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1947-08-30 第1回国会 衆議院 本会議 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年八月三十日(土曜日)     午後二時三十一分開議     —————————————  議事日程 第三十一号   昭和二十二年八月三十日(土曜日)     午後一時開議  第一 大正十二年勅令第五百二十八号司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第二 大学等への死体交付に関する法律案内閣提出参議院送付)  第三 昭和二十一年法律第十一号(弁護士及び 弁護士試補の資格の特例に関する法律)の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第四 貿易組合法を廃止する法律案内閣提出)  第五 日本國沿岸に置き去られた船舶の措置に関する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————  会期延長の件
  3. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 会期延長についてお諮りいたします。今回の会期は明三十一日をもつて終了することになつておりますが、來る九月一日より十月二十日まで五十日間会期延長したいと思います。この議長発議に対し、討論通告があります。これを許します。小澤佐重喜君。     〔小澤佐重喜登壇
  4. 小澤佐重喜

    小澤佐重喜君 私は日本自由党を代表いたしまして、ただいま議長発議になる会期延長の件に関し、反対討論をいたさんとするものであります。  言うまでもなく、新憲法下における最初の國会、すなわち第一回國会は、去る五月二十日召集されました。このいわゆる第一回國会におきましては、明治憲法におけるその時とは違いまして、その会期決定延長あるいは休会というものは、政府の独断においてこれを決定するものではなくして、新憲法下におきましては、この会期決定延長休会、いずれもわれわれ國会において自治的に決定する建前に相なつたのであります。從いまして、五月二十二日におきまして、われわれはこの新憲法のもとにおいて、その当時の事情を勘案いたし、少くともこの特別國会において議了すべき議案とにらみ合わせまして、五十日間の会期をきわめて自治的に決定いたしたのであります。  ところがその後、もちろん政府更迭等事情もございまするが、休会休会を続けまして、さながら開店休業状態を呈し、五十日の期間が満了せんとするまぎわにおきまして、この衆議院に対しては、わずかに三件の法律案参議院に対しましては、一件の法律案しか上程されたにすぎなかつたのであります。     〔発言する者多し〕
  5. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  6. 小澤佐重喜

    小澤佐重喜君(続) ここにおきまして、政府といたしましては、当時の諸般事情からして大幅に会期延長要請があつたのであります。  私どもは前段申し上げましたように、会期延長國会みずから自治的に決定すべきものであるということの建前からいたしましたならば、いたずらに会期をたびたび延長するということは、どうしても國会威信を高揚するゆえんではないのであります。そういう観点から、われわれは一應この大幅な会期延長、すなわち七月五日におけるところの政府要請にかかる大幅な会期延長には一應應ずるものではあるけれども、二度も三度もこの会期延長するということは、前段申し上げたように、全然避けなければならぬという議が一致いたしまして、われわれ議院運営委員会におきましては、当時のいわゆる政府法案提出準備状況、あるいはわれら國会内部におけるところの審議状況等を十分勘案いたしまして、そうして七月九日より明日すなわち八月三十一日まで、未だかつてないような大幅な会期延長を認めることにいたしたのであります。  しかしながら、この会期延長を認めたのは無條件ではありません。前段申し上げました通り会期延長がたびたび重なるということは、必ずしも國会権威を高揚するゆえんではない。できるならば、多少多くてもよいから十分な会期をきめようというのが当時の腹でありまして、すなわち当時議会運営委員会におきましては、八月三十一日以後は一切会期を再延長しないという前提のもとに、政府に対し嚴重なる條件を附してこれを承諾したのであります。(拍手)  その條件というものは、少くとも八月十日までに政府において議案の上程がなかつたものに対しては、換言するならば、八月十日以後にかかる政府提出法案に対しましては、その審議に関し、いわゆる審議未了に関するところの責任は、一切政府責任であるということを高調いたしまして、そうして満場一致議院運営委員会において決定し、この條件議長を介し政府通告をいたしておつたにであります。(拍手)この條件附ということは、すなわち八月十日を限つたということは、八月十日までに議案政府から出た場合においては、二十日間の余裕があつたならば、少くとも審議期間に相当であるという原則、換言するならば、八月三十一日以降は断じて会期延長しないということを、各派満場一致決定いたしたのであります。(拍手)  しかるにもかかわらず、與党諸君は何たる健忘症でありましよう。わずか五十日前のこの協定をさらりと忘れたるがごとくして、再び五十日の会期延長せんと主張するがごときは、まことに奇怪至極と言わなければならぬのであります。(拍手)しかして私どもは、この與党諸君主張を聽きますのに、自分たちは決して政府要請によつてこの会期延長決定するものではない。現に八月十日以前に政府より提出された法案が、未だ國会内において審議中である。しかもこの審議が今後約一箇月を要するから、われわれの責任上、政府とは関係なくこれを延長するものであるということを主張しておるのであります。  もちろん、その主張は一面理由はないわけではありません。しかしながら私どもは、この議論はまことに 法規を解しないところの曲論であると思います。何となれば、このいわゆる常任委員会中において、一つ司法委員会がかりに法案がたくさんあつて、その審議に一箇月を要する場合におきましても、これは國会法の四十七條の二項には、「常任委員会及び特別委員会は、各議院議決で特に付託された事件については、閉会中もなお、これを審査することができる。」という規定があるのであります。從いまして私どもは、もし司法委員会だけが、いわゆる審議未了になつておる事件があるならば、この規定に基いて、そうして院議によつてこれを付託し、司法委員諸君にはまことに氣の毒ではありまするが、その間に審査をしてもらうということが適当であると考えておるのであります。(拍手)  しかし、これに対しては與党諸君の中には、この規定は、國会法第六十八條に「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」という規定があるから……     〔発言する者あり〕
  7. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  8. 小澤佐重喜

    小澤佐重喜君(続) これは結局司法委員会において審議をせられましても、その次の國会、すなわち臨時國会において再び議案を出し直さなければならなくなるから、断じてこれには反対だというのであります。  その解釈がそもそも——與党諸君の頭は間違つた解釈である。なぜかなれば、この國会法の四十七條の二項の國会法六十八條規定は、旧議院法の二十五條と三十五條との精神によつて規定された法律であります。この旧議院法の二十五條あるいは三十五條を一應朗読してみますならば、議院法第二十五條には、「各議院ハ政府ノ要求ニ依リ又ハ其ノ同意ヲ経テ議会閉会間委員ヲシテ議案審査継続セシムルコトヲ得」という規定があるのであります。     〔発言する者多し〕
  9. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) お靜かに願います。
  10. 小澤佐重喜

    小澤佐重喜君(続) また議院法第三十五條には、「帝國議会閉会ノ場合ニ於テ議案建議請願議決ニ至ラサルモノハ後会エ継続セス但シ第二十五條ノ場合ニ於テハ此限リニ在ラス」と規定してあるのであります。     〔発言する者多し〕
  11. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。——著席して下さい。——靜粛に願います。
  12. 小澤佐重喜

    小澤佐重喜君(続) 從いまして、この國会法第六十八條規定は、とりもなおさず旧議院法第三十五條同一に解するものでありまするがゆえに……     〔発言する者多し〕
  13. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  14. 小澤佐重喜

