○
政府委員(
三木行治君) 御答えいたします。
從來の
保健所と今囘の
保健所と、性格において如何なる
相違があるかという点でありますが、先ず第一は
保健所の
目的でありますが、
改正案第一條におきましても
保健所の
目的を謳
つておるわけでありますが、
只今御
指摘になりましたごとく、現行の
保健所法におきましては、
地方にありて
國民体位の
向上に盡すということが
目的であります。又先程御
指摘になりましたごとくに
人口政策確立要綱、或いは体力要綱等におきまして、
保健所は一般保險行政と共に、労働力及び兵力を育成培養するという意味合におきまして
戰爭直前、戰時中に運営せられたことは、御
指摘の
通りであります。從いまして、今囘におきましてはその
目的を
改正案第一條に明らかに謳
つておりますごとくに、
公衆衞生の
向上及び進歩ということのために、
保健所は
目的をそこに持
つて行くということにな
つておるのでありまして、即ち
憲法第二十五條において高らかに言われておりますところの、
國民の
保健及び文化、そういう面に対する國の義務をこの
保健所が担当してや
つて行こうというのが、この
保健所の新らしい
目的でありまして、これは
從來の
保健所と今囘の
保健所の性格の
相違の、重要な点の
一つであると存ずるのであります。
又運営に当りましても、
從來の
保健所は先般も御
説明申し上げましたごとくに、
保健國策の末端滲透の下部機構として、つまり中央集権的な
從來の行政組織の末端第一線における、國策滲透の下部機構という性格を持
つてお
つたのでありまするが、今囘におきましては、これは
國家事務ではあるが、併し
地方における必要な委任事務といたしましては、その地区の住民の
方々の健康をただその侭に率直に、
公衆衞生の地区の
公衆衞生の
向上のために働くということに重点をおいて施行いたしておるのであります。從いまして運営の具体的な行き方といたしましては、
從來の
保健指導というものが
保健指導を根幹とはするけとども、併しながらそこに必要なるところの
予防的措置であるとか、或いは若干の行政事務を持
つて行くというような、この事務を加えまして、そうして
地方の住民の
方々の間の納得の行くような
委員会というふうなものによりまして、意向を反映するような運営の仕方をや
つて行こうつまり
保健行政の民主化を図
つて行くという行き方をするという点は、今囘の
改正の重要な第二の点であると考えるのであります。
以上大体が
從來の
保健所と今囘の保康所との
相違しておる点であります。
次に
政府は
保健行政の一貫した
方針が見落されておるではないか、
指導面を徒らな羅列主義であ
つて垢抜けがしていないではないかという御
意見でありました。その点につきましては、私共も遺憾な点を感ずるのでありますがともかく
保健所といたしましては、これが都鄙おのおの特長のある地域を持
つて参ります
関係上、例えば農村地区におきましては今日上下水道というものはないのでありますが、併しながら都市地域には上下水道というようなものも謳わなければならないというように、最小公倍数を取りましたために、やや羅列的にな
つておるのは御容捨を願いたいと思うのであります。
尚
保健行政の
組織体系をどう考えておるかということでありますが、これは
地方の第一線におきましては、市町村並びに市町村に駐在しておりますところの
保健婦及び防疫要員、或いは飲食物衞生の監視員、そうして健康保險組合というような第一線にありまするところの機関それの上にこの
保健所という組織がある。そうしてその保康所の上に縣衞生部若しくは衞生官、次に本省というような組織を以ちまして、國が義務といたしまするところの健康にして、文化的なる最低の生活を保障する、國の義務をこれらの機関によ
つて遂行して行く、將又
地方の住民の方方がみずから欲する形態の
保健組織を運営して行くというような行き方にいたしたいと考えておるのであります。尚この場合におきまして一体何年ぐらい経
つたらどうするというような
一つの
目的があるかというような点につきましては、
予防局長からお答えを申上げたいと思います。
第三番目に
保健所という名称は妥当ではない、むしろ
公衆衞生事務所と
言つた方がいいではないか、妥当ではないかという御
意見であります。この点につきましては私共も或点において誠に左様であると存じ、又非常にこれは一同苦慮をいたした点であります。率直に申しまするならば、
保健指導機関というものが
保健指導をやれば足るのでありまして、かくのごとき事務を行い、或いは
治療を行うということは或意味において墮落である。併しながら私共といたしましては、先程
予防局長から申し上げました裏面の
事情のみならず、又我々が自主的に考えました場合におきましても、我が國の
公衆衞生地域の現状におきましては、やはり忙がしいのに集ま
つて來て頂いた人々そういう人々に対して
保健所でできる程度の
治療をして行くということは、やはり
