○今井耕君 私は、
國民協同党を代表いたしまして、農業生産資材の供給確保に関する問題につきまして、
農林大臣、
商工大臣、大藏
大臣、安本長官に緊急質問をいたしたいと存ずるのでありますが、安本長官が見えないのは、はなはだ遺憾でありますが、
関係政府委員の方から
責任ある御
答弁を願いたいと思います。
食糧問題の解決は現下の最重要問題でありまして、
國会開会以來、これが供出の問題につきましては、眞劍なる討議が行われているのであります。しかし、供出は乏しきものをわけ合うところの分配の問題であるのでありまして、これによ
つて絶対量の増加を期することはできません。その根本問題は、農業生産の維持、特に増進をはかることであることは、今さら申し上げるまでもないことであります。從いまして、現内閣の成立の際におきますところの政策協定におきましては、その第六に、食糧問題の解決のために肥料、漁具、その他農漁業用必需物資の供給を確保して、食糧増進をはかるとともに、供出制度を速やかに改善し、完全供出をはかるとあるのでありまして、これは当然のことであります。目下の問題といたしましては、
政府は供出制度を改善し、完全供出をはかる
前提として、肥料その他農業生産資材の供給を確保し、増産をはかるための
責任ある努力をいたさなければならぬと考えるのであります。
御承知のように、農業生産資材には肥料、農機具を初めとして
各種のものがありまして、質問いたしたいことも多々あるのでありますが、時間の
関係もありますので、肥料、農機具、農業藥剤及びこれに関連する價格の問題について、具体的に質問をいたしたいと存ずる次第であります。
まず肥料につきましては、
政府の生産計画から見ますならば、これに近いところの生産ができておるのでありますが、生産計画そのものが非常に低いのでありまして、これを数字をも
つて申し上げるなれば、
政府の
昭和二十一肥料年度、すなわち昨年の八月から本年七月までの窒素肥料の生産計画は、石灰窒素も硫安に換算いたしまして九十五万トンとな
つておるのであります。これは実際必要量の半ばにも達しない数量であるのであります。これに対しまして、実際生産された数量を計算いたしてみますと、八十四万トンとなるのであります。必要量の四割二分ということになります。
肥料は百日前の食糧と見るべきものでありまして、肥料さえあれば、農業技術的に見て約一割くらいの増産は可能であるのであります。米で申しますなれば、六百万石くらいは増産が可能であるのであります。これにつきましては、農家の保有米を見る必要がありませんから、六百万石全部が供出米となるのでありまして、
國民といたしまして重大な関心をもたなければならぬと考えるのであります。食料の確保はまず肥料の増産よりというところの考えをさらに強めまして、一層の努力を要すると思います。
また肥料の増配こそ農家の最も切望するところでありまして、熱意を新たにしてその実現を期するなれば、増産はもちろん、農家といたしましてもやみ肥料買いであるとか、物交によるところの肥料入手の心配もなく、安心して供出ができますので、必ず供出の成績もよくなると信ずるのであります。
政府はこの点十分心配いたしておられると考えるのでありますが、
昭和二十二肥料年度における肥料の生産計画はどういうぐあいにな
つておるか。また肥料の生産の見込高はどの辺までいけるかということを、
商工大臣にお伺いいたしたいと思います。
次に、当面の問題といたしまして肥料製造用の硫酸が不足しておるのでありまして、これについては硫化鉱の確保が必要である。これについては一層の努力がいると思いますし、特に輸送の
関係で七万五千トンからの硫化鉱が滯貨しておるというような事柄、あるいは設備用の主要資材であるところの鉄鋼あるいはセメントというようなものの確保が必要であるのでありまするが、承りますと、最近これらに対する割当が減
つておるというような事柄、あるいは肥料会社の未拂の金が七億円からあ
つて、硫化鉱であるとか、電力であるとか、石炭あるいは肥料がますなどの入手に支障を來しておるというようなことを聞くのでありますが、これらは肥料の増産のために急速に解決しなければならぬと考えるのであります。この点、
商工大臣、大藏
大臣に所見を伺いたいと存ずるのであります。
次に配給のことでありまするが、八月一日より肥料配給公團が発足いたしました。しかし、その整備は未だ十分と申されません。特に下部組織につきましては、幾多の問題があるのであります。
政府は全
責任をも
つて適期配給に遺憾なからしめ、農業生産に支障なきを期すべきであると存ずるのでありますが、これに対して
