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1947-09-17 第1回国会 衆議院 労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年九月十七日(水曜日)     午後一時二十七分開議  出席委員    委員長 加藤 勘十君    理事 辻井民之助君 理事 山下 榮二君    理事 川崎 秀二君 理事 原   侑君    理事 三浦寅之助君 理事 相馬 助治君       荒畑 勝三君    菊川 忠雄君       島上善五郎君    前田 種男君       山花 秀雄君    小川 半次君       小林 運美君    松本 一郎君       倉石 忠雄君    栗山長次郎君       河野 金昇君    綱島 正興君  出席國務大臣         内閣總理大臣  片山  哲君         勞 働 大 臣 米窪 滿亮君  出席政府委員         勞働事務官   上山  顯君  委員外出席者         專門調査員   濱口金一郎君     ————————————— 九月十六日委員土井直作君が辭任した。     ————————————— 本日の會議に付した事件  失業手當法案内閣提出)(第五二號)  失業保險法案内閣提出)(第五三號)     —————————————
  2. 加藤勘十

    加藤委員長 これより會議を開きます。  前會に引續きまして、質疑竝びに意見の開陳を繼續することにいたします。川崎君。
  3. 川崎秀二

    川崎委員 私は片山内閣勞働政策産業政策の重要な一環をなしておりまする失業保險法上程されるに際しまして、片山内閣企業整備産業合理化についての基本方針を、あえて總理大臣出席を求めまして、その抱負經綸を質さんとするものであります。  それに先だちまして、實は一言、最近の政局推移につれて起りました種種の問題につきまして、ぜひ總理の御見解を承つておきたいことがあるのであります。申すまでもなく、片山内閣は三黨の連立内閣であります。由來連立内閣單獨内閣とは違いまして、一つ政黨政策を完全に實施するということはできない。その意味におきましては、一定の定義に、あるいは主義則つて政策は困難であり、世上これをもつて、ややともすれば寄木細工の弱みと稱し、力強き政策の實行ができないというような悪評を放つものがあります。もちろんこれは一部の眞をうがつておるとは思いますが、私ども民主黨は、この三黨連立内閣成立するにあたりましての心構えといたしまして、經濟危機を突破するために、特に民族經濟の破局に沈淪して、再び起ち上ることのできないような重大な時局を拓くことに至らば、われわれ政黨人としての任務は大いに反省をしなければならぬ。それがためには主義政策を異にする政黨とも手を握つて國家民族を救わなければならぬという信念で、三黨連立内閣を結成いたしたと承知をいたしておる。これがためには、當時私ども理想であつた擧國連立という思想の及ぼすところによりまして、種々なる紛糾を見たにもかかわらず、われわれは自由黨が脱落されて、四黨連立内閣ができなくなつた以上は、次善の策として、三黨の連立内閣以外に國を救う政治力はない。かような意味合で今日まで協力いたしておるのでありまして、今後といえども、この協力程度をさらに深めなければならないと考えておるのであります。しかしながら近來世上に長期經濟計畫ということが、しばしば社會黨竝びに政府方面から放送されております。われわれは緊急對策を一應區切りをつけた以上は、なるほど長期經濟計畫を樹立しなければならないということは肯定をいたしますが、この長期經濟計畫なるものを、世上誤つて傳えておると思うのでありますが、社會黨政調會中心にして、今後は社會主義政策根幹としての方策を進めていくつもりであるというようなことがしばしば載つておる。もちろんこれについては、三黨の政調會とも十分な連繋をとつて、さらにはまた經濟安定本部の立案機關とも緊密な連繋をとりつついくのだということは一應斷つてあるけれども、何か社會主義的な政策を、いよいよ本筋に向つて走り出さなければならないというようなことが傳わつておるのであります。われわれとしては、黨の立脚點が、社會主義的な政策を採用するという政黨建前になつていない以上、はたして四黨の政策協定の線に沿つて長期經濟計畫であるかどうかということについて、疑いをさしはさまざるを得ない情勢に立至つておるのであります。この點につきましての總理の明快な御見解を承り、續いて産業合理化基本方針をお伺いいたしたい。かように考えております。
  4. 片山哲

    片山國務大臣 ただいま川崎君から、當面の危機を突破するために、最初に四黨政策協定があり、續いて三黨連立内閣ができまして、その三黨協定による政策の實現に向つて進んでおるという經過のお話については、まつたくその通りであります。現内閣は、當面せる祖國再建に向つて緊急經濟對策を立てなくてはならない、この焦土を再建していかなければならぬ、こういうことを眼目におきまして、御承知通りの八項目にわたりまする經濟緊政策を立てて、目下これに向つて進んでおるのであります。これにつきましては、四黨政策協定——承知通りこれは大綱を示しておるものでありまして、大體においてその線に沿いまして今日まで進んでまいつたのでありまするが、自由黨がその後野黨宣言をいたしまして、この政策協定から自分で離れるというような意味の表示があつたように思いまするので、私どもといたしましては、これを今ここで破棄するとかいう形式的な立場をとらなくとも、それはそのままとして、一つ參考協定案とでも申しまするか、考え一つの對象としていいと思つておるのであります。特別に自由黨がそう言つたからこれを破棄するとか、あるいはまた、まだそれは生きているから必ずその線に沿うてこれを嚴守していくとかいうような窟屈なる考えをもたないで、よい政策、あるいは必要なる對策等はできるだけ常識的に、かつまた効果的に、これを取上げていかなければならないと思つているのであります。三黨連立内閣のとりましたる政策も、こういう意味危機を突破するために必要なる政策を立てよう、三黨も、川崎君の言われましたような寄合世帶制はなくして、眞に危機突破政權といたしまして、この重大なる時局を擔當いたしているような次第であります。そこにおきまして、長期計畫を立てようというのも、この經濟緊急對策一連の繋がりをもちまして進んでいきたいと思つているのであります。これはこれとして切離して、別個に長期計畫をイデオロギー的に立てようというような考えをもつよりも、まず祖國再建ため經濟緊急對策であるとか、それがだんだん進んで經濟復興政策産業復興政策に進んでいかなければならない。さらにまたそれを足場とし、それを階段といたしまして、日本長期的な産業計畫を立てて、建設政策をさらに効果あらしめる、こういうような進み方をすることが必要と考えているのであります。そういう意味政府考えておりまする長期畫社會黨のもつているイデオロギーを、そのままむき出しにもつて來ようという考えをとらないで、現實に今までとつてまいりましたる政策階段といたしまして、それを効果を十分に發揮せしめる方法をとりまして、そうして漸次合理的な進み方をいたしまして、長期計畫に進んでいきたいと思つているのであります。どこまでも實際的であり、どこまでも効果的であり、どこまでも祖國再建長期計畫である。こういうことを御了承願いたいのであります。從つて當初考えましたる四黨政策協定も、また三黨連立内閣で現在とつておりまするところの現實的な緊急經濟對策も、十分に考慮せられた上に立つ長期計畫であつて一連關係があるものである。きわめて現實的にこれを取扱つていきたいということを十分に御了承願います。さらに本議會が滞りなく終りまするならば、直ちにこの問題に取かかつて經濟復興産業復興に關する建設的な政策を立てていきたいと思つて、來るべき通常議會に臨みまする場合におきましては、それらを具體化いたしまして、諸君にお諮りいたしたいと考えているような計畫であります。
  5. 川崎秀二