    小澤佐重喜君(続) 以上のような解釈をもちますと、結局與党諸君がここで五十日間会期延長して、そのうち十五日間を休会して、十七、八日頃から審議にはいろうというて、そして十月二十日頃に最後の審議を終らそうという考え方と、われわれが会期延長反対し、そしていわゆる臨時國会の再開を政府に要求した場合における審議の過程とは、まつた同一の結果に相なるのであります。つまり政府において、この閉会中において諸般議案等を熱心に調査し研究をいたしまして、かりにその準備が二十日につく見透がつくならば、九月二十日に臨時國会を開けばよいのであります。  またその準備期間が、かりに一箇月を要するものといたしますならば、三十日後である十月一日に臨時國会の召集をなされれば、何らこの審議状態には異動はないのであります。從いまして、私ども主張による議事審議促進と、また與党諸君主張する五十日の会期延長をした場合における審議促進とは、まつた同一になるのであります。  そういうふうに同一になるとするならば、そういうむずかしい議論をよして、むしろ会期延長の方がよいではないかと、おそらく與党諸君は仰せられると思います。これは大きに意見が違う。少くともそのまず第一点は、先ほど一言しましたように、この会期延長にあたりまして、七月の五日、われらは議院運営委員会において満場一致をもつて、このわれわれの会期は再び延長しないことを政府声明し、みずからもこれをきめておきながら、この決議に反して、あえて再び延長するということは、おのれを欺き、人を欺くもはなはだしいものであると私は言わなければならぬのであります。(拍手)  もう一つ反対理由は、與党諸君は、この会期延長というものは決して政府要請を容れるものではない、この國会内における審議状況によつて会期延長をするものだと主張しておりまするが、しかしながら、これに対しては二つの疑点がある。まず第一の疑点として算えられることは、司法委員会刑法あるいは民法改正審議未了になるおそれがあるために会期延長するならば、何を苦しんで五十日延長する必要があるか。三十日できまるというのではないか。(拍手)  それからもう一つの事実があるのであります。いかに與党諸君が強弁しようとも、この会期延長政府と談合の上に、いや一歩進んで政府指図のもとに会期延長主張しておることは、僞りのないところの事実であると私は断言する。(拍手)なぜなれば、過日参議院のある委員会におきまして、某議員から石炭國家管理法案は今会期中に提出するや否やということを質問したところが、水谷商工大臣答えていわく、必ず今会期中にこれを提案しますということを言明したのであります。ところが、その某議員は再び立つて、今議会にこの石炭國家管理法案を上げるというが、あとわずか十日しかないところの期間において石炭國家管理法案を議了する見込みは立ちますかということを詰め寄られたところが、商工大臣は何らの答弁ができなかつたという一つの例がある。  さらにもう一つ大きな問題は、昨日の新聞にも、また今日の讀賣新聞にも出ておりましたが、先ほどのように会期五十日を延長して、そうして十五日間休会して、その休会の間に、社会党諸君片山総理大臣その他社会党出身閣僚が数班にわかれて、北海道を初め全國に一大遊説するところのお互いの協議が整つておるということは、とりもなおさず、いずれ未決定な事項はすでに決定されたことを前提として計画を建てられておる点から見ましても、明らかに政府指図もしくは懇談に基いて與党諸君があえて会期延長を提唱したものと言わなければなりません。(拍手)  しかしながら、この與党たるものが、そのときの政府を極力援助するということは、もちろん当然であります。ただ私の憂うることは、與党として政府に協力せんがための汲々たる一念において、この大事な國会権威を無視し、この國会自主権というものを冒涜するようなことがあつては断じて容赦は相ならぬのであります。(拍手)  かつて六月十八日、ちようど今回と同じような問題が生じました。それは何であるかと言いますれば、当時議長は非常にこのことについて心痛して、われわれ議員を代表して、一大声明を発表したことがあります。今皆さんがお忘れになつたかもしれませんから、ここにその議長声明文を朗読いたします。「過般今期國会会期をある程度延長することを政府決定したかのごとき新聞記事を見たが、これはもちろん誤解から來た記事だと思うが、この際國会権威のため、國民の過ちを再びせざるよういたしたいと思う。」、その他こまかくありますが、これは諸君が見たのでありますから——。要するに私どもがこの会期延長にあえて反対しておるのは、この議長の六月十八日の声明の線に沿うてやつておるのであります。つまり、この政府指図によつて、あるいは政府の要求によつて、それ自身において会期延長ということは、議会権威を失墜するものだという、この議長声明こそ、まことに権威のある、賛意を表することとして、当時私どもは非常な敬意を表しておつたのであります。  ところがただいま申し上げました通り與党諸君は必ずしもそうではなく、私が先ほど申し上げました通り政府指図によつてつておるものだとするならば、これこそ断々固として、この会期延長反対しなければならぬのであります。  以上の見地よりいたしまして、與党諸君に申し上げます。先ほど申し上げた通り、われわれの主張は決して野党であるからというような見地に立つておるものではありません。つまり國会威信議会自主権擁護のために立つわれわれのこの理論を十分再檢討されまして、ちようど、きのう労働省設置法案でわが自由党主張に同調されたと同じ謙虚な氣持をもつて、この私の主張に同感されんことを特に希望いたしまして、私の討論にかえる次第であります。(拍手
  15. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 細川隆元君、発言を許します。     〔細川隆元君登壇
  16. 細川隆元

    細川隆元君 私は、社会党、民主党並びに國民協同党を代表いたしまして、議長提案会期延長に対して賛成意見を申し述べたいと存じます。ただいま自由党の方から、延長反対についてるる熱心なる御意見の披瀝がございましたが、私はこの意見を反駁しつつ、賛成の趣旨を述べたいと思うのであります。  現在衆議院並び参議院におきましては、各種法案審議いたしております。第一回國会に提案されました各種法案が、日本民主化のためにすこぶる重要なものであるということは、開店休業を叫ばれましたにかかわらず、自由党諸君も連日の暑さにかかわらず、熱心に各委員会において討議されておるという事実に徴しても、明瞭であると思います。(拍手司法委員会にかかつておりまする民法改正法律案刑法改正法律案はもとより、農林委員会審議されておりまする協同組合法案を初めとしまして各種法案は、私どもが今審議をなし、またこの終結をなすべき義務を負つておるものであります。(拍手)  さらに、ここに第一回國会特質として申し添えたいと存じまするのは、先般衆議院を通過いたしました裁判官彈劾法案は、ただいま参議院において審議中でありまして、もしもここに会期が盡きて、自由党諸君の述べられたごとく閉会になりましたならば、第一回國会においてわれわれが憲法條章によつて選任をいたさなければならないところの裁判員及び訴追委員の選定はできないことに相なるのでありまして、これまさにわれわれの審議権の放棄であると申さなければなりません。(拍手)  さらにもう一つは、第一回國会におきまして最も特質をもつておりまするところの裁判官國民審査法案は、いま衆議院司法委員会の小委員会におきまして、自由党諸君も熱心にこれを審議されておる途中であることは、御存知であろうと存じます。かかる國会審議の実情を見ましたときに、審議義務を負担しておる私どもがここに会期延長するということは政治常識でありまして、もしもこの政治常識に反するような行動をとるとするならば、これこそ國民指彈を受けることになるのでございます。(拍手)  ただいま審議をいたしておりまする状況から見てもそうでありますが、さらに、今議会で私どもが最も重要な審議の対象といたさなければならないところの追加予算案石炭國家管理法案政府提出も、われわれは予見し得るのであります。百歩を譲りまして、この政府提出法案が予見いたされないとしましても、新憲法並びに新國会法精神から申しますれば、政府提案が今後あるなしにかかわらず、私どもが今手にしておるところの法案の行方を見極めずして閉会をいたすことは、これまた政治家として無責任極まる行動であると断じて差支えないと存じます。  かかる政治常識の明瞭なことにつきましては、國民の側におきまして、われわれの延長賛成共鳴を得るということはもちろん、現に参議院におきましても、私ども決定がいかにあるべきかを待つてつて全会一致をもつて延長の態度を示しておるのであります。(拍手)  かかる事実から見ましても、自由党諸君の御議論は、最近完全野党に下られたから、ゲリラ戰でもつて何かひとつ切りこまなければならないという、小さな観点からの反対であると断ぜざるを得ません。私は、自由党諸君のために、完全なる野党は願わくば健全なる野党であつていただきたいとこそ論ずるのでございます。  私はこの会期延長の問題は、ほとんどくどくどしく述べ立てるだけの價値のある問題でなく、われわれの政治常識の問題であつて、これに反対される諸君政治常識を疑わざるを得ないのでございます。(拍手)私は、われわれの会期延長主張自由党諸君反対は、はたしていずれが國民共鳴を得るかということは、それぞれの立場において観測は違うであろうが、その結果は國民の審判にまてば足れリと存ずるものであります。私は、願わくば自由党諸君も、会期延長後におきましては、吉田総裁以下全員議会に出席せられて、さらに審議を進められんことを希望いたしてまして、私の賛成の演説にかえたいと存じます。(拍手
  17. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 採決いたします。九月一日より十月二十日まで五十日間会期延長するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  18. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 起立多数。よつて会期は十月二十日まで五十日間延長するに決しました。      ————◇—————
  19. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 石田博英君より、議院運営に関し、議事進行に関する発言を求められております。この際これを許します。石田博英君。     〔石田博英登壇
  20. 石田博英

    石田博英君 お許しを得まして、議事進行に関し一、ニ政府の所信を質してみたいと思います。ほれた弱みにはあばたもえくぼ、ということがあります。     〔「そんな議事進行があるか」と呼び、その他発言する者多し〕
  21. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  22. 石田博英

    石田博英君(続) しからば、今の発言をやり直し、議事進行に関して発言をいたします。まず第一に……     〔発言する者多し〕
  23. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  24. 石田博英

