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小泉秀吉君 念のために……私この
要綱案にこだわるようですが、そういうふうな
政府委員の御
説明なら敢えてこの際私の
希望といいまするか、
意見とい
つたようなものを言わんでもいいようなことなんですけれども、
政府委員に対する私見として申上げて置きたいと思うのですけれども、この第一のところに、
政府の案に……案じやないかも知らんが、
一つの
腹案によると、十四日以上経過しなければ
審判開始にならないというような
意味に取れますのですけれども、私共の
考えでは、
海難審判はできるだけ
眞相を最も確実に把握して、いろいろな
証拠その他のものを新らしいところで
審判するというのが一番便宜でもあるし、又本当の
審判ができるのじやないか、私共過去においてこういうことに多年
携つてお
つた時分の
経驗からいうても、どうも時期が経つと事実の
眞相が非常に明快を欠くようになり、又或いは作意的に事実或いは
証拠が歪曲されるというような傾向が必ずしも少くなかつたというような
経驗からいたしましても、成るたけ早く
審判するというふうにして欲しいと思うのです。だからして
法律において決めたのを、今度
法律を
施行するときにわざわざ十四日以上経過しなければいかんというようなことをここに決めてそこに日にちの余裕を置いて即決即断できるのを、わざわざ遅らす。
愼重審議という
意味に捉われ過ぎるのではないか。こういうふうに
考えまして、私はこの日数はむしろそういう余計なことをしないでも、第四十六條の行き方で差支えないのじやないか又それが
海難審判をするというような
趣旨にも合うのではないか、こういうようなことを私は
考えておるのであります。
それからこの
要綱の中には、正当な事由があれば
審判を延期するというような
表現もあるようですけれども、その正当の
理由というようなことは病気だとか、
交通事故だとかというような不可抗力に限定すれば格別、ただ正当な
理由というような
表現であ
つて、そうして故意に
海難の
審判が遷延されるというようなことに持
つて來ろ慮れは必ずしもないでもないのですが、もともと
海難審判をするというそれ
自体が
公共の
福祉を増進するためであるので、
海難の
当事者自身であるとか、
海難の
原因について重大な
関係を有する者は、
海難の
発生防止という
公共福祉のため或る程度基本的に制限せられるということも
必らずしも不当ではなかろう。憲法の
條章からいうても、「
國民の
権利については、
公共の
福祉に反しない限り」
云々というような
表現もあるのですからして、この
審判の時期というようなものを選ぶのに、正当な
理由があればというようなことで特に延ばすようなことをして欲しくない、こういうのが私の
一つの観点であります。
それからもう
一つ別な点は、
理事官をしてこの
抗告をせしめるというその
建前でありますが、
理事官は一体公益の代表として
審判の
開始を申立てて、そうして
審判の秩序を維持し、且つ第二審の請求をなす
権限を有するということにな
つておるので、そうした
理事官に対して、上司の
命令で、
理事官の
意思に反してでも、被
勧告者の
意思を第二審に
理事官をして傳えせしめるというようなこと、即ち
理事官をして
異議の申立を被
勧告者に代
つてさせるというようなことは、
理事官自身の職務の、或いは
権限からいいまして
理事官の独自の見解というものを或る程度
制約するという結果になるので、この点は私はどうしても
法律の上からいうて、そうした
理事官の
自由裁量を
制約するという規定は面白くないと思うのであります。
それから第三点であるのですが、これは
受審人の
立場から申します
時分に
勧告をされた人の
利益、或いは
権利といいますか、そういうものを
主張し、或いはそれを取上げるために、
受審人自身がときによ
つては非常に有利に立廻る場合もあるかも知れませんが、又反対に迷惑を持越すということもあり得ると思うのです。第一審と第二審が
必らずしも一緒になるというようなことは
考えられないし、又そう
考え得るならば第二審の必要はないのでありますからして、
仮りに第二審において被
勧告者の
抗告によ
つて、第一審よりもより重い
裁量が
受審人に與えられた場合は
受審人の
立場からいえば非常な迷惑であり、非常な困憊に陷る。又そういうことに立至らんにしても、第一審で解消されたものが、被
勧告者のために第二審の終了までいろいろそれに拘わり合つたり、煩わされるということが非常に迷惑であり、又この
法律の
建前からいうても、大体
受審人が……
海難防止の
目的であるというけれども、同時にそれは
受審人を主にした大体これは
懲戒法であると思うのでありますからして、そういう
意味においてやはりこの被
勧告者の
上告権というものは、この
法律の程度に止めて置いてもよいのじやないか。むしろこの原案のままにして、そうしてこうした
政令を以てそれに或る
制約を加えるというようなことには
賛成し兼ねる、こういうのが私の
意見であります。
併し私の
意見はどうであろうとも、
政府の方のお
考えでは、今伺いましたような最も公平な、又
関係者或いはそれに堪能な
経驗知識を持つた方々の
意見をこ参照して、そうして決めるということであるから、私の
意見を敢えて特に
主張はいたしませんけれども、この際御
参考のために
委員としての
意見を申上げて置きます。
それで私は全面的にこの
法律案、
審判法案にはこのまず
賛成するものであります。