    川崎委員 ただいま片山總理お話で、長期經濟計畫イデオロギーによつて立てるものではなく、現實に事態を認識して、最も効率的な政策をとるものであるというふうに私は了承いたしまして、そのような意味合からは、黨としてもおそらく滿足であろうと考えているのであります。さりながら四黨政策協定は、自由黨が脱落された、しかしながら四黨政策協定に縛られるような、窮屈な考えはもたないというようなお言葉があつたように記憶いたしますが、四黨政策協定に縛られないというような言葉をそのまま私が解しますと、何かここにあらためて、三黨の政策協定をおやりになる御決意があるのであるか、その點をお伺いをいたしておきたいと思います。
  6. 片山哲

    片山國務大臣 別にこれを窮屈に考えませず、長期計畫を現實的に立てる上において、必要なる場面において、四黨政策條項を生かす場合には生かしまするし、またこれがあるために、現實的な長期計畫を立て得られないというような場合には、そう窮屈に考えないで、非常に彈力的にこれを考えていきたい、こう思つておるのであります。あまり形式的に、これを破棄し、そうして進んで三黨政策協定を新たに結んで、これを世間に發表するというような形式的な方法もとらず、實際的に進むことがよかろうと思つております。今御心配のように、これは全然無視してやるので、これは破棄して放任してしまうのだというような、形式的な取扱いもいたしません。いいところはとつていく、あとの建設政策に必要なるものは生かしていく。非常に樂な氣持で、彈力性をもたせて、これを取扱つていけばいいのではなかろうかと考えておるような次第であります。
  7. 川崎秀二

    川崎委員 片山總理お話の筋はよくわかりますし、そのお人柄に信頼をいたしまして、また御見解にも私も多多同意の點がありますので、この問題は一應總理の御見解信頼いたします。しかしながら、私はここにひとつ連立内閣閣僚の使命というものにつきましては、相當過去の實績に鑑みまして、總理の御信念のほどと見解をつぶさに伺つてみたいと思います。  今のような私のいろいろな危惧というものは、何によつて生じたかと言いますと、長期經濟計畫社會黨政調會政府に呼びかけられて、今後黨の意見を導入しつつ、黨の政調會中心となつてなるのだというようなことが契機なつたのではないのである。實は紙上散見いたしますところによると、社會黨機關紙の紙上においては、しばしば片山總理大臣も、今は三黨の連立内閣で、急速に社會黨主義政策を實行することはできないけれども、漸次公約を果していく、社會主義政策を實行していくのだということを機關紙の上で——これは誤傳であつたかもしらぬが、とにかく私は見たいことがある。また御列席の米窪勞働大臣は、名古屋の社會黨激勵大會で、現在諸般の政策がうまくいかないのは——これは私が言つてあるのにも誤りがあるかもしれませんが、うまくいつておらぬのは民主黨國協黨とが一諸におつて、これがブレーキ役になつておるからだ。しかしながら今後は、社會黨本來眞骨頂を發揮していくつもりであるというようなお話があり、その最後へもつてきて、そういうようなことになれば、いきおい内閣も改造をしなければならぬのではないかというような記事を散見したことがあります。これらも私の危惧契機なつたことでありますが、それらはまだよろしい。一番問題なのは、水谷商工大臣が、政局推移伴つて最も微妙な立場を見せておるところの石炭國家管理法案議會提出を前にして、しばしば各地で社會黨のスポークスマンであるか、あるいは連立内閣閣僚であるかということの意識すら疑わしむるような言動があることであります。かつて水谷商工大臣は、商工大臣になるや早早に、炭鑛國家管理法案を今度の議會に提出するということを斷言せられた。その勇氣には私は敬服しております。しかしながら傳え聞くところによれば、ユーピーの記者に會つたところでは、炭鑛國家管理案國有國營ためにやるのだということを、電波を通じて世界に流されておる。また北海道へいかれては、炭鑛國家管理案が通らなければ總辭職をするのだ。翌日にはまた、總辭職ではなくて議會の解散をやるのだということを言われて、われわれ石炭國家管理案に最も熱意を入れて、これが成立を願つておる者の立場をも、實は水谷商工大臣のしばしばの放言によつて、黨内においても相當苦しい立場に私どもつておるのであります、これは正直な話であります。そこでぜひ片山總理大臣にお伺いしておきたいことは、社會黨本來主張産業國有國營でありましよう。しかしながら今日の段階として、國有國營が無理であるということは、あらゆる政治的、客觀的情勢から是認させるならば、かようなことを申して、この機微なる雰圍氣にあるところの石炭國家管理案成立を遅らせに遅らせ、上程を延期さしておる最も大きな原因になつておるものに、商相の言明があるとするならば、これは、連立内閣閣僚として、はたして適當言動であるかどうかということについて、つぶさに總理としては考究をされなければならぬと私は考えるのであります。これらについて總理大臣は、どういうような御見解をもつておられるでありましようか。その點を一應伺つて、いよいよ本論の産業合理化の問題にはいりたいと思いますので、御見解を伺わせていただきたいと思います。
  8. 片山哲