    石田博英君(続) ほれた弱みにはあばたもえくぼ、ということわざがある。與党ともなれば、どんなことでも政府の肩を持ちたいのは、私ども十分同情をもちますけれども、だれが何と言い、いかなる表現を用いられようとも、議会を再三再四延長しなければならなくなつたことは、——政府法案提出サボつてつたということは、たれが見ても間違いない事実であります。(拍手)  その証拠に、今細川君が、衆議院審議をしておるから会期を延ばすと仰せられたが、それなら、なぜ会期を延ばしてこの次に休会を提議されようとするのであるか。(拍手)それほど熱心に審議を進められておるならば、休会をせずして通せばよろしい。休会をして待つていようというのは、政府法案の出るのを待とうという以外の何ものでもありません。特に追加予算もまだ提出されていないという事実に至つては、いかに厚顏なる政府あるいは與党諸君といえども、これを他人の責任には断じて帰せられないのであります。(拍手)  かくのごとき重大なる怠慢と無能を暴露しながら、議会與党諸君のしつぽを振つた追從によつて五十日延期して、二週間休会するがごとき氣配が見えますや、社会党出身閣僚諸君は、與党社会党の幹部と相議して、この期間國務を放擲し、遠くは北海道あるいは中國のかなたまで遊説に出かけ、この重大なる危局を無視して、党勢拡張に狂奔せんとしておるのであります。  昨日、わが党並びに農民党、第一議員倶樂部、共産党の共同声明に接するや、西尾官房長官遊説國務であるとしらじらしく答えておるのであります。もちろん遊説國務であるくらいのことは、一つ表現としては一應の理窟が立つているように見えるが、これはへ理窟であります。今日いかなる事態にあるか。しかも提出すべき社会党が、みずから危機突破をやつてみせると呼号して、その政策を実行に移すべき法案一つも出さずに、追加予算さえも出さないで、これらを放擲して遊説に出かけるということが、はたして國務であるかどうか。第二点、休会中に出かけて惡いはずがないと答えておられる。われわれは、休会、開会中を言うておるのではない。重大なる時期に遠隔の地に行くことは、國務を放擲するものだと信ずるのであります。この点に対して、まず片山内閣はいかなる見解をもつて議会審議に協調せんとするのか。議事進行に関し、私はここに一應の答弁を要求するものであります。  第二点は、國務大臣遵法精神に関する点について、平野農林大臣の御見解を質したいと思うのであります。われわれは、國法審議する機関に席を占めておるのであります。從つて國法尊嚴を維持する点において、私どもは断じてここに質すべきを質さざるを得ないのであります。(拍手)  終戰後國民精神の頽廃、遵法精神の欠如については、もはや周知の事実であつて片山首相は組閣以来この点を慨歎せられて、一大國民運動を展開せられようとしているのであります。私は敬虔なる片山総理大臣キリスト教徒である片山総理大臣のもとにある閣僚諸君の人格につきまして、またその遵法精神の点につきまして、今まで信頼をもつてつたのでありますが、昨二十九日附の都市の夕刊には一せいに、平野農林大臣臨時建築物等取締規則に違反して、ガレージ並びに湯殿を建築せられたという記事があります。  これはきわめて些細なる問題であります。しかしながら、およそ國務大臣たるものが、みずから制定し、みずからこの遵守を國民に強制するところの尊嚴なる國法を無視して、いかにして國家の再建、新憲法政治の樹立が達成できるか。(拍手)この点について、当時者である平野農林大臣答弁を求めるものであります。  この新聞記事は、必ずしもその通りでないかもしれません。ガレージの問題に至りましては、もはや正式の許可が取つてあるということでありますが、湯殿の問題は、昨日参議院議員である農林大臣夫人が急遽届け出られた。新聞で問題になつたので、大急ぎで届け出られた。法律を守ることが、大臣であればあとで届けてもよろしい、民間人であれば前にやらなければいかぬという差別待遇社会党内閣はされるものであるか。(拍手)特に農林大臣は、目下諸種経済統制にあたられ、多くの統制法規を制定し、これを実施せられているところの当面の責任者であります。その当面の責任者が、みずから発布した法律規則であるならば、これを無視してよいと考えるかどうか。この点について農林大臣の謙虚なる御答弁を要求するものであります。(拍手
  25. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 石田君の議事進行発言は、お聽き及びの通りであります。この際、関係大臣においてお答えの必要ありとお考えになりますならば、発言を許します。     〔國務大臣平野力三君登壇
  26. 平野力三

    國務大臣(平野力三君) ただいまの御質問は、一切さような御指摘のような点はございません。非常に誤解でありまして、私といたしましては、諸般の手続きを完了いたしてやつていることでありまして、どうぞ誤解のないようにお願いいたします。     〔國務大臣西尾末廣君登壇
  27. 西尾末廣

    國務大臣(西尾末廣君) 石田博英君の御質問にお答えいたします。お尋ねの要点は、主として社会党出身閣僚社会党の幹部と議して、この休会中を利用して党勢拡張に專念するという見解のもとに立つて、これは妥当なりや否やという趣旨の御質問であります。しかし、これは明らかに思い違いであります。私は今日そういうような話し合いがあるということを伺いまして、党の幹部からいわゆる遊説計画なるもののがり判刷りを見せられたのであります。その中に、社会党出身閣僚の中の四名の大臣の名前が載つているのでありますが、その中の一つに、片山総理が北海道に行くということが載つているのであります。これは先ほど小澤君もお話があつたのでありますが、その中にありましたように、この休会中を利用して遊説に行くとはけしからぬという御趣旨のようでありましたが、片山総理が北海道へ行きます日どりは二十日でありまして、休会中ではないのであります。從つて休会中を……     〔発言する者多し〕
  28. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  29. 西尾末廣

    國務大臣(西尾末廣君)(続) 從つて休会中を利用するという限りにおいては思い違いであります。  それからもう一つは、片山総理が北海道へ行きますことは、今日日本の基本産業であるところの石炭増産の問題について、北海道の石炭業者及び労務者諸君と親しく石炭増産の問題について語り合い、また併せて石炭の採掘の状態を視察したいという趣旨に出でているのでありまして、決して言われるごときものではないのであります。またもう一つの、不肖私が大阪へ行くということにつきましては、私は選挙以來まだ大阪に帰つたことがないのでありますが、長い間懸案になつておりました問題を、この機会に処理したいという意味にほかならないのであります。すなわち、日本の産業の中心である大阪における財界人並びに勤労者諸君と親しく語り合う機会をもちたいと思うているに過ぎないのであります。(拍手)  かようにいたしまして、その他森戸あるいは鈴木両大臣も、それぞれ自分の所管事項に関する視察を兼ねて行くというプランがありまして、われわれ國務大臣の旅行の規定に基きまして、ついでに党の主催の演説会に出てもらいたいという要望があるにすぎないのでありまして、決していわゆる國務を放擲していくのでなくして、あるいは石炭増産の奬励をし、その視察をなし、あるいは勤労者並びに財界人とよく語り合うということは、これまたきわめて重大なる國務であるとわれわれは考えているのであります。(拍手)さよう御了承を願いたいのであります。
  30. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 石田君より発言を求められておりますが、議事進行発言は何回も繰返しますと、……(発言する者多く、議場騷然、聽取不能)になりますので、從來から一回……(発言する者多く、議場騒然、聽取不能)であります。……(発言する者多く、議場騒然、聽取不能)発言を願う必要がありますれば、適当な機会に考慮いたします。      ————◇—————  第一 大正十二年勅令第五百二十八号司法警察官吏および司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第二 大学等への死体交付に関する法律案内閣提出参議院送付
  31. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより日程に入ります。日程第一、大正十二年勅令第五百二十八号司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する法律案、日程第二、大学等への死体交付に関する法律案、右両案は同一委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員長小野孝君。     〔小野孝君登壇
  32. 小野孝

    ○小野孝君 ただいま議題となりました、大正十二年勅令第五百二十八号司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する法律案及び大学等への死体交付に関する法律案、このニ法案につきまして、厚生委員会における審議の経過及び結果について御報告申し上げます。  まず、両法案が提案せられました理由及びその内容を申し上げます。大正十二年勅令第五百二十八号司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する案について申し上げますと、從來麻藥に関する犯罪の捜査は、檢事、司法警察官吏によつて行われているのでありますが、取締りを強化いたしますために、これとは別個に麻藥に関する取締りの專門家である麻藥統制主事を置きまして、これに司法警察官と同一の権限を有する独立の捜査権を與えんとするものであります。案の内容は、捜査を行う麻藥統制主事は厚生大臣の指揮を受けまして、知事、檢察官の指揮を受けない点、また捜査の土地管轄につきましては全國にわたる点、捜査の事物管轄につきましては、麻藥取締の行政法規違反のみではなく、麻藥を客体といたします刑法の財産犯、刑法阿片煙に関する罪及び麻藥の経済事犯を含む点、また捜査を行います麻藥統制主事というものは、全國を通じて二百名以内である点などを規定いたしております。  次に、大学等への死体交付に関する法律案について申し上げますと、医学及び歯学の教育及び研究のために死体の解剖が必要であることは、申し上げるまでもありませんが、從來は死体の入手がきわめて困難な実情にありまして、学校によつては、そのために教育にも支障を來しておつたのであります。ところが本年の一月に、連合軍総司令部の指令に基きまして厚生省令が公布されました。主要都市に監察医というものをおきまして、死因の明らかでない死体は、この監察医が檢案または解剖を行つて、その死因を明らかにいたすことに相なつたのであります。そこで、この監察医が死因調査を済ませた死体で、引取人のないものを学校長に交付して、解剖または標本の材料にさせようというのが提案の趣旨でございます。また学校で死体を解剖するということにつきましては、從來その適法性について多少の疑義がありましたので、この際この点を明確にしようという趣旨であります。  法律案の要点は、都道府縣知事は、前申した監察医が檢案または解剖した死体で、引取者のないものを医学または歯学の学校長に交付することができる。そして、その交付を受けた学校長は、監察医が檢案を開始してから四十八時間以内に引取者が現われなかつたときは、その死体を解剖させまたは標本とすることができるというのでありますが、ここで交付と申しますのは、学校長は解剖または標本の材料とするという範囲内においてのみ死体の処分権を有するという意味でありまして、從つて後に死者の相続人その他から引渡しの要求があつたときは、その全部または一部を引渡す義務を学校長に課しているのであります。     〔議長退席、副議長著席〕 なお、この法律によつて交付される死体は、一應行旅死亡人またはこれに準ずるものでありますから、身許調査のための公告並びに運搬、それから埋火葬、これらに関する費用の負担等につきましては、行路病人及び行路死亡人取扱法との関係を定めておるのでございます。  以上両案につきまして、八月二十五日、厚生委員会におきまして一松厚生大臣より提案の理由の説明を聽きまして、審査にはいつたのでございますが、両案の内容は簡明でございますし、またその立法もきわめて妥当であるというところから、簡單な質問がありました後に、討論を省略いたしまして、採決いたしました結果、右申しました二つの法案は、いずれも原案通りに可決すべきものであるというふうに決した次第でございます。右、御報告申し上げます。(拍手
  33. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————  第三 昭和二十一年法律第十一号(弁護士及び弁護士試補の資格の特例に関する法律)の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付
  35. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 日程第三、昭和二十一年法律第十一号の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。司法委員長松永義雄君。    —————————————  昭和二十一年法律第十一号(弁護士及び弁護士試補の資格の特例に関する法律)の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)に関する報告書  [都合により第三十三号の末尾に掲載]    —————————————     〔松永義雄君登壇
  36. 松永義雄