保健指導事業に対して一般の方方の
関心を持つ所以であります。邪道と言えば邪道でありますが、併しながら今日我が國に氾濫いたしておりますところの
結核、
花柳病というようなものに対する
予防的措置としてはこれは妥当ではないというようなことを苦慮いたしました結果、こうすることも止むなし、こういうことも必要であろうという結論に到達いたしましたので、その点
一つ御了承を願いたいと存ずるのであります。
尚事務を執るということにつきましては、これは
保健所が最も親しまれ易い
保健所でなければならん。我らの
保健所だという
関係を持たなければならん、のにも拘らず、権限行爲をやるというようなことにつきましては、これ亦非常に困
つた問題でありまするが、併しながら
警察署というものがなくなるという場合におきまして、ともかく
保健衞生の
仕事をや
つて行く
保健所がそこにでて來る、その
仕事を持つ。そうして
從來の
警察、行政と違
つて納得の行く民主的な親しみの持てる、そうしてその機会において
保健所を訪問することができる、つまり
保健所を親しまれる
保健所といたし、愛される
保健所といたして、しばしばそこに訪問の機会を多くすることも
一つの行き方ではないかというようなことで、これもやるということに相成
つた次第であります。この点につきましては御了承をたまわりたいと存ずるのであります。
警察同様の取締り行政をやろうなどとは毛頭考えておらないのであります。
次に
公衆衞生、看護事業とは何をやるかということでありますが、これは御存じの
通り保健婦というものは、我が國におきまする
保健行政におきましては、非常に大きい役割を演じております。從いまして我々といたしましてはこの
保健所活動というものに伴いまして、
保健婦の活動というものを見落すわけに行かない。而も
保健婦は御存じの
通り市町村駐在の
保健婦もありますれば、最も大きく占めるものは農業会、或いは
國民健康保險組合の
保健婦であります。約三千ばかりが
保健所の勤務をしているという実情であります。從いましてそれぞれの命令系統、所属を異にしている
保健婦、
保健区内における
保健婦は成るべく同一歩調をも
つて同一
目的に向
つて足並を揃えていけまするように
技術的な
指導、或いは調整を加えるということがこの
公衆衞生事業の
仕事の
内容であります。
又公共医療事業とはなんぞということでありますが、我が國におきまする生活保護法、或いは健康保險等の
医療費に関する
仕事をや
つておりまする各種の
施設、或いは
医療施設というものそういう事業を
保健所の立場からいたしましてこれらの事業を紹介し、その利用を斡旋し、或いは場合によりましては
保健所みずからがそれらの事業の
医療機関と申しますか、そういう役割を演じて、これらの我が國におきまする公共医療事業が円滑にや
つていけますように
保健所が協力してや
つていくこういう所存でここに記載しておる次第であります。
次に第四番目、都市と農村とはやり方が違うはずであるが、どういうふうにやるのであるか、この問題は
相当複雑多岐な問題であります。一言にして申しますならば、
從來我々が考えておりました
保健所創設当時におきましても、劣惡なる我が國の農村
保健の問題を解決するために
保健所を設置したい十年前はそういう
状態であ
つたのでありますが、今日におきましては、都市における
保健衞生の諸問題は山積いたしておる。不良なる
生活環境が、うじやうじやいたしているわけであります。從いまして都市におきまする衞生問題は非常に沢山ある。併しながら農村におきましてもやはり栄養の、量は豊富であるけれども、その質は不良であるというような問題もある。從いましてそのどちらに重点を置くか。それは異る性格のものでありますから、いずれにいたしましても農村における住民の
方々が必要なる衞生的保護を加えられなくてもよいという
理由はないのでありますからして、それぞれの特性に從
つて共に
努力を傾むけてゆき、現状を通じて
努力していきたいと考えている次第であります。
次に
予算、人員、
施設、機構の整備でございまするが、いずれこの問題につきましても……、非常に長くなりますので、この次に資料をお渡し申上げまして御
説明申上げたいと存じます。
次に第六番目の、第四條に
厚生大臣の指定する疾病ということがあるが、一体これはどういうことであるかという御質問でありますが、
保健所といたしましてはたびたび申上げますごとくに、
公衆衞生の
向上のために、
治療を行うのであります。從いまして
結核、
花柳病及び歯科疾患についてこれを行うのが原則であります。併しながら若し例えば青森縣におけるトラホームであるとか山梨縣における
日本住血吸虫病であるとか、かくのごとき
地方病がございますときには、
一つ厚生大臣の指定する疾病ということにおいて
治療をなすの途を残しておきたいという、かような趣旨であります。決してこれをも
つて一般疾病を
治療しよう、或いは胃加答兒の
治療をやろうというような考えは毛頭も