    片山國務大臣 社會黨考えております社會主義政策廣汎にわたるものでありまして、これを實際政治の上に現わす場合におきましては、どういうところからこれを行つていくか、またどの政策を力を入れた政策として早くこれを行いたいか、こういうようないろいろな問題が出てくるのであります。私ども考えといたしましては、いろいろ政策にも濃度の差がある、また時期を急いでやらなくてはならない政策もあれば、ゆつくりと十分對策練つてその政策の實現に進んでよろしいものもあり、いろいろあると思います。非常に長期にわたり、かつてまだその範圍も廣いのであります。御承知のように社會主義政策と申しますものも、一定範圍を局限しておるわけでもなく、社會主義の原則に立つてこれを政治經濟産業社會、各般の問題にあてはめて、かつまたその當時の政治經濟情勢に適應してこれを行つていくことをも考慮すべきであります。つきましては社會黨におきましても、今最も重要とされておりますものを、直ちに現實政治の上にすぐ行つていくということよりも、今の情勢に鑑みまして最も必要なるもの、また十分に効果的なものを取上げて、その實行に進みたい。こういうふうに實行の方法については、きわめて實際的に考えていきたいと思つておるのであります。  そこで今お取上げになりました石炭國家管理問題につきましても、理想論川崎君の言われましたような理想論國有國營ということは今は出さないで、現在の状況に即した方法で、社會黨考えておりますような意味も含め、かつまた連立内閣の本質にも鑑み、石炭増産という大きな至上任命を達成せしむる案練つて進んでいきたいと思つておるのであります。その他と社會黨が公約しております政策につきましても、同じような進み方をいたしておるのでありまして、一ときに全部のものをもつて來て全部食べろ、全部呑み込め、こういうようなやり方はいたさないつもりであります。そういうわけでありまするから、この石炭國家管理問題も主義主張よりも、すなわちイデオロギーよりも、現在最もわが國で要求されておりまするところの、増産對策といたしましての國家管理案であります。それを十分に練りまして、そうして近いうちに、諸君の御手もとにおまわしをして御審議を願いたいと思つておるのであります。すなわちその意味は、現在の社會情勢と睨み合わせ、經濟事情に睨み合わせ、産業の發展、増産ためにぜひともやりたい、こういう意味であります。また勞働大臣商工大臣が、いろいろ出先において、眞實は別といたしまして、御指摘のようなことがあつたといたしましても、それは熱心のあまり、ほんとうにこれは増産ために必要である、ぜひともやらなくてはならない、舊態依然たる状態ではどうもいけない。そういう機構を幾分かでも改革して増産のできるようにしたい。國家が力を入れて、資材の足りないところには資材をまわし、資金の不足せるところには資金をまわし、勞力の流通も十分にやり、そうして衆智を集め、國全體が全力を盡して増産に邁進しよう、こういうような心持で、熱心のあまり出た事柄であろうと思うのでありまして、決して自分考えておる獨自の意見を、そのまま押し込めようというような考えはないと私は思つておるのであります。そういう意味に御了承願いまして、眞に政策本位立場から私ども考えておるという點を御了解願いたいと存じます。
  9. 川崎秀二

    川崎委員 いろいろ片山首相信念のほどを伺つて、わかつた點もありますし、また十分に了解しない點もある。熱心のあまりだというようなことを言われますが、連立内閣を維持していく以上は、當然連立内閣大臣としての責務を十分に自覺されなければならない。米窪勞働大臣の場合は、後に誤解の部分があつたということもわかつて、私も實は了解しておる。ところが水谷商工大臣北海道方面において、權力は短く藝術は長しという名句があるが、社會黨は長く、三派連立内閣は短かしというような、暴言を吐いておられるような方が、内閣の重要なポストを占め、しかも政局の歸趨への運命を擔つておるところの、炭鑛國家管理案を實施するという立場に立つておられる方だけに、一層の自重を要望したいと私は思のであります。それらの問題はこの程度におきまして、私は産業合理化についての首相の明確な決意を促し、かつこの際鮮明にしていただきたいと思うのであります。  社會黨は黨の方針として、完全雇傭を目途とする失業對策の樹立ということをうたわれてまいりました。私ども民主黨でも、國全體の責任としての完全雇傭ということは十分に認める。これと関關のある失業對策確立をしなければならぬということを、昨年の進歩黨政調會以來交渉してまいりまして、この點では社會黨主張と、ほぼ近寄つておると考えております。しかしながらこれは、あくまでわれわれが主張する國全體としての完全雇傭でなければならぬ。今日の状態をもつてすれば、各會社、各工場とも、ほとんど水ぶくれ的人員の過剰で、につちもさつちもいかなくなつているという状態を示している。政府産業合理化企業整備ということについて、片山首相施政方針の演説の中で觸れられたけれども、これは少しも明確なる具體策を今日まで出しておらないのである。さいわいに今日失業保險法上程をされましたが、失業保險法失業對策根幹とは言い難いものがある。これは本來職場を離職した場合に、次の職場に移る間の給付を目的とした法律であるから、失業對策の全貌とは言えないけれども産業合理化というものが斷行されるのであろうかどうかということについて、最近政府の態度は、すこぶる優柔不斷のように考えるのである。これは片山内閣勤勞者を基礎とし、勞働者を味方とされているといわれている以上、なかなか斷行しがたいことであろうと思う。しかしながら信頼を得、また協力を得ている内閣であればこそ、日本經濟復興ためには、斷じて行われなければならぬ政策であろうかと私は思うのであります。そういう保險法を、首切りの道具に使えとは私は申さない。しかしながら何とかして、この過剰人員整理しなければならない。殊に事を始めるには、まず隗より始めようということがいわれており、さらに官業の整理行政整理の斷行ということは、健全財政方針確立とともに、最も強く各方面から要望されていることでありますので、これらについての首相の明確なる御答辯を要求いたしたいのであります。
  10. 片山哲