農林大臣の御所信を伺
つておきたいと考えます。
次に農機具の問題でありますが、これが製造に必要なところの鉄鋼を例にと
つてみますと、現在農業生産に使用いたしておりますところの各機具について、その維持年限から計算した年々更新を要する農機具の所要鉄鋼量は、最低に見積りまして年間三万三千トンであるのであります。なお、その間使用年限中にいろいろ修繕をしなければならぬその補修用の鉄鋼が、約六千三百トン要するのでありまして、合計年間約四万トンを要するのであります。昨年は二万五十トンの割当によ
つて農林省は農機具を製造し、なお地方において特殊物件等を利用して製造した分を合わせて約三万トンに相当する農機具ができて、ようやくこれを切り抜けることができたのであります。
これに対して、今年農林省が割当を受けて、そうして製造計画をいたしておるところの数を調べてみますると、わずかに八千トンとな
つておるのであります。まさに必要量の五分の一ということにな
つております。しかるに、なおこの八千トンの割当が順調に確保されておるかと調べてみると、本年の第一四半期におきましては、実際は一千トンしか割当を受けておらぬ。第二四半期にも一千トンである。この分でいけば、年間四千トンということになる。
ちようど必要量の一割ということにな
つてくる。こんなことであるならば、一体どうなるのかということを非常に心配するのであります。これは非常に急を要する問題でありまして、農機具は鉄鋼を割当ててすぐにできるものではないのであります。製造、配給にも相当日数を要するのであります。今これを解決いたしておきませんと、今年の秋の作業、來年の春の作業に一大支障を來すと考えられるのでありますが、この点、
農林大臣はいかようにお考えであるか。
なおまた、こういうような少いところの鉄鋼でつく
つた、本年の六月、七月、八月の三ヶ月間にできているところの統制農具の優良なもののみで、その金額が約四億円に上
つております。ところが、これもいろいろ調べてみますると、資金不足のために配給不能の実情にあるというようなことで、まことに遺憾にたえないのであります。秋の收穫を前にいたしまして、これまた急速に解決しなければならぬ問題であると信ずるのであります。この点は大藏
大臣もいろいろ御心配願
つていると思うのでありますが、特にこの席で御所見を承
つておきたいと考えるのであります。
なお附加えてお伺いいたしたいことは、農機具の補修用の鉄鋼、それから木炭、コークス等が配給されておらないということであります。それがために修理ができません。故障農機具が退藏されまして、皆がそれがために新しい農機具を要求するということになるのでございまして、まことに資材不経済の面も多いのであります。強いて修繕をしようとすれば、やみ資材の
関係で非常に高いところのやみ修繕料を支拂わなければならぬ。米を持
つていかなければや
つてもらえない。こういう
事情にな
つておるのであります。この点は何とかしてぜひ善処を要すると考えるのであります。
こういうような実情で推移いたしますなれば、今年の秋には農家は必需農機具入手のために、物交によるやみ農機具購入のために奔走せざるを得ない現状となり、これが原因いたしまして供米に重大なる惡影響を來すことを、昨年の例に徹しまして非常に憂慮するのであります。この
責任は
政府が負わなければならぬと考えるのであります。またこういう
状態におきまして供米を強行するということは、農業生産者に対してきわめて不親切である。それによ
つて供米の完遂も困難であると考える。また流通秩序の確立も有名無実になると考えるのであります。
もちろん、今日の鉄鋼の生産
事情も十分承知しております。しかし、食生活の不安が日本再建に一大支障を來しておりますところの今日、より一層この方面を重視すべきであると考えるのでありますが、この点、
農林大臣、特にこの方面の企画の
責任者であるところの経済安定本部当局の御所見を伺
つておきたいと考えるのであります。
昨年の現状を振り返
つてみますると、農林省は特殊物件をも含めまして鉄鋼二万五十トンの割当を受けて農機具の生産をなし、割当てられたのでありますが、その金額を調べてみますると、價格にいたしまして約二億五千万円であります。これは非常に少い数量でありまして、各府縣におきましては、これではとうていやれないというので、特殊物件の地方処分品等を利用いたしまして、多数の農機具を製造いたしました。また農家は東奔西走いたしまして、農機具入手のために苦心をいたしたのであります。それで農家の実際購入した金額というものは、約その八倍、約二十億円と推定しておるのであります。その間非常な混乱をいたしまして、品質は低下し、價格は非常に騰貴したのであります。また物交によりまして米を出した数量も莫大なるものがあると考えられるのであります。
