○竹山祐太郎君 ただいま
議題となりました國家公務員法案ほか一件に関して、
委員会審議の
経過並びに結果の御
報告を申し上げます。
本案の重要性は、申し上げるまでもなく、憲法第十五條の「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の権利である。」ということに基きまして、今まで長い間天皇の官吏として、明治以來國民の上に立
つて、最も惡い官尊民卑、官僚独善に長年苦しんで來た國民が、眞に全体の奉仕者たる公務員をもつことになることでありまして、民主政治の達成の上におきまして、いかに重要なことであるかは申し上げるまでもありません。
政府は、むしろ
本案の提案をもつと速やかにいたすべきであ
つて、その遅きに過ぐるを憾むのであります。一日早ければ一日早く民主政治の進行を始めるものと信じます。
本法によ
つて、歴史的な明治二十年勅令第三十九号の官吏服務紀律を初め、十四の
関係勅令は不要となるのであります。本法は國家公務員を指し、
地方自治
團体の公務員を含みません。本法の適用
範囲に当る公務員は、五月二十二日現在の
予算定員では二百二十二万九千六百三十二人で、そのうち、
一般会計で三十八万九千四百八人、
特別会計において百二十二万六千五百四十三人、公立学校教員四十九万三千百五十三人、警察
職員十二万五百二十八人であります。
次に、本法案の
内容についてごく要点を申し上げてみたいと思います。本法案は、本則百十條、附則十四條より成る、まことに廣汎なものでありますが、これを大体三つの眼目とすることが
考えられます。その一は、目的及びその適用
範囲、二は、本法案実施の中枢機関たる人事院に関することであり、三は公務員制度の実体を爲す各般の根本
基準であります。
この第一の目的といたしましては、公務員に対する各般の根本
基準を
確立し、公務員がその職務の遂行にあた
つて最大の能率を発揮し得るよう、民主的な
方法で選択せられ指導せられることを定め、國民に対して民主的に能率的な運営を保障することを明らかにしております。
次に適用の
範囲は、公務員を一般職と特別職にわかち、特別職は本法の適用から除外しております。
國会議員は、本法の國家公務員法中には含まれておりません。特別職以外を一般職とし、特別職のうち、その一は、
從來自由任用に任せられておりました國務大臣、政務官、秘書官等及び各省次官及びこれに準ずる等の者があります。その二は、
会計檢査官のごとく、
國会の選挙、同意または議決を要する者があります。その三は、
國会職員、裁判官、大公使等であります。その四は、現業廳、公團等の
職員であり、
最後に單純な労務に雇用される者というように、十数項にわかれて記載されております。以上のほかが一般職でありますが、但し、その中でも外交官、領事官、学校教員、裁判所
職員、檢察官等は、例外規定を設けることを附則で定めております。
次に、第二の点といたしましての人事院は、本法の実施を確保し、目的達成のため内閣総理大臣のもとに設けられ、三人の人事官をも
つて構成され、一人を総裁とし、人事官会議で会議によ
つて重要事項の
決定運営に当るものであります。人事官は、両議院の同意を得て天皇の認証官とし、六年の任期を有します。人事官の資格要件はきわめて重要でありますので、幾多の制限を設けております。人事院には事務総局を設け、事務総長のもとに
職員を置くことになり、人事院の権限は、各廳人事の総合調整、試驗その他の事務に当るのであります。なお、この
法律執行に関し必要なる事項、人事院規則の制定を行うことを許されております。またこの人事の運営に当る各省との間には、人事主任官会議を置いて、円滑なる運営をはかることにな
つています。
次に、三の官職の
基準でありますが、その通則としては、憲法第十四條の平等の原則のもとに立ちまして、
給與、勤務
條件等は社会一般の情勢の変化に既應すべき旨を記載しております。
次に、そのうちの重点としての
一つは、職階制を設けて人事管理の
基準とし、職種と等級に区分をしまして、その職務と
責任によ
つて科学的に分類し、
給與の公正を期することとな
つておりますが、これはきわめて困難なることであるので、可能なる
範囲より逐次実施することに規定されております。
次に、任用に関することでありますが、これは試驗あるいは勤務成績その他能力の実証を根本として任免をいたすことにしてあり、この任免の人事権は、各廳の長が行うことにな
つています。なお、六箇月の
條件的任命の制度も附け加えられております。
給與は職務と
責任に應じ、今後
給與準則を
法律をも
つて定めることといたしております。能率の増進に関すること、分限、懲戒、保障に関する規定も詳細をきわめ、服務についても、國民全体の奉仕者たることを根本として詳細に規定しております。恩給につきましては、根本的に研究改正を図ることを規定いたしております。
