○早川愼一君 二三お尋ねしたいのですが、先づ第一に、
勞働委員會に關して
大臣のお考えなり御抱負を承
つて置きたいのですが、
勞働委員會は、申すまでもなく爭議の調停等には重要な役割をなしている。どうも從来
委員會の調停決定
事項に對しまして、とかく権威が非常にないように私共は感ずる。昨年急遽あの勞働調整法を
實施いたしまして、第一に電産の問題が掛かりましたが、あれはたしか
政府が強制的に調停に付された
事件であると思います。その決定に對して一番初めにそれを拒否されたのは
政府のように私は考えております。爾來
勞働委員會の決定に對しまして、世間は餘り重きを置かない。又勞資双方もこれを輕視しておるというような
實情を私共は感ずる。これは勿論
委員會は裁判所ではありませんから、調停機關ではありますけれども、何らかの規範力があるものと私は考える。又規範力をあらしめなければ、折角設けられた
機構というものは何ら價値のないものと考えます。それには
委員會そのものの構成についても、私は非常に疑問を持
つておる。と申しますのは、現在の組合法によりますと、勞働者の代表、資本家の代表竝に
政府の推薦せられる中立代表というふうに委員が構成されている。常に様子を見てみますと、勞働代表は勞働者側の主張を堅持し、資本家側の方はどちらかというと、それに追い捲られている。中立委員の歸趨によりまして大體調停案の決定がされるというような
實情にあるように私共は感ずるのであります。然るに折角この調停委員なるものができましても、私共は少くとも調停
委員會は一體とな
つて決定すべきものであ
つて、その決定の中に少数意見であるとか、或いはその他いろいろの意見がありましても、
委員會として決定した以上は、異議があるべき筈はないと思うのでありますが、この調停の結果を、
勞働委員會で勞資双方に申渡されるときには、私共の経験によりますというと、少数意見なるものがあるのであります。これは一面において組合側の方から申しますというと、恰も調停
委員會の中にいろいろの意見が對立してお
つて、結局は人の僅かな中立委員の差で決定がされた案であ
つて、組合側としてもこれを尊重する必要がないかのごとき表現があるのであります。かようなことは、私共として
勞働委員會の権威の問題として非常に考うべき點があるのじやないか。むしろこれのごときは申立委員だけで構成した方が、公平に行くのではないかとさえ考えられる。この點なんかに對する
大臣の御考えはどういうものでありますか、お伺いしたいと思います。
尚爭議が起きまして、往々にして世間に傳えられる、新聞なんかに傳えられていることは、いわゆる組合方面から放送されることが出ておりまして、
勞働委員會で取上げた問題の經過なり、問題の所在點なんていうものは極めて無観されている・二・一ストの時には、最後に
大藏大臣が
政府を代表して、勞働闘爭
委員長、それから中立委員にして
勞働委員の會長が、それぞれの立場において爭議の經過を
國民に愬えられましたが、少くとも今日そういうような手段が何らかの
方法でとられないと、世間はただ一方的な二ユースだけによりまして、事議の中心がどこにあるかというような點が
はつきりしないというふうに私共は考えられる。それからもう一つは
委員會の調停そのものが、先程申しました構成によ
つていろいろ影響されるのかどうか知れませんが、とかく勞資の間を取
つてやる。例えば組合側が十の要求があると、資本家側の五の要求に對する回答の間を取
つて七半で解決するというような傾向が非常に強いように思う。これは我々としては、むしろ
勞働委員會は、現在の
日本の
實情なり又一般観念から見て、ここに妥結すべきものだという決定を獨自に與えるのが本當ではないか。双方が承諾すればどうでもいいのだ、爭議さえ消せばいいのだというようなことは、私は
勞働委員會としては不満を感ずるのであります。この點もう少し
勞働委員會自體が、もつと精密に世間の状態なり、或いは又時の
政府の政策なり、そういうものとよく関聯さして決定すべきじやないかと思われるのであります。
それから尚もう一つ付加えて申して置きたいことは、いよいよ
委員會の調停案は、結局のところ、その財源はない、それであれは何條でありますか、
勞働委員會が
政府に建議をいたして、この調停案を
實施する上におきましては、その會社なんかに對して
政府が相當の收入の途を圖る
方法を講じなければならん。例えば公定價格の改訂であるとか、或いは運賃の値上げであるとか、それぞれの
適當な處置を取らないと、この調定案は
實施できない。かるが故に、
委員會としては建議をして
政府に申達してある筈であります。ところが、この建議が半年以上も放置されて一向解決されない。その間勞務者の窮状は
實際見るに忍びない場合もありましようし、又資本家側、經營者側も早く解決して行かなければ勞働能率が向上いたしませんから、ここは思い切
つてやるとかいうような傾向があります。ますます
勞働委員會の権威そのものを落すような處置をとられているように私は感ぜられるのであります。これらに對しましてまあほんの一例を竝べて申上げたのでありますが、
勞働委員會に對しましては、相當の
機構の改正なり、或いは擴充強化についての十分なる御意見を承
つて置くことが
便宜であろうと思います。よろしく御願いいたします。