○田中稔男君 私は、去る十四日全逓爭議に関し
政府及び組合の双方に対して提示されました中央労働
委員会の調停案につきまして、
関係大臣に若干質問をいたしたいと考えるものであります。
調停案は二部にわかれておるのであります。第一に、物價安定を基礎とする最低賃金制の確立という組合の要求に対しましては、中央労働
委員会は、その理念自体はこれを認めるが、軽労働二千四百カロリー、生計費のうちに占める飲食費の割合六〇%とするところの要求
内容については、國家
財政または企業
経理能力の窮乏せる
現状においては、とうてい首肯しがたいという態度をと
つているのであります。しかるに、一方
政府の施策を檢討いたしまするに、千八百円ベースを設定いたしました際に、生計費の推算において無理があり、その後、
政府の約束いたしましたところの流通秩序の確立、やみの撲滅ということが少しも成功をしていない。それだけでなく、一般物價はますます高騰を続けておるという
事情に鑑み、千八百円ベースは改訂する必要がある。そのためには、十一月中に
臨時給與
委員会を設置して、來年一月より新給與を実施するように
政府に対して勧告をいたしておるのであります。私は、調停案が企業
経理能力説に根拠いたしまして、組合側の労働力再生産説に対立している点におきまして、不満を抱くものでありますけれども、千八百円ベースの改訂その他の点におきまして、この調停案に賛意を表するものであります。
千八百円ベースを改訂しなければならない第一の理由は、これをも
つてしては、とうてい生計費を賄うことができないのであります。千八百円ベースの
計算に從いますと、四、二人世帶の全國平均月收は二千九百二十円ということにな
つておるのであります。もちろん、東京その他大都市におきましては、その数字ははるかに三千円を上まわ
つておると考えられるのであります。また大藏当局の発表するところによりますれば、官公廳の職員につきましては、東京等の大都市におきましては、四・二人世帶の平均月收は四千円を上まわ
つておる数字が示されておるのであります。しかしながら、本年八月の実際の生計費を
内閣統計局の消費者費價格調査によ
つて調べますと六千円に達しているのであります。しかも、大藏当局が発表しましたこれに該当する数字はさらに多く、六千五百七十六円であ
つたと思うのであります。その後、一般價格の
引上げや、米の消費者價格の
引上げや、タバコの値上げ等が行われましたために、生計費は高騰しておることは確実であります。かくして、家計の赤字は明瞭であります。
千八百円ベースを改訂しなければならない第二の理由は、民間企業におきましては、賃金ははるかに千八百円ベースを上まわ
つておるのであります。官公廳の職員の賃金と民間企業に從事する労働者の賃金との開きは、本年七月
以來漸次顯著にな
つておるのであります。どうしても官公廳の労働者に対しまして千八百円ベースを改訂しなければ、均衡がとれないのであります。さらにまた、千八百円ベースを設定しました場合、その裏づけとなるべきところの生活物資の円滑なる配給が、約束
通り行われていない。
政府は
各種の公定價格を
引上げ、タバコの値上げをや
つて、やみ價格の高騰を促進しておる。インフレーションは依然として進行を続けておるのであります。
こういうふうな
事情からして、私は千八百円ベースの改訂の必要を痛感するものでありますが、一体、そのことは可能であるのかどうかということを考えますならば、千八百円ベースを設定しました際に、公定價格の
引上げをや
つたのでありますが、その際二・三倍ないし二・五倍に
引上げました。その
引上げ方は、賃金と比べまして不均衡に高か
つたのであります。大体の数字を申しますならば、賃金をもう四割
引上げましても公定價格との均衡はとれるのであります。新價格体系には何ら影響を及ぼさないのであります。しかしながら、新價格体系そのものを再檢討する時期がもう來ているのではないかと私は考えるのであります。もしそうでありますならば、賃金問題はさらに新たなる角度を與えられるのでありますけれども、それはともかくといたしまして、官公廳労働者のために千八百円ベースを改訂するために速やかに
臨時給與
委員会を設置すべしという中労委の勧告に対しましては、私はこれに
賛成し、これについて米窪労働大臣の御意向を承りたいと考えるものであります。
さらに、この六月までの生計費の赤字を補填するために、本人二千円、扶養家族一人につき一千円の生活補給金を、乙地の最低額として八月中に支給せよという組合の要求に対しまして、中央労働
委員会は、一月から十二月までの生活補給金として千八百円ベースの二・八箇月分、金額にいたしまして五千四十円を平均額として支給すべしと勧告しているのであります。私は、この金額は、さつき千八百円ベースの改訂の必要を論じましたのと同じ理由をも
