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1947-11-11 第1回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年十一月十一日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 鈴木茂三郎君    理事 稻村 順三君 理事 川島 金次君    理事 小島 徹三君 理事 鈴木彌五郎君    理事 苫米地英俊君 理事 川野 芳滿君    理事 東井三代次君       荒畑 勝三君    海野 三朗君       加藤シヅエ君    河合 義一君       黒田 寿男君    島田 晋作君       竹谷源太郎君    中崎  敏君       中原 健次君    西村 榮一君       安平 鹿一君    山花 秀雄君       押川 定秋君    川崎 秀二君       工藤 鐵男君    古賀喜太郎君       五坪 茂雄君    鈴木 強平君       鈴木 明良君    佃  良一君      長野重右ヱ門君    原 健三郎君       山崎 岩男君    青木 孝義君       淺利 三朗君    磯崎 貞序君       植原悦二郎君    角田 幸吉君       小峯 柳多君    鈴木 正文君       西村 久之君    樋貝 詮三君       今井  耕君    船田 享二君       中村 寅太君    野坂 參三君  出席公述人       土屋  清君    大内 兵衞君       品川 一登君    佐藤喜一郎君       永田  清君    大塚 萬丈君       中原 淳吉君    堀  文平君  委員外出席者         專門調査員   芹澤 彪衞君         專門調査員   小竹 豊治君     ――――――――――――― 本日の公聽會意見を聽いた案件  昭和二十二年度豫算追加案について     ―――――――――――――
  2. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 それでは會議を開きます。  これからただいま本委員會において審議中でございます昭和二十二年度一般會計豫算補正(第七號)及び昭和二十二年度特別會計豫算補正(特第三號)、いわゆる昭和二十二年度豫算追加案につきまして、この案は現在インフレーシヨン進行過程における相當巨額の豫算追加案でございまして、その國民經濟大衆生活に及ぼす影響が重大なるものがあるばかりでなくて、その中にはいろいろな條件を含んでおるように考えられるのであります。すなわち一般的に見ましては、一、經濟再建財政支出によるか、金額上の措置によるか。二、追加豫算健金財政を維持し得るか。三、追加豫算インフレーシヨンの關係及び見透し。四、千八百圓基準の是非。五、追加豫算とその財源。六、脱税防止と大口やみ利得捕捉方法。七、國鐵及び通信等特別會計赤字獨立採算制。こまかつ各論といたしましては、歳入において、一、追加豫算における所得税及び法人税増徴可否。二、新規財源としての非戰災者特別税可否。三、追加豫算における大衆課税可否。四、追加豫算における專賣益金増徴可否。五、各種租税滯納防止とその對策歳出におきまして、一、官公吏待遇改善と經費節約。二、終戰處理費資金畫及び物動計畫との調整。三、學術、教育、文化費は十分であるか。四、失業對策費は十分であるか。五、災害復舊費適當であるか。六、地方財政國庫補助適當であるか。七、産業復興のための資金資材の供給に關する對策適當であるかどうか。というような種々な案件が含まれておりますに鑑みまして、その審査の愼重を期するために公聽會を開いて、本日及び明日御出席公述人の皆さんの御忌憚のない御意見をお聽いたしたいと存じます。つきましては、いろいろな手續、時日が少くございましたために、いろいろな手續上につきまして、行き違いなどもございまして、公述人の選定その他御通知の上に粗略な點があつたかと存じますが、この點は委員長においておわびをいたしたいと存じます。  それではこれより公聽會を開き、公述人の御意見を拜聽いたしたいと存じます。まず朝日新聞社の論説委員評論家土屋清君の御意見發表をお願いいたしたいと存じます。土屋君。
  3. 土屋清

    土屋公述人 今日の日本インフレーシヨンの段階は、きわめて憂慮すべき事態に立至つております。通貨は千六百九十五億圓、これは昭和十二年の約六十倍に達しておりますのに、生産昭和十二年の約三割程度にしか過ぎません。しかもこの一年間をとつてみますと、昨年の十月に比べまして通貨は二倍に殖えておりますので、生産は昨年の十月に比べてほとんど殖えていない、こういう状態を呈しておるのであります。このときにあたりまして、今囘の追加豫算案が、もしも適正なものでないならば、インフレーシヨンの進行に加速度的な拍車を加えることになりまして、その極非常に憂慮すべき事態が起ると考えられるのでありますが、政府は今囘の追加豫算を目して健全財政である、形式的にも實質的にも健全財政の實を備えておる、というような説明をいたしているようでありますが、つぶさに檢討いたしますときには、これが形式的には一應その名に値するといたしましても、必ずしも實質的には健全財政と言い得ない多くの點をもつているのじやないかと考えられるのであります。  第一に、一般豫算でありますが、一般豫算のうち、歳入の主力をなすものは租税收入である。これは追加豫算と本豫算とを合わせまして、約千三百二十億圓に達しておりますけれども、はたしてこれだけの租税收入を實際にあげ得るかどうかというところに、大なる危惧が伴うと考えられます。すでに今日までの滯納が百億圓以上である。私はもつと多いと思うのでありますが、政府は百億圓以上であるというような説明をされている。おそらくこの千三百二十億圓の租税、そのうちの八百億圓くらいは、この一月から三月にかけて一どきにとるというような、無理な事態に追いこまれるのではないかと思われるのであります。從つて、とうていこの額面通り租税收入をあげるということが困難ではないかと考えられるのであります。  次に歳出の面におきましては、今度の豫算では公定價格主義を嚴重にとつておるということになつております。特に終戰處理費三百九十億圓は、進駐軍當局の方針に則りまして、つとに公定價格によることになつているようでありますが、はたしてその場合に、この豫算が執行できるのかどうかということについて、一體どれだけ政府が確信をもつておるかということが、非常に疑わしく感ぜられるのであります。もしも公定價格を嚴守したために豫算が執行できないということになつて、それで事業が繰延べになるということで濟むならば、結構でありますが、そうでなく、定められた事業は、ぜひともそれだけやらなければならないということになりますと、それだけ再び追加豫算が必要になるという事態が當然起るのでありまして、單に形式上の公定價格主義ということのみをもつて終る問題でないと思うのであります。また終戰處理費と竝ぶ全體の歳出の中の大きな項目である官公吏人件費につきましても、あとから申し上げます。  次に千八百圓ベースの維持ということが、官公吏については實際的に困難になつてきている。何らかの形において、これに對して補給をしなければならない情勢に置かれておる。そうすれば、さらにそれに數十億あるいは百億以上の追加支出が必要でありまして、これまた千八百圓ベースというのは、一種の公定價格でありますから、公定價格主義の破綻ということになる懸念が多いと思われるのであります。  一般豫算はそれくらいにいたしまして、特別會計というものがまたこれは非常な難點をもつておる。御存じのように、鐵道、遞信とも損益勘定において非常なる赤字を出しておりまして、このたび一般會計からの繰入れによつて、辛うじて埋めているようでありますが、それでもなお鐵道六十億圓、遞信十八億圓くらいの赤字が免れない。これは結局一時的に日銀借入金でしのぐほかはないと思いますが、ここにも一つ健全財政と言えない要因があると思うのであります。  第三は地方財政でありまして、中央財政に多くの注意が向けられる結果として、ともすれば地方財政の方が閑却されているような傾きがある。しかし今日地方財政は、都道府縣と言わず、町村と言わず、一樣に破産状態でありまして、黒字の縣というのは、わずかに一つしかないという状態である。内務省の調査によりましても、全體の都道府縣の歳入が六百九十七億圓、歳出が七百九十八億、差引百一億圓の赤字ということに一應なつている。しかしこれまた人件費の増嵩その他を考えます場合には、この程度赤字ではとうてい濟まない。これまた結局全體としての健全財政の基礎を危くする大きな要因だと思います。  第四には、財政の面から金融の面に振替えられる、いわば責任を片替りさせられインフレ要因がある。具體的には復興金融金庫資金でありますが、復金が今日事業救濟機關になつてしまつて、本來の復興金融には役立つていない。この復金資金が、本年度において四百億圓以上必要とみられておりますのに、政府の出資は追加を合わせまして、今年度は百億圓ということになつております。あとは結局債券の發行によつて調達することになるのでありましようが、現在の金融行政のもとにおいては、これが圓滑に市場で消化される見込みはない。結局これは日銀の背負いこみという形で、形をかえた財政インフレということにならざるを得ないことが明白であります。この面から相當のインフレーシヨンを促進する要因があると考えられるのであります。  かように考えてまいりますると、一般財政地方財政特別會計地方財政竝びに復興金融、いろいろの面におきまして、健全財政とは必ずしも言えない。率直に言うならば、健全財政とは形骸であつて、何ら實體を備えていないという感じが非常に濃厚になつてくるのであります。これは結局今度の豫算案を編成する場合におきまして、國民經濟の全體的な見地から豫算を考え、國民經濟の一環として總合的に把握するという用意が缺けている結果ではないかと思うのであります。政府經濟白書發表にあたりまして、國家財政企業と家計とを一體として見なければいかぬということを強調しておりますが、その見地は遺憾ながら、この豫算の取扱いにおいて、十分強く現われていない。それが今申しましたような、一應一般會計だけはつじつまが合つたが、全體の國民經濟から見ると、結局バランスがとれてないという事態になつてくるものと思われるのであります。かかる状態のもとにおいて、この豫算を執行するときにおいては、おそらく通貨の増發は免れがたい。年末二千億というのは、決して偽りではないのでありまして、來年の三月末までには、二千三百億圓くらいになるということも、當然豫想されてくると思います。しかも一方生産はどうかと申しますと、生産はこの十月、十一月がまず絶頂であつて、昨年の例に徴しましても、十二月からは石炭の冬場の需要が増大することと、電力飢饉のために減退するものと見なければならない。おそらく來年の一月、三月は、本年の三月危機が唱えられたころ以上の生産面の危機が豫想される。そうしますと、通貨面からの膨脹は逆比例して、生産が減退してくるということになりますと、日本インフレーシヨンの前途というものは、一層險惡化の度を加えてくるものと考えられるのであります。これに對して、一體どうしたらよいかということについて、少しく所見を申したいのでありますが、根本において今申しましたように、今度の豫算の缺陷が、形式的技術的に國家財政、しかも一般豫算だけを目に置いておつて、全體をとらえていないというところにあるのでありますから、豫算の眞の國民經濟との一體性を確立するためには、根本において長期經濟計畫というものを確立する必要がある。この長期經濟計畫に即應する長期豫算を設定いたしまして、その一環として追加豫算、それからその次の來年度の一般豫算も考えていかなけねばならない。この長期經濟計畫を立つて、それに即應する豫算計畫を設定することが、根本の問題だろうと思うのであります。今日長期經濟計畫の策定は、安定本部などにおいても一部分行われておるようでありますが、それをもつと廣い視野のもとに、そうして國民各層の參加のもとに、完全なるものに仕上げることが急務であると思います。もちろん日本が獨自で決定し得ない要因もありましようし、さらにインフレ進展過程におきまして、長期の見透しを立てることにいろいろなる困難が豫想されるのでありますが、しかしその困難が豫想されればされるほど、ますますそれだから長期經濟計畫の見透しを立てることが必要なのでありまして、それが確立されなければ、年々の經濟の營みが、その場限りのことになつてしまい、從つてまた豫算も出たとこ勝負という結果にならざるを得ないと思われるのであります。その意味におきまして、速やかに安定本部が中心となりまして、長期經濟計畫、五箇年間くらいの見透しを、あらゆる面から檢討する。そうしてそれには資本家側も、勞働者側も、國民各層の參加を得て、完全なるものにもつていくことが、急務であろうと思うのであります。もしも長期經濟計畫確立されたならば、いかなる利益があるか、もしくはそれが豫算面にどういうプラスをもつてくるかと申しますと、まず第一に、長期經濟計畫は、當然生産計畫を中心といたすものでありますから、それによつて國民の使用に供し得る生産總量資材の面が明らかになつてくる。そうすれば今日の歳出の大きな問題である終戰處理費裏づけ物資の問題についても、もう少し合理的な折衝が行われ得る基礎が生れてくると思います。單にあるもののうちからもつていくということだけではなく、全體をいかに國民經濟の中において最も有效的に、かつ摩擦なく使うかということが、終戰處理費裏づけ物資と關連して、一番問題になる點でありますが、それにはそういう生産計畫の確立が前提だと思うのであります。  第二には、長期經濟計畫確立の結果として、國民の消費し得る物資總量の見當がついてくる。そこで初めて生活水準具體的に明らかになつてくるわけでありまして、政府國民に向つて耐乏を要求する場合に、單なる口頭禪に終らないという利益が生れてくるのであります。先ごろ新生活運動の提唱などが行われたようでありますが、それきりのものになつてしまつて、今日どこへいつたのかわからない状態になつておるというのは、結局國民生活水準に對する確固たる見透しをもつていなかつたからだと思うのでありまして、それがこの長期經濟計畫確立によつて具體的な形において影響されるようになると思うのであります。  次に長期經濟計畫確立は、當然雇傭計畫を伴うわけであります。今日の日本官廳機構竝びに企業界の樣相から見まして、企業整備竝びに行政整理ということは免れがたい。それをいかなる形で、いかなる時期にやるかということについては、いろいろ考うべき問題がありますが、できるだけ效果的に、しかも早く企業整備竝びに行政整理を行うことは、當然のことだと思います。しかしそれには單に人が餘つておるから整理するということではなくて、全體の經濟計畫とにらみ合わせる雇傭計畫を立てまして、その上に立つて整理すべき人員を確定してかかる必要がある。それが同時に整理された場合においても、長期經濟計畫の示すところによつて經濟の再建が軌道に乘れば、やがては産業面に吸收されるということを意味するのでありますから、かかる企業整備、または行政整理に伴う摩擦を少くする效果があると思われるのであります。  次に長期經濟計畫確立が行われますれば、國民所得の推算が可能になつてまいります。今日國民所得の推算が非常にでたらめと言つては誤弊がありますが、非常にばらばらでありまして、政府の各機關でやつているものも統一がない。非常に大きな千億圓くらいの數字の違いがありまして、あまり信用がおけない状態であります。しかし國民所得の計算が確立されない國家財政地方財政竝びに市場金融への資金の配分ということは、とうてい困難なのでありますから、萬難を排しても國民所得の推計を確實にする必要がある。そのためにはやはり長期經濟計畫確立され、それに伴う生産畫竝びに雇傭計畫が立てられることが前提だと思うのであります。  最後に長期經濟計畫確立によつて、外資の導入という問題にも、實際的な基礎づけが與えられる。外資の導入が日本經濟建直しのために重要なる題目であり、また豫算の執行ともいろいろ關係をもつておると思うのでありますが、それを單にいくらでもくれるだけもらうというのでなくして、日本經濟の合理的な再建の一番手取り早い途として、科學的に考えていくためには、そういう長期經濟計畫裏づけがなければならないものだと思うのであります。  以上が第一に根本的に豫算を考える場合に要求される事柄だと思います。  次に歳入面につきまして考えますときに、結局今日の状態では、新しい税を創設するとか、もしくは特殊の方法に訴えて收入を多くとることよりは、きめられたものをしつかりとるという平凡なこと以外に、歳入を増す途はないと思うのであります。先ほど申し上げましたように、きめられた租税すら滿足にはいつてこない状態でありまして、これが確實にとれれば、インフレに對しても相當抑える效果があるばかりでなく、また徴税技術が發達いたしますれば、いわゆるやみ所得も普通の方法によつて抑えることがだんだん可能になつてくる。それには結局よく言われますように、税務官吏待遇を改善して、その機能を遺憾なく發揮せしめるようにするほかはないと思います。今日税務官吏待遇が非常に惡い。從つて最近でも五萬人からの税務官吏の定員に對して、半分と少しくらいしか埋まつていないで、あとは空席になつておる。つまり今日程度待遇では、なかなか税務官吏になり手がないという状態である。税務官吏だけを優遇することは、他の官吏との振合いの面において、いろいろ問題があると思いますが、しかしその職務の執行について特殊の誘惑を伴う地位にあるわけでありますから、それを防衞するという意味においても、税務官吏待遇を改善して、優秀なる人物を大量にこれに充てるという考慮が、ぜひ必要だと思うのであります。それとともに脱税に對する措置が非常にわが國では手ぬるい。脱税が行われても、實際上それによつて體刑を科せられたいという場合がないのでありまして、もう少しそういう點については、はつきりした態度をもつて臨む必要があると思います。  次に今度の追加豫算で、非常に專賣收入が大きくなつておる點が一つの問題でありますが、今のように租税收入によつてなかなか税源が捕捉されない、捕捉することが困難であるという場合においては、どうしても專賣收入に依存するということは、やむを得ないと思うのであります。その意味におきまして、專賣收入の範圍というものを、新しい物價にまで擴充して考えていくということが、むしろ必要でありまして、タバコならタバコというものばかりに一方的に集中するのではなく、新しい税源となるものを考えていく必要がある。たとえば甘味料サツカリン、ズルチンの專賣が考えられておりましたが、それがいつのまにかとりやめになつてしまつた。その理由がどうもわれわれにははつきりいたしません。當然これなども專賣對象になるべきものである。さらに最近では石鹸などのごときものも專賣對象にする可能性が十分あると思います。今日の石鹸のやみ價格と、公定價格の中間をとつて專賣にするといたしましても、石けん消費量かなり莫大なものであり、しかも石けんに必要な油脂というものを、國家が比較的容易に抑え得るものでありますから、これによつて相當税收をあげ得る可能性があると思います。また砂糖のようなものも、外國からの輸入が得られるならばむろん專賣對象になりますし、さらに國内産の砂糖、甜菜であるとか、あるいは黒砂糖のごときものも。かなり最近は増産されておるようでありますから、こういうものを專賣收入に加えてかかる必要があるように思うのであります。專賣收入の増大は、ある意味では大衆課税ということになりますけれども、今申し上げましたように、租税收入の増大が非常に困難である、これから税務官吏を充足して、教育して、十分やみ所得を抑えるというまでに、相當の期間がかかりますので、過渡的にはやむを得ない措置であると、私は思います。  次に歳入に關連いたしまして、今度の豫算ではあまり生産復興産業方面への支出が、全體としては必ずしも多くない。これは結局歳入の問題、財源の問題に歸著するものと思うのでありますが、私はこの際産業復興を促進するために、復興公債發行國家眞劍に考うべき時期に達しておると思うのであります。産業復興に充てるための費用を調達するために、國家復興公債發行して、その消化國民大衆に期待するいうことであります。今日公債消化は、ほとんど個人によつては行われないで、大部分が銀行の消化という形をとつておりますが、通貨インフレ下において國民の各層に非常に偏在している。一部の層にのみあつて、またもたない層も非常に多い。そういう偏在状態のもとにおいて、これを引出すには、公債の直接消化ということを考えてかかる必要がある。しかしその場合において必要なことは、安定價値計算によりまして、二十年あるいは三十年後において、公債が償還される場合、物價指數とか、あるいは金價値とか、そういつたものを基準にする安定價値による償還ということを約束する必要があると思います。今日預金が必すし期待通りにはいかない、そして換物作用が非常に進展しているというのは、前途に對する通貨の不安ということに基因するものが多いのでありまして、それを防止するには、公債を購入した場合において、それを償還するときには安定價値によつて拂うという建前を明らかにすることが必要だろうと思います。安定價値計算の實行については、いろいろ困難な問題もあるのでありますが、しかし私は必ずしも實行不可能とは思いません。またその安定價値計算裏づけとなる物資が必要か、たとえばドルとか金とか、その他のものが必要かというと、これは必ずしもそれがなければできないというものではない。國民が要するにそのことを信任するかどうかという問題にかかつていると思うのであります。産業復興急務であるときに、税源がないためにほとんどそういつた方面に國家の主力が向けられまいというのは、非常に殘念なことでありまして、その弊を打破するためには、復興公債發行ということを考えていく必要があろうと思います。  次に歳出の面におきましては、私は失業對策費、それから生活保護費生活費援護費というものが、非常に少いということを強く感ずるのであります。インフレーシヨンの進展に伴つて、必ず脱落する層というものが起り、その不平均が、結局インフレ社會的なる害惡をなすものでありまして、インフレ時においては、失業對策竝びに生活援護ということに十分の考慮を拂う必要がある。今日生活保護法による費用竝びに失業對策費というものに、かなり金額が計上されているとは思いますけれども、とうていこれだけでは社會不安というものを除去するに足りない。これをもつと眞劍に取上げて増額していく必要がある。その方法として、一つ意見としては、私は失業者竝びに生活の要保護者に對しまして、國家主食を配給した場合、その代金を徴收しないという制度、いわゆる主食國家による物給制というものを考えることが必要だろうと思います。つまり失業者あるいは未亡人、遺家族のような者に對する主食の配給は、國家が無料でこれを行う。そういう制度を立てたならば、社會不安の除去の上に、かなり效果がある。それに要する費用というものも、その效果に比すれば、私はそれほど大きなものではないと思うのであります。  歳出の面におけるもう一つの問題は、官公吏の千八百圓ベースの問題でありますが、今日千八百圓ベースでは、官公吏生活できないということは否定できない事實だろうと思います。從つてこれを民間産業平均と言われる二千二百圓ベースまで上げる、あるいは突破資金、あるいは越冬資金の形でもつて與えるかということは別といたしまして、何らかの形において、その收入不足を補うということが急務であり、それがいろいろ官公吏の不正、あるいは怠業ということを防止するための、一番有效なる措置だろうと思います。その場合、この千八百圓ベースを、官公吏の俸給賃金について是正した場合において、千八百圓ベースはどうなるかということでありますが、必ずしも私はそれが千八百圓ベースの基礎に影響するとは思いません。官公吏待遇改善のために來年の三月までに費す資金というものは、おそらく五十億圓ないし六十億圓くらいの程度とみられるのでありますが、それだけの追加購買力が放出されましても、全體の物價體系に影響を及ぼすというものではない。一般民間の産業は、すでに事實上千八百圓ベースを上まわつておるのでありますから、これが新しい賃金引上をもたらさない限りにおいては、千八百圓ベースの基礎そのものには影響しないと思うのであります。しからば新しい民間産業のうちで、賃金引上が起るかどうか。現にそういう爭議が各所に起つておるのであります。これについては、この千八百圓ベースによる公定價格の算定というものが、どれだけの幅をみておつたかということを、もつと深く追究してみる必要がある。私はかなりの産業においては、相當公定價格の改訂が甘かつたのではないかという感じをもつております。今日の企業の亂脈、放漫なる經営というものを改めることによつて、實質上千八百圓ベースをある程度上げても、物價水準に影響を及ぼさないでやり得る餘地等が相當存在すると思います。それがどの限度まで可能であるかということを、もつとつつこんで檢討してみる必要がある。從つて官公吏の千八百圓ベースを引上げることと、全體の千八百圓ベースの物價體系を維持するという問題は、一應別個に切離して考えてみる必要があるのではないかと思うのであります。  私の申し上げたい點は、大體以上の諸點でありまして、要するに追加豫算を形式的に、局部的に考えないで、國民經濟の全體の動きの中で、總合的に把握する。それには長期經濟計畫確立して、その一環として妥當なる位置を與えていくことが必要であるということであります。
  4. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 ただいまの御意見に對して御質問がございますれば、時間が過ぎましたので、ごく簡單に御質問を許したいと思いますが、御質問がございますか。――御質疑がなければ次の方に公述をお願いいたします。それでは次の東京大學教授大内兵衞君。
  5. 大内兵衞