    片山國務大臣 失業問題に關する政府考え方から申し上げたいと思います。われわれの目標といたしておりますのは、國民生活の安定をはかりたい、その安定性を確保したいということを考えているのであります。國民生活の安定は、まず國民職業安全感と、重要なる關係をもつていることに考えていかなければならないと思うのであります。これがためにはやはり一國の經濟、一國の産業、一國の財政をよくしていかなければならないのでありまして、これと睨み合わして考えていかなければならないのであります。御承知のような敗戰窮乏のどん底に陥つておりますところのわが國において、まず職業生活の安定をはかるためには、經濟復興をはからなければならない。わが國の祖國再建の第一眼目でありますところの經濟復興に、十分力をいたしまして、失業者のないように、職業安定をなし得るような經濟力を、國家が十分にもつことが最も必要であろうと思うのであります。そういう意味政府考えておりまする經濟緊急對策を、まず何ものよりも先に實行に移していかなければならない。これに主力を注いでいかなければならないという考えで、今日まで努力しているのであります。そこで一國の經濟復興再建に努力すると同時に、國民失業状態、働く意思があり、働く能力がありましても、その機會が與えられない大勢の人に機會を十分に與えて、そうして早く本人の希望と條件との關係を、有機的に連繋せしめる方法をとつていかなければならないと思うのであります。これがためにはどうしても職業補導機關でありますとか、職業指導設備であるとか、そういうふうな十分機會を與えて、關連をよくする設備政府がとらなくてはならないと思うのであります。同時にまた、どうしてもこの機會を與えられない氣の毒な人々ためには、失業手當であるとか失業保險制度を實施いたしまして、その残されたる人々の救濟に力を注いでいかなければならないと思うのであります。なお經濟復興ためには、方向としましては、その失業者を吸收し得るような仕事設備を十分に立てていかなければならない。そうして國家經濟國家産業と、やむを得ず出て來る失業者との有機的な關連を有効に、また時間を短くしまして十分吸い込み得るような機構を立てていかなければならないと思つておるのであります。それがためには、經濟復興方面におきましても、公企業を興すとか、あるいは輸出産業の振興をはかりまして、それらの人に仕事を與えるとか、いろいろそういう場面にも力を注いでいかなければならないものであると思つておるのであります。こういう意味から申しまして、ここに失業手當法あるいは失業保險法を、どうしてもわが國において實施していかなければならない。そうして文化國を建設する態様を整えていく必要があると考えて、諸君の御審議を御願いいたしておるような次第であります。こういう建前のもとに、目標といたしましては、國民職業生活の安定ということを目指して進んでおるのであります。そこで今川崎君からお話の、企業整理あるいは人員淘汰というような問題に進んで來るのでありますが、今日の企業整理しなければならないのは言うまでもありません。合理的にこれを處理していかなければならないのであります。政府の目下考えておりまする點は、そういう現下の政治の大きな目標たる職業生活の安定ということと睨み合して、やたらに失業者街頭に出すというようなことは避けたいと思つておるのであります。しかし企業の合理的な處置は十分考えていかなければならない。そこで企業の無駄を省いて、能率的にこれを考えて、きわめて科學にこれを處理していかなければならないのは言うまでもありません。勞働力の問題については配置轉換、今までいわれておりまする言葉でありますが、この配置轉換を最も有効に、効果を十分に發揮し得る方法で處理して、産業合理化企業整理を進めていくことがよかろうと思つておるのであります。この配置轉換は、故意に失業者を多く街頭に出すというようなることを目論んではおりません。できるだけ失業者を出さないようにして、勞力均分化をはかり、合理的な處理轉換をはかつていくという方法であります。しかしどうしてもやむを得ず、眞實意味失業者が出ます場合においては、失業手當法なり失業保險法によつて、その救濟の途を講ずるということを考えていきたいと思つておるのであります。それが現在の状況に照して最も妥當なる進み方ではなかろうかと私は考えておる次第であります。
  11. 川崎秀二

    川崎委員 もう最後でありますが、ただいまの片山首相お話は、失業對策産業復興、兩方合はせましての對策として、きわめて片山首相の年來の御抱負のほどを物語られたものと思いまして、傾聽いたしております。職業生活の安定が、まず何よりもの目標である、失業者を出さないという御方針は、私は非常に結構と思いますが、これがはたして今日日本がおかれておる環境から、日本經濟がおかれておる状態から、そのようなことができようとはわれわれは考えない。そこでどうしても、産業合理化を斷行しなければならぬときにいたつておるのではないか。何か薄氷を履むような思いで、腫れものにさわるような思いでおられるということでは、必ずや行詰る時節が來ると私は考えておるのでありまして、お考え方には賛成ではあるけれども産業合理化に對する具體的な施策を、早急にもたれることが必要ではないかと考えるのであります。産業の復興は申すまでもなく、インフレの抑止とがいろいろな手があります。しかしながらなんとしても、生産の増強が第一の手段であろうと私は思う。生産の増強であるいは勞働能率の向上、いわゆる高能率高生産ということが、強く叫ばれてよい時節になつたのではないかと私は思うのであります。勞働運動は終戰後俄かに増大をいたしまして、組合運動は全國を風靡するに至りました。勞働者は民主的に解放される。まことに喜ぶべき現象ではありますけれども、勞働能率の向上、勞働生産の能率性ということについては、現在の状態がはたして滿足のいける状態であるかというと、われわれは否と答えざるを得ないのであります。そのような意味合からして、どうしても米窪大臣あたりも、近頃しきりにスタハノフ運動を展開するのだというような抱負をもたれておりますが、高能率高生産ということをやる以上は、職場の合理化ということをお考えにおかれて、具體的な政策を進められんことを、この際是非要望をいたしたいのであります。  なおこの際にお聽きしたいことは、われわれは今後の勞働政策中心として、經濟議會、すなわち勞働者と經營者が眞に各々の立場にたちつつ、その經濟議會を利用して、話し合いで物事をきめていくという政治、すなわち經濟議會中心主義ということを、民主黨も標榜をしておるのであります。そこで經濟議會中心主義ということは、これを擴大すれば全國的にはやはり、私は中央勞働委員會の權限擴充、さらには地方勞働委員會の權限擴充ということになつてくると思う。皮相的にはそうなつてくると私は考えるのでありますが、近來政府においては、中央勞働委員會の權限を擴充するような法律案を、勞調法の改正をされるというようなお話を紙上において伺つておりますが、これははたしていかがなものであるか。さらには總理大臣を議長とする最高勞働會議をおいて、勞働政策の最高方針をきめていくというようなお話がでておるようでありますが、それらについての御見解を承つておきたいと思います。
  12. 片山哲

