○
海野委員 この
豫算面を見ますと、いずれも必要な
項目であることは確かでありますが、さらにわが
日本といたしましては、いかなる
方向に進めばよろしいのであるかということについて、もう少し
未來を見ていただかなければならないと私は
考えるのであります。
未來を見るとは何であるかと申しますと、
豫算、これを組んでこの先わが
日本がいかなる歩みをしていくのであるかということを
考えていただかなければならない。そうしますと、その見地から見るときには、この
豫算面に對しては、私ははなはだ不滿を禁ぜざるを得ないのであります。どこに
未來性がありますか、どこに
日本が
ほんとうに
世界の
文化國として起ち上るところの
豫算が組まれておるかと申しますと、これはここに含まれていないのであります。たとえば
日本は今日まで戰爭をや
つてきました。ほとんど
學問、
科學、そういう
方面におきましては、
日本人の
頭腦は
世界の
列國に比較しまして、決して
劣つてはいないのでありますが、今日まで
軍國主義のために
科學者が虐げられ、
學者が虐げられてきてお
つたのであります。この
科學の水準を高め、
文化國家として
日本が起ち上りますためには、今まで隱されてお
つたところの虐げられてお
つたところの
學識、
文化を
世界の
人たちに知らしめる必要がある。これが
日本文化を向上せしめていく第一番であると私は
考える。この
意味からいたしまして、
日本の
學會はこれを算えてみますと、ほとんど二、三百に達しております。法科といわず、文科といわず、あるいは
理工科といわず
農學部におきましても、
數多の
學會がある。その
學會において
學者がしのぎを削
つて、戰爭中におきましても
研究をいたしました。この
人類文化のために貢獻しているところの
數多の
報告が、今日まで
一つも發表されないで、山積しているのであります。これは金が足りぬ。會員組織でも
つて會費を集めてや
つたらいいじやないか。こういうふうに
大藏當局はお
考えかもしれませんが、
學者のこの
會費だけでは紙が高くな
つて、とうていこれを印刷に附することができない状態であります。しかるに街を見ると、いかがわしいところの本がまことに怒濤のごとく賣り出されておる。こんなことでは、われわれ
日本人の
ほんとうに
文化國家ということが、
世界の人から認められることはないと
考えるのであります。この
意味におきましてこの
學會の
研究報告を發表するところの
經費、それはわずか一千
萬圓程度である。これがありますればまずこの二、三年の
研究報告を出す上におきまして、非常な助けになるのであります。これが
一つ、それから今民間における
財團法人の
研究所としては九十九ありますが、ここにおける
研究者、
學者が今日みな
やみをや
つている。
やみとは何であるか。自分の
研究所ではなしに、ほかの仕事をや
つておる。それではいけないのである。
研究者の進むべきところの道、これを
考えて、間違いないところの道を進ませなければいけないのである。
日本がどこへいくのであるか。
やみ商賣をや
つて食つてさへおればよいのであるか。それではいけない。われわれ
日本人はもつとすぐれた
頭腦をも
つておるのでありますから、この
頭腦を發揮せし
むるような方向へと進ませるような
豫算であ
つてほしい。この點につきましてはまことにこの
豫算面は貧弱であ
つて、うなずけないのであります。殊にもう
一つ、最近
電燈が消されて困
つておる、これは電力の
不足である。つまり
石炭の
不足である。それであるならば、この
石炭をいかに
節約していかに
有效に使うか、すなわち熱をいかに利用するかということについての、
熱管理の問題であります。これは放
つておけない問題である。今足もとに横たわ
つておる問題である。このことにつきまして、三千
萬トンの
石炭を掘るということを目標にしておりますが、三千
萬トン掘
つたところで、これをまずく使えば、つまり不經濟に使えば、
實質においては二千五百
萬トンあるいは二千
萬トンの價値しか生じないのである。これをもつと
有效に使うという
方向に力を入れなければいけない。ドイツにおきましては、戰前において、この
熱管理に力を入れましたために、三割五分の
節約を得ておるのであります。この
熱管理に二千
萬圓の
經費を投じましたならば、まず最低一割の
節約を得ることは、必ず易々たるものであると私は
考える。この
意味におきまして、
大藏當局におきましては、
各省より出てくるところの
豫算、その
豫算面をお
考えにな
つておるのかしりませんけれ
ども、私
ども學者の
立場、專門の
技術者の
立場から
考えますときには、
大藏當局におきましては、ただ机の上で金のつじつまを合わせるというふうにおやりにな
つておるのではないかと私は見えるのであります。どうしても
豫算面におきましては、即刻
熱管理及び
學會の
報告の援助、そういうことに力を入れていただかなければ、
日本が起ち上るということに對しての
未來牲がさらにないのである。私はこの
意味におきまして、どうしても次の
豫算においては、
各省より出てきましたところの
豫算に對して、
大藏當局は深甚の
考慮を
拂つて、そうして
豫算の
編成をなされるかどうか、この御決心を承
つて、私は結論を申し上げたいと
考えるのであります。どうかこの
考えを深く銘記されまして、
大藏當局におきましては、來るべき
豫算については、十分なる
愼重な態度をも
つて處理せられることを希望いたしまして、この
豫算には全面的に、やむを得ないと
考えまして、私の
討論を終ることにいたしたいと思います。