    ○大内公述人 鈴木委員長の御命令によりまして、昭和二十二年度の追加豫算に關する私の所見を申し上げます。質問がいろいろありますので、その全部にわたることはできませんが、ただ全體的豫算をどう見るかという私の考えを申し上げます。國民の一人として申し上げるつもりでありますから、特にどの黨派の意見を代表するということはありません。  まずこの豫算歳出の方から見ていきますと、經費は三類にわけることができると思います。第一類は終戰處理費三百二十二億、賠償施設補助費が四十億、給與改善費が五十四億、公共事業費が五十二億、この合計が四百六十八億であります。これが追加豫算の過半を占めております。いわゆる固有の財政豫算あるいは財政資金に關する豫算であります。完全に消費的な性質をもつております。第二類は價格調整費百五十八億圓、貿易資金への繰入金が五十五億圓、船舶運營會の補助費が六億圓、農地改革補助費が六億圓、復金の出資が四十億圓、合計二百六十五億圓、全體の約三割、このすべては民間の事業を維持したり、あるいは保護するための政府の出資であります。簡單に補助費と言つていいでありましよう。第三は鐵道通信特別會計赤字を補填するための繰入金、これは八十五億圓であります。これは政府事業を經營しておつて、それにお金が足りないから、それを一般會計から補充するという經費であります。  さてこの三つの經費のうち第一類の大部分については、いわゆる行政整理が問題となるのでありますが、いろいろな事情から、その節約は非常に困難であろうかと思います。しかしこの經費が何がゆえにかように殖えたかと言いますと、それは簡單にはインフレーシヨンのためであります。そしてこれが殖えても、國民經濟は少しもよくなることはないわけであります。またそれに對してこれが殖えるとインフレーシヨンはどうなるかといえば、むろんこの支出の全部が、ほとんどインフレーシヨンを促進する原因になるのであります。しからば第二の事業費、産業補助金はどうであるかというと、これは今までやつておつた民間事業が、物價騰貴のためにこのままではやつていけないから、また金を出してやつて、その困難をいくらか救つてやるという金であります。すなわち簡單に言えば、民間が損をしておるのを政府が補つてやるという金であります。これと機構が少し違つておりますけれども、やや似た金はいわゆる復興金融金庫えの出資で、これはこの豫算では四十億となつておりますけれども、本豫算では七十一億でありますから、合計百十億の金を政府復金に出すということであります。復金はこの百十億圓の金をもとにして、今年中に五百六十五億圓の厖大な資力をもつて産業を保護するという話であります。つまり問題はこれでどのくらいの産業が起るかということであります。政府及びこれに關係しておる人々の辯護する議論によりますと、かようにして何百億というたくさんの金を出すと産業が起つて、たいへん物がたくさん出てインフレがとまるかもしれないというのでありますが、しかしかりにそういう議論がほんとうであるとしても――ほんとうではありませんが、それが相當の時間がかかることは疑いない。しかるに一方金の方はどんどんと今年中に出ていくわけでありまして、その出ていつた金は、一旦は多少資本金的に使われるかもしれませんが、必ずや單なる貨幣として、單なる購買力として市場に出るのでありますから、これが非常な猛烈な勢いをもつてインフレーシヨンを促進する原因になるということは、疑いないところであります。  第三類の金はどうかと申しますと、この第三類の金は、つまり赤字の尻ぬぐいの金であります。しかもごく一部分の尻をぬぐうのであります。すなわち鐵道會計及び通信會計、この兩會計の本年度の資金不足額は二百九十億圓ということになつております。そうしてこれに政府が八十何億かの金を出しましても、たいへんな不足があるわけでありまして、その不足のほとんど全部は日本銀行から直接借入れるということになつておる。すなわちこの點から二百億圓ばかりの新しい紙幣がインフレートするということは疑いありません。以上歳出の側における國の豫算の性質を見ますと、簡單に言えば、前内閣のインフレーシヨン政策を、そのままに踏襲しておるものである。そればかりでなく、大々的に追加し、擴張しておるものであるということが言えます。それは第一には官業の赤字がたいへん多いけれども、これを減らせるということについて特殊な政策はなくして、これにはどんどん資金を出してやるということが豫算に現われております。第二には民間の生産事業でありますが、これもあまり基礎が確かでない事業がたいへん多いので、それを政府が助けてやる。直接には助けてやらぬでも、復金を通じて助けてやつて生産を起すという形になつております。簡單に言いますと、民間のそういう基礎の薄弱な事業に、巨額な政府資金を與えて、それを基礎にして、さらに巨額の日銀の不換紙幣をせわしてやるという形になつております。要するにこの三つの豫算を通じて考えられることは、行政はあまり整理しない。官吏はあまり減らさない。人件費、物件費は騰貴のままにしておいて待遇の改善はしてやる。こういうのがこの追加豫算の特色であると思います。この追加豫算を加えますと、本年度の豫算は二千六十六億圓となる計算であります。これが栗栖大藏大臣のいわゆる健全財政、健全金融を堅持して、國民資本の貯蓄に全力を盡すという覺悟をもつてつくられた豫算實體であります。つまり栗栖大藏大臣の言われる言葉を私の今申し上げたところから飜譯し直すと、こういうことになると思います。とにかく形式的には財政のバランスが合つた、この上はどしどし不換紙幣を發行して、赤字の官業と赤字の民業とを温存し保育したならば、健全に資本が蓄積される、こういうのが大體栗栖大藏大臣の言わんとしておる點であろうと思います。しからばこういうために必要な資金を、政府はどうして調達するか、この豫算はどうして調達するようになつておるかという歳入方面を見ます。これは三つにわけることができる。第一が直接税すなわち所得税が二百五十六億圓、それから増加所得税が六十億圓、非戰災者税が六十五億圓、合計三百八十一億圓、それが第一類、第二類はタバコ專賣益金の増徴二百五十九億圓、第三類は間接税の増徴、大藏大臣の言葉を借りて言いますならば、酒については十三割程度、清涼飲料税ついては二十割程度サツカリン、飴などの物品税は十割ないし四十割程度の増徴、この收入が約二百億圓であります。この三つの分類の中で第一類をかりに所有者の税といたしますならば、あとの二者すなわち第二類第三類は大衆の税であります。この大衆税と所有者税との比は六十六と三十四であります。これにつきまして大藏大臣は次のごとく言つております。直接税と間接税との比率は今次豫算と當初豫算とを通算しますと、七對三となつており、間接税の割合は必ずしも大きくない、しかも間接税の増徴については、極力必需品を避けるなど、できる限り大衆課税を避けようと努力したと、こうあります。しかしせつかく努力されましたが、その結果は、右ようの比率でありまして、當初の豫算とは正に逆であります。その大部分は必需品にかかるようになつたわけであります。すなわち大藏大臣は努力して大衆課税をやつているのであります。彼はこの比率が最初の豫算を加えてみると、よほど緩和すると言つておりますけれども、このことによつて、栗栖氏の編成された豫算が石橋氏の豫算よりは反大衆的であるということをごまかすということは、ちよつとむずかしいと思います。そうして大衆生活費は今日どなたも御承知のように赤字であります。これは經濟白書にも書いてある通りでありますから、この消費税の増徴は、ほぼそれだけ全部ただちに大衆生活費の赤字となるでありましよう。それはすなわち國民經濟的に言えば、やはりその面からインフレーシヨンが促進されるということにほかなりません。  これが今度の豫算の大體の性格でありますが、そこでわれわれ國民にとつて重大な問題となるのは、生産がどういうふうに進行しつつあるかということであります。生産の總合指數は、本年に入つてからでも徐々に上伸しております。しかしそれは七月が最高でありまして、八月、九月はすでに下降を示しております。この點先ほど土屋さんも申されたように、毎年後半期はだんだんと下降する傾向にあります。そうして今年の七月は最高と申しましても、戰前に比べましては四三%であります。約四割であります。この四割というのが、御承知の通り石炭や鐵について特別に無理をして、政府がたいへんな金を與えて、尻を叩いてでき上つた數字であります。要するにこういう事情から言うと、生産は今大體において停滯的であるということは疑いない。そういたしますと、どういうことになるか、つまり商品の供給の側から今のインフレーシヨンが多少とも緩和されるという見込みが、絶對にないということになります。そこで今後のインフレーシヨンはどういうふうに進行するかという問題は、もつぱら財政資金の支拂超過がどのくらいになるか。また民間の金融に對して日銀がどのくらい支拂超過をするかというこの二つの問題、この二つのテンポを、この二つの大きさを正確にはかれれば、ただちに出てくるのであります。結論といたしまして、私の豫想では今やこのインフレは、一段と危險な状態に突入しておると思います。そうしておそらくは、世界の歴史の上におけるインフレーシヨンの形態としては、最後の段階へ飛び込む一歩手前の形態であるように存じます。その理由を四つばかりあげます。最初の理由は、先ほど土屋さんから御説明ありましたのと同じ理由でありまして、一方においては歳入豫算が、租税歳入がたいへん惡いということであります。第一・四半期の租税收入の實績は、豫定の七割ぐらいであるらしいです。これにまた新しい税をとるというのですから、この七割を維持することもよほど困難かと思います。他方政府の支拂いの方はどうかと申しますと、それには先ほど土屋さんの申されたようないろいろの困難があり、たいへん今支拂いが遲れておる状態であります。そうしますと、この方面から、この年末より來年にかけての政府の支拂超過はどのくらいになりましようか。あるいは數百億圓に上るのではないかと思われます。第二は鐵道通信、食糧管理等のいわゆる特別會計事業資金の不足であります。この額は、私には正確にはわかりませんが、五百五十億ぐらいではないかと思います。そうしてこの不足額の五百五十億は、全部日本銀行から借入れるしか方法はないように考えられます。それが第二の金の出方、第三は形式的には民間金融になつておりますが、實質的には政府金融とまつたく異らない。先ほど土屋君からの御説明のあつた復興金融金庫事業資金であります。本年度の事業計畫は五百六十億圓となつてつて政府の出資百億圓としますと、四百六十億圓という事業計畫で、このほとんど大部分は、あるいは九割ぐらいは、日銀の方からの紙幣をもつて融通されるということに、事實上なるのではないかと思われます。以上四つの項目を合計して計算しますと、政府のもつておる金よりは超過する。日本銀行から出ていく金額は、少くとも千數百億圓になります。これが今年の三月までの計算でありまして、これだけはどうしても支拂超過になる計算になるように存じます。それからもう一つ忘れましたが、先ほど土屋さんからお話があつたいわゆる地方財政資金地方財政の不足の資金であります。これも相當巨額に上ることと思います。それで今の計算が必ずしも正確でなくても、大體の見當が千數百億圓に上ることは疑いないところであります。そういたしますと、年末における日本銀行券はどのくらいになるかという問題が、それに直接つながるわけでありますが、私個人、むろん何ら正確な計算の基礎をもたないのでありますが、今日二千億圓に達するだろうという計算が唱えられておるのは、もとより偶然ではないと思います。それを續けていきますと、來年の三月末、すなわち年度末には、あるいは日本銀行券の發行高は、二千數百億圓に止まればいいのであつて、下手をすると三千億近くになるのではないかということが豫想されるわけであります。そうして今や通貨の速度の増加は非常なものでありまして、それに反しまして信用取引の減退もまた著しいことは、今日銀行界のどなたも御承知の通りであります。そういたしますと、この程度通貨膨脹、すなわち六箇月の間に通貨が約倍になるということがもし起るといたしますならば、それがインフレーシヨンということに對してどういう影響をもつか。また生活に對してどういう影響をもつかということは、想像にかたくないと存じます。要するに今囘の追加豫算健全財政豫算だと言うのは、とんでもない思い違いでありまして、それは日本財政つて以來、最も不健全な状態にある財政を示す豫算であります。否、この豫算によりまして、戰爭から戰後へかけて進んでおる日本インフレーシヨンが、新しい段階にはいり、そうしてその段階への刺戟の一つの段階を、この豫算は示すものであると思います。これを大衆的な、すなわちわれわれ國民の位置から申しますと、千八百圓ベースはどうなるかという問題と、ただちにつながるのであります。一般の配給物價も非配給の物價も、九月には少し下落を示しておりましたが、今やそれがまた少しく上りつつあるよりであります。そうして八月、九月に少し下つたのは、主食の配給の増加ということが、おもな原因でありました。しかも十月は既にその反對を示しておるわけでありまして、配給品も非配給品も、ようやく高いという傾向であります。そしてそれを止むべき理由がどこかに見つかるかと申しますと、それははなはだ困難のようでありますし、また上述のような資金放出の必然から考えると、昨年同樣この下半期も概して物價は上騰の傾向をとる。これは一昨年もそうでありますし昨年もそうであつたように、ことしもまたそうであるということが、むしろ當然性の多い、プロバビリテイの多いところであると思います。しかも今囘の豫算それ自身のうちに、既にその原因がたくさん伏在していると思います。すなわち最低生活費を高める原因がたくさんあると思つております。單にタバコの値上だけを計算いたしましても、一人で三百六十圓、一家族にするならば千七百圓の負擔増加であります。これにその他の間接税の増加を入れますと、一家族數千圓の負擔増加になるでありましよう。そのほかに米を初めとする主食の値上りも何割かであります。郵便、鐵道の料金の値上りも豫想せられないことはない。從つてこれらのことを前提といたしますと、すべての配給品、非配給品は、さらに一層値上りするものと考えられる。簡單に言いますと、この豫算自身が千八百百のベースを破つて、これをはるかに擴張せねばならぬようにしておると思います。しかし問題はそこに盡きるのではなくして、これより後終戰以來の惡循環がより擴大した形において再生産せられるということにあるのでありまして、端的に申しますと、千八百圓のベースが單に今すでに維持がないのみならず、かりに維持しておつても、再び短時間のうちにさらに大いなる距離において維持しがたい事實が現われるということのうちにあるのであります。こう申しますと、皆さんが質問されるかもしれぬ。それではこの健全豫算が實行できぬではないかというのであります。むろんこの豫算の不健全性そのものは、つまりそこに現われるわけでありまして、明年度の初めの議會におきまして、何ほどかの追加豫算が必ず出るという事實となると存じます。しかもその追加豫算は、そう小さなものではあるまいと想像されるのであります。しからばそれは今の豫算すなわち八百五十億圓よりは小さいかどうかということ、そういう計算を正確にする材料を私はもつておらないのであります。役所でもなし、またそういう研究機關をもつているわけでもありませんから、何ら正確な材料をもたないのであります。しかしこういうことだけは言えると思う。終戰當時の日本の一般會計豫算は二百九十億圓でありました。それが二十一年の九月、すなわち石橋大藏大臣の當初豫算というものが六百五十八億圓でありました。それが六箇月經ちまして、二十二年の三月の追加豫算が五百三十三億すなわち本豫算とほとんど同じくらいであります。それでもつて二十一年度の豫算は千百九十一億圓となつた。すなわち最初豫算、九月の豫算が六百五十八億で、實際の成績は千百九十一億圓となりました。そして今度は二十二年の三月に提出された豫算によりますと、すなわち本年度の本豫算は千百四十五億であります。それに對して、今や八百五十六億圓の豫算が補正豫算として出たことになります。すなわち六箇月で本豫算の八割程度追加があつたわけであります。全體が二千幾らと今日なつております。もし今申し上げた數字をずつとごらんになりますと、つまり昨年の九月に出した豫算が、半年後には九割の追加がある。それから石橋氏のつくつた本年度豫算來年にしてまた八割の追加があつた。そうしてまた私の見るところによりますと、この豫算の方が石橋氏のつくつた豫算よりもより不健全であります。つまり私に對して、どのくらいのことか何らか推論しろと申しますならば、來年の春の豫算が、すなわち今の豫算八百五十億以下であるというふうに言うことははなはだむづかしいのであつて、もしそれ以下であればむしろ僥倖であると言いたいのであります。もしそういうふうになりますと、昭和二十二年度の豫算が全體として約三千億ということになるわけであります。しからばそのさき二十三年度、來年度はどうなるか。これはすでに大藏省が今問題にしておるところでありましようが、私はそれについて、これ以上むりな推論をすることは必要ないと存じます。  そこで結論を申し上げますが、安定本部は今年こういう計算を出したのであります。日本の本年度の國民所得は八千五百億圓である。これをどうわけるかと言うと、千二百億圓を産業資金に使う。國民消費のためには六千二百億圓が必要である。そういう話であります。それによりますと、財政資金としては千百億圓以上であつては計算が合わぬということであります。しかるに今計算したところによりますと、一般會計でさえ三千億ということになりそうなわけであります。これにまだ地方財政の會計や、特別資金の會計やにおけるいろいろの資金を加えますと、どういうことになりましようか。かりにそれが四千億圓となるとして、今申し上げた産業資金安定本部從つて千二百億圓といたしますと、殘りはたつた三千三百億圓ということになりそうであります。そうするとどういうことになりますか、われわれ國民は去年今の安定本部が一應計算したと稱する生活資金の半分でもつて、約四割で生活しなければならぬということになるのであります。これがつまり健全財政通貨に對する信用を維持増進するということに命をかけてつくられた豫算の全體のわれわれに對する意味であります。
  6. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 何か御質疑はございませんか、川島君。
  7. 川島金次

