○栗田英男君 私は、民主党を代表して、
決議案に対し賛意を表するものであります。
電力危機を突破するためには、
危機の
原因たる根本的な問題を愼重に檢討し、恒久的な方策を
樹立してこれを実行することはもとよりであるが、現下の
電力事情は著しく切迫し、ここにおいて緊急非常の措置をとるにあらざれば、
産業の復興も、民生の安定も、眞に憂慮すべき段階にある。私は、このときにおいてこそ、本
決議案に示された方策の断行を
政府に強く要請せざるを得ないのである。
この際日本の
電力資源を檢討するときに、ただ一つ世界に誇るべきものは、開発いかんによ
つて生ずる五千万キロという厖大なる
水力電氣である。しかるに、わが國における
水力電氣の利用は、ほんの序の口で、残る厖大なる
水力資源の開発こそ、敗戰日本の包藏し得る唯一最大の天然資源である。
しかるに、今や炭も薪も
ガスもない、最後の家庭の頼みであるところの
電熱器は使えない。農村の最も欲する化学
肥料も思うように出まわらない。すでに節電の深刻なる赤信号は発せられて、家の中はまつ暗である。さらに二十
箇所、百四十万キロの
火力発電所が、賠償の指定を受けたのである。今にして
電力問題
解決の大
方針を確立し、これに超重点を指向しなかつたならば、
産業の再建も、文化日本の建設も、断じて不可能であると私は信ずるものである。現在のごとく
石炭問題にのみ重点を指向し、これにまさるとも劣らない
電力問題を等閑に附するということは、あたかも木によ
つて魚を求むるようなものである。
なぜに、かくも
電力不足のために今日われわれが悩まなければならないか。
原因の第一は、日本の総
電力は九百万キロあるが、その中の三百万キロは九州と北海道に偏在し、しかも、惠まれざる
石炭に頼
つて、全國に百十六
箇所の
火力発電所をつくつたということにある。第二は、現在の
水力電氣の発電方式が、ダム式発電方法をとらずして、水路式発電方式を
とつたという点に、深刻なる
電力危機の悲劇が生れたのであります。第三は、
電力需給の
状況が、
昭和十九
年度の
実績三百三十億キロワツト・アワーに対し、本年五月においては、一一三%に
増加しておるのにもかかわらず、終戰以來の各
産業の放漫なる
電氣轉換、家庭用
電力の著しき
増加等により、さらに
危機を加えたものであります。
ここにおいて、緊急対策として
電力事業を超重点
産業として取上げ、
石炭と同一の優先的措置を講ずるとともに、速やかに
補修用セメント、発電機保全のための部品及び油脂を
確保し、現場に急送するの措置を講ずることが絶対に必要である。これを早急に実施するときは、現能力に対し二五%の出力
増加となり、この
処置を怠るときは、壞滅的故障が予想せらるるのである。
次に、現在の
水力発電能力から見て、本
年度において大よそ四百万トン程度の
火力発電用炭を必要とするのであるが、
電力用炭として
予定されておるところの
割当見透しは、わずかに百七十五万トンである。これも現在は貯炭皆無の悲観すべき状態にある、恐るべき今冬季の
渇水期を乘り切るためには、早急に良質炭百万トン
確保の決意をしなければはならない。
さらに
家庭用電熱節減のため、電流
制限器による二十億キロワツト・アワー以上と予想せられる盜用の防止、非停電地区の惡質
使用者の徹底的取締り等、
危機に講ぜられるべき対策は決して少くないのである。
恒久対策としては、
昭和二十六
年度の
需用が四百五十億キロワツト・アワーと見て、ダム建設による新規電源の開発をはかるのである。ダム建設はセメントを用うる大
工事であるが、この
資材も
希望のないわけではありません。本
年度の
火力発電用炭百七十五万トンは、三十五万キロの電源に相当する。これを
電力の
合理的使用によ
つて、五十万トンの
石炭をセメント製造に振り向けるときは、百二十万トンのセメント製造が可能となり、これをダム建設に用うれば、八十万キロの新規電源の開発が可能となるのである。この八十万キロを
火力発電に依存するときは、実に四百万トンの
石炭をたかねばならない。一箇年五十万トンの有効適切なる利用は、毎年四百万トンの
石炭が浮び上るという事実を知らなければならない。
現にある
水力電氣は、わずかに六百万キロである。
渇水期においては、三百万キロに逹しないのが日本の現実である。今までは三百万キロを
火力で補
つていたが、
石炭の窮状は見るも悲惨であり、しかも、
火力発電所の半分を賠償に指定されておる現在では、どうあ
つても各地にダムを急造し、絶対に三百万キロを
水力で補給しなければ、日本の
産業は壞滅である。今や
政府があらゆる
努力を傾けてダムを建設するときは、日本全土を恐怖の底に陷れたるかの大
水害も、さらに今日
國民の生命さえ脅かしておる
燃料飢饉も、ぴたりと
解決するのである。
政府は、本
國会の初頭において片山首相の施政
方針演説において提唱せられたるダム建設による電源
開発計画の速やかなる具体化と実行を、今こそ強力に推進しなければならない。(
拍手)黄河を治むるものはよく支那を制するとか。私はダム建設による有効適切なる河川の活用こそ、
日本再建の捷径であると信ずるのである。私は本院各位とともに、本
決議案実行のために
一大國民運動を展開し、
政府を激励し、
電力事業者を奮起せしめ、
危機突破の一日も早からんことを深く心に期するものである。
以上、
簡單に私の所見を述べまして、
賛成の意を表する次第であります。(
拍手)