○
政府委員(
葛西嘉資君) それでは姫井委員のお尋ね乃至は御
意見につきまして、
政府の
意見を申上げさして頂きます。
第一は第十
二條につきまして、この十
二條の後の方でございますが、「又は
救助その他
緊急措置に必要な
物資を
收用することができる。」というのは、この上のいろいろなことを「業とする者に対して、」というふうに姫井委員はお読みにな
つて、おかしいじやないかという
意味の御
意見でございましたが、これは大変恐れ入りますが、そういうふうに読むのではないのでございます。「
保管」の命ずるのがそれらでありまして、「
救助その他
緊急措置に必要な
物資の
收用」というのは、これはそれらの業者に限らない積りでございます。即ち十
二條の二行目にあります「認めるときは、」から「又は」の方へ引つかけて読むのでございまして、これは平素の時には
備蓄というふうなものについては無理が行きまするから、この業種を
制限しまして、不当に
保管命令というふうなものはやらせないのでございますが、一朝
災害が起きまして
救助が必要である。或いは
緊急措置がどうしても必要だという場合においては話合いでどうしても行けないという場合におきましては、これらの
制限なく、限定しませんで
收用して参る。一番極端な例を申しますれば、例えば隠匿
物資というような物があ
つたというような場合には、これらのものを特に必要があると認めたときは
收用をして参る。こういうふうに読む積りでございます。それから第二の、第二十
五條で協力
命令を出しました者に関連しまして、二十九條における各種の
扶助金を出す場合についてでございます。
一般にこの協力
命令というのは、実は普通の場合におきましては
命令を出すことなく行われるものだと存じます。
命令を出さなくても、普通の
措置としてや
つて頂いたものについてこういうふうな
扶助金を拂
つたり、或いはそれに職礼を出すというふうなことにいたしますことは、一向事実問題として差支えはございません。かようにいたしまして、法規にはありませんが、
府縣がそれらに手当、或いは
扶助金等を給與いたしました場合につきましては、その
費用が
救助に要する
費用として請求がありました場合には、これは
補助の対象となるわけでございます。ただこの
法律といたしましては、第二十
五條に、
近隣の者が或いは炊出し、その他のことに協力をしないというふうな場合は、
命令を出し、それらの
命令に基いて怪我をした者だけについて、
法律としてここに
扶助金を支給するということを明らかにしたわけでございます。事実問題として協力をなさる場合はそれは非常に多いのでございまして、その点は趣旨といたしましては姫井委員の仰せになりました
通りだというふうに存じます。
第三十
一條の点でございますが、これは先日もお尋ねがあ
つたのでありますが、
都道府縣知事につきまして、他の或る
都道府縣の中に
災害が起きて、それを他の
都道府縣に應援をして貰うという場合について、厚生
大臣がその應援を命ずるという場合でございます。これは姫井委員の御
修正のような、一應
都道府縣知事がやつで、あとで報告をしたらと言われましたが、これは事実上は
主務大臣の
命令がなくても、実際は應援をする場合が多いと思います。特に中央から全体的に見て工合の惡いというふうな場合に、最後に
大臣の
命令が出るわけでございまして、実際上は
都道府縣の中で應援をして頂くということが実際あり得るわけでございます。現に今度の
関東、東北の
水害におきましても、御覧にな
つた方もございますのですが、埼玉縣における、あの栗橋附近からずつと川が流れておりますると、埼玉縣の東側の住民であの土手に上
つておりました者を茨城縣が應援する。或いは東京の場合でありますれば、江戸川土手にお
つた者を千葉縣が実際應援をしておるというふうな実例がございます。これは
大臣からの
命令を持たずして、すでに実際両縣の間で話合いまして、埼玉縣或いは東京都の人間を茨城或いは千葉縣において
救助いたしておる実例がございます。勿論
大臣といたしましても、
援助をするようにということは電報いたしておりましたが、これは法規に基く
命令というよりも、むしろ行政上の
指示というふうにお
考え頂いて、それでもできるということだろうと思います。実際上の問題として、この
命令の出るという場合には、やはり
大臣として法文を以てやる場合には、應援の
命令が出なくちやならない。これは実際の場合としては
交通杜絶の場合においては、両縣の話合でや
つておる場合も非常に多いということを御了解を願えますれば、姫井委員も御了解願えるのではないかと思うのでございます。それから第三十六條についてでございますが、これは重めてのお尋ねがあ
つたのでございますが、実は
從來國庫補助をどれだけにするかという点については、非常に私共
政府部内でこの案を立案いたしますときに苦慮をいたしたのでございます。と申しますのは、
災害が起きましたときに、南海震災の場合等の実例を見ましても、各
都道府県
知事は訊速に、中央等の連絡を待たずして、そこに困
つておる罹災民に級助の手を伸べますることは当然でございます。併し或いは炊出しをやる。或いは緊急の
物資を罹災民に配付する。或いはその
物資が中央から來るのが間に合いませんので、近くにありまするいろいろな
物資を調達いたしまして、これは
配給いたします。その場合に一体、自分の縣でどれだけの金を調達し、國の方からどれだけの
補助金が貰えるだろうかということを非常に知りたがるのであります。これは
都道府縣知事の
立場に立
つて見ますれば、
災害が起きた場合に非常に大事な問題であります。