    片山國務大臣 勞働運動、勞働組合の進み方につきましては、御同様熱心に、かつまた愼重に考えていかなければならない問題であると思います。その點については、川崎君と考えを一にいたしますが、私の考えといたしましては、政治上における民主主義方法は、結局のところ議會政治というものを眞に權威あらしめ、これを高調して議會中心政治にしていかなければならないというところに歸着すると思うのでありますが、それと同じように勞働運動も、團體運動たる組合運動がきわめて健全に進んでいくために、民主的な方法がとられることを望むのであります。この組合運動の進み方が、ややともすれば矯激なる、あるいは暴力的な形に進むことを避けて、眞に民主的な運動に進むためには、民主的にしてかつ勞働大衆の希望を、秩序よく達成せしむるためには、組合運動も、もし爭議があつた場合においては、政治上における議會と同じような方法において、これを處理することが必要であろうと思うのであります。その意味において、川崎君の言われました中央勞働委員會の權威を高め、その機構を改正するなり、いろいろのことが必要になつてくると思います。しかし政治上における議會は、どういう運營方法がよろしいかということについては、諸君の運營委員會等多年の經驗がありましても、未だ最後の理想案に進み得ないと同じように、なかなかむづかしい研究課題になつてくると思います。アメリカ式がよいか、あるいはイギリス式がよいか、またそれらに關係なく、獨得の日本式の議會運營方法がよいか、いろいろ諸君によつて研究されておると思うのであります。經濟上、問題につきましては、やはり今後どういうような方法で、双方の意見をまとめて産業の發展に資するところあることがよいか、一國の經濟の隆盛を考える上においての勞働運動の進み方、あり方をいかに考えていくかということについては、十分に御檢討をわずらわしたいと思うのであります。そういう意味から勞働委員會の權威、構成等については、十分なる檢討を要したいと思つておるような次第であります。差當つてそれを規律いたしております勞働調整法がありまするが、本議會におきましては期日もありませず、いろいろの都合でその問題を取扱う段取りに至つていないと思います。十分議を練りましてよき案を立てたいと、今後における課題として諸君の御檢討も希つているような次第であります。どうかそういう意味で、一國の勞働運動の進み方をきわめて健全に、また勞働者の立場をよくすることによつて、一國の産業の發展と經濟の隆盛との關係を有効につけていき、有機的に考慮していくといういことが、やはりお互いに課せられたる大きな課題であるということになつて、十分なる御檢討をわずらわしたいと私は考えておる次第であります。  最高勞働會議の問題は目下練りつつあるのでありまするが、米窪勞働大臣からお答えすることにいたしたいと思います。
  13. 米窪滿亮

    米窪國務大臣 ただいまお尋ねの最高勞働會議と稱するものについて、一應申し上げます。勞働行政が今日の段階においては、國務の最も重要なる施策の一つであることは、すでに皆さん御承知通りで、川崎さんもその點については御異存がないと思いますが、諸外國の例をもつてしましても、勞働省を設置している國々においては、これは勞働省だけの問題として取扱うべきものでないことは、すでにほとんど常識になつていることであります。ただここで最高勞働會議は今日の段階においては、私の理想にすぎませんが、この最高勞働會議政策一つとして發足するまでには、今日相當研究が必要だと思うのであります。たとえば最高勞働會議と相並んで、最高經濟會議というようなものが必要ではないか。この最高經濟會議經濟安定本部との關係はどうするか、こういうようないろいろの考慮すべき點が相當殘されております。またこの最高勞働會議關連して、勞働關係閣僚懇談會というものと、どういうぐあいに連撃をもつべきであるか。こういうことで最高勞働會議の構想というものは、勞働問題と處理していく上において、當然勞働省だけの問題でなくして、各省とも非常に廣汎なる渉外事項が起つてくるのであります。また民間の方に向つては、經營者の代表及び勞働者の代表も入れて、民間側の意見を聽取する必要が起つてくるのでございまして、これは一勞働省だけで取扱いかねる問題であるから、いきおいここに最高勞働會議というものが必要になつてくるのではないかと一應は考えられるのであります。しかしこれについては、經營者側代表の意見もまだ聽いておりません。また勞働者側の意見も目下聽きつつある段階でありまして、これらの民間側の意見がどういう意見であるかということが、總合的にまとめられたときに、この最高勞働會議の規模なり運營の方法等を、はつきりと最後的にきめたいと思つているのでございまして、まだこの問題は勞働關係閣僚懇談會にも諮らず、從つて閣議にもまだ諮つておらない状態でございます。しかし私の理想としては、こういう種類のものは、今後の深刻なる勞働問題を處理していく上においてきわめて必要ではないか、こういうぐあいに考えております。
  14. 川崎秀二

