○
中原委員 私は
日本社會黨を代表いたしまして、ただいま本
委員會に御付託にな
つておりまする
補正豫算に對しまして、わが黨の
意見を申し述べたいと考えるものであります。
大藏大臣は本
豫算を御
説明になりまして、あらゆる困難を排して健全なる
豫算を
編成いたしたいという御
説明をも
つて終始されたのであります。なるほど體裁から考えますれば、確かに
收支の權衡を失していないかのごとき感がないではないのであります。しかしながら問題はその現われております
數字的な點をも
つて決するのではなくて、それが
内容をなす
歳入歳出の點に
關連して、健全と不健全とが決せられるものと考えるのであります。しかしながら思うに本
年度のこの
追加補正豫算は特に本
年度はじめてその
豫算編成の基礎的な諸
條件が生れたのではなくて、すでに本
年度本
豫算において、あるいは前
年度、前々
年度の
豫算においてその
因子が貯えられておるわけでありまして、そのような過去の
豫算との
關連から思いますならば、今日のさし迫りましたいわゆる緊迫諸
情勢の中において、實質的には健全ではないと斷ぜざるを得ないような
内容を、また取上げなければならなか
つたであろうということについて、一應の了解をすることができないというわけではございません。しかしながら少くとも
片山内閣の
性格から考えまして、そのような過去の
因子を一掃して、少くともここに新たなる面目をもつ
追加補正豫算であ
つてほしか
つたと、われわれは
衷心から遺憾を表明せなければならない次第であります。いろいろ申し上げたいことはございますけれ
ども、今さらあまり多くの論を用いましても、この
補正豫算に關する限りにおいては
いかんともいたし方のないことと考えますので、ただここに一、二のことを指摘いたしまして、申し上げてみたいと考えるのであります。
少くとも
豫算において最も重要視されなければならない問題は、いずれよりその
財源を求めてくるか。すなわち
歳入の求め方の
可否いかんにかかわると考えるのであります。しかるにこの
補正豫算におきましては、その
財源の
對象としていわゆる
徴收しやすきものを
對象として終始しておる。とりわけ
税收入の大宗である
所得税において見ましても、
所得税收の中に、實質的な
收入から考えますならば、
勤勞者の
所得税收入を主といたしておる。殊に
一般の
所得は申告をも
つて取扱われるに至りまして以來、ここにその
税收の
成績を見ることもできず、從いまして
所得税中の
實際の
收入面は、隱れ場所のない
源泉課税である
勤勞所得にその大
部分が、求められておる。またその他の面について考えましても、いわゆる
勤勞大衆が常にその負擔を感じ、非常に困難を經驗いたしております
間接消費税に、その大
部分が求められておる。このような
事柄は少くとも
勤勞大衆の
生活に留意をせなければならぬ今日の段階において、最も愼しむべき
事柄ではないかと思うのであります。今わが
日本が置かれております
經濟再建の
構想から考えましても、
勤勞大衆が眞に心を同じゆうして、安んじて
生産の意欲をいやが上にも盛り上げて、しかして再
生産のために
心身ともにそれに打ちこみ、わが
日本の
經濟再建の重要なる役割を果し得るという
事柄が、何よりも大切なのであ
つて、それをなすためには、
勤勞大衆に大いなる
犧牲を強要するというようなことがあ
つてはならないのであります。しかるにこの
豫算によ
つて考えますならば、
勤勞大衆に押しつけたその
犧牲があまりにも過大である。これを目を轉じまして、しからば
財源の求め方をいかなる方向によるべきかと思いますならば、少くともわが
日本の現在の
經濟諸情勢のもとにおきまして一番中味のある
財源は、何と申しましてもあの戰爭中使いました二千二百億の
豫算の
消費對象である
軍關係の諸
物資、その
軍關係の諸
物資が
敗戰の瞬間において各
方面に分散、散在いたしておるのでありますが、いわゆる
隱退藏物資、この
隱退藏諸
物資の跡始末に重點を置かなければならないということは、また
議論の
餘地のないところであると考えるのであります。もちろん現在の
内閣は、
組閣以來隱退藏物資の
追究については、日夜いろいろなる苦心を拂
つておることを認めるものではある。また
特別委員會をも
つてこの點についての
處理に、重要なる
努力が拂われておることも承知いたしておりますが、なおかつその究極の
成績を
收めるまでには至
つておらぬのでありまして、殊にまたこの
隱退藏諸
物資に對しまする
追究は、同時にその
隱退藏諸
物資のも
つておりまする
物力、經濟力、それを國の
歳入を賄うための
對象に轉換させるような
處置が講ぜられなければならぬと思うのであります。
隱退藏物資について本年の三月であ
つたかと思いますが、
さきの九十二