    ○川島委員 ただいま大内先生のお話を伺つたのでありますが、まことにわれわれもごもつともと思う節々があるのであります。ただ問題となりますのは、ちよつとお伺いいたしたいのですが、先生のお話を承つておりますと、第一は、財政の面における單純な消費支出増大であります。第二には、租税收入自體の惡化ということを中心といたしまして、栗栖藏相の財政政策というものが、健全財政だとは言つておるけれども、結論としては通貨増大を招くものであつて、それがインフレの高進に拍車をかけるものであるから、きわめて不健全な財政だ、こういうお説のようであるのであります。そこで先生に單刀直入にお尋ね申し上げたいのですが、日本の現實の立場において、國際的に置かれました状態、それから來るところの不可避的な、單純な消費經濟への支出、これも一應われわれは念頭に置かなければならぬ事柄であると思つておるのであります。そういうことから考えてみましたときに、一面においては生産の復興をはかりまするためにも、先生のおつしやる赤字企業の温存というお言葉もございましたが、まことに興味のある言葉でございまして、傾聽いたしたのでございますが、日本企業全體が目下赤字であるという現實の姿に立脚いたしまする場合に、その赤字企業をして、生産を復興せしめますためには、まず第一に金融ということは缺くべからざる問題になつてくるのではないかと思われるのでございます。そういう事柄をいろいろと考えてみますと、日本の現實の問題といたしましては、いわゆる通貨増發というものは、ある程度は私は不可避的な事態におかれているのではないかと思うのです。問題は要するにその通貨増發をどうして食い止めて、そうしてインフレ防止をするか、それによつて生産の復興と國民經濟の安定を期待するかという事柄に、私どもは歸するのではないかと考えているのでありますが、そこで先生にお伺いすることは、通貨増發というものは、日本の今の現状において不可避的な事柄であるか、それとも何か先生は日本のありのままの姿を土臺として、通貨増發を避けるような具體的な御構想をおもちになつておられるかどうかということをお聽かせ願いますれば、たいへんさいわいと考えるのであります。
  8. 大内兵衞

    ○大内公述人 お答えいたします。今までの方式、すなわち戰時中から日本がずつとやつてきた方式は御承知の通り日本銀行から通貨發行して、それを資金にまわして、そのときは復興金融金庫でありませんが、興業銀行その他、形はいろいろありましたが、とにかく通貨發行して、その通貨は不換紙幣を發行して、そうして軍需金融をやつた。そのことが過去十五年間、特に近いところで言えば、七、八年間やつてきたところであります。今の復興金融措置、このこと自體は、全然それと同じ形式であります。この形態は、つまり日本にほんとうに資本がないのに、紙幣を資本として過つてそれを使う。通貨を資本と過つて使うという方法であります。これはつまり通貨を殖やして資本を減らせる方法で、資本と通貨との割合を變化させて、通貨の方を非常に大きくするのでありますから、必ず物價騰貴であり、必ず生活不安の方法であります。これを繰返してやつて問題は解決するかどうかということでありまして、今言うたような方法で、ぜひとも産業を興すというお考えでありますならば、それは必ずインフレーシヨンが猛烈に促進する。これは初めからそうなのでありますけれども、しかしその現象はインフレーシヨンの初めの段階と、後の段階とは、だんだん變化してくるのでありまして、十五年經つた、すなわち滿洲事變以來累積したインフレーシヨンの弊害は、今日においては特に大きくなつているのでありまして、一方においてそういう形での産業奬勵をやりながら、他方においてインフレーシヨンを止めるということは、絶對にありません。そういう二つの途は絶對にない。インフレーシヨンを止めようと思うならば、そういう方法による産業資金の供給は絶對にやめなければならないと思います。
  9. 稻村順三

    ○稻村委員 支出の場合第一類の支出が非常に多いということと、第二類方面赤字補填がインフレを促進する。かようなことは大體私たち考えておつたのですが、この第一類のたとえば公共事業費などというようなものも、時によつて資材その他いろいろの關係から見て、生産の増強になる方向にもつていくということはできないものかどうかということ、これに對してたとえばわれわれから申しますならば、同じく産業を起すと申しましても、簡單に公共事業費としていろいろなところに組んでおりましても、これをたとえば新しく産業を起すようなところに相當たくさんもつていけば、當面の生産復興というようなことはできないわけでありますか、たとえば耕地の改良であるとか、河川の改修というところに向けていくことが、ただちにその土地から生産をあげるという面にまで向つていくことが可能だというふうに考えられるのですが、この點はどういうものでしようか。
  10. 大内兵衞

    ○大内公述人 お答えいたします。その點は問題は赤字でなしに、また財政上の方面だけの赤字といわず、日本銀行から現實に紙幣が出る赤字でなしに、調達される資金であれば、問題はただちに變化するわけです。もう一つ事業の性質にいろいろありますけれども、その事業の性質が非常に長期なものであれば、いかに生産的であつても、現實の今の經濟を救うのにははなはだ不適當と思います。つまりすぐものができるということが今のインフレを救う條件になつておるのでありまして、つまり借りる方の金が赤字でないということ、あるいは日本銀行の紙幣増發をするものでないということが一つ條件、もう一つの方は使う方の事業が、少くとも資本主義的にそろばんに合うようなことでなければ、今の日本經濟でやることははなはだ不適當と思います。
  11. 稻村順三

    ○稻村委員 もう一つお尋ねしたいのは、豫算編成にとつてわれわれの一番惱みの種となることは、給與の問題だと考えます。實は官公廳の職員の待遇改善、二百五十萬を超える官公廳の職員の待遇改善は、非常にわれわれとしても重要な問題であると思うのであります。しかし、ややもすると官公廳職員という一言のもとに、官公廳職員の中にもいろいろ種類があることをわれわれはうつかりすると忘れることがあるんじやないかと考えております。たとえば國鐵の大部分とか、遞信の大部分とかいうものは、直接産業に非常に密接な關係のある官吏というか、これは一般産業人の立場にあるのでありますから、たとえば行政官廳の職員などということになりますと、直接生産と結びつきがない職員だというふうに考えられ、ある點から言うと、これは國家によつて與えられた一定の特權をもつている職員というふうに考えられるのでありまして、この間におきまして、給與その他について、一應われわれとしては差別して考えると言うとおかしいのですが、考えていく必要があるのではないか。そういう建前から、先ほど先生が非常に強調なさつた行政整理というようなことも考えていかなければならぬと思われますが、その點について先生の御感想をお聽きいたしたいと思います。
  12. 大内兵衞

    ○大内公述人 國民の大部分が赤字であり、企業の大部分が赤字であり、また財政赤字であると經濟白書に書いてありますが、こういうことをそのまま踏襲するということによつて國家が救えるというようなことはあり得ないのでありますから、今おつしやられたようなことは、企業にも、われわれの生活にも、國家財政にも全部あると思います。すなわち國民生活を合理化しなければならぬと同時に、國家は普通の行政においても、特に事業官廳の行政において、絶對的にそういうことをやらなければインフレーシヨンを救うというわけにはいかないと思います。その中の問題として、つまりもう少し合理化するという中こ、今の稻村さんの御質疑ははいると思います。
  13. 川野芳滿

    ○川野委員 公述人に對する質疑應答等はまことに適當であると考えますが、日程を見ますると、まだほかに多くの公述人がございますので、議事進行公述人のお話を聽いて、そのあとで質疑にはいつたらいかがかと思います。
  14. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 大内先生に對する質疑は特別に多少の時間を保留いたしましたが、ただいま議事進行の御要求もありましたので、大内先生に對する質疑はこれで打切りまして、次の口述を承りたいと思います。  次は全國財務勞働組合の書記長品川一登君であります。御承知のように品川君の屬しておられます全官吏諸君の待遇の問題は、私どもも關心をもつて豫算の審議にあたつておる次第でありますが、特に公述の際にお願いいたしたいことは、私ども豫算の審議にあたつて政府當局からは問題の税務官吏に對する待遇に關しましては、でこぼこ調整によつて一般官吏との間の差が調整をされて、その上出張のような形で特別手當を支給して、税務官吏待遇をよくしつつあるというような政府の御答辯を聽いておりますので、そういう點についても實際を承ることができればたいへんさいわいと存じます、
  15. 品川一登

