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山口六郎次君 今日再建の関頭に立ちまして、重大な問題はまことに少くないのでありまするが、きわめて大切なる問題は、食糧と燃料であることは、いまさら申上げるまでもないと思うのであります。さいわいに食糧問題は、連合軍の非常な好意によりまして一應の解決をみたのでありまするが、燃料問題に至りましては、未だにまつたく解決の曙光がないのであります。さればこそ、
政府におきましても、その掲げたる看板の手前から、面子の点もありましようけれども、再建産業燃料確保のために、いわゆる石炭三千万トン増産を目途として、すなわち間違えば
内閣の命とりとさえ言われる石炭國管案に、やつきとな
つておられるゆえんだと思うのであります。
しかを追う猟師山を見ず、という言葉がありますが、私をして率直に言わしむるならば、現
内閣の燃料
対策は、まつたくこのことわざの
通りでありまして、石炭以外に燃料はないと思
つておるのではないかと私は思うのであります。これはまことに智恵のない話でありまして、かりに石炭が多少の増産をしたところで、再建産業の充足にはなお
不足なのであります。他方、窮乏しておりますところの
家庭燃料の面をどうするか。また、やみだらけの世の中とは言いながら、毎晩節電のために、電氣もつかなければ、電熱器も使えない、こうした
生活階級をどうするのかと
考えますと、まことに寒心にたえないものがあるのであります。
現
内閣は、大衆はすべて自分の味方であるがごとく、のんきに構えておりますけれども、この
勤労階級の十月攻勢は、目の前に來ております。私は、このままの燃料情勢をも
つてしては、恐るべき
國民大衆冬の攻勢が來ることは必然であると信ずるのであります。この際
政府は三思三省いたしまして、燃料に対する総合緊急
対策の要があると信ずるのであります。その意味におきまして、
関係大臣に三、四の
質疑を行いたいと思うのでございます。
まず商工
大臣にお伺いしたいのでありますが、石炭鉱業会の
調査によりますると、わが國におけるところの埋蔵石炭の経済可採炭量は、年額三千万トンずつ採掘するといたしまして、今後四十八年間の生命しかないといわれるのであります。しかるに亞炭の埋蔵量は、私の推定によりますれば、おおむね全國に賦存いたしまして、実に百億トン、敗戰
日本に残された唯一最大の資源であると信ずるのであります。そして、現在石炭は月産二百万トン内外を
生産し、亞炭は二十万トン内外を
生産し、これが配炭
計画につきましては、石炭二百万トンのうち百万トンは、鉄道用炭及び製鉄、ガス用炭の方面に使われまして、残りの半分百万トンは、他のいわゆる一般工業部門に割当られているのであります。しこうして亞炭は、この石炭の
不足によりますところの軽工業ないし他の産業や、暖厨房用炭として消費されているのであります。
さらにまた石炭は、その投下資本におきまして、また要する資材において、相当莫大なるものを必要とするのでありますが、亞炭の場合におきましては、投下資本もきわめて少額であり、要する資材も、石炭と比べて二分の一または三分の一の程度で間に合うのであります。
以上は、亞炭がいかに重要なる役割を演じているか。しかも、これか増産がいかに
簡單なものであるかということを語
つたのでありまするが、この明瞭なる事実を、商工
大臣におかれましては確認されるかどうか、第一に承りたいと思うのであります。
か
つて私は、西尾長官が在野の時代に以上の事実を話しまして、しかもなおかつ歴代の
政府がこの亞炭を等閑視して、石炭産業におもねるゆえんのものは、石炭資本に圧迫されているからであ
つて、
從つて、
社会党のごとき大衆政党こそ、進んで亞炭産業を重要な
政策として取上ぐべきであるということを力説したのでありますが、当時の西尾官房長官は、非常に共感・共鳴の意を表されたのであります。
かくのごとく亞炭は、
政府の一挙手一投足の努力によ
つて、五百万トンはおろか一千万トンでも、きわめて
簡單に増産することができるのであります。ゆえに
政府は、この際一路
亞炭増産に遭遇すべきであると確信する次第であります。そして、この増産された亞炭は、肥料・繊維・食料・化学・軽工業方面の需要に充当すべきでありまして、これがために、すなわち約四百万トンの石炭が浮く結果となるのであります。石炭は、
現状の段階をも
つていたしましても、二千七、八百万トンは
生産できるのであります。今もし、以上の石炭、亞炭の需要轉換をいたしましたならば、今後百万トン内外の石炭
生産減を來しましても、何らの不自由はないという結論になるのであります。
しかるに
政府は、わずかに二、三百万トンの石炭を増強するために、あえて石炭國管案にやつきとな
つて、これがために数十億の莫大な國費を費して、大衆の負担の増強、犠牲に目をおおわんとしておると私は断言してはばかならぬのであります。(
拍手)およそ政治の要諦は、無理をしないことであります。この際商工
