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政府委員(長野長廣君) 先般の自由討議におきまして、酒井俊雄議員より御
質問に相なりました地方制度に関する問題等について、
簡單にお答えをいたしたいと存じます。
府縣の区域を統合すべきものと思うが、いかがであるか、これに対する考慮があるかないか、こういう御
質問であります。府縣の現在の区域が、経済、交通等の変遷によ
つて不適当なものにな
つておる部面のあることは、事実であると思います。
從つて行政区画ということは、府縣民の社会生活と経済生活の両面において一致せしめるように努力いたさなければならない次第でありまして、府縣区画の変更論はきわめて妥当であると存じます。ただ実際問題といたしましては、それぞれの府縣には、その府縣の歴史があり、傳統があるのであります。しかして、これらをも
つて社会協同体として活動をいたしております。また廃合の及ぼす行政上の混乱についても考慮を拂わなければなりません。かような意味からいたしまして、十分愼重に調査研究を続けまして、きわめて民主的に行なうべきものであると存じておる次第であります。
第二に、遊覧都市等特別の施設をも
つておる都市にふさわしい制度を設ける必要があるのではないかという御
質問であります。都市がそれぞれの特性に應じて、あるいは遊覧都市であるとか、あるいは工業都市であるとかいうふうに発達をすることは、きわめて望ましいことであります。しかしながら、都市の政治組織の基礎は同一の
法律によ
つて決められておるのであります。從いまして、実際の運営上において、その
利益の上において、それぞれの特質に基いて運用いたしまして、この運用の上から現れるところの特色を出すということが最も望ましいことであると存ずる次第であります。
第三に、同種單位の連絡調整
機関の必要についてのお尋ねでありますが、まことに御同感でございます。地方自治法においても、これを予想いたしまして、第二百九十八條以下に、地方公共團体の協議会に関する
規定を設けてあります。府縣と府縣の間、市町村と市町村の間にそれぞれのブロツク別の協議体をつく
つて、公共團体の
事務の連絡調整をはかることにな
つておるのであります。今後大いにこの制度の自主的
活用を期待いたしておる次第であります。
第四に、固有
事務と委任
事務との限界はいかがであるかという御
質問であります。御承知の
通り、地方自治法におきましては、本来一般的に地方公共團体の
事務とされておるものが固有
事務であり、本来國の仕事ではあるが、その性質上個々の特別法によ
つて、個別的に地方團体に委任されて行われる
事務が委任
事務であるのであります。以上の区別は、
法律上の区別でありまするが、事柄の実体からわけて申しますれば、縣営自動車事業のごときは固有
事務であり、小学校の設置のごときは委任
事務でありまするが、その間に、運営上はほとんど何らの違いはないのであります。從いまして、固有
事務が豊富になることはもとより望ましいことであり、委任
事務の豊富になることも、住民の便利を増す意味からいたしまして、結論としてまことに喜ぶべきことであると思うのであります。もし委任
事務を排斥するということがあつたならば、かえ
つて特別の
國家行政
機関の濫設を招く次第でありますから、これは差控えるべきものではないかと思います。固有
事務と委任
事務とは、御所論のごとくよく本質を考えてそれぞれ処理しなければなりません。両者のうるわしい調和に努めまして、相ま
つて地方自治の完全な発達に努めたいと存じておる次第であります。
第五に、地方の公吏は、府縣廰では
從來官吏であつたものが公吏に
なつたものが多い。特に新憲法におきましても、地方自治法施行後は、その精神に則
つて府縣民の公僕として奉仕努力をしなければならぬことは、お話の
通りでございます。
政府といたしましても、一般官吏に関する公務員法の施行と相まちまして、地方公吏についても、そのきわめて根本的な制度の樹立をはかり、詳細の
決定実施は当該自治体の自主的活動にま
つてやるような方向で、目下鋭意研究を進めておる次第であります。
第六に、特別市の設置を
いかんに考えておるかということであります。特別市の設置は、府縣の区域より市を独立させ、府縣と同格にせんとするものであります。特別市の設置は、実際上府縣の分割のごときものでありますから、市と残存郡部との間の
事務上の問題、財産の問題、施設等の問題、これらを分割するという複雑な事柄がつきまと
つておるのであります。さらにまた特別市の設置に伴い、府縣單位の行政
機関であるとか、あるいは裁判所であるとか、各種の團体であるとかいうものを分割するかどうかという問題も生じてくるのであります。
政府といたしましては、前申し述べました財産、施設等の問題、各種
機関の分割のような問題、府縣側と市の側との利害の相反する問題について、目下鋭意調査を進めておるのであります。そうして、適切な調整案が得られましたならば、鋭意これによ
つてこの事業を進めてみたいと考えておるのであります。しかして、この特別市制をいつからどこに施行するかという具体的問題につきましては、
國家最高の意思
決定機関たる國会の最善の判断に待つことが最も緊要なことと考えておる次第であります。
最後に、これは特に附添えて申し上げまするが、警察官の員数についての御
質問がありました。これはただいま
関係方面と愼重交渉を進めておる次第でありまするから、員数においては、ここに差控えたいと存ずる次第であります。御了承を願います。
また警察官署長等の公選問題でございまするが、このこと自体はきわめて画期的なものであります。大いに傾聽すべき御議論であつたと存じますけれども、しかしながら、十分なる考慮研究を要するものがあると存じますから、御説を大いに尊重いたしまして研究を進めたいと思います。
また警察官の教養問題につきましては、
從來大いに努力いたしておりましたが、今やわが國の
國民生活及び世態人情一切に向か
つて変革を生ずべき時期に到達しておる次第で、警察官についても大いに素質の改善をはからねばならぬと思いますから、今後はさらにこの方面に創意工夫を重ねまして、
國民の期待に副い得るようにいたしたいと考えておる次第であります。これをも
つてお答えといたします。(
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