    ○品川公述人 土屋氏、大内氏兩氏の理論的な公述に引きかえまして、實際に税金を徴收する事務に携わつておるものとしまして、技術者的な立場から追加豫算について申し上げてみたいと思います。  第一に千百四十五億に上る既定豫算が、前内閣によつて上程せられたときに、その既定豫算の作成は、從來の豫算編成方針と趣きを大いにかえまして、編成の要綱にありますごとく、個個の經費竝びに歳入にわたり、具體的な要綱を掲げ、抽象的な文句を除去して、現實的に豫算の編成をなされておつたのであります。     〔委員長退席、川野委員長代理著席〕 ところが、半歳にも滿たずして追加豫算を上程せられることになりましたのは、先ほど兩氏から指摘せられましたいろいろな觀點もありますが、通じて私ども考えますことは、第一に現在のインフレーシヨンの高進下にあつて國民經濟に及ぼしておる國家財政のウエートというような點が、十分に把握されていなかつたのではないかと考えるのであります。  御承知のように、日本再建のための國家財政が、きわめて厖大に上り、しかもその内容において、從來の警察國家的な行政部分的なものに比しまして、政府の出資なり、あるいは投資的部分が非常に厖大になつておる事實、こういう大きな變化に即應した國民經濟に及ぱす財政の大きさ、ウエートが、土屋さんのおつしやいましたような總合的な計畫性をもつていないことから破綻を來しておるのではないか。若干の部分を除きまして、すなわち復興金融金庫問題竝びに既定豫算公債四十八億の削減の問題、そういつた若干の部分を除きましては、大體においてそういうことが言えるのではないかと考えております。追加豫算が上程せられまして、この追加豫算の内容を見ましても、大部分がただいま申し上げました行政費的な部分よりも、政府國民經濟へ投じた資本的部分が強いのであります。現在の國民經濟が、きわめて破綻に瀕しておるということは、安本から發表せられておる通りでありますが、國民經濟が完全に把握せられて、しかもその上に立ち、正しい財政が總合的に計畫性をもつて立案されたならば、ここに追加豫算の性格がはつきりとわかつてくるのではないかと思います。  大内氏の指摘せられましたごとく、われわれ税を扱う者としましても、今次の追加豫算を拜見しまして、決して健全財政でないことを痛感しておるものであります。第一に國家財政の總合的な計畫性が、ともすれば缺けました結果は、來年度の豫算あるいは前年度の豫算の實績との對比、これがきわめて關連性をもたず、しかも今年度の追加豫算におきましても、これらの歳出の部分、竝びに歳入の部分において、これが具體的に指摘できると思います。その一つを掲げますと、國民經濟に投じました歳出の資本的部分が、歳入租税なり、あるいは專賣という歳入面において結びつきをもつていないという點、放出されたままの資金が、そのままに歳入と關連をもたないということ、これが大きな原因で、しかも具體的な例ではないかというようにも考えられるわけであります。さて追加豫算の不健全性というようなものにつきましては、私は第一に歳入裏づけが十分でないということと、インフレによる歳出政府言つております公價主義を維持できないという懸念というような、二つにわけて考えてみたいと考えます。第一の歳入が完全に裏づけをしないという問題、これにつきましては、栗栖大藏大臣から説明がございましたように、現在租税收入の太宗であるところの所得税において、民主的な租税制度として申告納税制度を採用した今日、きわめてその成績が不良であるということに指摘できると思います。増加所得税が前年度末において施行されました際、われわれ全國の税務職員は、きわめて短期間の間にもかかわらず、懸命に調査に當りまして、大體の豫算よりも以上の歳入を果したのでありますが、この前後よりいたしまして、いわゆる租税に對する社會的反感、こういつたものが、きわめて強くなつておる事實は見逃せないと思います。さらに冒頭に申し上げました國民所得國家財政の關係からいたしまして、現在の國民經濟が、やみと公定との二つで生活しておる。この二重的な部分の矛盾からいたしまして、所得税の把握におきましても、いわゆる私資本的、自己の個人々々の資本的部分を蓄積する方向を、まず現所得税における脱税という道、さらに一つはやみ行爲という道、この二つにおのおのの納税者が求めておるということになるわけでありますが、これらを増加所得税と前後いたしまして、所得税體系において捕捉でき得なかつた大きな原因だとわれわれ考えております。所得税の申告納税制度に即應したいろいろな施策も、現在まだまだ完全になされていない。これが事實でありまして、税法施行以來、全納税者に對する周知普及徹底というものも不完全であります。從つて結局申告納税制度は、豫定の一七%にしか充たない税收をわずかに支えたに過ぎないのであります。さらに所得税の中におきまして、いわゆる源泉課税部分である税收はどうなつておるかということを考えてみますならば、われわれ勤勞階級の納税いたします勤勞所得税が大部分でありますが、平年度豫算における九十六億、この勤勞所得税部分が、現在においては既に相當數の税收をあげておる事實は見逃せないと思います。すなわち現在においては、すでに平年度豫算程度までの税收が確保される確實なる統計を得ることはできるのであります。從つて所得税の中におきまして、事業所得税等の納税申告制度による部分と、勤勞所得税等の源泉徴收による部分との比率が、現在の状況におきましては、まるつきり豫算とは逆轉いたしまして、所得税の大部分を支えているのが、勤勞所得税等の源泉徴收であるというような、奇妙な統計が成り立つのであります。これらは何を意味するかといいますと、いわゆる所得税そのもののもつ大きな矛盾ではないかと考えます。すなわち所得税の中をひもどきましても、配當所得とか、不動産所得のごとき完全な剩餘價値部分の所得と、事業所得、その中小商工業者を主體とする事業所得、さらに現在の經濟界にあつて生活給的な部分を占める勤勞所得、こういうふうないろいろ雜多な國民所得が、一列に竝列的に捕促せられるようになつていること、さらにこれらの所得の竝列を、課税の方面におきましては、いわゆる所得税その他租税によるところの國民所得の平等であるとか、富の平等化、均分化という問題は、現在の租税を通じて絶對にでき得ないということを無視してはいないかという點があります。  三番目には、いわゆる税率の刻み方でありますが、超過累進税率の刻み方が、現在の一萬圓以下百分の二十より出發しまして、百萬圓超百分の七十五、この間ずつと見ますと、大體におきまして税收の最もあがる部分、すなわち事業所得等におきまして、七萬圓ないしは三十萬圓前後における中小商工業者の占める所得の部分、これに對する超過累進税率が、他の部分よりも最も重いように思われるのであります。大體超過税率のきめ方が、最も大所得者である百萬圓超こういつた部分に最もきつく、しかも中小商工業者等の眞に日本再建に必要な營業者たちの所得を輕減する、漸次に輕減していく、そして最小所得に對する大衆課税所得税を、免税點の引上等の措置によつて輕減していくということ、こういつた一貫した考え方がなくて、いわゆる税收を確保するためにやむを得ないという考え方から出發したところの、最も擔税力の弱くて、しかも全國民のうちで最も大多數を占める中小商工業者等に對しての課税が、最も強化されておるというような事實、こういうふうないろいろ述べました所得税の矛盾が高じまして、いわゆる大所得者等の脱税が頻發し、中小商工業者等のまじめなる營業者が、まじめに申告をした者が不當に課税されていくというような結果を導き出したのであります。これによりまして増加所得税以來の所得税に對する社會的反抗というものが、大きく盛り上つてまいりまして、これが大衆課税反對というような一つの方向として現在起きていることは、われわれ徴税官吏としては、きわめて憂慮すべき事態であると考えておるのであります。しかしながら、一方目を轉じまして法人税等に向けますならば、そこにも所得税と同樣なことが言い得るものを多分にはもつておりますが、追加豫算、本豫算を合わせまして、個人の所得税が六百六十九億に上るに比しまして、その一割にも滿たない六十數億しか法人税に掲げられていないというような部分、これらからみましても、明らかに法人税がとられていないのではないかということが、直感的に見られるわけであります。しかしながら、現在の法人税の徴收におきましては、やはり申告納税制度の實績からみまして、豫定の六割にも滿たない状況であります。こういう點を併せ考えますならば、個人所得税において言い得たことと同樣のことが、法人税のいわゆる中小商工業者とほとんど企業形態において變らない小法人等にあるのではないかと思うのであります。しかしながら、大法人、とりわけわれわれの調査によりますと、資本金五百萬圓以上等の大法人におきましては、税の負擔がきわめて輕い。しかも租税を逃れる術をたくさん知つおるというようなことがあるのでありまして、法人税の増徴ということは、われわれ税務官吏としても、また勤勞者としても、ぜひ實行しなくてはならないというように考えられるのであります。しかしここで問題は、法人税以外あるいは他の税金以外に、何か國家財政を賄うところの財源はないかというような問題にはいるわけでありますが、追加豫算におきましては、いわゆる非戰災者税が六十五億という財源を見出して計上せられております。その非戰災者税につきましては、税の執行の立場から言いまして、また勤勞者といたしまして、われわれはきわめて遺憾な點を見出すのであります。第一に非戰災者税の課税標準の問題でありますが、これがいわゆる賃貸價格の三倍という、賃貸價格というようなものを押えてある點、これがきわめて税を捕捉する上からみまして、不完全極まるものであるということを言いたいのであります。しかもこの非戰災者税は、この賃貸價格を基準とした定額制であるということを、これが結局賃貸價格における若干の擔税を、賃貸價格の高低によつていたといたしましても、税率によるところの負擔の高低をつけなかつたならば、決してこれは擔税力に即應した租税でないというように考えるのであります。さらに非戰災者税においては、いわゆる戰災者と非戰災者の區分が明確にされ得ないというわれわれ實務上からの困難、こういうた面もあるのであります。結局非戰災者税が戰災者と非戰災者との社會的意味をもつだけでありまして、税收入その他税を徴收する技術の面から見まして、非常に遺憾な點があるということを申し上げておきたいのであります。  次に追加豫算における大衆課税部分でありますが、これらは所得税、法人税等において指摘いたしました部分、さらには大内先生から表現せられましたところの、間接消費税竝びに專賣益金を含むところの大衆負擔部分の過重であります。私たちの計算によりましても、追加豫算を通じまして、間接消費税、これの國民の負擔の中に占める部分は、少くとも六、七〇%――大内先生は六六%という數字をお出しになつたようでありますが、六、七〇%には完全になるということを、われわれも考えております。間接消費税が大衆課税であるということは、これは申すまでもないところでありますが、われわれはここで考えなくてはならないことは、税收入を確保するために、大衆課税をしなくてはならぬという考え方、これは政府としてぜひ一擲していただきたい。現在の税によつて最も苦しまされておるのは大衆であるという點を、十分にお考え願つて、税金はもう少しとれる部分があるということを、よく御調査いただきたいということであります。間接消費税が現在非常に税收入として大きな部分を占めておりますが、もともと日本租税の大宗としては、先ほど申しましたいわゆる收得税の體系がとられておるのであります。しかしながら、追加豫算を見まして、これは明らかに間接税中心に移行しつつあるということも指摘できるのでありまして、このことは先ほど言いました所得税竝びに法人税における、中小商工業者に對する課税の過重と同時に、大衆課税の問題としてわれわれは絶對に承服できないと申したいのであります。  次に現在の租税徴收の實際面について申し上げてみたいと思います。税務官吏待遇の問題、あるいは租税を徴收するための徴税費の問題、いろいろあると思いますが、現在日本の徴税費が、世界の各國に比べまして、きわめて率が低いということは、つとにわれわれが指摘いたしておるところであります。とりわけ追加豫算を上程せられ、千三百二十二億にも上る厖大な財政、特に租税收入をやるということになれば、これが歳入を確保するための必要な經費、徴税費というものが、どれだけ組まれておるかということを、われわれはいつも考えるのであります。第一に現在追加豫算に計上せられち徴税費が、わずかに三億五千萬圓足らず、きわめて微々たるものであります。從つてわれわれはこれらの徴税費によつて、はたして租税收入を確保し得るや否や、これに對して危惧の念を懷かざるを得ないのであります。徴税費の引上、竝びに税務官吏待遇の問題につきましては、委員長よりも特にお話がございましたので、具體的な事例をあげて申し上げてみたいと思います。このことは結局現在の追加豫算、これに計上せられておる租税收入をどういうふうにあげるかということと、重要な關連をもつておると思いますので、具體的に御説明を申し上げたいと思います。  第一に土屋さんから御指摘になりましたが、現在税務官吏は非常な缺員があるという事實、これは本年の十一月一日現在によりまして、私どもが調査いたしました結果によりますと、全國の税務署で缺員がどのくらいになつておるかという點を申しますと、二級官においては實に七七%の缺員であります。百人中三十三人しか現存していない。これが二級官の實情であります。三級官においては四三%、すなわち約半數に近いものしかいないということであります。こういうふうに、きわめて現在の税務官吏の實情が、定員に滿ちていないというこれらのことは、明らかにわれわれ税務官吏の勞働量がきわめて厖大であるということを物語るとともに、現在なぜこのように缺員があるかということを考えてみなくてはならないと思います。これは税務官吏待遇が、全官公吏平均に比べまして、現在の號俸制度におきまして、大體において二號俸ないし三號俸低額なのであります。大體金額におきまして、基本給において形式的に計算しました結果によりますと、百三十五圓ばかり平均額で低いのであります。これを手取額にいたしますと、大體五百圓前後にまで上るのであります。これらのことが結局税務官吏の充實を妨げる原因であり、しかも税務官吏という持殊なる任務、これがきわめて就職希望者を少なからしめておるのであります。この官公吏との平均率の引上げにつきましては、すでに大藏省の給與局におきまして、カード調査に基く凹凸の是正を立案せられまして、一應昨年の七月一日現在における全官公吏平均までは上げることができたのであります。しかしながら、その平均に上げたというのは、一應形式的でありましで、實質的にはその後大きな凹凸が生じていると、われわれは考えておるものであります。現在の税務官吏のそういつた待遇の面、さらに税務官吏の質の問題につきましては、既に御存じだと思いますけれども、經驗年數竝びに年齢からいきましても、税務官吏平均年齢が二十三歳であるというような事實、竝びに經驗年數からいきましても、わずかに五年未滿、これが半分以上占めておるというような事實、これらが明らかに現在の税務の執行に一大支障になつているわけであります。ここでわれわれは租税收入を確保するために、第一にやはり税務官吏待遇を改善していただくこと。これを要望いたしたいのであります。さらに徴税費の問題でありますが、現在全國の四百五十に上る税務署が、ほとんど國庫の建物でないという事實、借家が多いのであります。これらは結局徴税費が少いために、極端な税務署にありましては、物置を改造いたしまして晝間から電氣をつけて執務している。こういう状況下にありましては、決して事務能率の向上や、さらには租税收入は確保し得ないのであります。税務官吏の問題竝びに徴税費引上げ問題については、現在政府で研究中だということを聞いておりますが、しかしながら、少くとも諸外國の例と比較いたしまして、現在政府で考えておりますよりも、さらに七、八億程度までは引上げなくてはならないのではないかということを、われわれとしても一應計算してみておるのであります。もう少し具體的にこれらを申し上げたいのでありますが、次の問題、すなわち現在滯納がきわめて多いというような問題について、若干申し上げてみたいと思います。  租税滯納が先に申し上げましたように、税に對する引上げ反抗という大きな原因もありましようけれども、これらを裏づけるものといたしましては、まず昨年の年度末において八億七千萬圓の滯納であつたものが、わずかに半年を經た七月末におきましては、その金額において十二倍半の九千八億七千萬圓というような厖大なものになつております。一方滯納件數で見ますと、わずかに三・一倍であります。これは何を意味するかと申しますと、いわゆる増加所得税以來の所得税滯納、あるいは財産税、戰時補償特別税等の金額に、きわめて大きい滯納があつたということであります。この増加所得税以來の滯納の事實から考えまして、われわれ滯納防止の策といたしましては、やはり先ほど申し上げました税に對する納税者の眞劍なる協力をより具體的にしなくてはならない。政府で考えております納税強調週間とか、あるいは大々的な宣傳などは、一時的であつてはならないのでありまして、これが單なるお祭り騒ぎであつて、何ら税に對する關心を呼び起していない。これはなぜかと言いますと、いわゆる租税の徴收にあたつて税源が完全に捕捉せられず、しかも納税者と不慣れな税務官吏との摩擦がきわめて多い。簡單に言いますと、所得税におきまして申告制度が採用された際に、いわゆるお賽錢的な寄附金的な申告であり、これが組合によつて割當的な申告であつたというような事實、これらは明らかに個々の納税者が、税に對する認識が十分でないということになるわけであります。  なお最後に税の問題につきましては、現在の税務官吏の低賃金、その他社會的な問題といたしまして、きわめて税務官吏の誘惑される機會が多いということ、すなわち現在の税務官吏の税の執行上、いわゆる役得というような面における部分が、瀰漫されつつあるということ、これらは非常に遺憾な點でありまして、これを單に官紀肅正であるとか、あるいは行政監察等の方法によつて抑える、善導するというだけでは、決して十分なる成果を收め得ないのであります。第一に待遇の問題もありますけれども、われわれ税務官吏としては、やはり勞働組合、この組織せられた勞働組合を通じましての、いわゆる官廳民主化運動、官紀の肅正という問題、これと密接なる連繋をもつて、組合員即税務官吏、すなわち日本歳入確保のために、公僕としての税務官吏に育て上げなくてはならない。このための税務官吏の勞働組合を、さらに健全に發達するように善導しなくてはならないという點も、特に重大であろうと思うのであります。  いろいろ申し上げましたが、現在の追加豫算、これを見まして、健全財政でないということは、大内さんと同意見であります。さらにこの健全でない、不健全性が、いつごろくるかという面につきましては、われわれ租税收入を扱つておる面から見まして、いわゆる一月の確定申告と所得税で呼ばれておる來年の一月、これのあと、すなわち二月、三月に、日本財政危機がくるのではないかということを、追加豫算を手にした瞬間から、われわれ租税を扱つておる者といたしまして、危惧したのであります。どうかこれらの豫算竝びに税收の面につきましては、以上總合いたしまして、いわゆる豫算における總合的な計畫性、歳入歳出、特に歳出の資本的投下部分、これと徴收する租税との結びつき、こういう面を十分勘案せられることが必要ではないかと思うのであります。  なお最後に一つ申し上げたいのは、租税專賣以外に財政收入がないかどうかという問題であります。これはきわめて重要な問題でありまして、よく言われます價格差益金の問題であります。この價格差益金にいたしましても、安本の發表數字は百六億となつております。これが追加豫算においてもその通りに上つていない。なおかつわれわれ税務官吏所得税、あるいは間接税の現物調査、こういつた面からいろいろ勘案、總合いたしましても、少くとも三百億に上るのではないかというようにも考えております。この價格差益金、こういつたものが何ら考慮されてない。これらについては、税を扱う者から見まして、非常に遺憾ではないかというように考えるものであります。  豫算を通じまして申し上げたいことは以上でありまして、要するに租税收入を確保する方策、これは現在政府の考えておるだけでは不十分である。同時に税務官吏待遇を改善する。これによつて税收を確保できるというような問題になつたと思います。
  16. 川島金次

    ○川島委員長代理 この際お諮りいたします。先ほど川野君から議事進行について質問を省略するというお話もあつたのですが、午前中の公聽會はこれで一應打切つて、午後にまたあらためて開會をいたしたいと思いますので、ただいまの品川君の租税問題に關することは、きわめて重大なことでありますので、この際短時間に――大分時間が經つておるのでありますけれども、御質問がありますれば、できるだけ短時間の間にしていただこう、こういうふうに思うのでございますが、いかがでございましようか。もし御質問がございませんければ、この程度で休憩にはいりたいと思います。
  17. 野坂參三

    ○野坂委員 ちよつと簡單に、多少抽象的な問題になりますけれども、今の公述で現在の税務官吏待遇の問題、缺員の問題、あるいは經費の問題、こういうふうな状態がこのまま續けば、年度末において税の滯納部分、あの率がおそらく改善されないと思いますが、これについてどうお考えになりますか。  第二には、今政府の方ではこの問題についても改善すると言つておりますが、これの見透しが今どういうふうになつておるか、あなた方の方でおわかりになつておるかどうか。もし改善を多少されれば、滯納の率もまた年度末までには相當減るものと考えていいかどうか。こういう點だけをお伺いします。
  18. 品川一登

    ○品川公述人 租税滯納が年度末あたりに増加するというような第一の問題につきましては、ただいま申し上げました中から御説明いたしますと、租税に對する社會的な反抗、これは現在の所得税においては、必然的にまたでき得る可能性をもつておるのであります。すなわち豫定されました申告納税制度による税額が不足であるということは、いわゆる所得税法にまた基きまして政府において決定し、政府において公定して、天降り的な決定をもしなくてはならないというような事態が、當然豫想せられるのでありまして、從つて現在の段階におきましては、租税に對する一般納税者の社會的な考え方が變らない限り、滯納額は漸次増加するものと考えております。この計數的な問題につきましては、調査したものをもつておりませんので申し上げられませんが、抽象的ではございますが、大體において増加所得税滯納額、すなわち現在五十億ほどありますが、これの比ではない、厖大なる滯納があるということを明言できると思います。  さらに第二の待遇改善の問題でありますが、滯納のために、從事しておるわれわれ官吏、竝びに實際所得の調査にあたつておりまするわれわれ官吏待遇面が改善せられれば、租税收入が確保できる、あるいは滯納がなくなるというように直感的に、直接に結びつけることは、大きな間違いでありまして、待遇改善さえすれば、税務官吏は重勞働でもするかというと、決してしないのであります。そういう面からいたしましても、現在の千八百圓ベース、こういつた面が十分に絡み合つてまいりまして、全官公吏待遇の問題と、税務官吏待遇の問題をどのように置くかという問題、これは近く實施せられようとしておりまする職階制度の採用、その際において、具體的にはわれわれとしても政府に進言いたしたいと考えております。問題は待遇改善がされたと思つたときには、すでに他の官公吏の方がわれわれの平均よりも上つておるというような、きわめて矛盾した事實をわれわれは指摘せざるを得ないという點であると思います。
  19. 川島金次

    ○川島委員長代理 他にも御質疑はおありと思うのですが、大分時刻が經ちましたから、午前中の公聽會はこの程度で打切りたいと思います。午後は、まことに時間がなくて恐縮なんでありますが、一時半から再開いたすことにいたします。     午後零時五十分休憩      ――――◇―――――     午後二時八分開議
  20. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 それでは午前に引續いて開會いたします。  ちようどきよう、あす石炭の國管問題の最終決定にぶつかつておりまする關係上、社會黨も、民主黨も、今いろいろな會合が同時的に行われておりまして、お集まりになるのが少し遲れるかと思いますが、時間がたいへん豫定より遲れてまいつておりますので、開會いたしまして、帝國銀行頭取の佐藤喜一郎君の御意見を承りたいと思います。
  21. 佐藤喜一郎