    川崎委員 これで私の質問を終ります。
  15. 加藤勘十

    加藤委員長 それでは通告順に從いまして、前田種男君。
  16. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は安本長官に質問をするつもりでありましたが、所用のために長官が見えませんし、總理大臣は安本總裁でありますから、私の質問に對して安本總裁として基本的な問題について御答辯をお願いしたい。具體的な問題については、この委員會の進行上次會に安本長官から説明を承れば幸いだと思います。  私の質問の要旨は、現内閣が發足以來いろいろ緊急對策が出されております。特に安本を中心として金融對策、あるいは物動計畫、その他を發表されておりますが、私の見るところでは、日本のように八千萬の國民を擁し、狭い國土に生活をしなければならぬ國柄におきましては、むしろ人的配置、人の問題を一體どうするかということが一番重要問題であろうと思います。それでありますから、いわゆる勞働の計畫性、勞働の配置、こうした問題がむしろ物動計畫、あるいは金融計畫の先行をなさなくてはならぬと私は考えます。しかるに今日までの政策の實行は、金融政策と物動計畫に主力を注がれまして、勞働の計畫というような面につきましては、ようやく勞働省の新發足によつて新しい政策を發表しようという段階であると思いますが、私はむしろ物は勞働が加わらなければ死物である、金融の面もそうだと思います。どうしても勞働の配置、適正な勞働の行政、政策というものが根本的に計畫化されて、その勞働の計畫の上に立つての物動計畫であり、金融計畫でなくてはならぬと私は考えます。ましてや、本委員會に提案されている失業保險、あるいは失業手當法、さらに審議を終つておりますところの職業安定法等を審議するにあたりましては、その前段として、この計畫の全貌が明確になつて、初めて法案の審議にはいるべき筋道だと私は考えます。勞働の面から見た計畫性というものが、今日いかに重要であるかということは、今さら私が申し上げるまでもありませんが、こうした點に對して、總理大臣として、安本總裁として、基本的なものの考え方をこの委員會に發表していただきたいと思います。
  17. 片山哲

    片山國務大臣 ただいま前田君から、物動計畫、金融計畫の先行としての勞働勢力の分布なり、勞働者の力の計畫等を考慮していかなければならないという御意見は、まことにごもつともに思います。特に多年勞働運動に從事せられました同君の、體驗から得られた言葉といたしまして、十分に傾聽いたします。何分にも、まず物資、まず金融ということが今までのならわしでありまして、殊に物資の不足せる今日において、物がなければ動かないというような在來の仕來りが中心となつてきておるのでありまするが、私どもといたしましては、決して勞働力を輕視いたしておりません。これを産業復興計畫の重要なる要素として取上げておることは、すでに御了承のことと思います。ただいま前田君の言われましたる御意見を十分に尊重いたしまして、今後ともこれを實際面に考慮していきたいと思つております。
  18. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は總理にそれ以上質問はしませんが、この問題は非常に重要でありますから、少くともこの兩法案を審議中に、安本なり勞働省で具體的な案を作成せられまして、この審議の重要な資料として提出していただきたいということを、政府當局者に重ねて答辯を求めておきたいと考えます。そうしなければ、いろいろな困難な問題であるからといつて、この問題が一日延ばしに延ばされるということは、もし豫定通り進みまして、失業保險法失業手當法が十月一日から施行されるということになりますと、この法案が、せつかくの政府の親心が、結果においては非常な社會問題となる危險性もあるのでございます。もちろんそうした私が杞憂に考えておりまする問題等につきましては、今後本委員會によつて、さらに具體的な問題を提示して政府の所信を質していきたいと考えますが、少くとも政府としては、全體の勞働對策の面をもつと大膽率直に計畫の線にのせまして、そうしてこの線に裏づけするところのその金融——さいわい貿易も再開されまして、そうした面からも、いろいろな點で、努力すれば努力する餘地が見出されておりますので、そうした面も併せてそうした計畫の上に裏づけするという方策を立ててもらいたいと私は考えます。それともう一つは、特に總理大臣にお聽きして奮起を促しておきたい點は、よく今日の勞働組合のいき方が、いき過ぎだという非難がございます。また一つには、勞働基準法が一日から施行されたために、企業が今日のような負擔の過重になつておるのに、ああいう法律ができれば、さらに企業はやつていけぬという企業方面から囂々たる非難もあるのでございますが、私は、勞働組合の中にも今なお反省を要さなくてはならない未熟な勞働團體のあることを率直に認めます。こうした勞働團體が、一年二年の間にりつぱな理想的な勞働組合の活動をやり得る状態になろうとは考えません。しかし、漸次今日の時局を認識して、勞働組合本來の使命の達成のために努力し得るところの勞働組合に指導し、援助しなくてはならないことは言うまでもありませんが、それと反面に、むしろ今日の事業團體に一大奮起を促してもらいたいという點がございます。それは、終戰以來今日の事業家の態度というものは、どんなに努力したところで儲かりはしない、株主配當はやられない、どうせやりくりする以外には方法がないというので、一口に申し上げますならば、捨台詞のような状態で、企業に對して熱意がない、いい加減なことをやつていて、ほんとうの熱意をもつて國家企業を再建する、あるいはおのおのの事業を復興するという熱意に缺けておるという點が多々見受けられるのであります。私は、今日のような社會情勢のもとにおいて、そういう氣持にならざるを得ない端的な氣分もわかりますが、少くとも、そういう状態のもとにおきますならば、國家企業の將來というものは寒心にたえないと私は考えます。どうか政府は、そうした事業家方面に對してもつと奮起を促して、ほんとうに國家とともに、國家全體の企業の再建のために奮然と起つて努力するという氣持を持たせなくてはならぬと私は考えます。經濟力集中排除法案の内容がどうなつて現われるかわかりませんが、またこの問題に對して國民はどういう關心をもつべきかという點は別といたしましても、少くともこの法案に對しましては、從來の關係からいきますならば、企業家團體はもつと眞劍に、この法案に對して論議をしなくてはならないというようなことも考えられますが、案外企業家の中には、のほほんとしておるというような状態等は、今日の企業に對して熱意がないということが言い得られるのでございます。私はこうした面に對して、政府はもつと企業方面に對しても、奮然と起ち上るような御指導なり援助をする必要があろうと思いますが、この點に對しての御意見を承つておきたいと考えます。
  19. 片山哲