議會におきましても、
決算委員會の席上の
隱退藏物資處理委員會の副
委員長の言によりましても、大
體マル公價格にして五百億
圓程度のものがあろうと
證言をいたしておられましたが、その後いろいろ各
方面からの情報によれば、
實數はそれに倍するものがあるであろうとさえ言われておる
實情であります。また
國民はこの
隱退藏物資を、各地に目のあたりその肉眼をも
つて散見いたしておるのでありまして、この
隱退藏物資の
處理がほんとうに
徹底的に、成功的になされますならば、恐らく現在わが
日本が置かれておりまするこの
財政上の痛苦を解消するに、少くとも相當
部分の役立ちをなし得るであろうと考えられるのであります。從いまして
政府はこの
隱退藏物資の
處理とその解決について、一層の
努力を拂うと同時に、これを
國家財政の
歳入對象として、十分の
措置を講ずべきものであると考えるのであります。さらにこのような
考え方からいたしまして、少くとも今後の
措置は、
從來の取上げ方とはま
つたくその方法を異にすることを必要とすると考えるのであります。
從來のような、いわゆるもてる
階級に對してあまりにも
遠慮勝ちであ
つた、むしろもてる
階級に對して阿諛迎合するというようなきらいのある
行き方を、大膽に改めて、少くとも現下のわが
日本の窮状を眞に見詰めることができるならば、そのような躊躇をすることはもはや許されないのでありまして、少くとも可能な面から、擔税し得る面から、その
財政の
收入源を求めなければならぬと思うのであります。從いまして本
年度のこの
補正豫算に關しまする限りにおいては、そのような大膽な
措置を講ずることの困難であ
つたことを思いまするために、一應それをそのままに見送りはいたしまするけれ
ども、この點を十分、次
年度の
豫算編成にあたりましては、少くともこのわれわれの指摘にこたえるような
努力を
要請してやまぬのであります。さらにここに配付されておりまする文書によりますると、
自由黨西村君の
修正案がございまするが、この
修正案に對しまして一
應私どもの見解を申し述べてみたいと思うのであります。
まず
歳出の面でありまするが、酒類の
配給公團等に
支出豫定額四億なにがしを
修正減額するという項があるようであります。私
どもは現在わが
日本の
歳入對象として、最も大きなるものを酒の中に求めておりまするが、同時にまたこの酒は
國民の
生計費中の
かなり相當の
部分を
占むるものなのであります。從いまして
配給公團の過ちなき
機能の
活動によりまして、この酒の
やみ、
横流れを完全に食止めることができるならば、
國民の
生計費の負擔を輕減することはまた言うまでもございません。このようなことを思いまするならば、一應ここに私は
横流れ、あるいは
やみ買の
部分を一年百
萬石と假定いたしまして、これを安くみて大體平均五百圓とみましても、その
やみと
横流れのための
過重負擔は、およそ五十億に相なるかと思うのであります。このような
過重負擔を緩和し、眞に
國民の
消費生活の面を、より低い線に切下げることができまするならば、この
公團の
機能の働きに期待するところもまた必ずしも小ではないのではないか。さらに
産業經濟費中の
農業生産調整費についても、同樣
減額の
修正案が窺われるようでありまするが、なるほど
農業生産調整そのものにつきましては、もちろんいろいろ
議論もあると考えられまするけれ
ども、今日わが
日本のおかれておりまする
食糧事情を考えまするならば、少くとも
供出米の確保、あるいは
農業生産に關する重要なる
措置といたしましては、このやむを得ざる
情勢下において、
農業生産調整法の效用を十分發揮せしめるために、最も積極的でなければならぬと思うのであります。從いましてこれらに關する諸
經費としての——全
豫算から考えますると、大して大きな
部分ではないこの
減額を、この場合必要とするということ、そのことに對していささか疑念をもたざるを得ないのであります。少くとも
農業生産に關しまする限りは、この際相當積極的な
支出をさえ必要とするのではないか、かようにわれわれは考えるものであります。もつともこれは
法律案とも見合いになりまして、いろいろな御
議論も漏れ聞いておるのでございまするけれ
ども、少くともこの
財政の建前から申しまするならば、これは
兩者ともに進行してよろしいものであると考えるのであります。殊にあらかじめこれが通過をみなければならぬと考えられておりまする問題である限りにおいて、この
減額修正のことは、必ずしも妥當ではないというふうに私
どもは考える。從いましてこの
歳出の
修正に
關連しての
歳入の
修正面でありまするが、これについても、
從つて歳出の面の必要を認めまするならば、これとの
關連による
歳入の
減額も、
當然理論的