    ○松永義雄君 ただいま議題と相なりました、昭和二十一年法律第十一号(弁護士及び弁護士試補の資格の特例に関する法律)の一部を改正する法律案について、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず本案の要旨について御説明いたします。満州引揚者のうち、わが國の高等試驗司法科試驗に合格いたした後満州國の司法官となつていた人々は、当然にはわが國の裁判官または檢察官のみならず弁護士の資格をも有しないために、帰國後ただちに司法事務に從事することができないのでありまして、これらの人々に、弁護士試補としての修習及び考試を経ないにかかわらず、わが國の弁護士たるの資格を付與し、もつてその経驗を活用し、併せてこれらの人々を救済するため、政府原案が提出せられたのでありますが、しかし、これではまだ選考を経ても弁護士たるの資格を得るに止まるのであります。しかるに、五月三日以前の弁護士有資格者は、裁判所法施行令及び檢察廳法の経過規定によつて、三年在職の後司法修習生の修習を終えたものとみなされることになつているので、この点権衡を失するものとして、参議院におきまして、選考を経たとき同時に司法修習生の修習を終えたものとみなすこととする附則第三項を追加し、また朝鮮弁護士令による弁護士有資格者で、五月三日以後に選考を受ける者についても、同樣の理由から三年の弁護士在職の後司法修習生の修習を終えたものとみなすことに、附則第二項の追加修正を見たのであります。以上が本案の要旨でございます。  本案は、去る二十五日政府の説明を聽き、翌二十六日質疑に入り、委員と政府当局との間に、次のような質疑應答がかわされたのであります。  まず第一に、本案のごとき立法は、弁護士経驗者から司法官を採用することを理想とする法制一元制の建前に対して逆効用を現わす結果とならぬかとの質疑に対し、將來は司法修習生一本として、その修習を経た者を判檢事または弁護士に採用する建前であるが、本法案はやむを得ざる特例である旨の答弁でありました。  次に、政府原案は弁護士の資格を附與するだけのものであるにもかかわらず、参議院において附加された附則は、裁判官並びに檢察官たる資格を附與するものである、この趣旨の相違する点よりして、参議院における修正の妥当性について政府見解を質したところ、本來附則の内容は裁判所法あるいは檢察廳法により規定すべきものと考えるが、政府原案の趣旨とも密接なる関係を有するので、必ずしも原案の修正を逸脱しておるとは考えぬ旨の答弁でありました。  次に問題の点は、本案の附則により、同じ満州國司法官でありながら、昭和十一年以後の合格者は、選考を経てただちに裁判官の資格を附與されるのであるが、これに対し昭和十年以前の合格者で、当然すでに弁護士たるの資格を有する者は、裁判所法施行令と檢察廳法により、三年の弁護士在職の後でなければ試補修習生の修習を終えたものとみなされないという実質的不均衡が生ずるのであります。この点の均衡につきまして、委員より質疑がなされたのでありますが、これに対し政府より、すでに弁護士の資格を有する者も、附則第三項を適用させるために、第一條の弁護士審査委員会の選考を受けることができるものと解釈し、その選考を実際に行い、不均衡のないようにしたいとの答弁がありました。  最後に、この法律第十一号についての問題として、附則第二項及び第三項とにおいて、朝鮮弁護士でわが國の弁護士となつた者は、元満州國司法官たる弁護士有資格者に比べ、なお司法官としての能力に不足のあることが明確になつているのは、均衡を失し、司法官と弁護士とが同等の能力を有する理想に反するものであるとし、政府に対し將來の考慮を求めたるところ、政府より將來注意する旨の答弁があつたのであります。以上、質疑の大要でございます。  次いで討論を省略し、ただちに採決の結果、全会一致原案の通り可決いたしました次第でございます。右、御報告申し上げます。(拍手
  37. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————  第四 貿易組合法を廃止する法律案内閣提出
  39. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 日程第四、貿易組合法を廃止する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。商業委員会理事佃良一君。    ——————————  貿易組合法を廃止する法律案内閣提出)に関する報告書  [都合により第三十三号の末尾に掲載]    ——————————     〔佃良一君登壇
  40. 佃良一

    ○佃良一君 ただいま議題となりました貿易組合法を廃止する法律案につきまして、商業委員会審議の経過並びに結果について御報告申し上げたいと存ずるのであります。  本貿易組合法は、昭和十二年八月法律第七十四号として、從來の輸出組合法に代り制定されたものでありますが、その立法の趣旨は、貿易業者の組合結成を促して、輸出、輸入両部門にわたる組織化の実現を企画せるものでありまして、協同組合的機能よりも、むしろ貿易統制の機能を強化しようとする戰時的色彩の濃厚なるものでありましたことは、皆樣御承知の通りであります。  しかるに、終戰後における社会機構全般の民主化は、必然的に経済機構の民主化を要請し、それに呼應して経済上の公正かつ自由な競爭を促進し、國民経済の民主的かつ健全なる発達をはかるを目的とする私的独占禁止法の制定を見たわけでありますが、かかる状況のもとにおいて貿易組合法を存置するときは、同法第十八條のアウトサイダーに対する統制権、第二十八條の統制業務のみを営む無出資組合の設立、第十六條、第三十五條議決権の不平等等の規定が、それぞれ独占禁止法の趣旨たる私的独占の禁止、不当なる取引制限、不公正なる競爭方法の排除に抵触するものであります。また一方、現下の貿易は管理貿易でありまして、現在においては貿易組合は大部分解散いたしまして、終戰後わずかにありましたる九つの組合も、それぞれ解散いたしまして閉鎖機関に指定せられ、目下清算の過程にある現況でありまして、貿易組合廃止後は、貿易公團の運営とともに、業者の創意とくふうを十分活用して貿易振興をはかるべきであります。以上の理由により、本案は八月十五日内閣より提出せられ、同日本委員会に付託に相なつたのであります。  次に、委員会における審査の大要について申し上げます。八月二十一日水谷商工大臣より提案理由の説明を聽取いたしましたる後、ただちに愼重かつ熱心なる質疑應答が続けられたのであります。その概要を申し述べますれば、貿易組合法廃止後の貿易振興策と中小企業者の取扱いをいかにすべきやとの質問に対しましては、中小企業者の活用こそ基本的貿易振興対策として考えており、公團の民主的運営と連繋せしめて、その創意とくふうとを十分に活用したいとの答弁がありました。また組合の清算は公平かつ早急に処理の見込みがあるかとの質疑には、現在清算中の組合はいずれも閉鎖機関に指定せられており、その管理下に公正かつ適切なる清算が行われつつある旨の答弁がありました。  かくて質疑を終了いたしまして、八月二十七日討論に入り、社会党笹口晃君、民主党山本猛夫君、自由党福永一臣君、國民協同党唐木田藤五郎君、農民党寺崎覺君の諸君が、おのおの党を代表いたしまして、貿易振興こそ現下わが國の直面する危機突破の唯一の方途であるにもかかわらず、政府の貿易諸般の構想及び行政は必ずしも完璧とは認め得ないので、今後における諸施策の機構及び運営をより民主的かつ合理的ならしむるため、各党共同提出による次の附帶決議を附して賛成する旨をそれぞれ述べられました。ここに附帶決議を朗読いたします。   貿易組合法を廃止する法律案に対する附帶決議   貿易再開に対処する政府の諸準備については、遺憾ながら、万全の措置を講じたものとは、認めがたい。   本案による貿易組合法が廃止せられた後の四貿易公團の運営如何は、日本経済再建の前途を左右するものであり、從つて政府は、公團の組織、機構、運営の民主化を計ることに渾身の努力を傾倒すべきであり、官僚の独善的施策、既成特権の復活には、嚴重なる警戒を要するものと認める。   次に、政府は輸出産業者に対し、資金、資材の優先的割当、技術の近代化につき、從來の机上計画を一擲し、強力なる施策を実行することが肝要である。更に輸出品買上價格については、その特性と輸出振興の緊要性に鑑み、内需向價格と異りたる合理的な特殊價格を裁定するよう、特段の配慮を望みたい。  かくて討論を終結いたしまして採決に入り、全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。なお、附帶決議もまた全会一致をもつて議決いたしました。以上、簡單ながら御報告申し上げます。(拍手
  41. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)  この際商工大臣より発言を求められております。これを許します。商工大臣水谷長三郎君。     〔國務大臣水谷長三郎君登壇
  43. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) ただいま上程可決されました貿易組合法を廃止する法律案に関しまして、附帶決議がありましたので、一言申し上げて政府の所信を明らかにしたいと思います。  附帶決議の御趣旨はまことにごもつともでございまして、現下貿易の重要性に鑑みるとき、政府当局の懸命の努力にもかかわらず、未だ万全の効果をあげておるとは言えないことは、すなおに認めなければならないと思います。附帶決議の要旨の第一は、貿易公團を民主的に運営せよということであると思います。このことは、われわれといたしましても十分に関心しておるところでありまして、國民の公僕としての公務員法の制定や、いわゆる窓口行政の根本的改善等、いわゆる役人根性の一掃を期しておるとともに、貿旨公團の特殊性に鑑みまして、業務の面におきましても十分民間の意思を尊重して、その創意とくふうを発揚できるようにいたしまして、よく言われた官業非能率の惡名を一擲いたしまして、貿易振興の中核機関として、公正かつ民主的、能率的な運営をしたいと考えておる次第でございます。  要旨の第二は、資金・資材・技術の各方面にわたり実効ある施策を講じ、輸出産業の振興をはかれということであると思います。この点は、われわれの最も努力している点でございまして、昨日発表いたされました貿易振興対策の線に沿いまして、早急に具体策を実現したいと考えておる次第でございます。  要旨の第三は、これに関連いたしまして、輸出品買上價格を合理的に決定せよということであろうと思います。輸出品に関しましても、現在の統制價格体系に則りまして、その價格を決定すべきでございまするが、輸出品につきましては、その規格、包裝等特殊の事情がございまして、これらの事情につき合理的な價格を決定いたしまして輸出産業の奬励をはかることは当然要請されることでありまして、現在物價廳に輸出品價格審査委員会を設けまして、各方面の権威者によりそれぞれ審査の上、迅速に適正價格をつけ、それにより買い上げることといたしておる次第でございます。  以上のように、政府といたしましても種々努力を重ねておるわけでございまするが、何しろ六、七年來実際的には停止してまいりました貿易を再開するのでございますがゆえに、山積する問題を打開していかねばならないわけでございまして、貿易業者はもちろんのこと、國民全体の理解ある御協力なくしては、とうてい十分な解決の困難であることは、今さら言うまでもないと存ずる次第でございます。この際われわれといたしましても、附帶決議の御趣旨を十分に体しまして、一層努力を重ねたいと思いまするが、皆さんにおかれましても、一層御協力されんことをあらためてお願いいたしまして、私の御挨拶にかえる次第でございます。(拍手)      ————◇—————  第五 日本國沿岸に置き去られた船舶の措置に関する法律案内閣提出
  44. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 日程第五、日本國沿岸に置き去られた船舶の措置に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸及び交通委員長正木清君。     —————————————     〔正木清君登壇
  45. 正木清