    片山國務大臣 第一の問題でありますが、よく實際上の問題に携つておる者の意見を徴しまして、その案を立て、その檢討を進めたいと思つておりますが、それはそれとして、この失業問題の重大なるときに、手當法と失業保險法審議はお進め願いたいと思います。それがないからこちらは審議は進められないというようなお取扱は、進行上いろいろ支障を來すと思いますから、どうか、必ずその問題については十分に檢討いたすことを申し上げておきますから、切離してお考え願いたいと思います。  それから第二に、事業家竝びに勞働團體に奮起を促して、そうしてこの重大なる時局を乘切る決意を新たにせしめなければならないという御意見は、まつたく同感でありまして、政府におきましても、事業家に向いまして、眞にこの際自分の利益を中心として事業をなすべきではなくして、ほんとうにこの行詰つたわが國の産業を再建し、祖國を再び建直すため産業でなければならない、産業の發展はインフレを克服する重大な原因ともなるし、また失業者を救濟する原因ともなるし、あらゆる面において國家經濟を隆盛ならしめるところの基本であるから、私利私慾をはかるという建前では斷じていけないのであるということにつきましては、十分に力を盡しておる次第であります。諸君の御協力を仰ぎたいと存じます。また勞働團體の進み方につきましても、先ほども申し上げましたように、眞に勞働大衆諸君日本産業を背負つてつておるのである。勞働大衆起つにあらずんばわが國の産業の再建は不可能である、こういう意氣ごみをもつて進んでもらいたいことを希つておるのであります。勞働運動のあり方も、眞に一國の産業を背負うのである、一國の經濟の隆盛は勞働運動の進み方によつて大いなる影響を與えられるのである、こういう點を十分に考えてもらいたいということを、常に唱えておるような次第であります。相ともに國民全體が、眞に己れのことばかりを考えないで、その立場よりも、國家再建、産業の建設ということに向つて進んでいかなければならないと思つて、努力奮闘いたしておるような次第であります。國民全體の愼重なる考慮を拂うべき問題でありまするから、諸君の御協力をも願い、政府も懸命の努力を拂つて、實際上邁進いたしたいと考えておる次第であります。
  20. 加藤勘十

    加藤委員長 前田君、よろしゆうございますか。
  21. 前田種男

    ○前田(種)委員 よろしゆうございます。
  22. 加藤勘十

    加藤委員長 相馬助治君。
  23. 相馬助治

    ○相馬委員 川崎、前田兩委員に對するただいまの御答辯で、産業復興の基本的な内閣總理大臣のものの考え方は、私は一應よくわかりました。私は實際問題として、現在の失業問題の根本は、仰せのごとく産業復興でありますので、その線に沿つて二つの具體的な點についてお尋ねしてお答えを聽きたい、こう思うのであります。  今日は御承知のように、職にある者ですら生活に困つております。わけてこういう際に、失業するたくさんの人があることを考えますると、まことにお互い胸のうちが、暗くなるような感じでありまして、何としても根本的には失業保險、そういうものを施行するというその前に、まず出さぬ工夫をしなければならない。一旦失業者を出せば、とてもそれらの者を再び生産陣營に呼びもとして彼らを働かせる、こういうことがきわめて困難であろうかと思いますので、これは勞働者を生かしておくということよりも、死ぬことを一日遅らせるにすぎない。こういうふうに極端に考えれば考えられないこともないと私は思うのであります。今日産業復興、こういう言葉のすぐ次に來る企業整備ということ言葉が、忽ちに首切りだ、こういうふうにみんなに了解されつつあります。これについてはいろいろ事情もありましよう。また日本の今の經濟の現實から、資本家がサボタージュしている、だから資本家が悪いのだ。こうばかり一方的にきめつけられないことも、われわれの知るところであります。經濟集中排除法案というような、ああいうやつかいな法案が、うるさい法案が出て、今何かやろうとするこれらの資本家の階級に連なる人たちも、非常に困るであろうということは私もまたわかります。しかし勞働者階級からいたしましても、この失業保險法案というものを、政府が親心で出してくださる、ありがたい、しかしこれはわれわれを首切りする前提として、ああいうものを急ぎ出しておるのだというような疑心が、きわめて多いこともおわかりだと思うのであります。過般地方勞働委員の全國連絡會があつて、私も地方勞働委員の一人として、その席に連なつたのでありますが、その場合に勞働者代表委員が、しきりにこの企業整備の問題を、本質的な面においてとらえて論議していたことについては、總理大臣もお聽き及びだと思うのであります。それで川崎委員が先ほど、インフレを抑えなければ生産が向上しないと言われましたが、しかしこれはよく考えると、根本策としては、私はインフレをどういうふうに抑えるかということが、今の失業問題だと考えます。完全雇傭を目途とする失業對策というその社會黨の立派な政策、そうして新圓等についても勇敢な手を打つという、こういうインフレ對策が、今ごろはどこにいつたのだかわけがわからぬ。こういうことをみんな申しております。私どももそう考えております。それでいろいろむずかしいこともあると思いますけれども、生産を向上しなければインフレが治まらぬ、それもその通りだが、インフレもまた政府自身が眞劍に抑える氣になつてくれなければ、生産も向上できない。こういうことも言い得ると思いますので、インフレ對策について、具體的にわれわれが安心のいく一つの方途をお話願いたいと思うのであります。  二つ目の問題は、今日統制經濟がますます強化されつつあります。もちろん物がないのだから、統制經濟もやむを得ないと思いますが、今の統制經濟は、まことに官僚統制の悪い面を各所に暴露いたしております。資材が足らない、電力が足らない、正規ルートで物がきても、いろいろそこにやつかいなことがあつて、そうしてそれがやみの値段でなければ物がはいらない。こういうことが今物をつくろうとする經營者側に、非常に足踏みさせておる原因であります。これがひいては失業の問題に絡んでくることは御承知通りであります。それでこの官僚統制というものが、いかにばかばかしいかということは、先般の縁故米でよくおわかりだろうと思うのであります。ああいう縁故米という制度は、片山首相だとか、平野農相が考えたとはわれわれ考えておりません。むしろこれは實情に疎い官僚が机の上でやつた仕事だ、こう私どもは今は考えております。そう考えますと川崎委員が指摘されたように、まず企業整備はこの官僚からしてりつぱに手本を示さなければだめではないか、こう私は考えるものであります。なおいろいろ現在の經濟問題から傾斜生産が行われる、これはきめてやむを得ないことでありますが、そのために犠牲産業ができて、この犠牲産業の面における失業者というものが大量に豫想される。そういう場合に、ただ單に産業の復興だから、それで企業整備しなければならない、それで首を切るのだ、こう言われてみましても、ほんとうに働く人たちにとりましては、まつたく職に離れるということは、今の状態においては死ねと言うにひとしいことでありまして、大きな問題でありますので、このインフレの對策の問題と、それからいろいろ今の生産の上において隘路をなしておるところの官僚統制、この二つについて内閣總理大臣のお答えを承りたいと思うのであります。
  24. 片山哲