つておりません。
次に料金の問題でありますが、
改正法案によれば
保健所の手数料、使用料等は無料を
方針とするがごとく見られるが、どんなものを有料なものにするかという御質問でありますが、御説のごとくに
保健所は
保健指導を第一の
目的といたしまするが故に、これは無料を建前といたしております。併し若し
治療を行い、或いは試験、檢査等をなした場合におきましては、支拂能力のある
方々には適切なる手数料、使用料を拂
つて頂くことが妥当である。かように考えましてその場合は政令によ
つて料金を取り得ることにいたしたのであります。その料金、金額は
治療料につきましては社会保險
診療報酬規程を基準といたしまして、
一つの枠の中で
地方における
委員会等におきまして決められた額をも
つて決めていきたい。著じるしき凸凹等のございませんように、その際は、
厚生大臣がこれを認可するというようないき方にいたしたいと考えておるのであります。
次に栄養改善の問題であります。御
指摘になりましたごとくに戰時中及び今日、今こそ栄養
指導をなさなければならない重大なるときであります。而も戰時中になにもしなか
つたではないかという御
意見でありまして、その点は私共その局にある者といたしまして誠に申訳ないことに存じておるのであります。栄養の
指導といたしましては本省においては、私共の局において
地方においては衞生部において、現場においては保康所においてそれをやることに相成
つておるのであります。その
方針とするところは、栄養効率を
増進すること、食
つた物は皆身につけるように、或いはよく咀嚼するとか、無駄なく料理をするとか、その調理の配分を最も効果的にやるとか、とにかく栄養効率を
増進するということを主眼といたしまして、家庭菜園等における栄養資材の絶対値の
増加ということを目標にいたして、そうして
指導をや
つて來たつもりでありますが、併しながらにしろそれらに必要なる人員が不足しておるというような、或いはパンフレツト、リーフレツト等が十分でなか
つたということのために、その当時のキヤパシテイといたしましては、
相当にそれぞれ活動いたしたというような報告を受け、私共も見ておるのでありますが、而もこれが台所の末端まで到達したかという点におきまして甚だ不十分であるということは私共率直に遺憾に存じておるのであります。又今日の情勢におきましても、今こそ栄養をとることに
努力しなければならないのであります。從いまして私共としては大藏
当局に対して非常な
努力をいたしまして、ようやく
保健所に対して一人ずつの栄養士の配置を受けることに相成
つたものであります。從いましてこれらの機関を十分に動員し、殊に
專門家だけが一人占めをするというのでなく、
指導をするというおこがましい態度でなく、末端におきまして眞に住民の
方々の協力と共感とを贏ち得るような、盛り上る
指導の方式を採用いたしまして、是非十分なる成果を挙げるように
努力をしていきたい。そのために或いはパンフレツトを作り、或いはテキストを作りまして、おのずからその末端活動に遺憾なきを期しておるのでありますが、更にラジオ、これは主婦の時間においては殆ど毎日輸入食糧、その他に関する放送をいたしております。又土曜、日曜を除く週五囘のラジオの放送の時間におきましては、
公衆衞生の時間をと
つております。その時間においてもそのことを
説明し、或は講話をいたしておるのであります。というようにあらゆる機会におきまして……更にもう一例を附け加えますならば、輸入罐詰の場合におきましてはその使用法を貼付する。或いは配給所の前にその使用方法を掲載して置く、新聞にできるだけ各種の栄養知識の普及の記事を掲載して貰うというように、いろいろと
努力をいたしておる次第であります。
保健所におきまする重要な
仕事といたしまして、殊に今囘は僅かではありまするが、それらの人員を得ました次第でもありまするからして、眞に盛り上る方式を採用いたしまして、十分
努力をいたしまして御期待に副うように努めたいと、かように考えておる次第であります。
最後に乳兒の栄養の問題でありますが、この問題は
戰爭中も或いはそれ以前からもあ
つた問題でありまして、厚生省といたしましては、乳兒の
保健を主掌する省といたしまして、乳兒の栄養を要求し、乳兒栄養の
指導をやるのでありますけれども、乳兒の牛乳の生産は農林省に属しております。そのために適切を欠く場合がしばしばあることは御
指摘の
通りであります。併しながらこの牛乳の問題は動物の飼料、動物の飼育その他の問題とも関連がございまして、單に厚生省へ牛の問題だけを持
つて來るというようなことにはなかなかの問題があるのであります。両省で話合
つたこともあるのでありますけれども、尚未解決のままにな
つておる次第であります。
一つ又いろいろと
関係方面とも相談をいたしまして、御期待に副いまするように改善を図
つて行きたいと考えております。尚國立療養所との
関係等につきましては、
予防局長から御
説明を申上げることにいたします。