    ○正木清君 ただいま議題となりました、日本國沿岸に置き去られた船舶の措置に関する法律案について、運輸及び交通委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は八月十四日本委員会に付託になり、八月二十三日、二十八日の両日にわたり審議いたしたのであります。本案の趣旨を簡單に説明申し上げますと、終戰後、朝鮮その他日本水域外から日本に到着したものと推定される船舶で、現在もなお所有者の知れないままに置き去りになつているものが多数あります。それらに関する法律関係を速やかに確定して、もつて船舶の保全をはかり、進んではわが國現在の海運及び漁業方面の状況からして、これを積極的に活用しようとするもので、その手続を規定したものであります。  第一に、運輸大臣は、連合國人の所有すること明らかな船舶及び他令の規定によつて沒收すべき船舶を除いて、調査の上、置き去られた船舶として本法の適用を受くべきものを告示により指定するのであり、第二に、管海官廳は運輸大臣の指定した船舶を管理し、第三に、同時に指定船舶の所有者、担保権者、拾得者等の利害関係人に対して、その船舶が指定された事実及びその船舶について権利を行おうとする者は、その旨を申し出るべきことを公告告知する。第四に、所有者から返還の請求があつたときは、所要費用を負担させ、または負担させずに当該船舶を所有者に引渡す。第五に、所有者から返還請求がなかつたときは、その船舶を利用するのに最も適当と認められるものに、指定入札の方法によつて当該船舶を賣却する。第六に、その他必要な法律関係確定に必要な規定を設けているのであります。  本委員会としては、提案理由の説明を聽取後質疑にはいりましたが、その概略を申し上げますと、まず、本法案の対象及び沈沒船の引揚げと本案との関係につき質したところ、これに対し政府より、本法案は所有者不明の船舶を対象とするもので、その船舶が沈没していると否とを問わない、また沈沒船引揚げの問題は、所有権帰属の問題と別個のもので、本法案と直接に関係しない旨の答弁がありました。  次に、遺失物法と本法案との関係についての質疑に対しましては、海上におけるいわゆる遺失物については、遺失物法の適用はなく、水難救護法により規制されるものであるが、水難救護法は内容的に現在の置き去られた船舶の措置については不適当であるから、新たに立法を必要とする旨の政府答弁がありました。さらに管海官廳の意義、賣却の場合における入札者指名の方法等について審議を重ねたのでありますが、詳細については会議録に讓りたいと存じます。  かくて討論に入りましたが、社会党より高瀬傳君、民主党より山崎岩男君、自由党より前田郁君が、それぞれ党を代表して、終戰後日本國沿岸に置き去られた船舶の法律関係を確定してその活用をはかることは至当であるゆえ、原案に賛成する旨述べられ、ただちに採決に入り、全会一致をもつて原案通り可決いたした次第であります。右、御報告申し上げます。(拍手
  46. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————  農業生産資材の供給確保に関する緊急質問(今井耕君提出
  48. 叶凸

    ○叶凸君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、今井耕君提出、農業生産資材の供給確保に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  49. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 叶君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加されました。  農業生産資材の供給確保に関する緊急質問を許可いたします。提出者今井耕君。     〔今井耕君登壇
  51. 今井耕