    ○佐藤公述人 ただいま御紹介にあずかりました佐藤でございます。實は豫算關係の書類を頂戴いたしておつたのでありますが、昨日夕方頂戴したような次第で、内容その他を拜見するいとまもありませんで、申し上げ方をかえまして、簡單に申し上げたいと存じます。  實はこの六月でございましたか、銀行協會としまして、金融界の意見發表したのであります。その題目と申しますのが、當時御承知のように、現内閣が成立しまして、經濟緊急對策の御發表がありました數日後に偶然あつたわけであります。そのときの三つの要望と申しますか、そういつたような意見を申し上げます。それが今度の追加豫算について、どういうふうにあてはまるであろうかというような觀點で、簡單に申し上げたいと思います。その三つと申します中の第一は、物價體系の問題であります。賃金物價の惡循環の問題であります。これは問題の外ということではありませんが、ただいま申し上げる必要はないと思いますので省略いたします。  もう一つ財政金融の問題であつたのであります。そのときの要望といたしまして、そのときはまだ御承知の追加豫算がないのでありまするが、當初豫算だけについての批評と申しますか、これを概略申し上げますと、豫算面において收支の均衡がとれているということは、非常に結構であるけれども、内容的にいろいろ考えてみると、非常に赤字がこのうちに隱されているのではないか。終局の上において、これを實行する場合において、收支面に不均衡が多分に生ずるようなおそれがあると思う。その第一としては、一體水準にとりました物價賃金の基準が、著しく低いのではなかろうか。あるいは歳入の面においてこれだけのものがとれるであろうか。こういつたような面から、はたしてこれが均衡のとれた實行豫算を期待し得るだろうかどうであろうか、こういう意味で隱されている赤字があるように思う。これをもう少し表面に出して、そうして國民豫算の内容の實情を明らかにして協力を求めたらどうか、こういう意見であつたのであります。それが今度の追加豫算にあてはめまして、なかんずく歳入の面においてやはりこの懸念がないだろうかということを、われわれは感じるのであります。かりにあつたとしました場合に、その處置をどうするかということについて、やはり當時出しました要望の中において、これは國家歳出の中にも、いわゆる人件費、その他まつたく消費に行つてしまうという豫算もあるし、あるいは投資になり、あるいは施設になつて、多年にわたつて、これを利用し得るものもあるに違いない。いわゆる事業會社で言うならば、設備資金というものに類する國費が相當含まれておる。これについては赤字公債というものを出しても差支えないのじやないか。むしろ戰後疲弊した財界に、強いてこの厖大なる歳出を埋めるために、歳入の上においていろいろな増税をするということは、生産の阻害になつても、決してよい結果は及ばないと思う。こういう意味で、これを公債によつて支辨するという方法をとるわけにいかぬのかというふうに申し上げたのでありますが、今日の追加豫算におきましても、やはり同樣のことが言えるのじやないかと思うのであります。さらにこの公債の處置の問題でありますが、これはまつたく兌換券増發によい公債の賄いであつて、つまり日銀券の發行により、この日銀の引受によつて、この公債消化するという方法をとるならば、その及ぼす影響については、惡いにきまつておるのでありますから、そこで公債消化ということに全力を注いでもらつたらどうか。それが當時の要望の一つであつたのであります。やはり今日においても、かりに公債によるべしとするならば、やはりこれの消化という問題を考えなければならない。それについて結局戰時中以來日本が低金利政策をずつともつてまいつたのでありますが、終戰後の事情の變化から見て、金利政策には再考の餘地が非常にある。むしろ低物價政策、あるいはインフレ防止、その他の點から見て、金利政策に再檢討を加えて、相當徹底した金利の引上をある部面に行つて、この公債消化を期したらばどうだろうか。こういう面において財政經濟に對する希望を當時に申し上げたのであります。今日の追加豫算につきましても、われわれとしましては、これらの點について、豫算編成上、いろいろの必要からああいう豫算ができたとは存じますが、金融界としては、こういう點について希望があるということであります。從いまして一般歳出の中から、終戰處理費であるとか、あるいは賠償關係のものを特別會計に立てて、これによつて收支を區別して、一般の歳出と終戰後の特殊事情に基く歳出を別にしたらばどうだろうか。かつこの特別會計の方におきましては、日本が敗戰の結果からきた特殊事情でありますので、場合によつて大衆課税もやむを得ない。タバコの値上もしかたがない。こういうような觀念から、勇敢に税收ないしは財源を捻出して、收支必ず均衡を得せしめるというような考えを、われわれとしてはもちたいのであります。さらに當時財政政策の中の希望として申しましたことは、附け加えて申し上げますれば、行政整理の問題があつたのでございます。當時から今日も大して事情が變りないと思いますが、インフの進行下においては、相當行政整理の面が、豫算の中に織りこまれない以上は、豫算編成の當時において計上した數字が、そのまま實行が終るまで保てるという場合がむずかしいのでありまして、豫算面において行政整理政府の決意が多分に現われていてほしいということが、最後の要望であつたのであります。さらにこれに直接今度の追加豫算には關係ないと思うのでありますが、この厖大なる追加豫算が出ます結果といたしまして、日本インフレあるいは通貨政策の部面において、かなりいい影響はないと思います。從いまして、當時金融界の希望といたしまして、まだ貿易の再開にはなつておらなかつたのでありますけれども、やがて貿易の再開を氣構えられております六月當時におきまして、外國爲替の問題が早晩起るに違いない。圓の對外價値をどういうところに置くかということが、早晩起るに違いない。この問題は單に貿易の面からのみ見るべきでなくして、日本通貨對策の上に、いろいろな意味をもつものであるがゆえに、なるべく早い機會に政府が爲替樹立の方針を明らかにして、産業の合理化、あるいは輸出商品のコストの切下、その他の面において、政府の決意を明らかにしてほしいうことが、當時の要望であつたのであります。今日におきましても、この問題はやはり金融界としても衷心から、希望するところでありまして、爲替相定に對する政府の決意といつたようなものが、豫算の面にどこにも現われていないことを、はなはだ遺憾に思う次第であります。先ほど申したように、數字を詳しく檢討する機會もございませんし、概略としてただいま申し上げましたことでもつて、私の責を果したいと存じます。
  22. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 何か御質疑がございませんか――。御質疑がなければ、時間もございませんから、次の方にお願いいたします。それでは前の慶應大學の教授でございました評論家の永田清君にお願いいたします。
  23. 永田清

    ○永田公述人 短時間でありますから、要點のみ申し上げます。今度の追加豫算をめぐつて日本財政がこの特殊事情の中で、いわばその豫定通りの進行を續けていくことがはなはだ明瞭だと思うのであります。初めに概括的なことを申し上げまして、個々の問題については、その必要度に應じて附け加え、なお御質問があれば所見を申述べたいと思います。  主論の趣旨が、まず國民全體から見て、またごく一般的に考えてみまして、現在の日本財政が特殊の事情にあるということを了解しておく必要があると思います。そこでそういう特殊の事情の中で、さらに總括的に問題になりますことは、どこの國の財政も現在の段階においてそれぞれ重要な問題を含んでおると思いますが、そういう過程を通じて、財政問題の理解の仕方と申しますか、考え方にいろいろな展開が要求されておるように思われます。つまりいわば十九世紀の中葉以後に大體でき上りました財政に對する見方が、二十世紀にはいつてその後の經過を通じ、それぞれの國々の特殊の事情を通じて、いろいろな發展をみておるのでありますが、それも御承知のように、まだはつきり固まつた理論というのはでき上つていないと言つてよろしいのでありますが、さればと言つて從來のような考え方だけで、この二十世紀の難局が切り拔けられるというふうには考えられない。そういう意味でいろいろな新しい問題が課されておることを知るべきではなかろうか。そこでそういう問題の點は、どういうことかと申しますと、結局一國の財政は收支が均衝して、健全でなければならぬということは、これだけでも承知しておることで、それだけのことならば、何にも言わなかつたのと同じ結論になる。そこで實際にそういう健全財政という意味をどういうふうに解釋しなければならぬかということからが問題の出發點になるのであります。それでおよその結論は、こういうことであります。つまり今日の財政國民經濟一般、國民生活、それとの連繋において考えられねばならない。つまりただ形式的に收支が均衝しておるという一種のカメラリズム的な、あるいはそれから發達した國庫收入式と言いますか、フイスカリズム的な見解からだけでは不十分である。つまり財政は廣く言えば資金循環でありますから、これが國民經濟總循環過程の中で、どんな影響をもち、またそこで現に生活しておる國民おのおのに、日々の生活の過程の中で、どういう作用を及ぼすか。こういつた結果を中心にして、もう一度問題を考え直してみる。こういうように進んでおるように考えられるのであります。そういう意味で、そうした總合的な前提がないと、ただ現在の健全財政は非常な欺瞞的なものであるとか、あるいはまた所詮これは正しい意味での健全財政は貫徹できないであろうといつたような觀點からだけでは、問題は一歩も前進しない。そこで私のむしろお聽きしたいことは、追加豫算を含めて、それがどういう影響を國民經濟的に、また國民生活の中にもつか、こういう點の的確な判定を行つて、最も國民的なこういう豫算の事柄はそれだけの配慮をもつて遂行されねばならないだろうと思います。またかりに數字的に均衡のとれた豫算だと、こういう結果がありましても、それならばインフレーシヨン進行しないのかと、從來の考え方からいけば、財政がアンバランスであるために、また現實日本でもそうでありますが、インフレーシヨン進行させていく、こういう一點はむろん異論はありませんけれども、試みに收支がバランスしたらインフレーシヨンには影響がないのかというと、そうではない。かりに收支均衡があつても、その支出される經費の内容、つまり消費的な經費が多ければ、依然としてインフレーシヨン進行するということになるのが、最近の新しい財政理論の一つの問題點であります。私も事實そう思います、ただ健全財政論だけで問題が同じところを旋囘しておるということではいけないので、試みに均衡がとれても、インフレーシヨンの問題は終らない。こういうふうに考えてくるときに、初めてこの豫算全體をめぐつて、いま一度もつと實證的にその影響を追究して、現在の事情のもとでどういう豫算が必要になるのかというふうな問題が檢討さるべきではなかろうか。  以上が大體の總括的な問題の提起であります。それで實際問題といたしまして、一番初めに述べましたように、こういう特殊な事情のもとで、普通の場合を想定したような財政論議が行われても、それは大して效果がないことだ。つまりなかなかむずかしい。この状態でどういうふうに問題を處理することが必要だろうか、こういうことになりますと、いわゆる健全財政論議に終始することが實は問題の出發以前であつて、むしろ目標としては、眞實な意味の――という事柄の意味は、先ほど述べましたように、國民生活經濟的の過程と關連せしめた意味財政の維持を規定していく、そういう立場から實際財政が國の經濟を亂さぬように、國民生活を困窮に陷れぬようにして處理されねばならぬわけでありますが、その場合にただ結果論だけが登場するということ、それから總括的な問題たけが論議されるということではなくて、その結果に至るプロセスがたいへん大事で、それが實際的な事柄ではなかろうか。つまり今の豫算の立て方、これが一體このままでよいのかということ、それから實際に現在の状態でアニユアルな財政收支ができないということが、考えてみて現實にはそうだということであるならば、そこで問題を空轉せしめても何にもならぬことでありますから、それならその再建の方向に一定のターンをおいて、たとえば四箇年なら四箇年、五箇年なら五箇年の計畫の中で、今の目標を達成するような具體的方法を年度的計畫の中に織りこんでいく、こういうふうな見透しがそのときの豫算と踵を接して登場すべきではなかろうか。これは御承知のように、普通の場合でも、從來十箇年なら十箇年間の財政豫想表をあげておつたのでありますが、こういう切實な過程の中でこそ、むしろ從來のあの方式がもつと具體的な資料を整えて登場すべきではなかろうか。そうして同じその考え方が、實際には今度は逆になりますけれども、同じ豫算の秩序、こういう考え方が、一方でそういう長期的計畫と同時に、またアニユアルな期間のうちに、これを盛りこむことは實情に合わない。だからむしろ年度的計畫をもう少し短縮して、ロング・ターンと同じ理論が、逆に現在の場合にはシヨート・ターンにおいて豫算理論として登場すべきではなかろうか。この問題は何も新しいことではなくして、あの恐慌の過程の中で、新しい豫算論として學界に登場し、また現に實踐に移した國もあります。もちろんこの場合には、經濟の波動を前提にいたしておりますから、從つて長期的な豫算編成論に終つておりますが、同じ理論が、日本の現状に即して言えば、むしろ短期的に、すなわちターンの一つの修正でありますから、短期的に問題にする。こういう立論が成立するし、それに應ずるいろいろな態勢が整えらるべきではなかろうか。  それから豫算項目の編成の仕方につきましても、最近なかなか議論が多くて、たとえばハーバート大學のプロフエツサー・ハンセンは、アメリカのようなああいう國でも、今や豫算制度についての根本的改革の機は熟している。こういうふうに、最近の書物に書き記しておりますが、日本の實情に即して申しますならば、私は從來の行政機構的な行き方と併行して、豫算を資本豫算的なものと、行政經費的な豫算と、さらに臨時的なもの、こういうふうに分けることが必要ではなかろうか、そういうわけ方の中に、おのずから今度は財政の新しい意味での計畫性が實は生れてくる、こういうふうに考えるのであります。  大體中心的なことはそういつた問題でありますが、これを實際問題にどういうふうに織りこんでいくのか。それはいろいろな附屬した議論を伴なつてできないとむずかしいかと思いますが、大體の問題の方向を、そういうふうに規定しておいて、そこから財政一般についてのいろいろな問題が處理される必要はなかろうかと、かように考えるのであります。  そこで各論的な問題にはいりますが、これはプリントにされて、私には試驗問題のように提出されておりますが、その全部についてお答えする時間もありませんので、二、三を拾い、結論だけ申し述べますと、たとえば經濟再建財政支出によるか、金融上の措置によるかという問題でありますが、これは初め申しましたように、財政支出とか金融措置とかいう分け方が問題なのであつて、實は財政といつても、それは資金循環の過程の一環でありますから、こういう問題が、いずれかというふうに、つまりどちらかというふうに、二者選擇的な形で出るならば、それは財政支出的なものでやつた方が計畫性に合いやすいと、こう答える以外にないし、また問題の提出それ自體について、財政支出とか、金融上の措置というふうに言わずに、資金の全體の計畫、資金の總合的な一つの計畫性の中で、この問題にはいらねばならぬだろう。つまり財政問題は總合的な資金をどうするか、こういう政策と相まつて、その一つの位置を占めるというふうに考えられるであろう。  それから追加豫算健全財政を維持し得るか、こういう問題。これは先ほども述べましたように、實は普通に言われておる健全財政そのものに私は一つの解釋をもつておりますから、この健全財政というのがどういう意味なのか、その檢討を要するわけでありますが、要するに收支均衡ということであり、形式上のそういう問題にすぎないということであるとすると、これは一應健全財政の形をとつておりますが、今後についても、この豫算の實行その他というところから新らしい問題が附加されることを豫期しなければならない。そういう問題を根本的に處理するためには、實は貨幣價値の激しい變動そのものが、こういう結果を生むのでありますから、結果だけを縛ろうとしても、それはできないので、結局その基礎に對して檢討を加えることが必要ではなかろうか。これもいろいろな事情と合わせて、最後の結論を下すべきでありましようが、實際は私は日本の現在の段階では、安定通貨と申しますか、安定貨幣の問題が根本的に討議されてくるようにならないと、いつまでもおつかけつこになるという實情だという判斷に止めたいと思います。  それから歳入面の問題であります。たとえば大衆課税可否というふうな問題がありますが、これもただその言葉通りに大衆課税と言つただけでは、實は抽象的論義に終つて實際今のように所得階層が激しい變動をしておりますときには、何が大衆課税になるかということは、十分の檢討を要する。ただ一概に一段論法で大衆課税、こういう論議を公式論的に繰返しても、大した效果はないので、所得階層の變動の多いときには、その變動と竝行して、こういう問題も新しい討議が必要ではなかろうかと思います。  それから收入面で、租税は御承知のように生産の過程、所得の形成される過税、消費過程、こういういくつかの關門を通じて徴收されていくのであります。そういう關門を通り拔けてしまつた租税というものは、これはもう理窟はどうあろうと、實際には捕捉はできなくなつてしまいます。そこでできるだけこういうインフレーシヨン進行過程では、タイム・エレメントが大事でありますから、早く購賣力になるようなものを課税として捕捉することが大切であることは、論議の餘地はありません。そこでできるだけ所得課税の形でこれを捕捉する。こういうことになりますと、その所得の課税が、また現在複雜な事情にありまして、所得があつても俗に言う新圓所得階級というのは、所得の捕捉が非常に困難だむしろ逆に申しますと、現在の税率をもつてしますならば、その現在の税率で課税されるものは、新圓所得ができるはずがないというほど高率になつておりますから、逆に課税を逃れる者が新圓所得階級だ。こういうことになつてしまつておると思います。そこで普通の解釋とは逆だと思います。そこでもう一度そういうものを捕捉しようという場合には、普通の方法ではむずかしいので、結局賦課課税的な方法で、推算によつて相當大膽に課税してかかる。そういう方法をとることが、今度は非常に大切なことであります。また政策としては非常に弱いのでありますが、結局納税思想の普及といつたようなことから、國民をあげてこの財政危機を切り拔けるという運動の過程の中で捕捉するか。その二つしか途はない。ですから、實際の政策としては、この過程に一番大切な納税思想の普及や、あるいは税務官吏の養成といつたような、いくつもあげられる普通の項目と同時に、現在では相當附加課税的な方法をとらざるを得ないだろう。こういう結果になると思います。ただこの問題の最も中心的な事柄は、今の方法の課税の關門から脱落したものが、新圓所得階級という形になつておりますから、實際にこれを普通の形で捕捉しようとしてもむづかしい。こういうことがまず原則的な結論なのであります。  まだいくつか項目が竝べられておりますが、專門家の方がまた御討議のことでありましようから、私はいろいろ具體的政策について申し述べる必要もなかろうかと思いますし、時間もまいりましたから、大體以上で責任を果したいと思います。
  24. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 御質疑はございませんか。――御質疑がなければ、次の方にお願いいたします。次は日本特殊鋼管社長、經濟復興會議副議長の大塚万丈君の御意見を伺わせていただきます。
  25. 大塚萬丈