農家といたしましても、何を好んでこの高い農機具を買いましよう。何も好んで物交等をやりたいわけではないと考えるのであります。やむにやまれぬ、たちまち農業生産ができなくなるからでありまして、決してぜいたくでも何でもないのであります。実に農家の苦労は忍びがたいものがあ
つたのでありますが、昨年はこのような苦い経驗をなめておるのであります。本年は二度とこのような混乱を繰り返さないよう。万全の処置を講ずべきであると信ずるのであります。
これが原因いたしまして、昨年來農機具は資材不足のために非常な高價となり、現在マル公までが非常に割高にな
つております。本年六月一日に発表された農機具の價格は、一時購入不能とまで稱せられたのであります。これがまた今回の新物價体系によりまして、約五割上ることにな
つておるのであります。現に本年の六月二十五日に麦・馬鈴薯の均衡價格設定の際の新物價水準價格をちよつと伺
つてみましても、農機具の平均價格は、基準價格の約八十倍とな
つておるのであります。供給は適当な價格によることはもちろんであります。この点、
政府の物價体系六十五倍との
関係はどうな
つておるのであるか、物價廳の
関係の方々に御
意見を承りたいと考えるのであります。
以上のように生産資材の供給不足が原因いたしまして、價格は騰貴し、やみ買、物交に及んで、昨年は肥料のやみ買も相当あ
つた。その他を含めまして、農家の経済は相当逼迫を加えられておるのであります。農村に新円が集中しておるという問題は、もはや解消いたしておるのでありまして、去る八月九日発表されました通貨安定対策本部の発表を見ましても、本年六月三十日現在の農漁村新円手持高は三百三十八億円でありまして、当時の日銀券発行高千三百六十三億円に対し約二八%にな
つております。これを昨年五月の日銀調査局調査の五〇%に比べますと、ニニ%減少しておるのであります。この大部分が、配給機関及びやみブローカーなどの手に移
つておるということは、はつきりとわか
つておるのであります。こういう点から考えますと、いろいろ農産物の價格の問題も考えなければならぬのでありますが、この点は時間の
関係上省略をいたします。
次に農業藥剤のことでありますが、(「簡單々々」と呼ぶ者あり)簡單に質問をいたします。病虫害によりまして非常な被害を受けて減少を來しておることは、皆さん御承知の
通りであります。ところが、この病虫害を予防駆除するための農業藥剤が非常に不足しておるのであります。殊にたくさん必要であるところの砒素剤が不足しておるのでありまして、これも必要量は年間約五千トンでありますが、これに対して、実際確保されておるのが千五百トンであるのであります。これにつきましても、いろいろ調査いたしますと、なお確保の途が多々あるのであります。
なおまた除虫菊なんかを考えてみましても、今日まで平年度におきまして大体三百万貫ないし四百万貫とれたのでありますが、昨年は四十六万貫、本年はわずか三十六万貫、なおこの中から厚生省方面にもまわ
つておりますから、農業方面としては三十万貫程度しか確保されておらぬのであります。これにつきましても、除虫菊の栽培について計画的にやるなれば、まだまだ増産ができるのでありまして、このことにつきまして、
政府は計画的にその増産をやらなければならぬと考えるのでありますが、この農業藥剤方面につきまして、
農林大臣の御所見を承
つておきたいと思うのであります。
以上の点は、現在農村において非常に関心をもち、また希望もいたしておるのであります。
政府は現在農業生産調整法を
準備中でありますが、これまた生産資材の供給確保を
前提とすべきこともちろんであると考えます。また大局より見て、敗戰後の日本が無計画な統制によりまして生産そのものの基本的培養を怠
つていた弊害は、一般の認めるところであります。農業生産またしかりでありまして、敗戰までは増産を非常に眞劍にや
つたのでありますが、敗戰後は食糧不足に目がくらんで、目前の問題にとらわれて、基本的な増産そのものの政策が非常に乏しいように考えられるのであります。よろしく農業生産増進のために、これに必要なる資材の増産計画を樹立して、食糧自給の基礎を確立すべきであると信ずるのであります。(
拍手)目前に迫る米・馬鈴薯の供出を前にいたしまして、誠意ある
答弁を希望する次第であります。
〔
國務大臣平野力三君
登壇〕