○参事(川上和吉君) 私、
参議院の法制部長の川上でございます。お配りいたしました「
社会事業共同募金の法制化に関する
参考資料」とありまする印刷物を元にいたしまして御
説明をいたしたいと存じます。この案は
山下さんから早くから御相談がございまして、社会
事業の
共同募金についての法制化の
方法を講じたらどうか、これにはこうい
つた骨子の案がよかろうということの具体案を含めて御相談があ
つたのであります。これを元にいたしまして私どもの方で若干整理をいたしましたのが、お
手許に差上げたような案に相成
つております。ただ問題は、
只今も御
説明のありました
通りに、法制的には全く初めての分野でありまするので、各
方面に問題があるわけであります。從いまして本日差上げましたようなことにまで
事柄を具体化いたしますることは、いささか懸念いたされるのでありまして、もう少し皆さん方の
お話合を願
つて、その上でこうい
つた要綱に纏めるのが適当だと存じたのでありますが、
山下さんの御
意見もありましたし、皆さん方の御
審議の便宜のためのほんの
参考の
資料として、成るべく詳しくお示しをしたらどうかということで纏めたようなわけであります。
從つてこれは表題にも法案についての要綱とかいうような字句を避けまして「法制化に関する
参考資料」と題目を打ちましたのも、さような
趣旨に相成
つております。さような
意味合において十分御檢討を願う必要があろうと存じまするし、又今まで
お話のありましたように、或いは社会
事業協会でありまするとか、各
方面の
意見も更にこの
委員会でお聞きを願いまして、この案を整理して頂ければ、誠に好都合だと存ずるのであります。
只今も丁度
お話がありましたように、法制化につきましての七つの
方法があるという
お話がございましたが、この案は大体第三番目に
お話のありました
共同募金の実施主体についての型を示して、これを法制化して行くという
方法を取
つたのでありまして、恐らく今
お話のありました七つの
方法というのは、凡そ考えられる全部であろうと思いますが、この七つの
方法の中で第三番目の
方法というのが、最も本格的な法制化の
方法ではないかというようにも考えられるのであります。從いましてこの案の御檢討の途中はおいて、ここまでは取敢えず法制化せんでもいいじやないかというような御
意見でありますれば、何時でも他の六つの案に移り得るような
状態にな
つておるかと存じます。さような
意味にな
つておりますることを先ず御了解を願いたいのであります。そこでこの案の骨子は大体三つくらいに分けて申せるかと存じます。先ず第一にこの
共同募金についての法制化という問題を考える場合に、募金自体をなんと申すか、法的に非常に統制をすると申しますか、そういう行き方が宜しいか、或いはこうい
つたものは法的或いは
國家的の統制というようなことで運営するのではなくて、成るべく各
地方地方の又実際こうした
方面に熱心に関心を持
つておられる方々の熱意の現われが、そのままに受入れられるというような方向であるべきだと思います。そういう
意味から見ると、そうい
つた中央的な統制というようなことじやなしに、むしろそうい
つた熱意なり創意がそのままに現れるように、而も幅の廣い枠を示しまして、その枠の
範囲においては、相当この運用の幅を残した法制化をすることが
一つの行き方ではないか、無論考えようによりましては、別の
方法もあると思いまするが、この案はさような
意味におきましてあまり窮屈な規定をいたしませんで、相当融通のある幅を持
つた制度を作
つたらどうかというようなことで、
一つの骨子ができておるのであります。これが
一つであります。
それから第二番目は
共同募金の問題が、相当多額の資金を集めなければ目的を達成いたしません。その間資金の取
扱い等についていろいろ問題が出て参りますので、さような点の合理化、適正化という点については、相当いろいろの角度から檢討し、規定をして行かなければならん、さような
意味の資金の募集或いは配分等についての基本的な規定を整備する、こういうことが第二番目の点であります。
第三番目はこの募金が最も効果的に行き、而も
一般公共の迷惑にならんような形に行くというような
方法を取りますると同時に、この
共同募金についてなんらかの便宜、
國家的の援助を與えることが必要ではないかというような点から、募金に対する租税について特別の取
扱いをしたらどうかということ、この面によりましての
共同募金の促進と申しますか、円滑化を図
つて行くというような意図を持
つて行
つたらどうか、これが
一つの点であります。大体以上申上げました三点を骨子にした案に相成
つておると存じます。余り長くなりましても如何かと思いますから、簡單に読んで御
説明を加えたいと存じます。さようお許しを願いたいと存じます。
第一章総則、第一
この法律は、社会
事業の
経営に必要な金品の寄附の募集(以下募金という。)の合理化と、その次に甚だ恐縮でございますが、ミス・プリントにな
つておりますので、「合理化と適正化とを図る」「合理化」の次に「適正化」という字を入れて頂きたいと存じます。尚あとにも、急ぎましたので若干ミス・プリントがございまして甚だ恐縮であります。合理化と適正化とを図ることによ
つて、社会