    ○今井耕君 私は、國民協同党を代表いたしまして、農業生産資材の供給確保に関する問題につきまして、農林大臣商工大臣、大藏大臣、安本長官に緊急質問をいたしたいと存ずるのでありますが、安本長官が見えないのは、はなはだ遺憾でありますが、関係政府委員の方から責任ある御答弁を願いたいと思います。  食糧問題の解決は現下の最重要問題でありまして、國会開会以來、これが供出の問題につきましては、眞劍なる討議が行われているのであります。しかし、供出は乏しきものをわけ合うところの分配の問題であるのでありまして、これによつて絶対量の増加を期することはできません。その根本問題は、農業生産の維持、特に増進をはかることであることは、今さら申し上げるまでもないことであります。從いまして、現内閣の成立の際におきますところの政策協定におきましては、その第六に、食糧問題の解決のために肥料、漁具、その他農漁業用必需物資の供給を確保して、食糧増進をはかるとともに、供出制度を速やかに改善し、完全供出をはかるとあるのでありまして、これは当然のことであります。目下の問題といたしましては、政府は供出制度を改善し、完全供出をはかる前提として、肥料その他農業生産資材の供給を確保し、増産をはかるための責任ある努力をいたさなければならぬと考えるのであります。  御承知のように、農業生産資材には肥料、農機具を初めとして各種のものがありまして、質問いたしたいことも多々あるのでありますが、時間の関係もありますので、肥料、農機具、農業藥剤及びこれに関連する價格の問題について、具体的に質問をいたしたいと存ずる次第であります。  まず肥料につきましては、政府の生産計画から見ますならば、これに近いところの生産ができておるのでありますが、生産計画そのものが非常に低いのでありまして、これを数字をもつて申し上げるなれば、政府昭和二十一肥料年度、すなわち昨年の八月から本年七月までの窒素肥料の生産計画は、石灰窒素も硫安に換算いたしまして九十五万トンとなつておるのであります。これは実際必要量の半ばにも達しない数量であるのであります。これに対しまして、実際生産された数量を計算いたしてみますと、八十四万トンとなるのであります。必要量の四割二分ということになります。  肥料は百日前の食糧と見るべきものでありまして、肥料さえあれば、農業技術的に見て約一割くらいの増産は可能であるのであります。米で申しますなれば、六百万石くらいは増産が可能であるのであります。これにつきましては、農家の保有米を見る必要がありませんから、六百万石全部が供出米となるのでありまして、國民といたしまして重大な関心をもたなければならぬと考えるのであります。食料の確保はまず肥料の増産よりというところの考えをさらに強めまして、一層の努力を要すると思います。  また肥料の増配こそ農家の最も切望するところでありまして、熱意を新たにしてその実現を期するなれば、増産はもちろん、農家といたしましてもやみ肥料買いであるとか、物交によるところの肥料入手の心配もなく、安心して供出ができますので、必ず供出の成績もよくなると信ずるのであります。政府はこの点十分心配いたしておられると考えるのでありますが、昭和二十二肥料年度における肥料の生産計画はどういうぐあいになつておるか。また肥料の生産の見込高はどの辺までいけるかということを、商工大臣にお伺いいたしたいと思います。  次に、当面の問題といたしまして肥料製造用の硫酸が不足しておるのでありまして、これについては硫化鉱の確保が必要である。これについては一層の努力がいると思いますし、特に輸送の関係で七万五千トンからの硫化鉱が滯貨しておるというような事柄、あるいは設備用の主要資材であるところの鉄鋼あるいはセメントというようなものの確保が必要であるのでありまするが、承りますと、最近これらに対する割当が減つておるというような事柄、あるいは肥料会社の未拂の金が七億円からあつて、硫化鉱であるとか、電力であるとか、石炭あるいは肥料がますなどの入手に支障を來しておるというようなことを聞くのでありますが、これらは肥料の増産のために急速に解決しなければならぬと考えるのであります。この点、商工大臣、大藏大臣に所見を伺いたいと存ずるのであります。  次に配給のことでありまするが、八月一日より肥料配給公團が発足いたしました。しかし、その整備は未だ十分と申されません。特に下部組織につきましては、幾多の問題があるのであります。政府は全責任をもつて適期配給に遺憾なからしめ、農業生産に支障なきを期すべきであると存ずるのでありますが、これに対して農林大臣の御所信を伺つておきたいと考えます。  次に農機具の問題でありますが、これが製造に必要なところの鉄鋼を例にとつてみますと、現在農業生産に使用いたしておりますところの各機具について、その維持年限から計算した年々更新を要する農機具の所要鉄鋼量は、最低に見積りまして年間三万三千トンであるのであります。なお、その間使用年限中にいろいろ修繕をしなければならぬその補修用の鉄鋼が、約六千三百トン要するのでありまして、合計年間約四万トンを要するのであります。昨年は二万五十トンの割当によつて農林省は農機具を製造し、なお地方において特殊物件等を利用して製造した分を合わせて約三万トンに相当する農機具ができて、ようやくこれを切り抜けることができたのであります。  これに対して、今年農林省が割当を受けて、そうして製造計画をいたしておるところの数を調べてみますると、わずかに八千トンとなつておるのであります。まさに必要量の五分の一ということになつております。しかるに、なおこの八千トンの割当が順調に確保されておるかと調べてみると、本年の第一四半期におきましては、実際は一千トンしか割当を受けておらぬ。第二四半期にも一千トンである。この分でいけば、年間四千トンということになる。ちようど必要量の一割ということになつてくる。こんなことであるならば、一体どうなるのかということを非常に心配するのであります。これは非常に急を要する問題でありまして、農機具は鉄鋼を割当ててすぐにできるものではないのであります。製造、配給にも相当日数を要するのであります。今これを解決いたしておきませんと、今年の秋の作業、來年の春の作業に一大支障を來すと考えられるのでありますが、この点、農林大臣はいかようにお考えであるか。  なおまた、こういうような少いところの鉄鋼でつくつた、本年の六月、七月、八月の三ヶ月間にできているところの統制農具の優良なもののみで、その金額が約四億円に上つております。ところが、これもいろいろ調べてみますると、資金不足のために配給不能の実情にあるというようなことで、まことに遺憾にたえないのであります。秋の收穫を前にいたしまして、これまた急速に解決しなければならぬ問題であると信ずるのであります。この点は大藏大臣もいろいろ御心配願つていると思うのでありますが、特にこの席で御所見を承つておきたいと考えるのであります。  なお附加えてお伺いいたしたいことは、農機具の補修用の鉄鋼、それから木炭、コークス等が配給されておらないということであります。それがために修理ができません。故障農機具が退藏されまして、皆がそれがために新しい農機具を要求するということになるのでございまして、まことに資材不経済の面も多いのであります。強いて修繕をしようとすれば、やみ資材の関係で非常に高いところのやみ修繕料を支拂わなければならぬ。米を持つていかなければやつてもらえない。こういう事情になつておるのであります。この点は何とかしてぜひ善処を要すると考えるのであります。  こういうような実情で推移いたしますなれば、今年の秋には農家は必需農機具入手のために、物交によるやみ農機具購入のために奔走せざるを得ない現状となり、これが原因いたしまして供米に重大なる惡影響を來すことを、昨年の例に徹しまして非常に憂慮するのであります。この責任政府が負わなければならぬと考えるのであります。またこういう状態におきまして供米を強行するということは、農業生産者に対してきわめて不親切である。それによつて供米の完遂も困難であると考える。また流通秩序の確立も有名無実になると考えるのであります。  もちろん、今日の鉄鋼の生産事情も十分承知しております。しかし、食生活の不安が日本再建に一大支障を來しておりますところの今日、より一層この方面を重視すべきであると考えるのでありますが、この点、農林大臣、特にこの方面の企画の責任者であるところの経済安定本部当局の御所見を伺つておきたいと考えるのであります。  昨年の現状を振り返つてみますると、農林省は特殊物件をも含めまして鉄鋼二万五十トンの割当を受けて農機具の生産をなし、割当てられたのでありますが、その金額を調べてみますると、價格にいたしまして約二億五千万円であります。これは非常に少い数量でありまして、各府縣におきましては、これではとうていやれないというので、特殊物件の地方処分品等を利用いたしまして、多数の農機具を製造いたしました。また農家は東奔西走いたしまして、農機具入手のために苦心をいたしたのであります。それで農家の実際購入した金額というものは、約その八倍、約二十億円と推定しておるのであります。その間非常な混乱をいたしまして、品質は低下し、價格は非常に騰貴したのであります。また物交によりまして米を出した数量も莫大なるものがあると考えられるのであります。  農家といたしましても、何を好んでこの高い農機具を買いましよう。何も好んで物交等をやりたいわけではないと考えるのであります。やむにやまれぬ、たちまち農業生産ができなくなるからでありまして、決してぜいたくでも何でもないのであります。実に農家の苦労は忍びがたいものがあつたのでありますが、昨年はこのような苦い経驗をなめておるのであります。本年は二度とこのような混乱を繰り返さないよう。万全の処置を講ずべきであると信ずるのであります。  これが原因いたしまして、昨年來農機具は資材不足のために非常な高價となり、現在マル公までが非常に割高になつております。本年六月一日に発表された農機具の價格は、一時購入不能とまで稱せられたのであります。これがまた今回の新物價体系によりまして、約五割上ることになつておるのであります。現に本年の六月二十五日に麦・馬鈴薯の均衡價格設定の際の新物價水準價格をちよつと伺つてみましても、農機具の平均價格は、基準價格の約八十倍となつておるのであります。供給は適当な價格によることはもちろんであります。この点、政府の物價体系六十五倍との関係はどうなつておるのであるか、物價廳の関係の方々に御意見を承りたいと考えるのであります。  以上のように生産資材の供給不足が原因いたしまして、價格は騰貴し、やみ買、物交に及んで、昨年は肥料のやみ買も相当あつた。その他を含めまして、農家の経済は相当逼迫を加えられておるのであります。農村に新円が集中しておるという問題は、もはや解消いたしておるのでありまして、去る八月九日発表されました通貨安定対策本部の発表を見ましても、本年六月三十日現在の農漁村新円手持高は三百三十八億円でありまして、当時の日銀券発行高千三百六十三億円に対し約二八%になつております。これを昨年五月の日銀調査局調査の五〇%に比べますと、ニニ%減少しておるのであります。この大部分が、配給機関及びやみブローカーなどの手に移つておるということは、はつきりとわかつておるのであります。こういう点から考えますと、いろいろ農産物の價格の問題も考えなければならぬのでありますが、この点は時間の関係上省略をいたします。  次に農業藥剤のことでありますが、(「簡單々々」と呼ぶ者あり)簡單に質問をいたします。病虫害によりまして非常な被害を受けて減少を來しておることは、皆さん御承知の通りであります。ところが、この病虫害を予防駆除するための農業藥剤が非常に不足しておるのであります。殊にたくさん必要であるところの砒素剤が不足しておるのでありまして、これも必要量は年間約五千トンでありますが、これに対して、実際確保されておるのが千五百トンであるのであります。これにつきましても、いろいろ調査いたしますと、なお確保の途が多々あるのであります。  なおまた除虫菊なんかを考えてみましても、今日まで平年度におきまして大体三百万貫ないし四百万貫とれたのでありますが、昨年は四十六万貫、本年はわずか三十六万貫、なおこの中から厚生省方面にもまわつておりますから、農業方面としては三十万貫程度しか確保されておらぬのであります。これにつきましても、除虫菊の栽培について計画的にやるなれば、まだまだ増産ができるのでありまして、このことにつきまして、政府は計画的にその増産をやらなければならぬと考えるのでありますが、この農業藥剤方面につきまして、農林大臣の御所見を承つておきたいと思うのであります。  以上の点は、現在農村において非常に関心をもち、また希望もいたしておるのであります。政府は現在農業生産調整法を準備中でありますが、これまた生産資材の供給確保を前提とすべきこともちろんであると考えます。また大局より見て、敗戰後の日本が無計画な統制によりまして生産そのものの基本的培養を怠つていた弊害は、一般の認めるところであります。農業生産またしかりでありまして、敗戰までは増産を非常に眞劍にやつたのでありますが、敗戰後は食糧不足に目がくらんで、目前の問題にとらわれて、基本的な増産そのものの政策が非常に乏しいように考えられるのであります。よろしく農業生産増進のために、これに必要なる資材の増産計画を樹立して、食糧自給の基礎を確立すべきであると信ずるのであります。(拍手)目前に迫る米・馬鈴薯の供出を前にいたしまして、誠意ある答弁を希望する次第であります。     〔國務大臣平野力三君登壇
  52. 平野力三