なつながりをもつものでありまして、必ずしもこの
歳入面における
減額修正を、この面においては少くとも必要でないというふうに考えるものであります。
われわれは少くとも今囘のこの
補正豫算に關しましては、十分
審議し、これを盡して、
國民の了承し得る
程度の
議論をも
つて結論を求め、そうしてわれわれの
確信に滿ちた決定をみたいと考えたことでございましたが、はなはだ殘念ながら時間の
關係もあり、いろいろな支障に妨げられまして、十分の
審議を盡すことのできなか
つたことを遺憾に思うのであります。從いまして本
豫算を承認するにあたりまして、私はここに一、二のことを申し上げておきたいと考えるのであります。
さきに
豫算委員長から
政府に要望されておられましたが、すなわち次
年度、
昭和二十三
年度の
豫算の
提出のことにあた
つては、少くとも今囘のような時間的な窮屈を與えることのないように、十分これを
審議し、討議するための時間を與えるような餘裕をも
つて、次
年度の
豫算はこれを
提出してもらいたい。そうして
國會は十分の時間をも
つて、
國民の
意思を率直大膽にその
豫算の上に現わさしめて、そうして必要ならばまた容赦なき
修正を加えることもせなければならぬと考えまするし、また
政府はそれだけの十分のゆとりをも
つて、次
年度豫算の
提出をお取運びが願いたいと考えるものであります。
さらに
官公廳の
職員給與に關する問題でありまするが、
さきに中
勞委からその
仲裁案が提示されましたが、その中
勞委の
裁定につきましては、
政府はあらかじめ中
勞委の
意思を十分尊重するということを繰返し御言明にな
つておられましたのでもありまするし、かつまた中
勞委の權威に對しましても、少くとも
政府はできるだけの
誠意をつくさなければならないということは、今さら
議論の
餘地のないところであります。從いましてこの中
勞委の
裁定に對して、あくまでこれが
實現を期するための十分の
努力を拂われまして、遲滯なく
官公廳職員諸君の期待にこたえるようにお骨折りを願いたいと思うのであります。もちろん
政府はそれだけの
誠意を示して、十分の御
審議のことと考えますが、私
どもはこの
官公廳職員諸君に對する
生活補給金の問題に關しまして、
政府が
財源さえあれば何とかこたえることができるというふうに言われたと思いますし、また
さきに第二
分科會におきましても、
勞働關係の
主務大臣である
米窪氏もそのように
誠意をも
つて答えていられたのであります。私
どももその
財源については三、四の
心當りをも
つているわけでありまして、殊に
公廳會におきまして、全
財勞働組合の品川君の
證言によりましても、およその見透しがつきますように、今囘のいわゆる
價格差益金の問題であります。この
價格差益金の問題にいたしましても、
政府はようやく百億を計上しているに過ぎませんけれ
ども、
實際税務官吏が
誠意を傾けてその
徴收にあたることが許されるなら、
税務官吏は
税務官吏の
責任において、優にそれに三倍するものを徴税し得るであろうということを、この席上において言明しておられましたが、これは少くとも
責任ある
勞働組合の
執行委員長として、殊に
公廳會に臨まれました人の
責任において、おそらく
根據のない
發言ではないと私は固く信じておるものであります。從いましてその
措置よろしきを得ますならば、おそらく
價格差益金收入から考えましても、優に今囘の
官公勞に對する新
給與の
措置はなし得ると信ずることができるのであります。たまたま話が全
財勞組に及んだのでありますが、今後わが
日本の
財政を健全ならしめるための最も大切な
一つの
對象は、この
税務官吏をして心魂を打込んでその
職責にあたらしめることのできる
體制をつくることであると思うのであります。今や
税務關係の
職員諸君は、ほとんど文字
通り窮乏の中に追いこまれ、ときには許すべからざる
良心を
犠牲にして、いわゆる役得の
行爲をなすことさえあるというようなことを、みずから歎いておるのでありますが、少くとも
政府はこの際
税務關係の
職員諸君の
處遇問題について、最も大膽なる取計らいをせられる必要があるのではないか。そうして
税務關係の
政府職員が顧みるところなく、その
職責に集中することができるならば、おそらく
政府が今後立てられるであろうところの
歳入計費について、十分の
實績をあげることができるのではないかと考えるのであります。話はそれましたが、そういう
意味においてこの
官公廳職員の
給與問題に關しては、
確信をも
つて政府は突き進んでいただきたい。何ら躊躇逡巡することなく、大膽にこの中
勞委の
裁定にこたえてもらいたいということを、私は
衷心より懇請してやまない次第であります。このことが決して
官公廳職員の十分なる
滿足を