事業振興の基礎を確立することを目的とすること。第一はこの法制化の目的を書いたのであります。これは用語上或いは更にもつと明らかに、又詳しく整備する必要があろうかと存じますが、一應極めて簡單に目的を書いたのであります。
第二 募金を
共同して行うため、この法律に定めるところにより、
社会事業共同募金会(以下募金会という)を設立することができること。募金会は法人とすること。この法律に規定するものを除くの外、民法中社團法人に関する規定は、募金会にこれを準用すること。
第三 募金会の名称中には、
社会事業共同募金会という文字を用いなければならないこと。募金会でない者は、その名称中に、
社会事業共同募金会という文字を用いてはならないこと。
第四 募金会に対しては、租税その他の公課は、これを課してはならないこと。
第五 この法律において受益者とは、社会
事業を
経営し又は
経営せんとする者で、募金会の行う募金による收入の配分を受くべきものをいうこと。
第一章に書きましたのはごく大綱的な規定及び、この第五に現れておりまするような定義的な規定でありまして、いろいろ問題はございまするが、この際
説明は省略いたさして頂きます。尚ただ第二に関連をいたしまして、この法制化をやりまする場合に、こうい
つた案でありますれば、大体この社会
事業の
共同募金会に関する法制に相成
つておりまするので、或いはむしろこの法制でありますれば、
社会事業共同募金会法というのが適当じやないかと思われるような案に相成
つております。その点が
一つと、それから第四に挙げました租税その他の公課を課してはならないという点は、この法文に整理いたしまする場合には、尚もう少し詳しく書かなければいかん点があろうかと存じます。その点だけを申上げて置きます。
第二章設立、第六募金会を設立するには、社会
事業の
経営に必要な金品を寄附しようとする者、その他社会
事業の
経営に協力しようとする者(協力者又は社会
事業を
経営し若しくは
経営せんとする者(
経営者)十名以上が発起人となることを必要とすること。
第七 募金会の設立の区域は、都道
府縣又は主務大臣の指定する市町村の区域によること。前項の規定によるの外、特に必要があるときは、全國の区域により募金会を設立することができること。
第八 募金会は、全國の区域によるものは主務大臣、都道
府縣の区域によるものは都道
府縣知事、市町村の区域によるものは
市町村長の認可を受けなければならないこと。募金会は、前項の認可を受けたときに成立するものとすること。
第六から第八までがこの募金会の設立についてのスタートの規定でございますが、これはいくらでも
考え方があると思います。ここにありまする
通りに、先ず現在の実際からいたしまして、恐らく設立の区域としましては、都道
府縣單位が先ず普通じやないだろうか、併し大都市等におきましては、都道
府縣と離れて設立をすることも必要じやないか、さような場合に、これは後で申上げる募金の区域とも関連いたしまして、区域が重複をいたしますると、非常に競爭し合
つて面白くない結果も來すのじやないか、さような
意味から市町村の区域で募集が始まれば、都道
府縣の区域は止めた方がいいじやないかということに一應この案は相成
つております。併しそういうことは考えないでいい、重複してもいいという御
意見も無論あろうかと存じます。さような
意味で市町村の区域で募集する場合には主務大臣の指定する市町村に限らずという案にいたしておるのであります。
尚又先程申上げましたように、募金会を統制すると申しまするか、募金が競合いたしまして、相互効果を減殺するという点から申しますると、一区域に
一つということが宜い、又法制化する以上は一区域に
一つとすることに限定すべきものだという
意見も無論出るかと思いまするが、この案ではさようなことは自然の発達に任せまして、おそらく自然に
一つ、併しながら場合によ
つては二つくらいにはな
つて行くだろうというような予想の下に、法律で
一つに縛るということは、余りに機械的であるということで、その点を避けております。この点も非常な問題であろうと思いまするので、この辺は
一つ御檢討をお願いいたしたいと存じます。
それから長くなりまするので、朗読を省略いたしまするが、第九は募金会の定款に定めなければならん事項を書きましたので、特にその中におきまして、第九号に書いておりまする点に御注意を願いたいと存ずるのであります。第九号に募金の額、受益者の
範囲募金による收入の配分の決定、その他募金に関する重要事項を決定するための
委員会の設置、構成、及び
委員の任免に関する規定、この募金会の最も重要な、ここに書きましたような事項を決定しまするについては、定款に必ず特例の
委員会に設けるということを規定をいたしまして、その間この募金、こうした重要な事項の決定が民主的な
方法で講ぜられると同時に、愼重に、又適正に行われるための、必ずこういう
委員会を置かなければならんという規定にいたしたのであります。この
委員会が極めて大切な役割を持つと存ずるのでありまして、これは單に募金会のこうした定款中の機関ではなくして、もつと公けの機関にしたらどうかという
意見も、無論あり得ると思いまするが、この案では、募金会の中の機関といたしまして、併しながら性質上極めて重要なものだという考えの下に、こういう案にいたしているわけであります。