    ○大塚公述人 ただいま御紹介いただきました大塚でございます。經濟復興會議の副議長として申し上げるのではございません。一生産企業經營者として、若干の意見を申し上げてみたいと思います。なお實は資料はけさ十時過ぎにいただいたようなわけであまりこまかい數字は拜見しておりません。自然新聞等に出ましたような數字を基礎にして、意見を申し上げるようなことになります。はなはだ杜撰かもわかりませんが、あらかじめ御了承願いたいと思います。  私どもこの追加豫算を新聞なとで拜見いたしまして、いろいろ考えさせられる問題がございますが、第一には私ども當面の問題としまして、産業資金の問題を考えてみたい。元來産業資金は、御承知の通り自由預金の増加分から、第一封鎖預金を差引いた殘りの半分が、産業資金にまわるということになつておるのでございますが、それで最近の自由預金の増加の趨勢を見ますと、七月が百十八億圓、八月が百四十七億圓、九月が百七十九億圓とだんだん伸びてまいつております。私どもとしては、たいくん結構だと思つておりますが、第三・四半期におきます増加の見込みは、五百五十億圓と言われております。そのうち第一封鎖の減少が百二十億圓と見られておりますから、結局一般金融機關資金の増加は四百三十億圓、從つてその半額を産業資金にまわすといたしますと、二百十五億圓、こんなことかと思うのであります。これに對しまして産業資金の需要はどうかと申しますと、第三・四半期分だけでも四百二十五億圓と査定せられておりますから、産業界は本年の資金源であるところの自由預金の増加分によりましても、わずかに査定額の半額しか滿たし得ないということになるのであります。一方この間財政資金の需要はどうかと申しますと、一般特別兩會計を通じまして、三百五十五億圓と見られておりますから、從いまして産業界でいくら要りましても。四百三十億圓を全部産業資金にまわしてもらうというわけにはとうていいかぬ。從つて産業資金だけを申しますと、大約二百億圓の赤字は免れがたいということになると思うのであります。そこで産業界としましては、自由預金から産業資金が得られませんとすれば、いきおい復金に頼らなければならない。そこで復金資金計畫を見ますと、公團の所要資金七十五億圓を含めまして百九十億圓、すなわち一般産業所要資金としましては、百十五億圓を見込まれておるだけでありますから、從いまして、産業界は一般金融機關及び復金について許されます限度いつぱいまでにかりに融資が得られたといたしましても、なおかつ第三・四半期だけで百億圓の資金不足になると思うのであります。しかもこの場合に考えなければならないことは、さつき申しました産業資金の需要四百二十五億圓は、これは生産に絶對に必要だという角度から査定されたものでありまして、實際の必要な金額は、今日のような物價騰貴の折には、あるいはまた勞働賃金が上りますような場合には、より以上多くの資金を必要とするということは當然でありまして、そういうようなことから考えますと、これは産業界にとりまして、たいへんな問題だと思います。ところがこのたびの追加豫算におきましては、これについてほとんど言うに足るほどの考慮が拂われていないように思うのであります。復金に對します政府の出資を見ましても、最初は百五十億圓というようなことがちらほら聞えておつたのでありますが、最後には結局四十億圓になつてしまつた。從いまして、復金はその所要資金の大部分を日銀に仰がなければならないということになつております。このことは結論から申しますと、産業界が日銀によつて生殺與奪の權を握られる。從いまして、資金に關しましては、自主的な見透しがまつたくもてないということになるのであります。右に述べました資金不足は、この限度から見て、資金面から企業整備を強行するという方針だ、あるいはそれを意味するのだということでありますれば別でありますが、この資金需要が、産業上眞に必要な資金として査定を經ておるものでありますから、こういう大切な資金についてわれわれがまつたく見透しをもち得ないということになりますと、産業界としては非常に不安になつてくるのであります。ただいま申しました數字は第三・四半期分でありますが、それがもし第四・四半期ということになると、實に前途まことに暗憺たる感じがするのであります。  第二に問題になりますのは、失業對策がこの追加豫算の上においてほとんど言うに足るほどの形をなしておらぬということであります。すなわち失業手當及び失業保險費といたしまして、十億圓が計上されておるにすぎない。これは計算の基礎が毎月の受給者を二十二萬人と見て、平均千圓として十一月から三月までの大體の支給額のようでありますが、すでに本年六月に政府當局で發表されました數字では、顯在の失業者は二百七十萬、濳在失業者が五百二十萬人ということになつております。こういうような數字から見ますと、毎月の受給者を二十二萬と見るのはどうも數字が小さくはないかという感じがするのであります。もしただいま言われておりますように、企業整備が本格的に進行するものといたしますと、とうていこの程度で濟み得ないことはもちろん明らかであります。しかも企業整備は今日避くべからざる問題で、至上命令であるというふうに言われております。かように一方において企業整備進行を豫想しながら、一方ではこれから生ずる失業者に對して、十分な受入態勢ができていないということになりますと、企業はいたずらに窮地に追いこまれるという結果になります。われわれ企業者としましては、何と申しましても、資産上の水ぶくれ、あるいは人員上の水ぶくれを整理しなければ立ち行かぬのでありますが、そうかといつて、受入態勢が整つていないところに、みすみす剩員をどしどし出すというようなことは、事實上できない相談であります。いずれにいたしましても、企業に對する赤字融資をやめる。そうしてこの面から企業整備を強行しようとするならば、必ず一方では失業者の受入態勢が整えられていなければならぬ。しかるにこのたびの豫算に計上されました失業對策費程度では、われわれ企業者としては、勞働者側企業整備に協力させるにもさせようがない。いきおい難局に立たざるを得ないということになると思います。御承知の通り今日におきましては、從來と違いまして、企業經營者の一方的意思によつて人員の整理を強行するというようなことは、事實上できないのであります。またすべきことでもない。あくまでも勞働者側の理解と納得によつて事を運ばなければならぬ。しかるに今囘の追加豫算に關する限り、このことはとうてい期待できないというふうに考えられるのであります。  なお失業對策についてわれわれが不滿に感じますことは、企業整備によつて放出せられます失業者を生産力化する積極的な施策が、一向にうかがわれないことであります。敗戰日本に殘されました唯一の資産は、八千萬に近い人間だけでありまして、しかもこの生産要因といたしましては、この豐富な勞働力以外にはないと言つても過言ではないと思うのであります。この勞力を生かすという面において、十分に考えなければならぬ。失業對策といたしましては、單にその生活を保障する、ただで遊ばせておくというような消極的は對策ばかりでは、とうていやつていけないのでありまして、必ずこれを生産力としてプラスすることを考えなければ、積極的な施策とは言えないと思うのであります。もちろんこの資材資金等の缺乏しております今日、これが容易に行われがたいということは、想像できるのでありますけれども、しかし主として勞力によつてこれを推進し得る生産事業も、必ずしもないわけではない。國家としては最惡の場合若干の赤字を覺悟しましても、國民經濟を強化し、失業者を國家のプラスにするというためには、斷じて行わなければならないと思うのであります。もつともこれにつきましては、公共事業費として五十二億四千六百萬圓計上せられております。これが失業者の生産力化に演ずる役割は、ある程度認められますけれども、その内容を見ますと、三十六億七千三百萬圓が災害復舊費であり、また七億圓が六・三制の費用ということになつておりますから、どうもこの内容では、この生産性においては、必ずしも積極的なものとは言いがたいと思うのであります。このような消極的な生産力化も、もとより今日の時代においては必要だと思いますけれども、しかしこれと同時に、積極的な生産事業も、それが單に勞力のみによつてこなし得る限りにおいては、あくまでも積極的に取上げていかなければならぬと思います。終戰後すでに三年目にはいりました今日、明らかにその時期になつていると思うのでありますが、そうしてまたこの積極的な施策がありません限り、いかに消極的な受入態勢を整えましても、失業者は決してこれをこなしきれるものではないと思うのであります。いわんやその消極的な受入態勢さえも、今申しましたようにできていない。ごく内わのものであるということになりますると、失業問題の處理は、とうてい不可能でありまして、われわれの立場から申しますれば、一歩を誤まると、企業は過剩人員と心中するほか途はないということになりかねないのであります。ここにわれわれとしての大きな不安があると思うのであります。なおこの失業者への授職ということにつきましては、終戰處理費、すなわち緊急土木費に大きな期待をおく人もございます。なるほどその内譯を見ますと、本豫算追加豫算とを合わせまして、常傭はその給與が五十六億六千百萬圓になつておる。日傭勞務者の給與が二十五億五百萬圓、兩方合わせると八十一億六千六百萬圓の巨額に上つておりますが、これをどのくらいの人間を使うのか一應計算してみますと、大ざつぱに計算しまして、たとえば今千八百圓べースでこれをやつてみますと、一年を通じて四十萬に近い人々が、これによつて職を得ることになります。非常に大きな數字と思うのでありますけれども、しかしこの終戰處理費によります失業救濟は、われわれの目から見ますと、はなはだ非效率的なものであると思うのであります。これが實は直接生産に關係のない方面に使われるということであるばかりでなく、實はその働く内容等をいろいろな角度からみましても、決して有效に使われているとは思われないのでありまして、これをもつて好個の失業對策と目するわけにはとうていいかぬ。こんなことにかりに政府が甘んじて、これも失業對策一つなんだと考えられるとしますと、たいへんな間違いじやないかと思うのであります。何と由しましても、金を使う以上は、できるだけその金を有效に使わなければならぬのであります。效率的な失業對策がぜひとも必要である。それにしましても、この終戰處理費を失業對策と考えるわけにはいかぬと、われわれは考えておる次第であります。  大體これで歳出の面につきましては、おもな點を申上げたのでありますが、次に歳入の面についてわれわれが希望しますところは、税制の拔本的な改革であります。一般的な見地からいたしましても、現在の歳計について疑義にたえませんことは、徴税成績が上らないということであります。いかに豫算面だけでバランスがとれましても、肝腎の税金がはいつてこないのでは、何にもならない。このことは去る三月本豫算の成立當時から危惧されていたことでありますが、不幸にして實現しているのであります。當局の發表によりますと、本年度におきます税金の未納は、すでに百億圓を突破するということでありますが、また本年度におきます所得税の申告が、豫算の一八%にすぎない。また第一・四半期の納税實績は、申告高のわずかに二六%にすぎないというようなことでありまして、本豫算の數字だけをみますと、その後今日見られるほどの通貨膨脹は考えられないにもかかわらず、三月に千百億圓を出ました日銀發行高が、今千七百億に迫るというような數字になつておりますのは、これは一に納税成績が上りませんで、租税で支辨すべきところを日銀からの借入金で賄つておる、ここに原因があるのではないかと思うのであります。そうしてこの日銀券の膨脹いたしまする内容を見ましても、大體政府支出七に對しまして、民間貸出しが三の割合で増加しております。これで見ますると、財政支出の比重は壓倒的であります。租税が豫定通りに徴收できますれば、いかに本豫算に掲げた赤字がいろいろありましても、このようなことは考えられないと思う。大體徴税成績が落ちてくるということは、實は國有鍼道の赤字などと併せ考えまして、インフレが相當危險の段階にはいつたことを意味しておると思うのでありますが、これは第一次大戰後のドイツのインフレを見ましても同樣なことが見られまして、國有鐵道赤字が増加する一方、徴税成績は止め度なく惡化した經驗をもつておると思うのであります。このようにして見ますると、現在のわが國におきまして、徴税成績がだんだん惡くなつてまいつたということは、インフレの高進に伴う避くべからざる現象とも考えられますけれども、しかしながら、われわれとしてこれを當然だと、仕方がないんだというふうに考えるわけにはいかぬと思います。政府としても、鋭意徴税機構の充實に努力しておられるようでありまして、これはたいへん結構なことだと思うのでありますけれども、しかしこの徴税機構の充實ばかりの問題を解決するわけじやないのでありまして、これと同時に、税制そのものの拔本的な根本的な改革が必要ではないかと思うのであります。大體今日の税制は、私どもの記憶しまするところでは、日支事變の初めごろに改革せられまして、その後根本的な改革はない。戰爭中も彌縫に彌縫を重ねて今日まで來たと、われわれは考えておりまするが、そういうような税制を、今日この非常な變革時代に、そのまま通用することそれ自體が、むりではないのかと思うのであります。御承知の通り、今日の國民經濟は、マル公の世界とやみの世界と二つにわかれておるのでありまして、從いまして税制等もこういうことを前提に考えて、新たな構想を必要とすると思うのであります。もしそうでなければ、やみを根本的になくする方策を徹底的に講じなければならぬと思う。かりにそれができなければ、税制の新構想を必要とする。課税對象になりまする國民經濟に、かような從來考えられないような變革が來ておるにもかかわらず、これに在來の税制をあてはめるから、結局國民經濟の全體から徴收すべきものがマル公の世界からだけ徴收するということになります。そこで現實に租税を負擔するのはだれかと申しますと、結局健全な業者だけ、あるいは健全な個人だけというこりになるのであります。自然この納税實績はあがらぬということになるのは、當然だと思うのであります。税制の合理的な改革を行わないということは、徴税成績をあげ得ないという缺點をもつばかりでございませず、マル公の世界で經濟的活動を營む公正な經濟單位に對しまして、不當に多くの負擔をかけるという弊害を伴うものであります。現にこのことは至るところに見られると思うのであります。從いまして、もし今後も現在の税制のまま押通すものとしますれば、それは必ずや健全な經濟活動は、不健全な經濟活動のために犠牲になるというような結果に墮することは、必至だと思うのであります。一歩を誤まれば健全な事業はいたずらに過重な負擔を課せられて、今日でもややそにでありまするが、必ず半身不隨になつてしまう。こういうふうに考えますると、税制の合理的な拔本的な改革という問題は、非常に大きな問題でありとして、われわれといたしましては、多大の關心をもたざるを得ぬのであります。  なお歳入の問題に關連しまして申し上げたいと思いますることは、このたびの追加豫算の編成にあたりまして、既定經費の節減ということが、あまりつきつめて取上げておらぬ。その適例は行政整理というような問題が、まつたく無視されておるということであります。先般財務當局の努力によりまして、定員の増加を一切認めないということが閣議を通つて從つて今後は自然減少による若干の節減が期待されることになりましたが、これはもとより行政整理とは言えないと思う。行政整理即剩員淘汰でございますが、これはぜひ取上げなければならぬ問題ではないかと思うのであります。しかるに一方民間企業の方はどうかと申しますと、企業整備進行に伴いまして、否應なしに剩員を整理しなければならぬ。先刻も申しましたように、金融的にだんだん苦しくなつてまいりますと、この面からだけでも剩員を整理しなければならぬということになつてまいるのであります。しかしながら、政府さえもあえてなし得ない剩員整理を、民間企業に命じて、しかも金融的に締上げて、そうしてこれを強行せしめるといというようなことは、私はいかにも片手落ちなことではないと思うのであります。民間企業をして、剩員淘汰を強行せしめる以上は、さきにも申しましたように、まず最小限度の受入態勢、つまり失業對策を樹立する必要があると思うのでありますが、その上に政府みずから官公廳員の勞組などと話をつけて、剩員淘汰を行い、民間企業のために範をたれる必要がある。かように考えるのであります。今日一般に行われている議論といたしまして、民間企業赤字融資をして失業救濟をするよりも、これを失業者として市場に放出さして、財政負擔として失業救濟を行う方が、はるかに效率的ではないかということがございますが、もてそうであるとしますと、これは官公職員にも當然あてはまることである。民間企業における剩員のみが淘汰せられるといういわれはないと思うのであります。ましてわれわれの立場から申しますと、民間におきます剩員は、多少これはございましても、場合によりましては、經營者の創意くふうによりまして、これを生産力化するということは、非常に困難ではあるかもしれませんが、必ずしもできないことはない。しかしながら、官廳におきます剩員については、なかなかそううまくはまいらぬのでありまして、整理をかりに必要としますれば、整理は當然官廳の方が先に行うべきであつて、民間がこれにならうというのが、普通の行き方であろうと思うのであります。いずれにしましても、政府がこの點に觸れないという行き方は、現在の剩員の淘汰を餘儀なくせられます民間企業としましては、まことに不滿に思うところだと考えるのであります。いずれにしましても、この點につきましては、もつとはつきりした態度を見せていただきたいと思う次第であります。  最後に一般問題としてもう一つ申し上げたいことは、この追加豫算におきまして、食糧問題の根本的な解決ということについて、あまり見るべき施策が講じられていない。この點は何としても、われわれとしましては、殘念に思うのであります。もちろん國際的に割高と考えられまする日本の農作物を考えませんで、ただただ自給だけをやかましく言うということは、必ずしも賢明ではないかもしれませんが、それにしましても、現在のわが國の輸入の大部分は食糧である。それ以外に工業原料を輸入する餘裕がほとんどないということでは、言いかえますと、その日暮しの繼續でございまして、前途における發展の見込みというものは、ほとんどなくなつてしまうと思うのであります。現に終戰以來昨年末までにおきます輸入の金額の内容を見ましても、七九・五%は食糧で占められておる。これは決して例外と見るべき問題ではないのでありまして、食糧の國内生産が不足いたしまする限り、ここ當分わが國の當面しなければならぬ姿だろうと思うのであります。これではとうてい問題にならないということは明らかでありまして、ただ單に食糧が足りなければ外國から輸入すればいいというような安易な考え方も、一應は成立つかもしれませんけれども、これも程度問題でありまして、わが國におきましては、經濟的に著しい意味がない限り、極力食糧の増産に最大の努力を拂わなければならぬことは、當然だと考えるのであります。これが一向精力的に進められていないということがありはしないか。終戰後一應政府の方策としては、五百五十萬町歩にわたる開拓計畫が立てられたと記憶しておりますが、それもただいままでのとろでは、あまりはつきりとした成績もあがつていないように思われる。この點は多少開拓という方面に重點を置き過ぎられて、その結果實は今日ただいま必要な食糧の生産そのものが輕く見られているような感じがするのであります。もちろん開拓は結構でありますが。同時にこれは強力に推進しなければなりませんけれども、そのほかにもつと品種の改良とか、あるいは農耕の改善、作付の轉換、あるいはさらに肥料の改善というようなことを、盛んに行うことによりまして、多大の成績をあげられないものかどうか、その餘地が多分にあるのではなかろうかと、われわれは疑わざるを得ないのであります。大體日本の農家が非常に保守的でありまして、祖先傳來のやり方を、そのまま續けていることは、わかりきつたことでありますけれども、それだけに新しい技術、新しい構想等によりまして、食糧の増産をはかります場合、その成績は相當大きなものがあるのではないかと思うのであります。かりに主要食糧が一割増産されますと、食糧の輸入はほぼ半減いたしますし、もし二割増産せられるというようなことがかかりにあるとしますれば、食糧輸入は必要でなくなるのであります。かりに一時的に多額の經費を要し、極端な場合には赤字でこれをやるということを必要といたしましても、政府としましては、このような重大な意義をもつ食糧の増産により多くの氣魄を示していただきたい。かように考えるのであります。われわれ産業界のものといたしましては、輸入の大部分が食糧にあてられまして、原材料が二割くらいしかあたらぬというような状態におきましては、いつまで經ちましても單純生産、再生産が關の山でありまして、とうてい擴大再生産に轉換することは困難だと思うのであります。そういう意味におきまして、政府におかれましては、一段と強い氣魄をもたれて、今後の豫算の上に具體化していただくように希望してやまない次第であります。以上簡單でございますが、主要な點二、三點について私の意見を申し上げた次第であります。
  26. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 何か御質疑がございますか。
  27. 海野三朗