なお附則におきましては、本
法施行は明年七月一日といたし、人事院は遅くも明年一月一日に設置し、それまでの間の準備のために、十月一日より臨時人事
委員会を置くことを規定いたしておるのであります。以上、ごく簡單に本法案の要点を申し上げた次第であります。
次に、本法案審査の
経過を御
報告申し上げます。本法案は、九年十六日決算
委員会に付託されて以來まる一箇月、ただちに
委員会を開いて、齋藤國務大臣の
提案理由の
説明を求め、
審議にはいりました。このことは、
関係範囲きわめて廣汎でありますので、労働及び
財政金融の両
委員会との連合審査会を開き、九月二十六日、各それぞれの
立場において
質疑が行われたのであります。次いで、
参議院との間の合同審査の必要を認め、九月三十日、両院決算
委員会の合同審査会を開きました。続いて公聽会の必要を認めましたので、手続上時間的な
関係で、正式の公聽会の手続はとりませんが、
証人として十名の出頭を求める事実上の公聽会を、十月一日、両院合同審査会において開催いたしました。そのうち、全官公の佐藤
委員長、
國鉄の加藤
委員長、全逓の土橋
委員長、日教の荒木
委員長は、それぞれの
立場において
反対及び
修正希望点の開陳がありました。鵜飼、山之内、村上、杉村、吉村、弓家の六氏の
諸君から、主として学者的
立場またはそれぞれの
立場に立
つての、賛成を主とした
意見の開陳がありました。なお希望に基きまして、衆議院の
委員会としては、共産党よりの主として
反対を中心とする
意見の開陳もありました。
かくて日曜も休まず、連日にわたりまして
委員会、
協議会及び懇談会を続けまして、昨十月十四日、各派の
意見を持ち寄り、その
修正案の
審議に入り、そのために五名の小
委員を設けまして、昨夜までその
起草に
当り、今日その小
委員会において
起草されました
通り、
修正案をただいま
委員会におきまして、可決いたした次第であります。以上が
委員会における
経過であります。
次に、
委員会において
決定を見ました
修正案について御
報告を申し上げます。印刷の都合上、お手もとまで御配付ができないことは申訳ありませんが、要綱的に重点をあげて
説明申し上げてみたいと存じます。
國家公務員法案の一部を次のように
修正する。國家公務員法目次及び國家公務員法中「人事院」を「人事
委員会に」、「人事院規則」を「人事
委員会規則」に、「総裁」及び「人事院総裁」を「人事
委員長」に、「人事官」を「人事
委員」に、「事務総長」を「事務局長」に、「人事官会議」を「人事
委員会議」に、「事務総局」を「事務局」に改めることといたしました。これは一々條文について申し上げることを省略いたしまして、これらの各條にわた
つて修正をいたすことにいたしたいと思うのであります。
次に、第一條の條文は多少條文に不適当と
考えられる点もありますので、次のごとく改めたいと思います。「この
法律は、國家公務員(この
法律で國家公務員には、
國会議員を含まない。)たる
職員について適用すべき各般の根本
基準を
確立し、
職員がその職務の遂行に
当り、最大の能率を発揮し得るように、民主的な
方法で、選択され、且つ、指導さるべきことを定め、以て國民に対し、公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とする。」かように改めるのであります。
次は、第七條第一項中「六年」を「四年」に、同條第二項中「十八年」を「十二年」に改める。なお、第八條第一項第三号中「十八年」を「十二年」に改める。これは人事官の任期
修正による人事
委員の任期を、「六年」とありますのを「四年」に短縮することであります。
次は、第十一條第二項中「院務」を「会務」に改めることも当然であります。なお、第十二條以上各條に関連をして條項の改められる項目があります。
次に、第十三條第二項を次のように改める。「人事
委員会に、
國会の承認を得て、
地方の事務所を置くことができる。」
次に、第二十九條に新たに第一項を次のように加える。「職階制は、
法律でこれを定める。」、第一項を第二項にして、そのうちの「
確立」を「立案」に改める。第四項に新たに「前三項に関する計画は、この
法律の実施前に
國会に提出して、その承認を得なければならない。」を加える。
第三十八條第三号中「(第八條第二項第二号の事由による罷免その他人事
委員会規則の定める懲戒免職の処分に準ずるものを含む。)」を削り、同條第四号中「第百八條又は第百九條」を「第百九條又は第百十條」に改める。
次に、第三十九條の中に、やはり文章の点において多少不十分と思われるものがありますので、「授受を約束し」の下に「たり」を、「
方法を用い」の下に「たり」を、「公の地位を利用し」の下に「又は」を加え、「若しくは約束し、又は」を「若しくは約束したり、あるいは」に改めることであります。