救助計画を立てる場合にすぐ必要な、是非知
つて置かなければならんことでございます。
南海震災の場合には、厚生
大臣は当時逓信
大臣として大阪へおいでになりまして、私も
大臣のお供をして当時行
つてお
つたのでありますが、主たる問題の、最後に落著きましたのは、一体
補助金はどれだけくれるのか、自分の縣ではどれだけ調達した。取敢えずのところは銀行から二千万円か三千万円借りてや
つたが、例えば高知縣のごとき、和歌山縣のごとき、縣がこれだけの金を持てるものでない。一体どけだけくれるかというふうに、自分の方で計画を立てまして、その内どれだけ
資金が國から來で、どれだけが自分が調達すべき金であるかということを決めて置く必要が非常にあります、それで
補助金というものを
災害の場合に確定して置く。こういう計画でやるが、これだけの金が貰えるというふうに確定をして置くことが、これは是非必要でございます。それで
委員会等を設け、或いは何分の一乃至何分の一という
補助では非常に不安になめわけであります。最低でやられるかも知れませんし、或いは最高に行くかも知れないというふうなことがございまして、これは是非確定率の
補助金にするということが、実際應急の場合であればあるだけ、非常に必要なことに感じたのでございます。それから確定ということは、又そういう面から見ればいいのでございますが、姫井委員から御指摘になりましたように、縣の貧富の差がありましたり、或いは貨幣價値等が変
つたり、それから縣の貧富とい
つても、去年富んでお
つた縣が今年貧乏にな
つてしまうというふうな場合もございます。そこでインフレ乃至は貧富の時によるいろいろなことを、やはり確定率にする以上は、或る
程度そこらも押えて、何か
制度を立てなければならんというような……確定率にするという問題と、それからもう
一つは、動きつつある貨幣價値、乃至は
府縣の貧富と
負担力というふうな問題を睨み合せまして、どうして決めるかという点で非常に苦慮いたしたのであります。その結論が先ずここに出しましたようなことでございます。大体前年度の三税の
合計額ということになりますと、大掴みにい
つて、先ず大体算盤が出てくるのは前年しか出ませんから、最近における
府縣の貧富の状態乃至はこのインフレというふうなもの、自然インフレが上ればこれらの三税も上りますので、そこらを睨み合せてやるというふうにいたしたのでございます。各
府縣別にいたして、これらを見ました表が実はございますので、御必要でございますれば、これを御覧頂きますとよく分るのでございますが、大きい縣におきましては
相当の額までは殆んど自力で
補助をして頂くことになります。先程も一例で申し上げましたように鳥取縣というふうな縣になりますれば、ごく小さい
災害でも國が
補助をして行くそうしてそれがだんだん上
つて参れば、又翌年は違
つてくるというふうなことで、今の確定率という問題と、
府縣の貧富、或は変りつつある
府縣の貧富状態、或いは貨幣價値の変動というふうなものを織込みまして、一應前年度におけるこれらの三税の
合計額というものを基礎にいたしまして、それを超過する部分について、ここにありますような三段階に分けまして
補助することにな
つて参りますると、今のような点、確定にしておいて、
府縣知事が
災害が起きたときに、すぐに向うの部下を呼んで、自分のところの算定の
合計額、
補助額はこのくらいということになりますると、例えば表にありまするように、今囘の例で申しますれば、東京都が仮に一億円かか
つたということにいたしますれば、
國庫の
補助が六千百五十万三千円、それから東京都の
負担が三千八百四十九万七千円というようなことに、すぐ算盤が出て來るわけであります。それで自分としてはこれだけの金を調達すれば後は國から貰えるというので、安んじて銀行等から借りて應急の
措置を訊速に行えるというようにな
つたわけであります。御心配のような点も多少あろうかとも思いまするが、そこらを睨み合せまして、而も確定しておくというところに、非常に私ども必要を認めました点も御了解頂きたいと思うわけでございます。
それから次に第四十
一條でございまするが、第四十
一條の
災害救助基金の運用に伴いまして、この
災害がいざ起きたときに、條件とか何とかに
從つていては使えないのじやないかというような
意味の御見地から、
基金額のどれくらいはどういうふうにしなくちやならんというような点を御心配にな
つて、そういうようなことをする意思があるかというような
意味のお尋ねでございました。これは行政上の
方針といたしましては、厚生
大臣から、大体どれくらいのものをすぐ使えるようにしておき、どれくらいのものはどういうふうに第二号のようなものに廻して行くかというようなことは示してあるのでありますが、大体現在のところは
相当の
災害に対しても直ちに発動できますように、現金或いは銀行の預金というようなことにして、
府縣では
備蓄をいたしておる
実情でございます。從いまして、ここらは余り堅く何分の一はどうしなくちやならんというふうに締めておきますことも、
地方財政或いはその外の
関係上、いろいろ面倒なことにもなりはせんかということで、只今のところでは大体
府縣が、自分自体の
救助のことでございまするので余り嚴重に
政令或いは省令等を以つまして縛
つておくということはしないで、各
府縣府縣に、行政上の
措置といたしまして一應の
程度のお示しを、
從來の
程度でお示しをしておけば、それで大体間違いなくや
つて行けるのではないかと思
つておりますから、只今のところでは
政令、省令等でそういうようなこと等を決める意思は持
つておらないのであります。