それから第三章、
事業の点に移ります。第十、第十一、第十二が、この募金会の
事業の基礎になる規定であります。ただこの第十二に挙げておりますのは、極めてまだ熟しない、而も御檢計を願う余地の多い点でありまして、全くこれは
一つの問題として提供したに過ぎないのであります。そこも
ちよつとミス・プリントを御訂正願いたいのであります。第十二のところの募金会は第十一及び第十二とあるのを、第十及び第十一と御訂正を願います。第十二は詰り募金会は、第十及び第十一の規定の
範囲内で、主務大臣の認可を受けて左の各号の
事業を行うことができること。
一、臨時資金調整法による
地方宝くじの発行、二、競馬法及び
地方競馬法による競馬の施行、三、入場税法による
免税の興行、四、郵便法による慈善切手の発行、これは、こうした構想が考えられておりまするので問題を出したのでありまして、法制的に申しまするというと、第三号の入場税法による
免税の興行は、格別こういうところへ書きませんでも、当然にできるわけでありまするので、これは法制的には規定の要らん点であります。尚第四号につきましても同様な点がございます。ただ募金会の資金を充実する
意味合におきまして、從來からこういう点が非常に採り上げられておりまするので、御
参考に書き上げたに止まるのでありまして、私共としては第三号、四号は少くともこうして法文に書く必要はないのじやないかと、こういうふうに考えるのであります。尚第一号及び第二号につきましては非常に問題があります。こうしたことを募金会がやることが適当かどうかということもすでに問題でありまするし、又やる場合にも、こうして特別の法律に書くことが宜ろしいかどうか、
地方宝くじの発行は、少くとも現在都道
府縣までにな
つておりまして、市町村ではできない、公共
團体でも市長村ではできないような形にな
つておりまするので、そういう場合に、この点を挙げて行くことがどうだろうかという点がございます。この辺は御檢討を願いたいと存ずるのであります。
それから第十三、第十四、第十五、この十三から十五までが、実際の募金についての規定でありまして、特にその次の第十三におきまして、先程
ちよつと触れました「募金会の行う募金は、設立の区域内に限ること、市町村の区域による募金会が設立されているときは、都道
府縣の区域による募金会は、当該市町村の区域内で募金を行うことができないこと。」にいたしまして、この間の地域的の重復を避けて、かようにいたしたらどうかという構想に相成
つております。無論特殊の場合に全國を單位とする募金会ができまする場合には、これは重復は止むを得んということにいたしておるのであります。尚第十四のところでも亦
一つ御訂正を願いたいのでありますが、「行政官廳」の「官」の字を削除して頂きます。「行政廳」であります。「設立の認可を受けた行政廳」、(以下行政官廳という)の官も削
つて頂きまして、(以下行政廳という)ということにいたして頂きたいと思います。それから第十六、第十七も募金についての関聯する規定であります。それから第十八が「募金会に寄附した金品については、
課税上左の各号によること。」といたしまして、一号から十号まで書き上げてございます。これは先程も出ました募金会に対して寄附した金品について、所得税、法人税、特別法人税、相続税、贈與税、それから
地方税の中の営業税につきましての、要するに
課税の基礎に計算をしない、これによ
つて共同募金会に対する募金を容易にするという構想に相成
つておるのであります。併しこの点は國の收入とも関聯をいたしまするし、又税法の根本思想とも関聯をいたしまして、甚だ問題がございます。併し少くとも私はこの中で法人税それから相続税、贈與税につきましては、現在教育
関係につきましてこれに近い或る
程度の考慮が拂われておりまするので、少くとも法人税と相続税、贈與税につきましては、而も又この二つが恐らく募金会等に対する募金の一番大きな分子に相成ると思うのでありまするが、この二つの点につきましては、現在の税法の
建前から申しましても、この法制化は可能じやないかと考えるのでございます。ただその他の所得税或いは
地方税につきましては、ここまで法制化することは如何なものだろうか、この点は余程考えものではないかというようにも存ぜられるのでありまするが、この辺も
一つ十分に御檢討をお願いいたしたいと存ずるのであります。
次に第十九から二十二までは募金会によ
つて募集をしました資金の配分を受けたいわゆる受益者、この受益者につきましての規定を設けたのでありまして、受益者が募金会の募集した資金の配分に受けまする以上、相当の
犠牲と又その配分を受けるに相應しい資格を持たなれけばならんと存ぜられるのでありまするので、左様な点の、受益者に対する一種の監督的な規定のような形に相成
つておるのであります。
それから第二十三から二十五までは、募金の後始末につきましての公表乃至届出
方法等についての規定であります。
それから第四章解散、この四章の第二十六から第二十八までは、募金会が解散する場合、或いは他の募金会と合併をいたしまする場合につきましての規定を設けた次第であります。これは、他のこうした法人の場合の規定に準じておるのでありまして、解散、合併につきましての規定であります。