○
委員外委員(
北條秀一君)
請願第五号の
説明をするように命ぜられたのでありますが、本日同時に八十四号と百四号の
請願が出ておりまして、この
三つの
請願の
基礎理念が
一つでありますので、
最初にその点について
説明をすることをお許し願いたいのであります。この
根本の考え方にな
つておりますのは、新らしい憲法によ
つて新らしく
日本が本年五月三日に出発したわけでありまするが、
從つて総ての人民は基本的な人権を保障されて、
國民としての
生活を始めたわけであります。然るに
戰爭に敗けた後國内におきまする
國民は何人といえども
戰爭による
犠牲を大
なり小なり受けておるわけでありまするが、その間に著しい不均衡があるのであります。即ちどういうのが最も
戰爭犠牲を大きく
負担しておるかと申しますと、まだ帰
つて來ない未
復員者とか、或いは未帰還者というものが最も大きな
戰爭犠牲を受けておるわけであります。更に
戰爭によ
つて死にました人達、或いは
戰爭によ
つて傷ついた人達及びその家族達というものは最も痛烈なる
戰爭犠牲を受けておるわけであります。次に
引揚者或いは
復員者とその家族というものがこれに次ぐ
戰爭犠牲の大きな
負担を受けておるわけであります。以上申し上げましたような人達は特別な
戰爭犠牲の過重な
負担に喘いでおるわけであります。それが
日本に帰りまして、出発しようとしましても、
日本の現在の冷酷なる経済状態を見まして
國民としてなかなか容易に出発点に著き得ないのであります。勿論これらの人達は從來國内におりまして、
國民と一緒に同じスタート、出発点に立ちまして、出発しようというふうなことを
要求しておるわけではありません。少くとも多少はハンデイキヤツプがありましても、一應
國民として
生活し得るというところまでこれらの人達に対する
國家が政策を採るべきじやないか。未だ帰らない所の
外地におります人達は、これはまだ全く
國民としての
生活をし得ませんので、これまでは全く悲惨な状態にあるわけであります。
從つてそれらの人達は未帰還者は速やかに本國に
引揚げるという問題が最も基本的な問題にな
つて來るわけであります。帰りました人達は、これに対する
國家の
対策が妥当であ
つて、
從つてこれらの人達が多少の不均衡はあ
つても、先ず
國民としての最底
生活をなし得るというふうな所に政策を実施して頂きたいという
要求が根拠にな
つておるのであります。
從つて平和文化
國家を作り上げんとする今日におきまして、そうした根底に不平があり、不満があるということは、
國家の將來に非常に大きな暗影を與えることでありますので、恰も焼跡の敷地を地均しいたしますごとく、敗戰の
國民間に
犠牲負担の不均衡をできる限りこれを地均しをして、そうしてその上に堅実な
國家の基礎を
作つて行くべきである、こういう主張が
根本にな
つておるのであります。
で
請願第五号でありますが、
請願第五号は満洲関係の人が種々
國会に対して陳情しておるのでありまするがその第一は
引揚者の問題。先程申しましたような
根本的な考え、
要求に出発しておるのでありまするが、これらの
引揚者は…
引揚者は
復員者を勿論含んでおりますが、
國民の一割を占めておるのでありまして、
從つて國民の一割を占める大多数の人が極めて不均等な取扱を受け、
從つて又悲惨な状態にあることを考えますときに、
政府はこれに対する政策を重要なる國策の
一つとして採り上げるべきであるにも拘わらず、現在の
内閣は
引揚者問題についての
対策を採り上げていないということは誠に遺憾であるので、
國会は速やかにこれに対する
処置を講じられたいというのが
請願第五号の
一つであります。
第二は先程総論のときに申しましたが、
引揚促進を即刻にやるべきであるという問題であります。
それから第三の
在外資産の問題、殊にその救済資金の問題でありまするがこれは第二小
委員会の方に付託さるべき問題であると考えますが、一應お聞取り願いたいのであります。即ち存外資産の問題につきましては、これは容易に
解決困難かと考えられますが、現地におきます同胞救済資金の問題であります。これは
政府におきましては既に当時
外地出先機関に対しまして訓令を発して、その結果
在外同胞から金を借り上げ、或いは又居留民会が同胞から金を借り上げた問題でありまして
從つてこれを
政府におきましては行政費として確認しておるわけであります行政費ならば当然に國内において救済資金の問題は
解決さるべきが至当でありまするが今日まで二年余の間何らの
