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小野哲君
討論に入るに當りまして私から本
法案に對する
修正意見を申し述べたいと存じます。
先ず
修正案の
内容を申し上げます。「第三條第二項を削り、第十
一條に左の一項を加える、第四條乃至第九條の
規定に拘わらず必要があるときは
政令の定めるところにより
省内において
部局の
所掌事務の一部を變更することができる。」
次に
修正案を提案いたしました
理由を説明いたしたいと存じます。今囘提案されました
勞働省設置法案につきましては、
決算委員會竝びに決算勞働連合委員會において數囘に亙
つて愼重に審議いたされたのでございます。本
法案の
内容を檢討いたしますのに、
勞働省の
設置が極めて重要な意義を持ち、且つその
實現は久しく待望されておりましたので、
政府が本
法案の立案に當つて詳細な
規定を設けられ、新憲法の精神を
忠實に活かすように努力されておりますことに對しましては十分了承いたしておるものでございます。然るに
行政組織の取扱に關しましては、從前の舊制度とは趣を異にいたしまして、原則として廣く
法律による
建前を採ることになりましたために、
法律が如何なる限度において
政令に委任するかが
立法、
行政兩部の相互の
關係を頭に置いて
判斷されなければならん
事柄であろうと存ずるのでございます。その
運用に當りまして嚴格に失するがために、
行政自體の
機動性を必要以上に阻害することは避けなければなりませんが、同行に
行政權の
自立性を尊重するの餘り、結果において
國會本來の職責に影響を與えることは
適當ではございません。本
法案第三條第二項はたまたまこの
理論上の問題を現實に我々に提供し、
國會の
判斷を要求いたしておるものと私は考えるのでございます。而も本
法案がこの
種立法の先例となること、及び
現行官廳組織につきましても同樣の事例が豫想いたされますので、この
考え方を擴充適用することが必要ではないかという
意見も考えられますので、
從つて委員會においては特に
愼重に扱われておることと拜察いたすのでございます。而して本項は二つの
事項を
規定いたしておるものと存じます。
第一は、第三條第一項に列擧された
勞働省の
部局の他に
政令で
部局を設けることができること。第二は
省内において
部局の
所掌事務の一部を變更することができることであります。いずれも將來の新事態に應じて臨機の措置を採ることができるよう
例外規定を置かれたものと解されるのでございます。
第一の點につきましては、
部局は
勞働省の
機構でありますが、
勞働大臣の
權限の
内容が形の上に表現されておるものと考えられますので、明白に
法律によつて定められなければならん
事柄であり、
政府も亦この
考え方で立案され、ただ
法律によ
つて動きの取れんものにならないよう、便宜上この
規定を設けられたと了解しておる者であります。第二條によつて定められた
勞働大臣の
權限の
範圍的であるからといつて、
行政部の
都合だけから
政令に委任してもよろしいということは言えないと存じます。特に第三條第一項に
部局を列擧し、
部局の名稱、數の變更は
法律によらねばならないという
立法の趣旨から考えますと、餘りに大幅に
政令に委任いたしますことになりまして
理論上妥當を缺きますと共に、
立法機關といたしましてもその責任を果しますためには格別な關心を持たざるを得ないのでございます。或いは
本法成立後において、必要に應じて
法律の改正その他の方法で是正できるではないかと申される向もありましようが、
國會の
審議途上において豫め論議する
機會が生じた場合におきましては、そのままにいたすことは
適當でないと考えられるのであります。
更に第二の點につきましては
事柄の性質上、又第一點の場合との
比較考量の點から申しまして、
行政の
機動性を發揮する
建前からこの點をも考慮いたしまして、
政令に委任いたしますことは妨げないものと存ぜられるのでございます。
政府は種々の事情を考え合わされまして、第三條第二項を設けられたことと思うのでありますが、敍上申述べました
考え方から、第三條第二項の中で
部局を設けることができるという點を削除いたしまして、
法律と
政令との間に一線を引きまして、その
關係を明らかにする必要があると思うのでありますが、第十
一條との關連を考えますと、むしろ削除されました殘りの部分を第十
一條に持つて參りまして、明瞭適切な
運用を期待すべきであると存じますので、
かたがた條文の
整理上からも第十
一條に一項を加えることといたした次第でございます。以上の
理由でこの
修正案を提案いたしました次第でございます。