○荒木萬壽夫君 ただいま
議題となりました
建設院設置法案に関し、
國土計画委員会における
審査の
経過並びに結果の
概要を御
報告いたします。
まず第一に、
政府提案の理由及び
法案の
内容を御
説明申し上げます。
政府はさきに、内務省廃止に関する
法律案とともに地方自治
委員会、公安廳及び
建設院設置法案を
提出し、
委員会において
審査中であ
つたのでありますが、その後予期せざる情勢の変化によ
つて、これを撤回するのやむなきに
至つたのであります。
政府においては、その後さらに檢討を加えました結果、あらためて内務省及び内務省の機構に関する勅令等を廃止する
法律案を
提出し、これに続いて本
法律案を
提出する運びと
なつた次第であります。前
法律案撤回以來今日まで
種々の経緯があつたとはいたしましても、再
提出が遅れましたことは、はなはだ遺憾千万としているところであります。
本
法律案は、
内閣総理大臣の管理のもとに新たに建設院を設け、その
権限としては、國土計画、地方計画、都市計画、河川、道路、砂防、公有水面、住宅、宅地、建築等に関する事務を掌らしむものでありまして、大体において、現在の戰災復興院及び内務省國土局の所管に属しております事務を合わせたものであります。建設院の長は國務
大臣をも
つてこれに充てる場合もあることに定められていますが、その内部組織といたいしましては、官房のほか総務局、水政局、地政局、都市局、建築局及び特別建設局の六局を設け、おのおの事務を分掌せしめることとし、なお土木出張所、建築出張所、特別建設出張所、技術研究所及び地理
調査所を置き、出先
機関または附属
機関として、それぞれ事務を分掌せしめることにな
つています。なお、建設院の職員について必要な
事項は、政令に譲
つてあります。
以上のごとく、本
法律案は、さきに撤回されましたる地方自治
委員会、公安廳及び
建設院設置法案中の建設院に関する部分と大体において同じでありますが、御
参考までに、前案と相違するおもなる点を
簡單に申し上げます。
その一つは、建設院の所管
事項に関し、主として特別調達廳との
関係において若干の調整を加えたことであります。すなわち、前の
法律案では、建設院の所管
事項中に連合國最高司令官の要求にかかる建造物および設備の営繕等のことを掲げておりましたが、これらのことは主として特別調達廳で所掌しているところであり、また今後とも特別調達廳に任せてよい事柄でありますので、今回の
法律案では、この
関係の事務としては、國費の不当支出を防止するため建設工事の技術的
監督及び監視にあたることに止めてあるのであります。
第二は、撤回案の
審査中における
経過に鑑み、先の
法律案において政令に任せてあつたところの建設院の部局及び土木出張所その他の
機関に関する
事項を、
法律案にとり入れることにしたことであります。前にも申し述べましたごとく、本
法律案の骨子については、先の地方自治
委員会、公安廳及び
建設院設置法案中建設院の部分に関する
決算委員会、治安及び
地方制度委員会、
國土計画委員会連合
審査会の建設院小
委員会として、さる八月十五日以降
法律案撤回前の八月
末日までに、前後五回にわたりまして、
内閣総理大臣、行政
調査部総裁、内務
大臣、
経済安定本部総務長官、法制局長官、戰災復興院総裁等との間に相当論議が盡されたのでありまして、本
法律案としては、主として大局的
見地より
内閣総理大臣に対する質疑がなされたのであります。以下、
政府側との間に行われました
質疑應答のおもなるものを要約して御紹介申し上げます。
委員会質疑の第一は、建設院案を建設省案に変更したらどうかという問題でありまして、連合
審査の劈頭から、終始ほとんど全
委員により最も熱心に質問された点であります。すなわち、今次戰爭中
種々の公共事実はほとんど中絶忘却せられて、國土の荒廃は言語に絶するものがある、これに加えて、近時各所に頻発する大風水害は、さらにこれに拍車をかけているばかりでなく、一方戰災地の復興は遅々として進まず、数百万の國民は住むに家なく、食うに食なく、民心は、この國土とともに荒廃の一途をたどりつつある、この窮状を打開するための重大使命を担うべき行政機構としては、建設院案を一擲して、建設力を結集したる一省を興すことによ
