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國務大臣(
水谷長三郎君)
只今の第一の問題ですが、数字的に具体的にその
増産の内容を示せという御注文ですが、これは私も笑い話で、
北海道で言
つたのですが、そういうような
質問を受けましたので、それじや
一つ私の方からも注文を出すから聽いて呉れ、
國管をやらなければどうして
増産できるかということを
一つ数字的、具体的に示して貰いたい。それができればそれに應じて私の方から数字を出そうというようなことを言
つたのであります。これは
一つの山々によ
つて、
國管ができればどうだということを具体的に数字的に出せと言はれることは、これは非常に無理じやないかと思うのであります。大体先程申しましたように五ケ年計画におきまして、最高的にこういうことを出せるということは申せますが、
一つの山々によ
つて数字的に出せということは、これは言う方が無理であ
つて、
國管をやる場合と、やらない場合と、どちらが
増産になるかならんかという結局の比較論になるのじやないか。このような
考えております。そういう比較論の上に立ちまして、私も
衆議院の
委員会におきまして、岡田
委員の
質問に関しまして、なぜこうやれば
増産ができるかという理由を述べたのでございまして、恐らく
新聞を通して御案内の
通りでございます。そこで私らといたしましては、いわゆる
國管をやらなければ、なぜ
増産がなるかということを数字的に、具体的に示すことが無理であるならば、
國管をやるならば、なぜ
増産になるかということを
一つの山々によ
つて数字的に具体的に示せといわれることも無理ではないかと思うのでありまして、それは先申しましたように、
國管をやる場合と、やらない場合とは現在の
経済情勢の下においてどちらが
増産になるかといういわゆる比較論より外に私は
方法はないじやないか、このように
考えておる次第であります。
それから第二の問題でございますが、内閣においてもこの
法案に対して不一致があるじやないかという御
質問でございますが、それは私は大きな間違いであろうと思います。去る七月一日の片山総理
大臣の施政方針の演説におきまして片山総理は
石炭増産のために
國家管理をやるということを施政方針の演説に言うております。その施政方針の演説は各閣僚が一致して賛成したものでありまして、閣内におきまして、これに対して不一致の議論というものは七月一日以前に遡
つてもすでにないものであるという工合に御了承を願いたいと思うのであります。或いは
資本家は一致してこの
法案に
反対であるということを言われましたが、私は先申しましたように、それは間違いであると思います。或いは
労働者側においても
反対があると言われますが、四十万組織
労働者の單一機関である全
炭協がこれに対してはつきりした意思をば発表しておるのでございまして、
労働者側の
意見は一致しておると我々は
考えなければなりません。勿論その個個の一人々々に対して程度としていろいろの差がございますが、併し苟も四十万の
炭鉱労働者が
一つの組織体を持
つて、その組織体が正式の機関によ
つて天下に発表したところの意思というものは、これは信じなくちやならないのではないかと思います。そこで問題はこういうように、賛否両論に分れた時に、これを出せば減産になるのではないか。よく世上では
資本家の
生産サボというようなことが盛んに言われ、そういうことの心配ならば私の方から更に
一つの仮定として問題を出したいのでありますが、ここまで問題が爭われ、そうして組織
労働者全部がこの
法案に賛成しておる時に、少数の
資本家の
反対に押されて、この
法案が闇から闇に葬られた時に、それがいわゆる労働
組合、
労働者にどういう影響を與えるかということをやはりお
考えを願いたいと思うのであります。恐らく私はこの
法案通過によ
つて資本家の陣営の今日
生産サボが恐ろしいか、或いは又この
法案が闇から闇に葬られて、
石炭生産事業の七〇%を占めるところの
労働者側の
生産意欲の低下が起つたがための結果が恐ろしいものかどうかということを比較してお
考えを願いたいと思います。併しながら我々はそれにも拘わらず
マッカーサー元帥の書簡の
趣旨に副いまして、この
法案が幸い皆さん方の御協力によりまして、通過いたしました曉におきましては、この
法案に対して
反対された人、賛成された人、そういうような区別を一切拔きにいたしまして、
反対された人に対しては、一層政府みずからが誠意を披瀝して、この
法案を中心にした
増産態勢に御協力を願いたいという工合に準備をしておるのでございます。今日民主
主義の時代でありますから、
一つの重要な
法案が現われた時に賛成、
反対の
意見が出るのは当然でございます。戰爭時分の憲法政治とは違
つて、それは現在の民主
主義政治の下においては当然である。だからこの
法案がいわゆる最高の機関であるところの國会が
決定するまでは賛否両論が、分れることは、これは別に不思議ではないのでございまして、苟も民主政治の下における
國民は
経営者といわず、
労働者といわず更に
國民といわず、
國家最高の機関である國会が意思を
決定した曉には、その意思に服從するということは、これは民主政治下における
國民の私は義務であろうと思うのであります。
從つて政府はそういう観点に立ちまして皆さん方の折角の御助力によりまして本案が通過いたしました曉におきましては、
経営者、
労働者、そういうような人のみならず、
石炭関係者だけでなく、全
國民の協力によりましてこの
法案を中心にして、
石炭増産に邁進したい。そのために政府は十分の用意と決心と、覚悟を持
つておるという工合に
一つ御了解を願いたい、このように
考えております。