処置が講じられていないというところにこの
請願があるのであります。
從つて当然に行政費として賄うべき問題は、行政費として処理すべきであるというふうに私は考えるのであります。
それから第四の庶民金庫の問題でありまするが、今日まで
政府が
引揚者、或いは
復員者に対してとりました
更生政策といたしましては、庶民金庫の生業資金の貸出というのが最も普遍的であ
つて、而も極めて善政の
一つであります。極端に言いますと、これを除いては殆ど
政府は
引揚者、
復員者に対するところの
更生に対する
処置を取
つていないということが言えるのであります勿論先程來問題となりました
引揚者に対する應急
援護の問題につきましては、
政府は可なりや
つておられるのでありますが、その
更生面に対する政策については、
政府の政策は殆んどないのでありまするが、その皆無とも言える中に唯一の政策は、この庶民金庫によりますところの生業資金の貸出であります。一口三千円乃至五千円の貸出でありますが、極めて零細なるところの融資金でありますが、これが
引揚げて参りました人達が、本國におきますところの各事業面において更正して行きます基礎的な資金になりますので、非常に今日まで有効に使われておるのであります、ところがその今まで放出しました金額は僅かに十億一千五百万円程度でありまして、更に二十数億の
要求が現在出ておるのでありまするがこれに対して、
政府の折角の善政の
一つを傷つけないように、今後とも早急にそれらに対する
処置をして頂きたいというのが第四項であります。
最後の項は農地問題でありまするが即ち
引揚者が、本國に農地を残して
外地に出かけてお
つたのでありまするが帰
つてみると、農地調整法によりまして自分の
土地が不在地主として、これが取り上げられてしまうというふうな問題になりまして、今日まで
引揚者を非常に苦しめておるのでありますが、これに対する
処置は從來
政府当局におかれましても、可なりな程度に善処するように努力されて來ておるのでありますが、まだ未
解決であります。
從つて折角自分の
土地がありながら、その
土地が自分の
生活をするために活用することができない、にも拘わらず
土地を借りておる小作
人たちは一應
生活が安定しておる。こういう矛盾がありますので、
從つて外地から帰りまして職業のない現在でありますので、百姓するより
方法がないというふうな
人たちに対しましては、是非法律を改正してまでも
土地を返してやるようにして頂きたい、これがこの
請願であります。
八十四号の
請願は
海外引揚者生存権保証等の問題に関する
請願であります。これは第五号の
請願と
内容を殆んど同じくしておりますので、簡單に先程申しませんでした点を附加えたいのであります。それは
引揚者或いは
復員者が國内におきまして、就業せんとする場合にその就業につきまして非常に大きな障害があるのであります。例えて申しますと本屋をやろうといたしますと、過去の実績がなければ本屋をやることができないというふうな問題が
現実に起きて参りまして、なかなか仕事が進まないのであります。で極めて簡單な一例を申したのでありますが、
引揚者が今日のごとき國内におきます経済情勢の中に、いろいろな仕事を自己の才能を活かしてやろうと思いましても、何れも地盤もなし、或いは金もない、人と人との関係もないというようなことで、なかなか容易に仕事に就けないのであります。昨年の暮に商工省は
引揚者に関する限り特にあらゆる仕事に二割程度の特別な企業許可という
方法を講じたにも拘わらず、今日まで殆んど商工省及び内務省の地方に対する指令というものは実行されていないのであります。人口構成から申しましても
引揚者、
復員者は全人口の約一割五分に当たると考えるのであります。
從つて当然にこれらの
人たちに、そうした特殊な
援護措置、企業
援護措置というものを講じなければ、如何に
更生しろと言いましたところで、
引揚者、
復員者というものが更正できないというのが現状であります。その点について特に
國会においては積極的な御
処置を願いたいのであります。次に
請願第百四号でありまするが、百四号は先程
住宅の問題につきまして、補足いたしましたのでその点は省きたいのであります。百四号の
請願も何れも
引揚者及び
復員者に対するところの企業
処置を
要求しておるのであります。即ち総論において述べましたところの
復員者或いは
引揚者、とにかく
國民として一應の
生活の出発をしたい、それに当