滿すに足るものだとは考えておりませんけれ
ども、少くとも
暫定措置として、今日の
窮乏打開の
一つの方途として、これだけのことは取上げられなければならぬのではないか、このように考えるものであります。殊に今後のわが
日本の
經濟再建の
構想の最も大切な點は、ある
程度までの
統制が強化されていかなければならぬということとの
關連において考えますならば、特に
官公吏諸君が、
從來のような心構えを完成に一擲いたしまして、眞に
官公廳の
職員諸君が
日本民主化の
先導者として挺身することのできるような
體制をとらしめることが、最も大切であると考えるのであります。
從來統制という問題に
關連してすぐに起りますことは、いわゆる
官僚統制の弊に對する
國民の不愉快な思い出でございますが、今後わが
日本における
統制の
行き方は、
從來のごとき不愉快なる印象をも
つて今日までまいりましたあのような
意味の
官僚統制であ
つてはならないということは、いまさら申し上げるまでもありません。しかしながらこのままにして進みますならば、やはり依然としていわゆる
官僚統制の弊を繰返すのおそれなしといたさぬのでありますが、今後はいわゆる
官公廳の
民主化の
徹底をはかり、
民主化を
徹底的に十分になし遂げまして、
官公廳の
職員諸君が、おのずからわが
日本の
民主主義達成のための
先導者としての自覺をもつに足るような
處置をも
つて臨みたいものと考えるのであります。このようなことはただ單純に考えますと、
官公廳の
職員諸君の
給與その他の處遇に必要な
經費は、一にかか
つて國民の負擔、
犠牲であるというような
考え方がただちに起り、またそういう吹聽をする人々もあるのでありますけれ
ども、これは
職員諸君が眞に心を打ちこんで國の
再建に挺身し、そうしてわが
日本の
民主化徹底のために盡すことができますならば、それは十分これをカバーして餘りあるのでございます。從いましてそのような點についてはいささかも遲疑逡巡する必要はない。これだけの
誠意を傾けて
政府が
待遇するにもかかわらず、
官公廳の
職員諸君が、もし依然として舊態依然としてその弊風を改めないということがもしありましたならば、そのとき初めて
官公廳の
職員諸君に、
國民の最も峻烈なる批判が下されるであろうと考えるのであります。彼ら
職員諸君は、もとより顧みてみずからを責めるの
誠實をもち、
良心を十分にも
つていると信じております。このようなことに
關連しまして、もとより
官紀肅正の
徹底を期するということは言うまでもなく、また同時に
機構の
擴充強化についても十分の心を傾けなければならぬことは言うまでもございません。かようにいたしましていわゆる
政府の全
機構をま
つたく一新し得るに足るだけの
條件を、ここに確保していかなければならぬと考えますし、このことに
關連いたしまして、あくまで
官公廳の
事務能率の向上、
簡素化、
民主化の
徹底ということは、
當然これに附加して斷行しなければならないことであると考えるのであります。
以上のやうな觀點から、少くとも
政府はあらゆる面において
一大轉換を要することと考えます。從いまして
從來のような慣習をそのまま繰返すことも、大膽率直にやめてもらい、そして少くとも今後は
政府の
編成いたしまする
豫算の
内容としましては、今日のこの
補正豫算に見るがごとく、極端な表現をも
つて申しますると、
石橋財政の
むし返しではないかというようなことを言われ、あるいは思われるようなおそれのある
行き方を、斷然清算してもらいたい。そして少くとも
社會黨を首班とする現
内閣におかれましては、
社會黨のも
つておりまする諸政策を
十分豫算の中に
具體的に織りこむような
措置を講じてもらいたい。
國民は
社會黨に對して今期の
政權を擔當せしめるの
要請から、ともかく
社會黨を第一黨たらしめたということは、必ずしも偶然ではない。わが
日本の行き詰れる
經濟打開の唯一の
行き方は、少くとも
經濟民主化の
徹底、政治の
民主化の
徹底、このことを
國民は期待いたしておるのであります。從いまして特に
經濟民主化の面におきましては、
社會黨がかねがね約束しておりまするような、
重要産業に對する
國營、あるいは
國營につながる強力なる
國家管理の斷行、このような
事柄が
國民の
要請に答え、わが
日本國家再建の要素の重要なるものであると私
どもは固く信じておる次第であります。
希わくはこれらの諸點を勘案されまして、次
年度の
昭和二十三
年度豫算の
編成にあたりましては、十分の考慮を拂われて、その
豫算の面に
具體的にこのことを表現いたしていただきたいと希望してやまぬ次第であります。
以上をも
つて次
年度豫算に對する希望を加え、そしてここに
提出にな
つておられまする
補正豫算に對しまする贊成の
意見を申し述べた次第であります。