つて、決して満足すべき金額とは考えないのであります。しかしながら、最小限度の金額として、この二・八箇月分はぜひ
政府において出していただきたいと考えるのであります。(
拍手)これにつきまして、米窪労働大臣の御意向を承りたいと考えるものであります。
なおこの際、中央労働
委員会の権威について一言いたしたいと思うのであります。昨年秋のあの歴史的な電産爭議にあたりまして、当時の
自由党の吉田
内閣は、みずから中央労働
委員会に対して調停を依頼しておきながら、その調停案を拒否して、その権威を蹂躙したのであります。現
内閣は、かねて早期の平和的解決を慫慂されており、そのために中央及び地方を通ずる労働
委員会の権威を尊重する旨、たびたび言明されているのであります。今回の中労委の全逓調停案について、
政府ははたして平素の言明
通りに中央労働
委員会の調停案の権威を認められる御意思があるかどうか。この点について米窪労働大臣の御
答弁を得たいと思うのであります。
この際関連して御質問いたしたい事柄があるのであります。ただいま私、手にいたしたのでありますけれども、十一月二十四日附で國鉄北海道対
政府要求貫徹
委員会の声明書があります。北海道の國鉄の労働者
諸君は、かねて待遇
改善について札幌鉄道局長に向
つて要求を
提出されてお
つたのであります。それが数次にわたる交渉の結果、当局はその妥当性を認めながらも何ら実現の手段をとらないために、遂に十月二十七日、北海道地方労働
委員会に提訴されたのであります。その結果、十一月十一日に調停案が提示されたのであります。調停案の
内容はいろいろありますけれども、そのうちにおいて特に重要な一項目は、燃料手当として有扶養家族者に対しまして七千六百円、独立生計單身者に対しまして三千八百円、非独立單身者に対して二千円支給することを妥当とするという一項目があるのであります。札幌鉄道局長も、これを認めたのであります。しかるに
政府当局におきまして、この地方労働
委員会の調停案を不当としまして、有扶養家族者に対しましてわずか三千円、独立生計單身者に対しましてわずか千円支給するということにきめられたのであります。このことは、かねて中央及び地方を通ずる労働
委員会の権威を尊重するという
政府の言明を裏切
つた行動であると思うのであります。私は、この点につきまして
政府の御意向を承り、どうかひとつ今回の御決定を飜していただいて、北海道地方労働
委員会の調停案
通りの燃料手当を支給していただいて、今や冬將軍を迎えて寒さに凍えようとしておるところの北海道の國鉄の労働者のために御配慮願いたいと思うのであります。
次に、
臨時給與
委員会が設置され、來年一月から新給與が実施され、また生活補給金として二・八箇月分の支給が行われると假定いたしました場合には、これは相当人件費の増大を來すことは必至であります。本
年度の第一次追加
予算の
審議にあたりましても、これをも
つて財政上の危機を説く声が多か
つたのでありますからして、この人件費の増大は、その
処理まことに困難な問題であろうと思うのであります。しかしながら私は、困難であるということは不可能であるということと同義ではないと考えるのであります。そのことは可能であり、その可能性を現実化するものは、
一つにかか
つて政治力にあるものと考えるのであります。
政府は、この増大した人件費の
処理にあたりまして、赤字公債や日銀借入金によ
つて賄い、その結果としてインフレーションを促進し、新給與水準を実質的に無効ならしめるような方途をとるべきではないのであります。たとい一時
財政上のやりくりとして、そういう方途をとりましても、速やかにその引当てとして積極的歳入を確保するの方策を講じなければならないのであります。
私は、あまりこまかいことは申し上げたくはないのでありますけれども、いま
財政年度を問わないで、いろいろ財源を探してみますならば、次のようないろいろな財源を私は発見することができるのであります。
まず第一に、今日民間の企業におきまして、賃金は一般に千八百円ベースを上まわ
つておることは、先ほど申した
通りであります。
從つて、千八百円ベースを課税標準としたところの本
年度の勤労
所得税は、自然増收を來すことは必至でありまして、その額はおそらく九十億に達するであろうと言われておるのであります。また現在におきまして、税金の滯納額は百億を突破しておるのであります。もし徴税
機構を強化することができますならば、この滯納を解消することができるだけでなく、さらに百億の自然増收を來すこともできると思うのであります。さらに不徹底に終りましたところの財産税に追加いたしまして、明
年度におきまして課するということも
一つの方法であります。