つてのみ國民の負託にこたえ得ると思うが、
政府の所見はどうか。また敗戰によ
つて與えられたる客観條件は、狹小なる國土と過大なる人口であり、敗戰國特有のインフレの重圧である、この窮乏の諸條件を克服するためには、國土の徹底的開発利用をはからねばならない、治山治水の対策も、開拓も、電力開発も、ともに総合的に一切のセクシヨナリズムを去
つて、新日本建設のための國土の開発利用という
見地から強力に推進することが國家民族を救うゆえんであり、このことを担当させるために建設省の
設置が必要であると思うがどうか。また
政府は失業者の数を約八百万と推定しているが、この失業救済は、消極的手段ではとうてい解決されるものではなく、國家的に大規模な公共事業を
政府が中心となり、強力に遂行することによ
つて初めて解決の曙光が見出されるのであ
つて、戰勝國たる英帝國の復興
大臣が、完全雇用の問題をみずからの責任において解決せんとしておることを思うべきである、この
見地よりしても、建設省の
設置は焦眉の急務であると思うがどうか。
これに対する
政府側の答弁は、國家復興
再建の途上において、建設事業の推進が重大問題であることに関しては、まつたく同感である。
政府としても、その重要性を十分に認識し、
政府機構の上にも最大の関心を拂
つているが、要は國の財政能力と資材の
関係が問題である。現在の財政及び資材能力の
見地よりしては、建設院のままでその全能力を発揮させることにより、十分復興事業に推進できると信ずる。また現在建設事業が各省にまたが
つていることは事実であるが、今これをにわかに一箇所に集中することは、各省間にいくたの摩擦を生じ、容易に解決することはできない。要は各自の働きと努力と誠意である。建設省ではやれるが、建設院では復興事業はやれぬという理窟はない。
政府としては、現在のところ、建設院でも一省と同樣の実力をあげ得るものと確信している。また失業対策も國土計画の樹立も重大問題であるが、これはまず産業復興、経済復興より着手して、逐次建設事業を樹立していきたい。
質疑の第二は、
政府として建設省の必要性を認め、所要の
法案を次の
國会に
提出する意向ありや。また、最も近い
機会において建設省
設置法案を議員より提案した場合、これに対する
政府の意向はどうか。これに対する
政府の答弁は、行政機構の
調査が根本的に完了するまでは建設院でいく方針であるから、來
國会に建設省
設置法案を
提出する考えはない。しかしながら、
國会みずからこれを決定することありせば、これを尊重すべきは当然であろう。
質疑の第三は、建設院は本來の性質よりして、高度の科学技術の粹を十分に発揮すべき
見地より、これが職員の人選にあた
つては、
從來の官僚万能、法科万能主義を廃して、その総裁には政治家を充てるとしても、その次長には建設技術に最も練達なるものを充てるよう考慮されたい。これに対する
政府側の答弁は、官僚主義は極力これを廃したいと考えている。法科万能のため技術官は下積みとなり、各所でその弊害は叫ばれている。建設事業には高度なる科学的知識と
経驗を必要とするという御
意見は十分尊重したい。
質疑の第四は、開拓行政は当然建設省に一元化すべきであるのに、農林省内で建設廳または建設局を
設置せんとする意向があるに聞くがどうか。これに対する
政府側の答弁は、そこまでは考えていない。
質疑の第五は、建設院と特別調達廳との
関係いかん。これに対する
政府側の答弁は、特別調達廳は建設院と同格の官廳として、
連合軍最高司令官の要求にかかるすべての建設物及び設備の営繕並びに備品の調達に関する事務を戰災復興院の特別建設局より引継ぐことになり、建設院の特別建設局には、單に國費の不当支出を防止するため、これらの建設工事の技術的
監督と監視に関する事務のみが残ることに
なつた。
質疑の第六は、何ゆえ國費支弁の営繕に関する事務を建設院に一元化しないか。また営繕事務を在來の建築局より今回建設院の特別建築局に移したる理由いかん。さらに、各省
大臣の所管に属する営繕については
昭和二十三年五月二日まで有効としたる理由いかん。これに対する
政府側の答弁は、右営繕に関する事務は、原則として戰災復刻院で所管していたが、今後さらに進んでそのすべてを一元化することは、実際問題としては困難である。しかし、今後他省にて管理するものは、すべてこれを