大臣は、よろしく
國民の大多数の
反対に逆ら
つて石炭國管案のごときを強行することなく、大いに
亞炭増産
施策を樹立する
考えはないか、この点、商工
大臣の冷靜にして賢明なる御所見を承りたいと思うのであります。
さらに
安本長官に承りたいことは、
政府には
燃料総合対策ありやということであります。石炭三千万トン
計画は、いかなる消費
実態から出発したものであるか。私の信ずるところによりますれば、再建産業に必要とするカロリーの量を石炭で換算するならば、少くとも四千万トンを下ることはないと信ずるのであります。かるがゆえに、
家庭には電氣もつかない、燃料が足りない、一般工場も、燃料
不足のために高いやみ相場を出して燃料を求め、しかも、なおかつ半分も休業しておる状態にあるのであります。これらを照合いたしまして、
政府は一日も早く総合燃料
対策を樹立すべきであると思うのでありますが、
和田安本長官はいかなる用意があられるか。
さらに第二の点につきましては、現段階におきまして、とも
かくも亞炭は、その必要によりまして石炭の
不足を補うべく、配炭公團によ
つて総合
配給されておるのでありまするが、この総合
配給の観念に誤謬があるのであります。現在需要家の
立場は少しも
考えないで、石炭の七か八に対する亞炭の二か三という抱合せ
配給をや
つておる実情であります。こんな不親切なる方法はないと思うのであります。亞炭は、敗戰中石炭の
配給を止められた繊維ないしは紡績工業の方面におきまして、苦心研究の結果、ようやく使い馴れてまい
つたのであります。石炭の必要な方面には石炭、亞炭で間に合う方面には亞炭といつた方法にすべきであると信ずるのであります。
しかも配炭公團は、御承知のように公團法によ
つてすべての
生産品を一手に收買しておるのでありまするが、自由販賣の当時と違いまして、山元には滯貨の山をなしておるのであります。業者は処分することもできない。東北だけでも、二十五万トンの亞炭が眠
つておるのであります。公團法から亞炭を除外する
意思はないか。またすでに亞炭の重要性を認めまして公團の中に入れました以上は、総合
配給を行いながら、これが
生産面においては、石炭と違いまして差別待遇をしておる。また
輸送の面におきましても、
輸送の裏づけがない。かような事実に鑑みまして、この差別待遇の撤廃をせよということにつきまして、御意見を伺いたいと思うのであります。
さらに
農林大臣に承りたいのでありまするが、豆炭・棒炭のごときは、加工燃料といたしまして、薪炭とともに農林省の所管とな
つておるのでありまするが、今
政府の示しますところの都市
家庭燃料の
対策を見ますると、冬はまだ來ないけれども、膚寒い感じがするのであります。
昭和十六年、すなわち
戰前におきましては、木炭・薪・電気等の
家庭燃料の使用実績は、これを木炭に換算いたしまして、標準
家庭一戸当り四十俵であ
つたのであります。そして
昭和二十一年の
配給実績は、十八俵とな
つておるのであります。本年は、水害と
輸送難のためにさらに減少することは、想像にかたくないのでありまするが、この寒い冬を控えて冬の
対策用意ありや。さらに將來の薪炭
対策は、いかなる仕方において
考えられておるか。
最近頻発いたしますところの風水害のごときも、森林の濫伐、火災が主要なる原因であるということを認めておるにもかかわらず、旧態依然たる薪炭行政から一歩も出ないごときは、まことに無策もはなはだしいと言わなければならぬと思うのであります。(
拍手)この際
農林大臣は、民生燃料確保のためにも、この地下の一大森林に着目して、商工
大臣と協力し、一大増産を行
つて、すなわち豆炭・棒炭・ブリケツトなどを大量に
生産いたしまして、都民をして暖かい冬を迎えしめる
考えはないか、この点、承りたいと思うのであります。
最後に、
大藏大臣に承りたいと思うのであります。ただいま圖司議員よりも指摘されたのでありまするが、すなわち金融
政策の面におきまして、御承知のごとく一般産業は復金一本とな
つておるのでありまするが、ここに憂うべきがんがあると思うのであります。仰々しい
資金調整法はあるのでありますが、これはまつたく名前のみでありまして、
資金調整を行うために、大藏省や日銀・勧銀・興銀・復金・こうした金融機関と、さらに
関係当局の間におきまして金融懇談会が成立し、この機関を通しまして、当該
資金等の融資決定が行われるのでありますが、せつ
かく決定いたしましても、金がすぐ出るわけではなくして、これがさらに復金の
檢査部にひつかか
つて、三月、半年、はなはだしきは一箇年も経つのでありまして、これでは時期を逸し、その用をなさないことは、今日実業界の輿論とな
つておるのであります。すなわち、この点につきまして、
かくのごとく二重機構にも似た制度を改め、刷新改善して、そうして、この乏しき再建産業のために大いなる金融
対策を確立する
考えはないか、この点、承りたいと思うのであります。(
拍手)