    ○海野委員 ただいまのお話の税制の改革でありますが、それに對して、どういう方面から――つまり税金が集まつてこないということは、あるべきところに金が集まつていないから、税金が寄つてこない。つまりやみとマル公との二つの世界があるというお話でありました。その徴税の方法と徴税の改革と言われましたが、それに對して、徴税はどういう方法によつて具體的にもつていつたらいいかということについての御所見を承りたいと思います。
  28. 大塚萬丈

    ○大塚公述人 一番に私が考えますことは、やみをどうしてなくするかという點であろうと思います。御承知のようにやみがあるということは、要するにやみでなければ儲からないということが根本であります。これは統制經濟當然の結論といえば結論でありますが、しかしながら外國の例を見ますると、必ずしも統制をやつたからやみが普遍的だという状態ではないのでありまして、この點一面深く掘下げますれば、わが國の國民性に缺陷があるのかもわかりませんけれども、しかしわれわれ國民の立場から申しますれば、これはあくまでも政策の面ではないか。國民性というよりも、むしろ政策にあるのじやないかということを疑う。そこで私の一番に考えますことは、何と申しましても、やみをなくすることだ。やみでなければ儲からないということをなくす以外にはない。はつきり申せば、やみでなくて儲かるくふうをしてやることが必要ではないかと私は考える。そうすればどうしたらそれができるのか、これはいろいろの方法があろうと考えますが、私は今日何十萬種という種類についてマル公を制定し、これを嚴重に統制しようといたしましても、人間の智慧、人間の力では、非常に困難であつて、容易にこれは實現しがたい。極端に申せば、國民の一人々々に警官をつけなければ事實できないというような結果になるのじやないかと思うのであります。そういう意味におきまして、私は統制をやるのは結構、殊に今日のようにわが國の不足經濟におきましては、あくまでも重要な物資につきましては、計畫經濟が必要である。統制のわくは嚴重に守らなければならぬと思うのでありますけれども、不必要な面まで、これをやるということは、いかがなものであるか。もちろんこれは程度問題でありますけれども、あまり國民生活に重大な影響を及ぼすとも考えられない面につきましては、一擧に統制のわくをはずすのも結構でありますし、同時にまた計畫そのものが根本的にもつとしつかりしなければいかぬじやないか。たとえば見込み生産と申しまするけれども、もちろん將來の生産の豫想というものは、なかなかそう簡單に嚴重にいくものではないのでありまして、必ず見込み違いはあると考えますが、見込み違いがあればあるほど、計畫そのものは甘いものであつてはならないのであつて、たとえば十できると見れば八割までの計畫にしておいて、あとの二割ぐらいはいやでもできるようにする必要があるのじやないか。そうしてその殘りましたものを、私の考えでは、政府の監督下におきまして、これを政府の經營する市場等において自由に賣らせる。つまり八割なり九割なり、許される限りは確實だと思われる限りは、計畫の面に織りこんで、それ以上増産された場合には、一定の利益をその生産者に與えるようなしくみにする。しかもそれは政府が監督してやるということになりますれば、さほどの弊害はないのじやないか。事實今日やみで行われておりますことが、表面上明るみでやれる。そうしますと、かりに私は今の税金の問題にいたしましても、やみで賣買され、やみで利益が生ずるがゆえに、これは押えようがないのでありまして、この利益が表面に出ますれば、明るみに出ればこれを捕捉することは必ずしも困難ではないのじやないか。かように私は考える。そこに日本の精緻な徴税技術の働く餘地があるのじやないか。だから私はやみを捕捉しようとするならば、やみの利益を明らさまに出してもよいような状態にしてやる。そうしてそれをいわゆる徴税の技術によつて巧みに捕捉する。これが第一であろうと思います。これができなければ、私、素人でありますから、徴税の技術についてはわかりませんが、やみを對象とした徴税の方法がなぜ考えられないであろうか。この點を實は大藏財政當局に希望しておる次第であります。
  29. 野坂參三

    ○野坂委員 簡單に二點だけお伺いしたいのですけれども、先ほど民間企業の整備、つまり剩員淘汰ということを申されましたが、今のお見透しでは、たとえば本年度末までにどのくらいのものを一體整理しなければならないだろうか。こういうふうな見透しがあれば、それをお伺いいたしたい。第二の點では、この豫算をごらんになりまして、一體今度の年度末までに、いわゆる惡性的なインフレというものは起らないだろうかどうか、こういう問題について御意見をお伺いしたい。
  30. 大塚萬丈

    ○大塚公述人 お答えいたします。企業整備によつてどれくらいの失業者が出るだろうかという御質問でございますが、これは私といたしましては、的確な數字を申し上げる力はございません。なぜかと申しますのに、今日相當企業は剩員をもつておりまするが、しかしながら何といつても一方に失業對策としての受入態勢ができません限り、どれだけ多いかということは各企業はなかなか申しません。それと、失業問題として當然考えなければならぬやみ商人の類、これが相當に多いと思いますが、これが最近求職の中に相當出てまいつておりますけれども、しかしこれを捕捉することは、なかなか困難であります。從いまして、私は企業につきまして、どれくらい出るかという具體的な數字になりますと、お答え申し上げかねるわけであります。もちろん企業によりましては、もう少し石炭が増産されまして、生産が向上いたしますれば、失業者を吸收する力は、だんだんできてまいると考えます。そういう面で、むしろ失業者を出すと申しまするよりも、吸收する方が多いかと考えまするが、かれこれ併せ考えまして、どれくらい具體的に數字が出るかということになりますると、先刻私が申し上げましたように、豫算に盛られましたあの數では、少いのではないかという感じは出まするけれども、それでは具體的にどれくらいになるかということになりますと、私といたしましては、わかりかねる次第であります。  それからこの年度末までにこの追加豫算の施行の結果、インフレになる危險はないかというお話でありまするが、他に前提がない限り、今のままでいけば、もちろん私はインフレ的傾向をもつ。かように考えます。
  31. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 では次の勞働組合産別すなわち全日本産業別勞働組合會議の幹事中原淳吉君の御意見を承りたいと存じます。
  32. 中原淳吉

