○伊藤卯四郎君 ただいま議題となりました
特許法等の一部を改正する
法律案に関し、
鉱工業委員会における審査の経過並びにその結果について
簡單に御報告申し上げます。
本案は、從來特許と発明に関して多大の貢献をいたしてまいりました
特許法等につきまして、現下の諸情勢に適應した改正を加え、一層本法の積極的活用をはからんとするもので、改正の要点は次の二点であります。第一は、最近の社会情勢に即應して特許料、登録料を
相当程度に引上げようとするものであります。第二は、他の法令中の処罰規定との均衡をはかるために罰金額を五倍ないし十倍程度に引上げるように規定したものであります。
委員会おける審査の大要を申し上げますならば、本案は八月十二
日本委員会に付託せられ、きわめて短時日ではありましたが、委員諸賢と
政府との間に熱心なる質疑應答が交されました。その詳細は会議録によ
つて御
承知を願うことといたしまして、ここにはその二、三を御紹介いたします。
まず委員から、從來特許法のがんであ
つた祕密特許について、何
ゆえに今回これを削除せなか
つたかという質疑がありました。これに対して
政府は、当局はもちろんこれに十分意を拂
つておるが、何にしろこの問題は非常に微妙な問題を含んでおり、近いうちに追加
提出するつもりであるとの答弁がありました。
さらに委員より、今回の改正による收入の増加額とその使途についての質疑がありました。これに対して
政府より、改正前の收入は年間約三百万円程度であるが、本支出は現在約千五百万円程度である、改正による料金の値上げは大体一千万円程度の増收を見込んでおる。これにより年間收入は約千三百万円程度となり、收入は特許局の一切の経費を賄うこととなる、今回の改正は收入の均衡をはかるがために行
つたものであるとの答弁がありました。
次に、本法は大正十年の制定であり、本改正案は他の國家料金に比べて著しく低いと思う、当局の説明によれば收支のバランスに重点をおいているようであるが、特許局の收支に黒字が出ては惡いのかとの質疑がありました。これに対して
政府は、たしかに低過ぎると思う、しかし一面発明者の保護ということを考慮に入れて行
つたものである、今回は一應この程度にして、遠からず再び値上げをするつもりであるとの應答がありました。
さらに委員より、ただいまの
政府委員の答弁により了承したが、そもそも特許というものは
相当の権威をもたしてあるのであるから、まだ料金を高くしてもよろしいと思う、そうしてこれにより出た黒字をも
つて、さらに積極的に発明者を保護奨励すればよいではないかという質疑がありました。これに対しまして
政府は、委員の意見を十分尊重し、意に副うように
努力するとの答弁がありました。
さらに委員より、特許法第百三十三條の、特許局職員が祕密を漏洩または窃用したる際の刑があまりにも軽過ぎはしないかとの質疑ありました。これに対して
政府は、これは他の刑法とにらみ合わせて作成したものであるとの應答がありましたが、委員は、この件は重要問題であるだけに、
政府はこのままに押し切るつもりであるかどうかと、重ねて質疑を続行いたしました。これに対して
政府は、この点については、全面的に司法省にお願いをして作成したものであり、今まで各官廳とも懲罰はあまり明確に書いてなか
つたが、特許局はこの点特に明記しておいたのである、この問題はもつと嚴重にと思
つたが、他よりの意見もあり、今回はこの程度にしておいたとの答弁がありました。
最後に委員より、年次による課税率が異なるのはよくわかるが、わが國の現在は
敗戰したのであるから、改正料金中、年次の終りの方はもつと高く上げてもよいと思う、今後また國情が回復した際値下げをすればよいではないか、
敗戰した現在、累年加算率をもつと高くしてはどうかという質疑がありました。これに対して
政府は、料金の値上げについては、
世界各國の
状態をも考慮して、これと比較をして作成したものである、また弁理士、発明團体等に原案を示して、彼らの意見をも酌量して行
つたものである、もしあまりにも料金の値上げをすると、かえ
つて大きな反響を呼ぶのではないかと思うとの答弁がありました。
かくして、
委員会は去る十八日討論にはいりました。まず松本七郎君が
日本社会党を代表して、
特許法等の改正は現下の諸情勢より見て一部分に限られておるが、近いうちに全面的に改正の要がある、
政府もこれを認めていることと思う、発明者の利益に堕することなく、國家経済上、
國民全般の福祉のために愼重に使用せられんことを望むとの意見を述べて、原案に
賛成せられました。次に、民主党を代表して庄忠人君より現下の経済情勢と照らし合わせて、
特許法等の改正案は妥当な処置であるとの意見が述べられ、原案に
賛成せられました。さらに、
日本自由党を代表して有田二郎君は、特許局職員に対する懲罰の嚴正なこと、年次による課税率を時局の推移に即應せしめること等の
希望を述べられ、原案に
賛成せられました。
最後に、高倉定助君は
日本農民党をを代表して、本改正案は現下の諸情勢とにらみ合わせて、きわめて適当な処置であるとの意見を述べられ、原案に
賛成せられました。引続き採決に入り、全会一致をも
つて可決した次第であります。
まことに
簡單でございますが、この段御報告申し上げる次第でございます。(
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