なお、七十七條を新たに加えるために、各條に條項の順次繰下げがあります。
七十七條に、新たに「彈劾による罷免」の條項を挿入いたします。その條文は、「
職員の彈劾に関する規程は、別に
法律でこれを定める。」ということであります。
なお、八十二條中「譴責」を「戒告」に改める。
また、新しい百二條第二項中、これは政治的の制限に関する條項でありますが、その中の「を除いて」を削り、同條三項中「
職員」を「
法律又は人事
委員会規則で定めた
職員」に改めることであります。
また、
修正されたる百三條第三項中「許可」を「申出により人事
委員会の承認」に改めます。これは私企業の制限に対する就業禁止の年限に対する例外規定に関する部分であります。
百八條以下にある條文の順次繰下げがあります。
附則の第一條第一項中「十月一日」とあるを「十一月一日」に改めます。これは先ほど申しました臨時選任
委員会を設ける期日であります。
附則第二條第六項中「(両議院同意に関する部分を除く。)を削ることにいたします。これは
原案においては臨時人事
委員は
國会の同意を要することにな
つておらなか
つたことを、原則にもどして削
つたのであります。
附則第四條中「四年」を「五年」に、「二年」を「三年」に改めることは「六年」を「四年」に改めた
関係からであります。
なお、附則に二箇條、
関係條文の
関係で條項を改める箇所があります。
なお、國家公務員法の規定が適用せられるまでの官吏の任免等に関する
法律案に対する
修正案は、國家公務員法の規定が適用せられるまでの官吏の任免等に関する
法律案の一部を次のように
修正をする。
第一項及び附則第二項中の「人事院規則」を「人事
委員会規則」に改める。
以上が
修正案の
内容であります。
次に
委員会といたしまして、
本案に対して四つの附帯決議をいたしました。
附帶決議
一、内閣は人事
委員の選任の
基準に関し、その実施前に法案を提出すること。
二、
地方團体の公務員法、教員の身分に関する
法律、現業廳公務員に関する
法律等の本法に必要な諸法制を速やかに制定すること。
三、再教育施設につき
政府は充分
考慮すること。
四、本
法施行の適正円滑化をはかるため
政府は
國会の
委員会と密接なる連絡を図ること。
これが
委員会における
附帶決議でありまして、この
附帶決議に対する齋藤國務大臣の
答弁は、いずれも
政府はこの点に関して了承をいたしております。
なお、
委員会のおける
審議の
経過につきまして、質議の重要なる事項について御
報告をいたさなければならないのでありますが、詳細は速記録をも
つて御了承をいただくことにいたしまして、主なる点について二、三申し上げてみたいと思います。
その第一点といたしましては、
本案が官業
労働者に対して束縛的な
影響を與えるものである、その点について憂慮する
立場から
意見が述べられております。この点については、いろいろ
意見が闘わされたのでありますが、結論といたしましては、本法案は、新日本建設のために最も有能なる公務員にほんとうに働いてもろうために、十分なる
給與その他の待遇の改善を充実することによりまして、この法案の所期する効果をあげんとすることが
考えられておるのであります。しかるに、今日の日本の現状を
考えますならば、その
考えられておる諸般の
状態というものが、ただちに満足をし得るとも
考えられないのであります。この点は
法律の中にも、諸般の情勢を
考慮して適用をしていくことをあげておるのでありまして、かような見地から、
本案審議に
当りましては、現在の
関係諸法制との
関係におきましては、現状のもとにおいて一歩々々改善をされていくということを了解の上において、本法案を
審議いたしたのでありまして、いやしくも健全なる
官公職員をいたずらに束縛するというがごときことは、了解をいたしておらない次第であります。
最後に、
本案に対しまして
委員会として結論的に申し上げるならば、最も今日國家に國民の望んでおりますことは、
官公職員が十分なる待遇
給與によりまして、その十分なる活動をはか
つてもろうことが、新日本建設のために最も望んでやまないところでありまして、この法案実施にあたりましては、
政府はその
責任のきわめて重大なることを認識せられて、内閣は率先関頭に立
つて國民の期待に背かざらんことを
國会は望むものであります。また
國会も、
本案を可決いたしましたる
責任においてこの実行に協力し、見守
つていくべき
責任のあるものと確信をいたすのであります。
以上は、きわめて簡單粗雜でありましたが、國家公務員法案外一件に対し、
委員会の
審議の
経過並びに結果の御
報告をいたした次第であります。何とぞ、
委員会において
全会一致をも
つて可決をいたしましたる
修正案に御賛成のほどを希望いたしまして、
報告を終る次第であります。(
拍手)