    片山國務大臣 いろいろな問題について御質問がありましたが、まとめてお答えいたしますれば、私の考えといたしましては、國民生活をよくしようと思うならば、どうしても國家經濟をよくしなければならない。國民生活國家經濟との間に、今日ほど密接なる關係をもつときはないと思うのであります。そこで戰前の状態と今とを考えてみますると、勞働者が戰前において一人でなしておつた仕事を、今日は資材の不足やら、交通の不便やら、いろいろな悪條件のもとで三人がかりでしなければ、一人でやつておつたと同じ仕事をなし得ない状態になつておると思うのであります。また三人がかりでやりましたる仕事の總體量を考えてみましても、戰前における總體量と今の總體量とは非常な差がありまして、戰前の約半分であるとか、あるいは三分の一であるとか、そういう状態になつておりますから、生産力の減退、生産の上らないことが現實の事實として現われておるのであります。この總體量において少いものを、大勢の人でわけていかなければならない國家經濟國民生活との、その摩擦がきわめてろこつに現われてくるのであります。そこでただいまの御質問にも御指摘になりました通り、このインフレ状態を押えていかないことには國民生活もよくならないのである。こういう觀點に立ちまして、私どもはどうしてもこの經濟危機を突破して、生産の増強、生産の擴大——産業を盛んにしていくということを第一の狙いとしてあげていかなければならない、こういう建前で進んでいるのであります。從つて食糧の問題につきましても、總體量が足りない、しかしこれを要求する消費者層が大變多いのであるから、乏しいものを分け合つていかなければならない、食べるものを減らせというのではなくして、消費を節約していかなければならない。消費總量の減退をはかつて、そうして皆乏しきを分け合つていくという耐乏生活が、そこに必要になつてくると考えるのであります。そうしていかないことには、どうしても國民生活というものは耐えられなくなつてくるのである。この面から申しまして、官吏が率先實践躬行しなければならないという意味で、政府におきましては官吏道の刷新、官吏機構の政革、官吏が官尊民卑的な思想をもつて、天降り的に仕事を命令するというのではなくして、國民ため國民の公僕として仕事をするのである、こういう意味に徹しなければならないというわけで、國家公務員法の提出やら、その他これに關連いたしまする官吏道の大刷新をはかり、かつまた、官吏が國民の疑惑を受けないように行政査察制度を民間人によつて十分やつてもらいたい。そのために査察制度を起していることも御了承の通りであります。のみならずさらに國民全體の運動として、國民が皆やみを押えつけるのである。やみブローカーを排斥して、そうして國民全體が配給で生活し得るようにしていかなければならない。國民全體の耐乏生活勤勞者の犠牲によつてインフレを押えるのでなくして、國民全體がやみを押えて、そうしてインフレを抑壓していこう、こういうような建前國民運動を提唱いたしているような次第であります。一にこれはやみを押えることによつて均分なる配給が行われるようにしていきたい、こういうふうな建前であります。いづれにいたしましても、失業者を多く出さないようにしていかなければならない。完全雇傭理想でありますけれども、いま理想を實現し得られない經濟情勢社會情勢でありますから、やむを得ずわれわれは出た失業者を救濟するため失業手當法失業保險法の制定に進まなければならないと思つているのであります。文化國家としての體裁から申しましても、こういうふうな社會施設は、また制度は必要であります。やむを得ず出ます失業者を、そのまま見殺しにするわけにはいきません。この失業手當法失業保險法の制度は、首切りを前提としての用意として出しておるのではなくて、文化圏として當然なすべき社會施設をなしておるに過ぎないのであります。どうかその點を御了承くださいまして、十分なる御審議をお願いたしたいと思うのであります。
  25. 相馬助治

    ○相馬委員 片山總理が度々仰せられるように、國民の利害を度外視して勞働者の利害はないと、こういうことは、今の勞働者はみんなよくわかつておりますし、またわかりかけております。そういう際でありますから、仰せの通り國民皆努力してインフレ抑壓に進まねばならないのですが、特段政府においても、インフレ抑壓について勇敢に努力されるようお願いいたしたいと思う。先ほど官僚統制の問題について、皆この問題を國民が注視しておるという意味で申上げたのでありますが、經濟白書等においても、あれは鐵道省あたりでは、きわめて人間がダブついているんだというような印象を與える文面であつたと私は考えております。從いましてそういう官吏問題として、まず企業整備、そういうものについては、政府みずからが範を示していただかなければならない、こういうことを立派にやつていただかねばならない。こういうことをひとつお願いしておきたいと思うのであります。これでよろしゆうございます。
  26. 加藤勘十

    加藤委員長 あとはまだ質問者がありまするが、安定本部長官なり、勞働大臣なりに對する質問であり、自由黨側においては、次の機會まで質問を留保されておりますので、一應これで終つたわけですが、今日はこの程度で散會してよろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 加藤勘十

    加藤委員長 それでは本日はこの程度をもつて散會いたしますが、この際一言申上げておきたいことは、公務員法が決算委員會に付託されまして、勞働委員會と連合審査がとられるようでありますから、もし委員諸君の中に、公務員法について質疑なり御意見なりおありでありましたならば、どうか決算委員會の公務員法審査の場合に出席してくださいまして、十分に御質疑なり御意見なりお述べ願いたいと思います。それだけ附加えておきます。次會は金曜日午後一時からいたします。    午後二時四十一分散會