    國務大臣(平野力三君) ただいまの御質問は、農業生産にとりまして、きわめて重要なる御質問でありますので、その概要をなるべく率直にお答えいたしたいと思います。  まず肥料について申し上げますと、二十二年度におきます生産の計画としては、硫安百七万八千トン、石灰窒素三十一万七千トン、過燐酸石灰百一万三千トン、しこうして二十一年度におきます生産実績を申し上げますと、硫安については六十八万五千トン、石灰窒素は二十一万八千トン、過燐酸石灰四十九万七千トンという数字になつておることを御了承願いたいのであります。なおカリ肥料に関しては、今年度内約十一万トンの輸入の見込が立つておるのでありまして、肥料の面に関する点においては、大体において生産は上まわつておるものと御了承を願いたいのであります。なお少し具体的に申し上げますならば、二十一年におきますところの水田について加えましたるところの肥料は、反当約ニ貫目でありましたものが、今二十二年においては約四貫目を突破し、來二十三年の米については、一反五貫五百匁を配給するの計画を立つておるのでありまして、この点に関しては、肥料については大体上まわつておるということを御答弁申し上げたいと思います。  この際特に一言申し上げたいと思うことは、御指摘になりました肥料配給公團が、その後いかなる状況において組織されておるかということでございます。まず肥料配給公團は、七月の十五日に設立をいたしまして、当日より業務を開始いたしました。東京、大阪、名古屋、札幌、門司の五箇所に支部をおき、各縣及び北海道にわたりまして五十三箇所の支所を設けました。この支所のもとに、五百十七箇所の派出所を設けることによりまして、大体肥料公團の全國的なる組織はここに成り立つたのであります。しこうして、八月一日から秋肥の配給に着手をいたしまして、この末端においては、指定肥料取扱業者なるものをここに設定をいたしまして、現在着々配給をいたしておるのであります。御参考までにこの際発表いたしたいと思うことは、この指定業者は、全國を通じまして一万四千六百に及んでおるのであります。そのうち、農業團体として指定せられましたるものが七一%、商人として指定せられましたるものが二九%でありまして、このうち、眞に農業團体から配給を受けておりますところの農民は八八%に及び、商人機構より配給を受けておりますところの農家は一二%という状況になつておることを申し上げておきたいと思います。現在政府といたしましては、各地方の公團の肥料の貯藏所に対しまして、窒素肥料の予備貯藏を開始いたしまして、農家から通帳を提示せられますならば、速やかに荷物を差し上げることができるように準備をいたしておる点を特に申し上げておきたいと思います。  次に、農機具について申し上げますと、政府が農機具に関する鉄鋼材として割当を受けておりまするものは八千トンであります。ところが八千トンのうち、第二四半期において消費いたしますものは二千二百トンでありまして、正に御指摘の通り農機具に対する生産は上つておらぬのであります。ここにおいて、政府といたしましては、最重要農機具でありますところの、すき、くわ、かま、除草機、脱穀機、もみすり機、わら工品加工機等の現に必要なる農機具に対しまして、重点的製造を試みることによつて、この不足しております鉄材を最も有効に使わんといたしておるのであります。なお政府の施設といたしましては、農機具工場に対する電力の優先確保及び生産資金の確保の両面において努力することによつて、この困難なるところの農機具の問題を打開せんとしておる点において御了承願いたいと思います。  次には農業藥剤でありますが、農業藥剤中最も必要といたしまするものは砒素藥であります。この砒素剤の一箇年に必要といたしますのは、五千五百トンであります。しかしながら、この五千五百トンの砒素剤のうち、國内において賄い得るものは二千トンであります。六百トンの輸入を仰いでおるのでありまして、ようやく國内必要の五千五百トンに対して輸入を加えて二千六百トンの半数を間に合せておるということを御報告申し上げたいと思います。次に、農業用藥剤として必要なるところの除虫菊については、作付面積を増加し、特に肥料を配給する等の方法をもちまして、この藥剤についての補給を考えておるのであります。  その他作業衣、地下足袋、自轉車のタイヤ、チユーブ等に要しまするところの種々なる農業上の必需物資については、われわれは鋭意もつて努力をいたしておりますので、この点何とぞ御了承を願いたいと存じます。以上、簡單に御答弁を申し上げます。      ————◇—————  重要美術品の保存に関する緊急質問(福田繁芳君提出
  53. 叶凸

    ○叶凸君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、福田繁芳君提出、重要美術品の保存に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  54. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 叶君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  重要美術品の保存に関する緊急質問を許可いたします。提出者福田繁芳君。     〔福田繁芳君登壇
  56. 福田繁芳

    ○福田繁芳君 私は、本院の文化常任委員会の総意に基きまして、ごく簡單にいささか政府に質したいと思うのでございます。もつとも時間の関係もありますので、つとめて簡單に要点のみに触れてみたいと考えます。しかしながら本件は、文化國家再建を唯一の目標といたして建設途上にありまするわが國の現段階におきましては、外は海外文明先進國に対しまして正しく御理解を願い、御援助を求むる貴き資料ともなり、また内は國内全國民に対しまして文化國家再建の唯一の目標を示唆する、これまた貴い資料になると考えますから、私は簡單に御質問いたしまするが、関係大臣は相なるべくごゆつくりと、詳細にご誠意をもつてお答え願いたいと思うのでございます。     〔副議長退席、議長着席〕  私がここに政府に対して質さんといたしまする第一点は、わが國の古美術品、言いかえますれば國宝ないし重要美術品と覚しきものが、最近相当の数が散逸し、ときには海外に流出しておるやに承わるのでございます。もしこれが事実といたしまする場合には、はたしてその状況はいかがでございましよう。あるいはまた、それに対して政府はいかなる所見をもつておられるか。なおまた、その防止方法ないしは対策に対して関係大臣に伺いたいと思う。これが第一点でございます。  諸君は、昨年四月十一日に、マッカーサー元帥のお招きによりまして、総司令部の美術部顧問としてわが國を訪ねられ、わが文化界各方面の温かい歓迎と心からなる感謝をうけながら、八月十七日に無事任務を完了いたしてアメリカにお帰りなすつたところのラングドン・ウオーナー博士の名前は、今なお御記憶と私は存じております。申すまでもなく、このウオーナー博士は、御承知のようにお若いときからボストン博物館東洋部副部長に就任されて、ときの部長でありまする岡倉天心の指導のもとに、いわゆる東洋美術に対する相当なる御権威をもつておられたのでございます。御案内の通り、後ほど岡倉天心が日本に帰還いたしまするや、その後を追つてわが國に來朝され、その後奈良の勧学院に滯在されて天平時代の彫刻の研究に沒頭され、その後東洋各地を巡歴の上、最近ではハーバード大学の博物館において東洋部の主任をやつておられました。  そこで、このたびの戰爭に絡んでのお話になるのでございますが、御承知の通り緒戰の受身を取戻したアメリカ軍が、やがで盛んに日本の本土の攻撃を始めようとするときに、岡倉天心が高らかに称えました日本の美が、はたしてこの大きな破壊の前に安全であり得ようかと、おそらく博士の心は一途に古い都である奈良あるいは京都、これらの社寺佛閣の上に走らされ、おそらく胸を痛められていたことであろうと存ずるのでございます。しかしながら、御案内の通りこの心配は間もなく解消いたしました。アメリカでは、戰いながらもよき理性は失われずに成長していたのでございます。日本本土爆撃に関するある種の委員会が設けられたときに、ウオーナー博士は、日本美術の権威者としてそこに招かれて、命ぜられるままに日本美術品の精細なるリストを作成され、提出されたと承つております、ところで、日本本土はおもなる都市がほとんど全部徹底的に爆撃されましたけれども、結局アメリカ將兵の理知と良識とは、ウオーナー博士のプラン通りに残さるべきものは残され、美術の都京都、奈良は一度の爆撃も受けずに無事安泰たり得たことは、周知の通りでございます。  ウオーナー博士は、昨年の日本滯在中しばしば申されました。古美術品はしかばねではない。それをわれわれが眺めるのは、單に古い品物であるからでもない。珍しい品物であるからでもない。また目に訴える美しい品物であるからでもない。われわれは、この古美術品を通して、これらのものをつくり出したところの民族がいかなるものであるか、すなわち、その民族の歴史や精神生活や知的生活や日常生活の習慣がいかなるものであるかを知らんがためである、かように申されております。  ところで、昨年の七月一日文部省は、この度の戰災によつて滅失しましたる國宝が大体二百九十三件、重要美術品が百三十四件、かように発表されたと思います。これだけでも相当の由々しき数でございますが、もしもこの奈良と京都が爆撃をこうむつたといたしましたならば、おそらくこの数字は十倍、二十倍以上に達しておつたことであろうと私は考えます。われわれはこれを思うときに、今さらながらアメリカ將兵各位、と同じにウオーナー博士に対し、心からなる感謝の誠をささげる次第でございます。(拍手)  しかしながら、ここにわれわれの最も心を痛め、さらにアメリカに対し、あるいはウオーナー博士に対して申訳ないと存ずることが、若干惹起してまいつているのでございます。その第一は、皆樣も御承知の昨年十一月の財産税課税を前にいたしまして、千四百名に上るところの國宝や重要美術品の所有者が、その所有品を相当隠匿あるいは賣却し、これがために、文部省や國宝保存会もいかんとも手の下しようがないということを承つているのでございます。さらにまた第二刀劍類も、内務省の調査によりますれば、武器として連合國に渡されたものが約八十万点、美術品として所持の許可されたものが約十万点、別に財産税課税を恐れて隠匿の疑いのあるものが、なおかつ約十万点あると聞かされております。そこに今度は第三の問題として起つたのは、最近目立つて殖えたというこれらの品の所有者からの手離れ、散逸のうわさでございます。こういう現象があるということは、文化國家をもつて唯一の目標としている日本國家再建のために、実に嘆かわしい問題であろうと存じているのでありますが、これに対する政府の対策はどうかということを伺いたいのであります。  ウオーナー博士は、一面において、奈良や京都における古美術品の保存設備は、今の日本としては上乘である、ただ日本は湿気と白蟻がある、これを防ぐことを工夫さえしますれば、最も上乘の保存設備である、かように言われております。また他面において、外國の美術品の鑑賞は、ある國とある國とが、双方が相交換と申しまするか、貸借でございます。貸借をいたしまして、適当なる場所に出品して、もつて一般國民にあまねく相手國の文化の味を味わさす、これでもよくはないかと言つておられますが、これはまことに傾聽に値する卓見と存じます。  話は結論にはいりますが、ここにおきまして、わが國の古美術品の保存に関する法規の沿革をたどつてみたいのでございますが、明治の初年に、わが古美術品の散逸ないし國外流出がだんだん問題になつてきたときに、当時の岡倉天心その他の先覚者が非常な努力を拂われました結果、御承知の明治二十九年、ようやく古社寺保存法というものが制定されたのでございます。この古社寺保存法のあとを受けたのが、昭和四年の國宝保存法であるかに承つております。この國宝保存法第三條は、「國宝ハ之ヲ輸出又ハ移出スルコトヲ得ズ」、かように規定いたしてございます。さらに、昭和八年の「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」第一條には、「歴史上又ハ美術上特ニ重要ナル價値アリト認メラル物件(國宝ヲ除ク)ヲ輸出又ハ移出セントスル者ハ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ」、かように定められております。しかして、ともに罰則も設けられてございます。しかし、この罰則は、今日の現段階から眺めるときに、もとより妥当なものではございませんが、かような法律がある以上、巷間傳えられるようなところの現象があり得るといたしまする場合に、はたしてこれは政府が見逃さるべきものであるか。いかなる対策をおもちであるかということが、私が伺いたいところの第三点でございます。  私が申すまでもなく、この古美術品というものを外國え持出すということは、どこの國でも嚴重に法規できめてございます。もつとも、最近私たちが耳にいたしますように、問題はインフレーションであります。戰後ドイツなりイタリーにおいて、相当美術品を國外に流出していると聞いておりますが、これは事情まことにやむを得ないものでありましようけれども、しかし一面から見るときに、わが國の場合においては、われわれの祖先が全精魂を傾けて制作したる藝術品が、しかばねでなくして、生物であると言われている以上、その散逸ないし國外流失は、まことに骨肉にわかれる、身を切られる思いがするのでございます。  人類の平等ということと同時に、個人の尊重を念願する民主主義は、当然國際性ということと同時に國民性ということを尊重いたすのであろうと私は存じております。現政府は、組閣以來しばしば文化面の政策を発表せられております。文化の普及向上を口にせられておりますこと、まことに私は欣快と存じます。しかしながら、以上私が申し上げましたごとき実際問題が横たわつております。これをいかにお考えになられ、なお、これをいかにしてお防ぎにならんとせられまするか、文部大臣並びに内務大臣、司法大臣にも伺いたのでありますが、司法大臣は議席に見えません。政務次官がおられますから、御答弁を併せてお願いしたいと存じます。(拍手)     〔國務大臣森戸辰夫君登壇
  57. 森戸辰夫

