畫をいたしたのでありまするが、その
實績は
只今申上げた
通りであります。
そこで然らばこの百億圓の
貯蓄ができますると、この
通貨の
増發ということが相當減
つてよいのではないかという問題なのでありまするが、この第一
四半期、即ち四月、五月、六月という
期間におきましては、これは昨年度即ち二十一年度の
財政というものが非常に厖大な
赤字財政であることは御
承知の
通りであります。この
豫算の尻というものがここへ出て來ておるのであります。その結果といたしまして、
通貨の
膨脹ということは尚止むことなく引續いて行われたのでありまして、今年四月におきまして六十六億圓、五月におきまして七十二億圓、六月におきまして六十六億圓というような
通貨の
増發を見ておるのであります。
そこで、今後におきましてどういうことに相成りますかと申上げますると、今後やはりこの
財政の均衡をとりまして、極力
赤字ということを避けるという
方針で
政府は
豫算の編成を急いでおるのでありまするが、一面
産業資金につきましても、この
見地から非常な
多額の
通貨が出るということにつきましては、相當警戒を要すべきものというふうに
考えておるのであります。併しながらその
産業界の
情勢といたしましては、
公價の改訂ということが大
規模に行われた今日におきまして、この八月、九月、十月ぐらいの
期間というものが、
資金的に見まして相當、いわゆる端境期と申しまするか、さような時機に際會しておるのではないかというふうな
考えを持ち得るのであります。これに對しましては
産業資金の
供給の面からも、
機動的臨機の處置をとることを要するのでありまして、この第二
四半期の山というものに對しましては、これは今後一年間を通ずる計畫とは別個な取扱いをしなければならんというふうに
考えておるのであります。そういたしますると、
財政の方でも若干の
赤字というものは止むを得ないというような
状況になるかと思いまするが、
産業資金としても相當
多額の金が、
市中銀行に對しまして、日銀の方から
供給されるということに相成ります。從いまして、
通貨の
膨脹というものを抑制せんとするならば、これは
貯蓄の
増強ということを更に一段と強化するという必要があろうかと思うのであります。
貯蓄増強の
手段といたしましては、これは昨年の
通貨安定運動が開始されて
以來、一貫した
思想といたしまして、その基本的な
方針は新圓の
封鎖とか、新圓の
信任に對しまして傷をつけるというような
施策は、一切これを行わないということがその
施策の
根本であります。これに對しましては
間渇的にいろいろな
デマ等が飛ぶのであります。又しばしば平
價切下げの
デマでありますとか、或いは新
圓登録のことだとか、或いは新圓を半分の
價値に切下げるとか、いろいろな意味におきますところの
デマが飛ぶのでありまするが、
政府の一貫した
方針は、新圓は
絶對にこれの
價値を傷つけるような
措置はとらんという固い
方針であります。尚これを補佐するに、勿論
財政の
健全を確保いたしまして、そうして
財政面からする
通貨の
増發を極力抑制して參る、又
貯蓄の
産業資金供給の面におきましては、これは
只今申上げました
通り、適宜、適切な
措置は必要でありまするが、全體長い計畫といたしましては、これは
資金の
蓄積の
状況とよく睨み合わせまして、そうしてこの面からする過度の
通貨膨脹は避けて行かなければならんというふうな
方針がとられておるのであります。
基本的な
考え方といたしましては、さようなことでありまするが、これが實行の
方策といたしましては、
貯蓄運動というものが官製的なものとならず、むしろ
國民の盛り上る聲として推し進められるというような形におきまして、この
貯蓄運動の
推進の主體というものは、
衆議院の
議員が
中心とな
つてこれをや
つて頂いておるという
状況であります。尚、これと呼應いたしまして、
金融機關が全部、その使命の最も重大なる分野を、この
預金の吸收というところに置きまして、これは
金融機關が本當に
總掛りで、
總力を擧げてこの問題に當
つておるというような
状況であります。尚、或いは、
政府におきましても、これらの
動きと歩調を共にいたしまして、
地方廳にお願いいたしまして、
貯蓄運動の援助をして頂くとか、或いは税の
方面におきまして相當の特別の扱いをして貰いまするとか、或いは特殊の
預金を初め、
福徳定期預金というようなもの、或いは無
記名預金というような、かようなものを始めまして、そうして
金融機關、それから
議員各位のや
つておられるところの
動きに同調の
態勢をと
つておるわけであります。尚、最近
株式等の市場の
状況から見ますると、直接株に
投資をするというような
傾向も相當ありまするので、この
機會に、
株式に直接
投資をいたすという
方面に對しましても、積極的な
施策をこらしてみたい、かようなふうに
考えておるのであります。この
貯蓄が集まるか集まらんということは申上げるまでもなく、非常に重大な問題でありますので、
大藏省といたしましては、
金融施策、これの
中心をこの問題においておるというような
状況であります。
尚、今囘提案になりましたところの
國民貯蓄組合法の
改正も、この線に沿うておるものでありまして、これが
提案通りに
改正になりますれば、今後の
貯蓄増強上極めて裨益するところが多かろうと、かように
考えておるのであります。
尚、この
貯蓄運動に對する
司令部の見解は如何でありますかと申上げますと、昨年の十月にこの
運動が始まる前後におきまして、
司令部におきましては、私共行きますと、果してできるものか、できれば非常にいいものである、併しそういう
通貨の
價値の
再建、
貯蓄の
増強というようなことが大
規模にできるだろうかどうかということを、内心は相當危惧を持
つてお
つたんじやないかというように觀察してお
つたのであります。實は私共自身におきましても、なかなかむずかしい問題であろうというふうに
考えてお
つたのでありまするが、
只今申し上げます
通り、
實績は相當の
成績をあげて來ておる。それからさようなこともありますので、我々としても相當の自信を得ておるのであります。最近におけるところの
司令部における態度というものは、この
運動に非常な期待をかけておるのでありまして、
通貨安定運動、
貯蓄増強の
運動の行われる會合等におきましても、
司令部の係官が出て參りまして、みずから應援をするというような
態勢にまでな
つて來ておるのであります。
以上、極めて簡單でありまするが、
貯蓄運動開始以來の大體の
經過竝びに結果を御報告いたします。