    中原公述人 産別會議といたしまして、若干の意見を述べさせていただきたいと思います。まず今度の追加豫算にいたしましても、あらゆる政府の施策がそうでございますけれども、常に千八百圓ベースというむちやくちやなことを基礎にしておるという點から、われわれは非常な不滿をもつと同時に、これはわれわれの單なる不滿というばかりではなくして、この問題は日本再建を阻害するものである。あるいはわが國を破滅に導くものであるという點において、絶對の反對をいたすものでございます。それで豫算問題について言いますならば、いわゆる勘定合つて錢足らずということでございまして、ただ單につじつまを合わせるということのみに終始しておるということは、それぞれの公述人の方々の、こもごも述べられた趣意であるというふうに存ずる次第でありますが、それもこれも千八面圓ベースという考え方が、そもそもそういうものであるから、從つてすべてがそうなつていかざるを得ないということになるわけでございます。安本當局の御意見によりましても、十一月になれば、黒字になるというその十一月がもう半ばまで來たわけでございますけれども、なおそれでも黒字にならぬ。しかもそれはたばこの配給が減る、酒の配給もなくなるからそれだけ黒字になるじやないかというような調子でございきす。この調子でいきますと、すべてのことが何にも食わなくてもよろしい、何にもしなくてもよろしい、そうすれば何にも要らぬから、黒字になるではないかという極端な議論に見えますけれども、何ら本質的に變りがないという結果になるわけでございます。これは單にそういう理窟ばかりでなくて、現實に各方面にこのことが行われておる次第であります。かりに議員の皆さんにしても、ほんとうに議員としての職責を盡そうとしたならば、はたして千八百圓でできるかどうかということを、十分に御反省願えれば、このことはわかることだと思います。現在各家庭においても、工場においても、電氣が消えて仕事ができない。そうしてほかの事柄がある程度なされたとしても、生産も上らない、ただ破滅を待つばかりだというような状況になつてきておるのであります。私ども電力問題について、その電力を何とか復興しなければならぬ、何とかこの電力をうまく使つて生産をやらなければならぬと考えました場合に、炭、薪の問題が出てきたわけでございますが、炭、薪の問題にしても、これを安本の計畫、政府の計畫通りをやることさえも現在できない状態になつてきておる。その根本原因としては、薪炭の増産の問題もございますが、現在ある滯貨をさえも運ぶことができない。その原因はどこにあるか。國鐵の輸送が全然できないからであります。北海道にあります炭を出してこようというときに、豫定いたしましたものの半分しか出せないというような状況が起つたけれども、しかもその豫定したものを出したとしても、年末までに東京都民には、一世帶一俵しか渡らぬという状態である。なぜその輸送が豫定の半分しかできないかというに、ほかにもいろいろ原因がございますが、一つには輸送力が足りない、非常に不足しておる。それからまた車輛が非常に不足である。北海道の凾館において壞れた車を修理するとしても、これが非常に修理能率が上らない。修理することができない。それでこれを本土にもつてきて修理するということにしても足りない。またこの貨車がよしんば修理ができたとしても、弘前の國鐵の管理部、仙臺の鐵道局の管理部においては、列車を動かすることができない。そうして東京においては、全遞の諸君の集團缺勤の問題について非常に不愉快な名前をもつて山ねこ爭議というふうに政府は呼ばれて、われわれは非常に遺憾に思つた次第でありますが、弘前その他においては、政府で認められておりますところの食糧の休暇、あるいは年次休暇というものをとらなければ、どうしてもやつていけないという状況になつてきておる。これには山ねこという名前は附けることはできないけれども、實際問題としては、これによつて列車を二本も三本も一日にとらなければならぬという状況が出てきておるわけであります。こういうふうに、もう目の先の問題にしても、やつていけない。これは千八百圓ベースが固持されておるということが、最大の原因であるわけであります。そして各企業の經營においても、このことはその通りでございまして、剩員があるとかないとかいうこともございましたけれども、さつきの大塚さんのお話の中にもありましたように、これを企業において生産をするということになれば、失業者も出さずに、どんどんすべての勞働者がすべての國民が働くことができそれにわれわれは努力することができるのでありますはれども、これを阻害しておる最大のものは何であるかというと、千八百圓ベースなのであります。私企業においても、この職場の離脱ということは、方々において起つておりまして、これは責める方が無理である。どうしてもそうならざるを得ないのであります。この根本原因を解決することなくして、これを權力をもつて威しつけ、あるいは戰前と變らないような絶對命令をもつて威しつけるということでは、決してこれは復興することはできないことは明白であります。こういう點をよくよく考えなければ、いかなる豫算を組んでごらんになつたところで、決してこれは實行できるものではないのであります。けさほども私は聽いたのですが、大阪の遞信局の管内において、東京における山ねこ爭議の問題を懸念して、さる方面の絶對、命令であるというような名前をもつて、公共職業安定所から、毎日の出勤時間状況を調べろ。それから勞働組合で何をやつておるかということも調べろということが來ておるのであります。こういう問題もそういう勞働組合法の觀點から、また日本の民主化という點から、非常に遺憾な重要な問題でありますが、このことも千八百圓ベースの問題を解決せずして、これだけを固持していこうという勘定合つて錢足らずのやり方を、どこどこまでも續けようとするところから出てくるのであります。千八百圓ベースでやつていけないということは、天下周知の事實でありまして、だれ一人としてこれでやつていけるという人間はないのであります。これでやつていきますと、やはり判事さんのように死ななければならぬということになるわけであります。すべての人間が死んでしまえということを、この千八百圓ベースでつくられておる豫算をもつて國民に強要しておる。國民に對する威嚇であるというふうに、われわれは考えざるを得ないのであります。しかも千八百ベースでがまんしろということをやる一方、そうして仕事を何とか續けてほしいということをやるためには、政府御自身が、また經營者自身がストライキにあたりまして、いかにしてこのストライキを破るかというときに、莫大なる費用を使つておる。そうして最低五千圓というものは、どうしても出さなければ、政府や經營者御自身がおやりになろうとすることさえもできないということは、身をもつて示しておられるにもかかわらず、そのようなまじめにやろうとするものでない人たちには、そういうものをやるということは税金の問題にいたしましても、まじめなものからはとるけれど、ふまじめなものからはとらないということと同じことなのでありまして、この千八百圓ベースというものを根本的に改めない限り、税金の問題にしても何にしても、全部解決しないということになるのであります。このことは單に勞働組合あるいは勞働者は、自分のためばかり言つておるのではありません。どうしてもこれをやらなければ、絶對に何ごともできないということは明らかであります。先ほど大塚さんは、日本に殘されたものは八千萬の人間であるといううふうに言われたわけでありますけれども、この人間が働くことができるという状態をつくり出さなければ、絶對に何ごともできないのであります。現にそういう大きい問題ばかりでなく、千八百圓ベースのために、鐵道がうまく動かないということがあつて、一トンの硫黄が動かないために、新聞の紙も危機に瀕するというような状態になつてきておるのであります。そうして豫算の數字に現われておる點を見ますと、すべて歳入豫算におきましては、この千八百圓ベース基準にして、これをもつて強要されておるところの人民大衆、勞働者、農民、中小企業者というような人からとる、とらなければならないというふうに出されております。政府の案というもの、これは全體の七〇%から八〇%ということになつておるわけでございますけれども、その千八百圓ベースということでは、どうしても食えない。いわんや税金がそれから拂えるわけはないのであります。こういう點から見ましても、そもそもこの豫算は初めからやる意思のない豫算であるというふうに言わざるを得ない。そうしてやろうとしておることは何かということになりますと、千八百圓ベースで勞働者を抑えつけて、全然働けなくしてしまう。失業者をうんと出してしまう。そうして絶對命令である、至上命令であると稱して企業整備をやり、首切りをどんどんやつて國民の何人しか殘らぬ。あとの人間はみな死んでしまうということだけをやろうというふうにしか、この豫算からわれわれは考えることができないということになるのであります。しかもとれない人間からとろうとするものが、その七〇%から八〇まで占めておるのでありますけれども、これを使う段になりますと、この千八百ベースで苦しむわれわれの手にはいるもの、あるいはわれわれの方のためになるような支出というものに使われますのは、わずか二〇%くらいしかない。そしてそれ以外のものは、いわゆる資本家階級という方々のために使われるというような結果になつてきておる。これではたして私は第一囘國會の中から選出された民主的な政黨の首班がつくつておるところのこの政府のやることであるかどうかという點については、まことに疑わざるを得ないのであります。そういたしますると、これは結局そういう民主的政黨を利用いたしまして、そういう殘虐なことをやろうとする人たちの政黨というものが、これを牛耳つておるのではないか。そうしてやつていこうとするのではないかというように考えざるを得ないのであります。勞働者はみなこれに對しては絶大なる憤懣を懷いておる次第であります。  しからばこれをどうしていつたらいいかという點について、若干の意見を述べてみたいと思うのであります。もしもこれが實施されるということになりますと、すべての勞働者は、あげてこれに反對するでありましよう。そして山ねこどころの騒ぎでないアルプスの狼か虎かというようなことにまでなりかねないと思う次第であります。それがおそらく全國的に蔓延してくるというようになると思うのであります。そうなつたらたいへんなことになるということは言うまでもないことでありますけれども、しかしそのことは勞働者がそういうことをしなければ、そういうふうにならないと言えば、それは違うのでございまして、勞働者が仕事をやめる。あるいは車を止める。電氣を止める。通信を止めるということについては、非常なお怒りを方々からいただくわけでございますけれども、そうでなくして、經營權というものを非常に主張され、そうしてこれを管理し、仕事を續けていく責任をもつておられる方が、電氣を止めたり、汽車を止めたりする分には、一向馬耳東風で、しやあしやあとしてやつておられるということになるのでありまして、しかもこの状態が續いていくわけでございますから、よしんば勞働者がおとなしく、いやでも應でも默つてついていく。つまりファシズムのような状態なつたならば、ではそういうことは起らないかと言えば、そうではないのでありまして、現在の日本の状況におきましては、勞働者や何かみながおとなしくて、これに努力するということをいたしましたところで、汽車も止まれば、通信も止まれば、電氣も止まれば、あらゆる生産も止つてしまうという結果にならざるを得ないのであります。從いまして、このやり方を根本的に改めるということなしには、どうしてもさような混亂は避けられないということになるわけであります。まずそのためには政府の緊急經濟政策に織りこまれましたところの、最大の眼目である物價と賃金の惡循環を斷ち切るのだというような考え方をやめていただきたいのであります。そうでない限りこれは根本的には解決できない。賃金と物價というものが常に惡循環するのであるというような、そういうまぼろしを捨てていかなければ、そうして根本的にすべての働く勤勞者、勞働者や農民その他の人たちが、十分に働けるように、これを保障するということが絶對の仕事であります。これをすればすべてが解決するのであります。それをせずにおいていろいろなことをやろうとすると間違つてくるのであります。もしも十分に賃金をやるならば購買力が殖えてインフレになるじやないかというように、しよつちゆう言われるのでありますけれども、それはそうではなくて、十分に働けるようにしさえすれば、當然それに支拂われた賃金に對するところの價値として現實に物が生産されてくる。その限りにおいて、いくら購買力が高くなつても、物がどんどん出てくるということになつて、決してインフレにはならないのであります。インフレになるのは、勞働者にそれだけ賃金をやるならば、おれの方でもその率に從つて、あるいはそれ以上にふところにはいるものがなければならないというような考えで、企業その他を運營しよう。そういう観念を助長し、それを實行しようとするからインフレになるのでありまして、この點を絶對に改めなければならないと思う次第であります。そうするならばすべての問題は解決する。私はかように思い次第であります。しかしそういうふうにするにいたしましても、豫算の面でみますならば、要るものはやはり要るのでありますから、どうしてもそれに必要な收支の豫算というものをお立てにならなければお困りになるであろうと思う次第でありますが、そこで財源といたしましては、そういうわれわれ勤勞者から直接にとつてしまうというひどいとり方をする所得税を改める。同時に生活必需品に課けるところの物品税その他の間接税というものを徹底的にやめる、あるいは非常に少くするというふうにしていただきたいのであります。この物品税、流通税、間接税というものになつてくると、いわゆるこれは大衆というものが、その七割から八割までを現實には負擔するのでありまして、そうでない負擔者には、そういうものが少々かかつても、ちつとも痛痒を感じない。そうしてみなにかかるのだからというようなまぼろしをもつて、そういう負擔の不均衡というものを惑わすものでありますから、そういうものは絶對にやめなければならぬと思う次第であります。しからばどういうところからとつてくるか、今申しましたように、少々何をとられても痛くも痒くもないような高額所得者に對しては、その超過分に對して高率の累進課税をやることであります。それから大やみ利得者というものに對する課税をやはり徹底的にやらなければならない。これについてはいろいろ方法もございましようけれども、財務の職員の方々に對して、これは徹底的にその待遇というものを改善しない限り、決してあるところから金をとつてくるという仕事はできないのであります。現在定員の半數ぐらいで、非常な苦しい中で仕事をしておられる。そうして官公廳職員あるいは教職員の方々の中で比べますと、現在財務職員の方々の待遇より惡いのは、幼稚園の先生だけであります。そのような状態をやめて、安心して仕事ができるという待遇をしなければならぬ。また同時にこの人たちの生命の保障をしなければ、あるところから金をとつてくるという仕事はできないのであります。この點は命をかけての仕事であるから、その點について十分に政府措置というものをしなければでき得ない、またこれをやらなければ決してわが國の状況というものはよくならないというふうに考える次第であります。  それからわれわれは今度の企業再建整備に關しまして、勞働階級の主張しておるところは、いわゆる負債の打切りを先にやつて、評價利益をもつて持別損失を埋めるというやり方をやめろということを主張しておるのであります。この負債の打切りをして、評價利益によつて特別損失を埋めるということをやめる。しかしながら實際にはいろいろな設備にいたしましても、資材にいたしましても、値上りからくる點から十分に税金をとつていただけばよろしいのでありまして、こういう點について政府が本腰になつてやることになれば、喜んですべての勞働者は協力するでありましようし、こういう財産税をとるというような形でやつていくならば、財源というものについては、われわれは十分に心配なくやつていくことができると思うのであります。それから財政支出の中で、われわれとして非常に重大な關心をもちますものは、やはり官公廳勞働組合諸君の給與状態がどうなるかということが、すべての勞働者にとりまして注目の的であり、また進んで喜んで安心して生産を續けるかどうかということの、一つのかぎになるわけであります。ただいま經營者の方から、政府でお手本を示して首きりをやれと言われましたけれども、われわれといたしましても、政府でお手本を示して、勞働者の生活を安定させるということをやらなければ、だめだと思う次第であります。この行政整理の問題にいたしましても、現在言われておりますところの行政整理根本的な考え方は、いかにうまく國の仕事をしていくか、そのために必要な人間をいかにして維持していくか、またその能力をいかにして發揮さしていくかというところに、行政整理の目的があるのではなくて、ただ定員をどうこうし、勘定の上、帳面ずらだけをうまく繼ぎ合わせようということが、行政整理根本的な考え方であろうと思われる次第であります。なぜかなれば、根本的に行政の各方面において、どういう仕事がどれだけ必要であるから、どれだけの人間をどういうふうに保持しなければならぬという考えからするのでなくて、何とか人件費を減らさなければならぬから、それでうまくやつていこうじやないかということ、それが豫算人件費が組み込まれる、あるいは手當が組み込まれる過程におきましても、明瞭になつておることにつきましては、私よりも議員の皆さんの方が、十分に御承知のはずであると思う次第であります。現在一番問題になりますところの國鐵の從業員諸君の剩員の問題にいたしましても、現在の人間は戰前よりも二倍になつておるということを、ちよつと聞かされた記憶があるのでございますけれども、輸送の面から見ますと、現在輸送しなければならないものが、戰前のやはり二倍以上なのでありまして、この點から言つても、どうしても人間が餘つておるということにつきましては、事實について仕事をしていくという面からいくと、われわれ絶對に承服することができないのであります。また全遞の諸君、國鐵の諸君もそうでありますけれども、政府がどうしても新しい日本の建設のために、勞働者の勞働條件について、これだけはどうしても守らねばならないという、最低のものをきめたあの勞働基準法というものを、ほんとうに實行いたしますならば、全遞におきましても、國鐵におきましても、決して人員が餘るということはないのであります。こういう事實に目をおうて、つまり日本を建設していくために、勞働者大衆にこれだけの勞働條件を保障しなければならぬということを、政府みずから言つて法律にして出しておきながら、しかもこれをあえて破り、そうして人間が餘つておるというふうに、單に仕事をうまくやつていく。いかに生産能力を發揮していくかという觀點から目をそらして、數字の上からお金はいくら餘るとか、餘らぬとかいうような勘定から、そういうことができてくるということについては、われわれは絶大なる不満をもつと同時に、そういうことでは決して日本の民主的な再建ということは、でき得ないであろうということを、特に申し上げたい次第であります。  また失業對策の問題にいたしましても、これは立場は違うのでありますけれども、先ほど大塚さんから、失業對策について政府の施策が非常に不十分であるということを言われたと思う。これは金額の面について見ますならば、われわれとしても非常にこれは不足に思う次第であります。やむを得ない失業者に對しては、やはり千八百圓ベースにいたしまして、その失業の退職金をきめるということになれば、これは絶對に何のための失業對策かということで、根本的な考え方がおかしくなつてくるのであります。失業對策ということにしましても、やはりこれはいつまでも失業さしていくというのではなくして、現在ある失業者といえども一日も早くこれを生産面につけて、全體の生産を上げていくというふうにならなければならないのであります。これがためには失業しておるそのときにおいても、仕事につけばすぐ働けるというだけの體力は、養つておかなければならぬということが、絶對に必要なのであります。そういう點からいきますと、千八百圓のベースによります失業者に對するいろいろな手當、保險の制度についても、われわれは絶大の不滿をもつものであります。またさらに重要な點でありますけれども、經營者の方からいたしましても、現在人員が過剩であるということにつきましても、永久に過剩であるということでないということは、十分にわかつておられるのである。そうしてできるだけ一日も早く、すべての國民、すべての人民が働いて、生産面につくということにしなければならぬということも、またみなわかつておる次第であります。そうしたならば經營者の面から見て、失業對策にしても全體の生産力を高めるという方向に、もつていかねばならぬということを言われたと思いますけれども、われわれといたしましてもこのすべての仕事を、みな生産を擴大さしていくという點に、觀點を向けなければならない。しからば現在根本的な生産力を發展させるということを、私企業でもつてやれるかどうかということについては、すでに答えが出ております。石炭の問題にいたしましても、鐵鋼の問題にいたしましても、あれだけ全産業の前提基礎として必要な産業においても、なおかつ根本的な生産力の擴大ということがなされていない。これはいろいろ戰爭による荒廢とか何とかいうことがありますけれども、基本的な生産設備というものを十分に備えるのでなければ、根本的なことはできないのである。このことを今すぐ私企業にやれと言つてもできない。これは失業對策としてそういう生産的な事業を考えようとしたときにも、同じように考えられてくるのでありますが、そういう點からその重要な基礎となるべき産業というものについては、私企業に任せるのではなくて、失業對策生産的にもつていかなければならぬということをほんとうに貫くならば、このような重要な産業についても國家がこれをどんどんと經營していく。そうして今の鐵道とか遞信とかいうような形の、ああいうばからしい一方的な國營の仕方ではなくて、それにたずさわる從業員を利用して、これによつて自分たちの生活が保障されることろの、すべての人民大衆というものと一緒になつて、みなの納得のいく經營をつとめてやつていく。これに必要なものについては基礎的な生産設備という問題については、これは政府がそういう點については、赤字を覺悟しても、やらなければならぬ。しかもこの赤字は將來において、全部解消されてくるものでありますから、そういう點からぜひとも重要な産業の國營、または民主的な管理というものについて、これを單に勞働者のイデオロギーの問題であるというふうにお考えになることなく、事實においてどうしたらいいか、數字の上からどうしたらいいかということから出てくるところの、具體的な、現實的な原則であるというふうにお考えくださいまして、この點について十分やろうという意思が現われるところの豫算というものに、組みかえていただきたいということを、われわれはお願いしてやまない次第であります。  時間もありませんので、申し上げたい要點について申し上げた次第であります。しかしそういうことをいたすにつきましても、何をするについても、すべて千八百圓ベースというものを打ち破つて、すべての仕事について働く人間に對して、十分にその生活を保障し得るようにしなければならぬ。そういう必要からこの追加豫算というものも、皆さんが十分にお考えくださつて、組みかえていただきたいということをわれわれは要望する次第であります。もしも現在のような状態で推移いたしますならば、勞働階級がたとえ騒がなくても、わが國は荒廢していくであろう、破滅していくであろうということを申し上げて、そういうことについては勞働階級が坐視しているわけにはまいりません。從つてその建設していくという方面に向つてすべての努力を捧げるであろうということを申し上げて、私の意見の開陳を終りたいと思う次第であります。
  33. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 御質疑ございませんか。御質疑がなければ、次の方の御意見を伺います。次は富士瓦斯紡績社長の堀文平君。
  34. 堀文平

    ○堀公述人 私はただいま御紹介をいただきました堀でございます。一産業人といたしまして、今囘の追加豫算に對しまする所見を申し上げたいと思います。今囘の追加豫算につきましては、資料の内容は十分に檢討するいとまをもちませんので、ただ概數についてのみの所見を申し上げたいと思います。時間も非常に經過いたしておりますので、ごく簡單に要點だけを申し上げます。  今囘の追加豫算を拜見いたしまして、われわれがただちに感じを受けましたものは、いかにも收支の均衡は數字上においてとれておりまするが、その内容におきましては必ずしも健全財政と言い得るかどうかという點につきまして、非常な疑問をもつものであります。歳出面におきましても、大藏當局の御苦心は十分にお察しできるのでありまするが、いろいろな點におきましてまだまだ不十分であるというふうな感じを受けるのであります。一方歳入を見ますと、これまた相當に無理がありまして、いかにも財政收支の均衡を得ることに重點を置かれまして、内容につきましてはわれわれが十分に承服できないと思うような點も多々あると思うのであります。第一租税の面につきましては、相當大幅な増率き見るようでありまするが、これは今日の現状におきましては、すでにある極限を超えるのではないかというように考えるのであります。また酒、タバコの大幅の値上につきましても、現に進行中のインフレーシヨンをますます高進させるのではないかということをおそれるものであります。かくいたしますると、大衆生活は非常に重大な影響を受けまして、先ほど來お話の千八百圓ベースの維持ということも、非常に困難になつてまいると思うのであります。  このわが財政經濟危機を乘り切りますためには、言い古されておることでありますが、何といたしましても生産の増強、同時に企業の合理化というところに、重點を置かなければならぬと思うのであります。しかもこの生産の増強は、言うはやすくしてなかなか今日の現状におきましてはむつかしいと思うのでありますが、私どもの考えといたしましては、この生産増強にいたしましても、企業の合理化にいたしましても、まず應急の措置とそうして恆久對策、この二つにわけて考える必要があると思うのであります。應急の措置といたしましては、現在なお遊休設備が相當に國内に殘存をいたしておるのでありまして、これをまず完全に利用するという方向に進むべきであると思うのであります。もつとも石炭、電力等の動力源が極端に不足をいたしておりますのみならず、種々の資材におきましても、非常な窮乏を告げております折柄でありますので、ただちにその多きを望むことは困難であると思うのでありますが、少くとも輸出産業に關しましては、これらの動力源その他諸資材を使います點におきましても、比較的その所要量は少いのであります。しかも相當に遊休設備をもつておるのでありますから、これに對しまする施策いかんによりましては、相當效果をあげることが容易ではないかと思うのであります。また企業の合理化につきましても、先ほど來お話のごとく、失業對策が十分にできておりません今日におきまして、なかなか容易なことでないと思うのでありますが、輸出産業におきましては、今囘設定をみました貿易囘轉基金の利用によりまして、その増産態勢に移りますことは比較的容易であります。從つてこの面におきまする限り、企業の合理化も失業問題に何ら觸れることなくして、相當合理化の效果をあげることができると考えるのであります。今日輸出産業が比較的海外の物價水準に比べまして高い位置にありますことは、畢竟その操業程度がきわめて低いのでありまして、これは一例を申しますと、現に九州地區におきましては、動力の供給が一週間にわずか二日、あとの五日間は操業を止めなければならぬというような情勢にありますので、いま少しく動力の供給が受けられますならば、相當に生産量は増大すると思うのであります。これによつてまた生産費も相當に低下する餘地があると思うのであります。しかもこの纎維工業に使いまする動力というものは非常にわずかなものでありまして、九州地區におきましては全供給量の約百分の二内外あれば大體全運轉ができるという情勢にあるのであります。こういう面からいたしまして、まず當初比較的容易に手のつけられるこの輸出産業におきまして、生産増大企業の合理化をはかつていくということが、最もはいりやすい方向ではないかと思うのであります。なお輸出産業の中にも、そのコストが現在におきましては非常に區々でありまして、國際價格に比べまして非常に高いものもあります。また比較的安いものもあるのでありますが、これも合理化と同時に重點的に整理をしていく必要があると思うのであります。  千八百圓ベース基準の維持の問題でありますが、これは現在の状況から判斷いたしまして、きわめて困難なことと思うのであります。しかも何らの準備なくして今ただちにこれを放棄するということは、これまた非常に危險が伴うのではないかと思うのであります。それでこの際は政府がかねて公約しておいでになりまする流通秩序の確立ということによりまして、實質賃金の裏づけに全力を注いでいただくと同時に、企業經營の合理化竝びに作業能率の増進によりまして、合理的に賃上をしていくことによりまして、一應この危機を乘り超えて、おもむろに賃金と價格とを再檢討いたしまして、適正な是正を加える必要があると思うのであります。企業の整理、合理化を行いますにつきましては、官公吏行政整理という問題がただちに關連するのでありますが、現在の官公吏待遇はいかにも低くて、お氣の毒のように思うのであります。それでこの意味から申しまして、ある程度行政整理を行つて相當に優遇する。同時に能率の向上をはかるという線の向つていくべきではないかと思います。  なお失業對策につきましては、先ほど來公述されました通り、積極的にも消極的にも、現在の政府の施策では不十分であると思うのであります。これを十分にしなければ、企業の整理はなかなか容易に行われないと思うのでありまして、この點については一層の御考慮をお願いしなければならぬと思うのであります。  それから生産増強竝びに企業の合理化に對します恆久策といたしましては、少くとも五箇年ぐらいの物資の需給計畫を立てまして、漸次施設の整備をはかると同時に、これが精鋭化を期さなければならぬと思うのであります。これにつきましては相當物資の輸入を必要とするのでありまして、現在食糧その他の輸入に追われまして、非常に輸出入のバランスが困難になつております際に、なかなかこのことも容易でないと思うのでありますが、これに對しましては、ぜひとも米國に對しまして相當長期のクレジツトを懇請する必要があると思うのであります。これなくしてはなかなか容易に日本經濟は立直り得ないのではないかと思うのでありますが、この點につきましては、政府當局の御盡力を切にお願い申し上げたいと思うのであります。  かくして生産の増強が一歩々々でも實現をいたしますならば、この厖大なる財政負擔も國民が十分に耐えていくことができるのではないかと思うのでありまして、われわれ敗戰國民といたしましてぜひともこの危機の乘切りのためには、お互いができるだけの辛抱もし、そして生産の増強に一意邁進することを切に希望する次第であります。はなはだ簡單でありますが……。
  35. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 御質疑はございませんか。御質疑がなければ、本日御出席の豫定でございました勞働組合總同盟主事の河野君は、何かの御都合がございまして御出席がございませんでしたので、本日はこれをもつて散會いたします。明日の公聽會の豫定は、勞働組合關係の國鐡中央執行委員長の加藤閲男君、全遞從業員組合交渉部長の柴田照治君、日農關係で岡山縣農民組合の江田三郎君、中小商工業關係として、東京商工會議所專務理事の吉坂俊藏君、入場税の問題につきまして映畫演劇の關係で、興行組合連合會常任中央委員の林弘高君、婦人代表として羽仁説子君、それから一般公述人から選定いたしました、山口縣の町會書記北村政次郎君、讀賣新聞論説委員の山口正吾君、農林省農業綜合研究所員の東井金平君、機械技術者の山岸儀一君、東京都教員組合の關研二君、宮城縣の農業會經濟部書記の八島敏君、以上九人の豫定であります。  それでは今日はこれをもつて散會いたします。    午後四時十八分散會