つてこれだけの緊急の最少限度の
処置をして頂きたいというのがこの
請願の
根本にな
つておるわけであります。
その第一は先程申しました庶民金庫の生業資金貸付の問題であります。次には生産協同組合の問題でありまするが、單にこれは生産協同組合だけでなしに、各種の協同組合が今日逐次立法化されつつあるのでありますが、その際にとかくしますと
復員者、
引揚者という者は既往に関係を持ちませんために、無視され勝ちなのでありますが、無視されては勿論困りますが、それ以上に若干の積極的な特例を認めて、そうして
復員者、
引揚者の
更生を図るというふうに立法的
措置を講じなければならないという
要求がその次に來ておるわけであります。
更にその次には授産所の問題があるわけであります。これは今日のような経濟危機の時代におきましては、職場を得ようとしましても、なかなか得るわけには参りません。資金もなし、
建物もなしという状態では、なかなか職場は得られないのでありまするが、併しながら
國家が協同組合政策を採
つております線に則りまして、協同した授産事業というものを起しますならば、最も
國家の現状にふさわしいのではないか。
從つて協同授産事業
施設というものに対するところの緊急の
措置を講じて頂きたいというのが第三の
要求にな
つておるわけであります。その外
引揚者の自由販費店を保護して頂きたいという問題が緊急の問題とな
つて起きておるわけであります。現在御
承知のように、衣料の登録店でありますとか、塩乾物の登録店、或いは漬物の登録という問題が次々に起きて來るわけでありまするが、折角
外地から帰りまして、どうにか店を開いてその日の糧を得ておるという現状に対しまして、今申しましたような登録制度が布かれて來たのであります。これの最も代表的なものは、七月一日の飲食営業の禁止の問題でありまするがこテした後からからの法的な
措置によりまして、
復員者、
引揚者がいろいろな仕事をや
つておりますが、それが次々に壞されて行くというふうな実情でありまして、どうかこうした政策に十分なる反省を加えられると同時に、特に
引揚者の緊急
更生措置として自由販賣店を保護して貰いたいという
要求が出ておるわけであります。それから第四番目には、財産のない
引揚者には、即ち
引揚者でありましても、國内に多少の財産を残してお
つた方もあるのでありますが、全く素つ裸で帰
つて來た人に、
戰災者と同樣に免税の
措置を講じて頂きたいという
要求であります。これは國内におりましたところの
戰災者は戰災補償というものを受け、尚且一ケ年間の免税の特典を與えられたのでありますが、にも拘わらず、同じ
戰災者でありますところの
復員者或いは
引揚者にはこれらの特典が何ら與えられていないのであります。最近の帰
つて來る人達の例を見ましても、今日のような特に困難な経濟状態の中にありまして、依然として持帰金は一千円、或いは兵隊の持帰金は三百円といふえうな状態でありまして、その上にそれぞれ職場に就けば翌日から直ぐ
税金がかけられるというふうな不公平な扱いを受けておりますので、この際
曾つて戰災者が一ケ年間の免税の特典を與えられたことく、今後
引揚げて來る人達に対しましては、
引揚げの日から一ケ年間各種の
税金を免除して貰いたい、免除すべきであるという
要求にな
つておるのであります。これ亦当然のことかと考えられるのであります。他にいろいろな問題があるのでありまするが、時間を節約する建前から、特に本日申し上げて御了解を得たいと考えますのは、特に國立病院の患者の点であります。國立病院の患者は御
承知のような状態でありまして、これらの療養或いは
生活費というものを全額國庫の
負担とするということは、永久には不可能であるかも知れませんけれども、少なくとも今日のところではこれは容易ではないのであります。殊に最近
外地から
歸つて來ます人達の中に沢山の傷痍者がおるわけでありまするが、これらが國立病院に入りまして、現在の
処置から申しますと、立ちどころに医療費というようなものを
負担しなければならんということになりますと、到底それは不可能な問題でありますので、
從つて國立病院に收容中の患者に対しましては、特に
戰爭犠牲者中の患者に対しましては、その給費額を増加すると同時に、
生活費と医療費を全額國庫で
負担をして頂きたいという
要求があるのであります。特にこの点は
委員各位の格別な御考慮を煩わしたのであります。以上申上げまして、
紹介議員としての
皆さんに対するお願いを申し上げる次第であります。