    國務大臣(森戸辰夫君) ただいまの福田君の御質問は、文教の衝に立つており、文化の保存と発達に関心をもつておりますると私といたしましては、まことに適切かつ緊急を要する御質問であつたと存じます。  敗戰の日本は文化國家を目ざしておるのでありますが、この文化國家を立てるには、わけてもうるわしい自然と、うるわしい藝術とをもたなければならないのであります。しかるに残念なことに、戰爭のために自然も、また傳來のうるわしい藝術も、幾多燒失破壊いされたのであります。殊にただいま福田君の言われたごとく、残りましたよい藝術品すらも、インフレ、財産税その他のために、隠匿、散逸あるいは流出する心配があるという事態にあるのであります。  私どもは、先ほど申された國宝保存に関し、「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」をもつておるのでありまして、これによつて指定せられたる重要な古美術品を國内保存いたそうといたしておるのでありますが、しかしながら、これはただいたずらに日本の経済交通の取引を妨げることを目的とするものでないことは、御承知の通りであります。私ども、これらの美術品を國内にとつておこうというのは、これらの美術品が日本の國民にとつて放すことのできない、まことに大切なものであるだけでなく、これらの美術品、藝術品は、そのできた國土で、その自然のうちに、またそれが育つた環境のうちにこれを鑑賞して、初めてそのうるわしさを外國の人といえども鑑賞することができるのであると私は思うのであります。(拍手)單なる國民的な利己心ではなく、ほんとうに世界にりつぱな藝術をもつて、日本の國をうるわしい國とし、うるわしい藝術をもつた文化國としようという、日本のみならず、世界の國も求めておるその目標に私どもは到達せんといたしておるのであります。  ただ残念なことには、先ほど福田君の御指摘になつたような傾向も幾分あるのでありまして、私どもは、先ほど申しました二つの法規が嚴重にこの際適用されるようにと考えておりまして、かような方向に進んでいただきたいと当局にもお願いいたしたいと存じておるのでありまするが、他面また脱漏しておりまする國宝に該当するもの、また重要美術等についても、指定を進めていかなければならないと存じております。さらに、しかしこれだけではなかなか急の間に合わない点もありますので、もし國費の状況が許しますならば、博物館、美術館等において重要美術品を買上げる費用をも増額するということも考えにもつておるのであります。(拍手)かようにして、できるだけ日本のりつぱな藝術品が、日本の中にあつて、日本の自然の中に、日本のつくられた環境の中に、日本人とともに外國から來られる観光客にも十分に理解されるような状態をつくりたいと存じておるのであります。(拍手)  しかしながら、これは法律とか國家の費用だけではいきませんので、日本の國民全体が、日本の國を文化國家として、うるわしい國とするというつもりをもつていただきたいと思うのであります、殊にかような重要美術品をもつておいでになる方々においては、もちろんいろいろな点で経済上お困りのこともあろうが、この日本の國をうるわしい文化國家にしていかなければならぬということを念頭にもつていただきたいと存ずるのであります。  アメリカは敵國であつたときにも、実は日本の美術品を尊重して、先ほども質問者のお話になつたような爆撃すら愼しんで、日本の古美術を救つていただいたのでありました。私は質問者とともに心からこの好意を感謝いたすのであります。(拍手)当時の敵國ですらそうであつたとすれば、日本の國民は、しかも敗戰後文化國家をつくつていかなければならぬという日本國民は、この大事な美術をほんとうに守つていくように、法律規定國家の費用だけでなく、國民が心から文化國家の建設に協力していただきたいということを私は心から念じまして、私の答弁にかえたいと存ずるのであります。(拍手)      ————◇—————  救國貯蓄運動に関する決議案(松田正一君外四十六名提出
  58. 叶凸

    ○叶凸君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、松田正一君ほか四十六名提出、救國貯蓄運動に関する決議案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  59. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 叶君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  救國貯蓄運動に関する決議案を議題といたします。委員長の報告を求めます。財政及び金融委員会理事島田晋作君。     〔島田晋作君登壇
  61. 島田晋作

    ○島田晋作君 ただいま議題となりました救國貯蓄運動に関する決議案につきまして、財政及び金融委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。  今や貿易の再開を迎え、國内経済体制の整備、特にその根本要件たる通貨の安定、貯蓄の増強は焦眉の急務であることは申すまでもありません。昨年秋、戰時補償打切りに伴う一連の重要諸施策が実施せられ、その基盤としまして、通貨の安定、貯蓄の増強が要請されました折、衆議院において、通貨安定に関する自由、進歩、協同、國民の諸政党の共同決議を見、爾來通貨安定対策本部を中核として救國貯蓄運動を展開し、相当の効果をあげてまいつたのでありまするが、通貨に関する諸種の流説その跡を絶たず、また自由預金の増加趨勢も良好な成績を示すようになつたとはいえ、現下の厖大なる財政並びに産業資金を賄うにはなお不十分なるを免れず、現状は必ずしも樂観を許さざるものがあるように認められるのでありまして、今や貯蓄運動は啓蒙宣傳の域を脱し、全國民の生活刷新、勤儉貯蓄の実踐を強力に推進し、もつてわが國経済の安定、再建の基礎を速やかに確立すべき段階に直面しておるのでありまして、本運動の成否いかんは、はなはだ重かつ大であります。  されば、通貨安定対策本部におきましても、去る七月一日第五回総会を開き、今後さらに救國貯蓄運動の徹底的なる推進に努力すべき決意を表明するとともに、本共同決議案衆議院本会議に上程し、われわれの覚悟を新たにするとともに、政党政派を超越せる全衆議院の確固たる決意を天下に披瀝し、もつて國民の向うべき方向を明示し、本運動窮極の目的を完遂せんとするものであります。  右の決議案につき、本委員会におきましては数回にわたり愼重なる審議を重ねました結果、本案は國家の情勢上きわめて妥当なるものと認め、討論省略、全会一致をもつてこれを可決いたしました。右、御報告申し上げます。(拍手
  62. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  國会休会の件
  64. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 國会休会についてお諮りいたします。本件については、参議院議長と協議の結果、來る九月一日より十四日まで、十四日間、國会休会をいたしたいと思います。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  65. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて九月十四日まで十四日間、國会休会をなすことに決定いたしました。(拍手)  次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十七分散会