○相馬委員
川崎、前田兩委員に對するただいまの御
答辯で、
産業復興の基本的な内
閣總理大臣のものの
考え方は、私は一應よくわかりました。私は實際問題として、現在の失業問題の根本は、仰せのごとく
産業復興でありますので、その線に
沿つて二つの具體的な點についてお尋ねしてお答えを聽きたい、こう思うのであります。
今日は御
承知のように、職にある者ですら
生活に困
つております。わけてこういう際に、失業するたくさんの人があることを
考えますると、まことにお互い胸のうちが、暗くなるような感じでありまして、何としても根本的には失業保險、そういうものを施行するというその前に、まず出さぬ工夫をしなければならない。一旦
失業者を出せば、とてもそれらの者を再び生産陣營に呼びもとして彼らを働かせる、こういうことがきわめて困難であろうかと思いますので、これは勞働者を生かしておくということよりも、死ぬことを一日遅らせるにすぎない。こういうふうに極端に
考えれば
考えられないこともないと私は思うのであります。今日
産業復興、こういう
言葉のすぐ次に來る
企業整備ということ
言葉が、忽ちに首切りだ、こういうふうにみんなに了解されつつあります。これについてはいろいろ事情もありましよう。また
日本の今の
經濟の現實から、資本家がサボタージュしている、だから資本家が悪いのだ。こうばかり一方的にきめつけられないことも、われわれの知るところであります。
經濟集中排除法案というような、ああいうやつかいな法案が、うるさい法案が出て、今何かやろうとするこれらの資本家の階級に連なる人たちも、非常に困るであろうということは私もまたわかります。しかし勞働者階級からいたしましても、この
失業保險法案というものを、
政府が親心で出してくださる、ありがたい、しかしこれはわれわれを首切りする前提として、ああいうものを急ぎ出しておるのだというような疑心が、きわめて多いこともおわかりだと思うのであります。過般地方勞働委員の全國連絡會があ
つて、私も地方勞働委員の一人として、その席に連
なつたのでありますが、その場合に勞働者代表委員が、しきりにこの
企業整備の問題を、本質的な面においてとらえて論議していたことについては、
總理大臣もお聽き及びだと思うのであります。それで
川崎委員が先ほど、インフレを抑えなければ生産が向上しないと言われましたが、しかしこれはよく
考えると、根本策としては、私はインフレをどういうふうに抑えるかということが、今の失業問題だと
考えます。
完全雇傭を目途とする
失業對策というその
社會黨の立派な
政策、そうして新圓等についても勇敢な手を打つという、こういうインフレ
對策が、今ごろはどこにいつたのだかわけがわからぬ。こういうことをみんな申しております。私
どももそう
考えております。それでいろいろむずかしいこともあると思いますけれ
ども、生産を向上しなければインフレが治まらぬ、それもその
通りだが、インフレもまた
政府自身が眞劍に抑える氣にな
つてくれなければ、生産も向上できない。こういうことも言い得ると思いますので、インフレ
對策について、具體的にわれわれが安心のいく
一つの方途を
お話願いたいと思うのであります。
二つ目の問題は、今日統制
經濟がますます強化されつつあります。もちろん物がないのだから、統制
經濟もやむを得ないと思いますが、今の統制
經濟は、まことに官僚統制の悪い面を各所に暴露いたしております。
資材が足らない、電力が足らない、正規ルートで物がきても、いろいろそこにやつかいなことがあ
つて、そうしてそれがやみの値段でなければ物がはいらない。こういうことが今物をつくろうとする經營者側に、非常に足踏みさせておる原因であります。これがひいては失業の問題に絡んでくることは御
承知の
通りであります。それでこの官僚統制というものが、いかにばかばかしいかということは、先般の縁故米でよくおわかりだろうと思うのであります。ああいう縁故米という制度は、
片山首相だとか、平野農相が
考えたとはわれわれ
考えておりません。むしろこれは實情に疎い官僚が机の上でやつた
仕事だ、こう私
どもは今は
考えております。そう
考えますと
川崎委員が指摘されたように、まず
企業整備はこの官僚からしてりつぱに手本を示さなければだめではないか、こう私は
考えるものであります。なおいろいろ現在の
經濟問題から傾斜生産が行われる、これはきめてやむを得ないことでありますが、その
ために犠牲
産業ができて、この犠牲
産業の面における
失業者というものが大量に豫想される。そういう場合に、ただ單に
産業の復興だから、それで
企業を
整備しなければならない、それで首を切るのだ、こう言われてみましても、ほんとうに働く人たちにとりましては、まつたく職に離れるということは、今の
状態においては死ねと言うにひとしいことでありまして、大きな問題でありますので、このインフレの
對策の問題と、それからいろいろ今の生産の上において隘路をなしておるところの官僚統制、この二つについて内
閣總理大臣のお答えを承りたいと思うのであります。