法律で定めることに
なつた。また本事務を特別建設局に移した理由としては、建築局と特別建設局の業務量を調整すること、建築局は建築
監督行政を、特別建設局は工事
施行を主として担当する建前より、営繕事務は主として後者に属すると認めたからである。有効
期間は、行政官廳法の有効
期間が來年五月二日であるから、それまでには遅くとも
法律で他の各省
大臣の所管に属するものを決定し得ると考えたからである。
質疑第七は、住宅拂底の折柄、もと軍の所有した各所の
厖大なる土地、建物、遊休
施設等をより有効に活用するために、これらに関する事務を大藏省より建設院に移管する意思なきや。これに対する
政府側の答弁は、理想的にはそうであるべきであると思うが、種種の
事情から、未だその運びに至
つていない。
質疑の第八は、第十三條第一項及び第三項により、職員に関する
事項を政令に、部局の所掌事務の一部変更を建設院の長にそれぞれ委任をしているが、扱い方いかんによ
つては、立法の趣旨に影響するおそれがあると考えるがどうか。これに対し
政府側の答弁は、職名とか定員とかを政令で
規定するつもりである。また当分の間、建設院の部局の所掌事務は、相互に一部変更を要するような場合が考えられる。しかしながら、これが濫用は極力避けなければならぬと思う。以上が
質疑應答のおもなるものでありまして、詳しくは、本年八月十五日以降建設院小
委員会を含めての速記録に譲りたいと存じます。
次に細野三千雄君より、各派共同の提案として修正
意見が述べられました。すなわち、第十條の「ことができる。」を削る。換言しますれば、「建設院の長は、國務
大臣を以てこれに充てる」とありまする末尾の「ことができる。」を削りまして、「建設院の長は、國務
大臣を以て充てる。」ということに修正する点であります。第二点は、第十一條中の「土木出張所」を「地方建設局」に改めるというのであります。修正理由の要旨は、会期の
関係上やむを得ず建設院のままで一應進むとしても、建設省としての理想に一歩でも近づけるためには、その長を必ず國務
大臣をも
つて充てるとすることは絶対的に必要である。また、土木出張所は
明治三十八年以來の古い名前であ
つて、現在の土木出張所の所掌事務の重大性と、その
厖大なる建設力等よりして、その名と実を合致せしむるために、これを地方建設局と改めることが適当であるというのであります。
かくて、本
委員会は十二月五日午後
討論に入り、
日本社会党を代表して松澤一君より、
日本社会党は本
法律案に対しては多大の不満がある。その機構を拡充し、國家
再建に寄與すべきであるが、会期の
関係上、時間的に余裕がないから、建設省
設置の問題としては近き將來に譲ることとし、修正
意見及びその他の
原案に賛成する。次に、民主党を代表して村瀬宣親君より、内務省廃止に伴う緊急立法として、本案並びに修正
意見に賛成する。しかしながら、総合的國土計画を一日も早く樹立し、も
つて失業対策にも併せ備えられんことを切望する。なお第十三條の運用については、極力これが濫用に注意されんことを望む。次に、
日本自由党を代表して松浦東介君より。内務省の廃止が延期されたので、今度は建設省案が
提出されると思
つていたのに、再度建設院案が
提出され失望したが、これはあくまで臨時的
法律案と認め、その
見地より本案に賛意を表する。建設省ないし國土省の
設置は万人の熱望するところである。二百日の長期にわたる
國会中に、ついにバラツク建の建設院しかつくり得なか
つたのは遺憾千万である。しかしながら、本日片山
総理大臣は、
國会の意思は十分尊重すると申されたことを諒とし、われわれに最も近き將來に建設省ないし國土省
設置法案を
提出する決意である。
最後に、建設院の
運営は科学技術の活用にまつべきもの多大なる点に鑑み、建設院の次長としては練達なる技術官を充当されんことを希望し、かつこれに対する片山総理の賛成
意見に対して絶対の信用をおくものである。以上のごとく、それぞれ賛成
意見の開陳がございました。続いて採決に入り、細野三千雄君
提出の修正案及びその修正部分を除く
原案に対し採決の結果、いずれも
全会一致をも
つて可決いたされた次第であります。
以上、
簡單ながら御
報告申し上げます。(拍手)