○
委員長(
下條康麿君) 全
會一致であります。よ
つて本案は
修正議決すべきものと決定いたしました。
この際私から
一言所感を述べたいと存じます。段々
委員會におきまして
愼重審議を煩わしました結果、漸く
勞働省設置法案が本
委員會において決定になりましたことは、誠に段々の御
苦心に對して感謝に堪えない次第であります。
顧みますと、この
社會問題に關しまして、
從來幾分か
社會全體が敬遠するような
態度があつたことは否めない事實でありまして、大變古いことを申上げて恐縮でありますけれども、私が若い頃に
内閣書記官でありました時に、丁度明治の末年に、
衆議院で、
社會政策に關する質問が出たことがありましるが、
當時西選寺内閣總理大臣は
社會政策ということをお知りなかつた。私は偶偶その方を研究してお
つた爲に、それに關する
答辯書を書いたことを今に記憶いたしておりまするが、そういうような
關係によりまして、
社會問題が逐年その
重要性を増加しておるに拘わらず、
社會問題に關する
部局がなかなか建設できない。できましても
内閣部局にちよつと付けて置くようなことでありまして、
社會局というのができたのは隨分後のことで、而も
内務省の僅か片隅にできたような次第であります。その後の
情勢は、そういうような状態を續けておりましたが、やはり必要は
迫つて參りまして、數年前に
厚生省ができたのでありますが、その
厚生省の時にも
社會省という
名前を付けられなかつた。
樞密院におきまして
厚生という字を付けられました。名付け親は
南弘さんでありますが、そういうような餘りはつきりしない
名前が付けられたようなわけであ
つたのでありますが、今
囘勞働省と立派に銘打
つて、
社會問題中最も重要なるこの
勞働問題に關する專管の
部局ができたということは、誠に
政府の
苦心もさることながら、これは確かに時代の推移を物語るものであると考えまして、今後の
勞働行政の、
米窪大臣その他各員に對して大いに御努力を願いたいというふうに申上げたいと思います。
さて今成立いたしました
修正案について、いろいろ今
討論の際に御
意見がありました。一々御尤もであります。要するにこの
修正案の
箇條は極めて
簡單な
箇條でありまして、一見甚だ重要でないかの如く見えますが、その中に含むところの
意義は極めて重大なものを包含しておるのでありまして、即ち新
憲法の
精神に基く
國會至上主義というものがここで確立されたのでありまして、この點はとにかく第一
囘國會におきまする劃期的の
處置であつたというように、この
委員會が自負してよいであろうと思うのであります。この間
吉川委員がここでお述べになりました
通り、若し
政府の
提案に何か不十分の所があり、それが
衆議院をそのまま
通つて來た場合に、誰がこれを是正するか。
樞密院なき後において、これを是正するものは我が
參議院あるのみであります。我々は
憲法の番人として、この重要な
職責を非常に重く考えておるのでありまして、さような
意味の
職責を今日盡し得たことを我々は滿足しなければならんように思います。從いまして、若しこの
勞働省が
設置されたことにつきまして、それが遲れた責任が
參議院にあるかの如きことを申す者があるならば、それは非常な誤まりでありまして、その案ができました上に、相當な不十分の點があつたことに對する
政府の責任竝びにそれを審議された
衆議院に責があるのであります。我々はその責は少しも負う所がないというように考えておるのであります。恐らく
衆議院におきましても、この
修正案の
内容を見られたならば納得せられまして、最も賢明な
處置を採られるであろうということを確信して疑わぬのであります。この段この際
意見を申します。(拍手)
尚本
會議における
委員長の
口頭報告の
内容は
豫め多
數意見者の承認を得なければならぬことにな
つておりまするが、實はまだできておりませんので、これは本
法案の
内容竝びに本
委員會における
質疑應答の
要旨、
討論の
要旨及び表決の結果を報告するものとして、
委員長にお委せを願いたいと思いますが、如何ですか。
〔「
異議なし」と呼ぶ者あり〕