○磯崎貞序君 現
内閣があらゆる叡智を結集いたされまして、
食糧の
危機突破に御奉公をされておりますことに対しまして、感謝の意を表するものであります。しかし、遺憾ながら打たれまする手がピントをはずれておりますから、事態はまさにこれと逆行いたしまして、今や遅配、
欠配に次ぐに、わが國の
食糧は空前な重大化を招來せんとしておるのでございます。この関頭に立ちまして、私はあえて
政府當局をお責めをするというようなことは申しません。しかも
政府のお考えの足らざる点、しかも容易に行い得られて効果百パーセントの一、二の案件を開陳いたしますから、勇猛果断にこれが施策に邁進せられんことを要請するものであります。
第一に、主要
食糧の中におきまして、常に米と麦に重点
政策が施されてお
つたのでありますが、私は、現在足もとに火がついているこの
食糧事情下におきましての解決方策としましては、きわめて容易なさつま
いもの
対策ということによ
つてのみ、この
緊急対策をなし得られると信ずるものであります。かように申しまするゆえんのものは、さつま
いもというものは、現在のごとき余肥の不足の時代でありましても、堆厩肥でよくこれを肥育させることができますし、反当收量におきましても、科学技術の導入によりまして、現在の平均收量三百貫に対しまして、五百貫ないし六百貫くらいの増收を招來し得られるということが
はつきりしております。あるいは近く再開さるるであろうところの貿易が展開される際に、わが
日本農業に
相当な再編成が起るであろう、そのときのことも考えまして、現在きわめてコストが高いが、幾多の機械化が行われますような樣相をも
つております甘藷に、
相当なる重心をも
つて力を出していただきたい。しかも、陸稻のごとく天候によ
つて左右せられるものにあらずして、その收穫がきわめて安全であ
つて、ただいま申しますように増收の余地がきわめて多いという観点からこれを申しあげる。
統計によりますと、
昭和二十年における收穫は七億五千万貫と拜承しております。二十一年におきましては十四億七千万貫、しかも現
平野農林大臣が力をいたしていただきますならば、いわゆる危險なるところの陸稻に代うるに、増反とか技術導入等によりまして、五箇年
計画などとは申しません。二年ないし三箇年の
計画によりまして、現在の十五億貫に対しまして、倍額の
程度まで收穫があるであろうことを信じて疑いません。
ただこの甘藷において大きな欠陷は、腐りやすい問題でございますが、いかにしたならばこれを防ぐことができるかという問題が消極的な
増産運動でなければなりませんが、まず本年の遅配、
欠配期に当面いたしまして、ただちに八月の中下旬から、早堀り地域に対しまして、比較的廣汎に多量にこれを掘りとらせて、そしてその地域に
配給させていただきたいと考えます。収量におきましては多少の不足は生じまするが、それから後に麦をつくりまする間における一、二箇月の間にそばをつくり、あるいはその他の蔬菜類をつくることによ
つて、その減量は補い得るに十分でございまするし、しかも
供出の最盛期までに対しまする
輸送機関というものを勘案願いまして、どうしてもこれ以上になりましては腐れやすいという部分が
数字に現われますが、この部分に対しましては、ぜひとも加工をも
つて事に当
つていただきたい。
現に千葉縣下におきまするところのあるエキスパートは、この加工にま
つたく成功しております。その機械はきわめて簡易なるものであり、製造能力は
相当なる力をもち、しかも地下五尺
程度に塹壕を掘り下げまして、細断せられたりするつぶし圧搾法と申しましようか、これによりますると、完全に半年はおろか一、二年はもつところの体驗をも
つております。現にその製品そのものがここにございます。いわゆる空論を申し上げまして、行い得ざることを言
つても何にもなりませんが、これは
農林大臣が、この遅配を解消せんとする場合、立ちどころに全面的に各
方面へ御用命に相なるならば、腐るべき部分はこれによ
つて解消し得ると考えます。
從來の腐敗部分は、二割ないし二割五分と称されておりますから、かりに十五億の基本数に考えましても、四億貫内外は腐敗によ
つて葬られる。しかも、これをカロリーから換算しました場合に、おそらく米換算、二百七、八十万石に
相当いたしまするからこの端境期に当面しまして、
政府当局はいろいろの御名案を出しておいでになりますが、それらの御苦心は、この消極的方策によ
つて解消するにあまりありと私は断言せざるを得ないのであります。ましていわんや、技術の導入、作付増反の三箇年
計画によりまして、おそらくか
つて野党の当時に、現
農林大臣が、あるいは三合
配給等のお述べもあ
つたかもしれませんが、これは完全に三合以上の
配給量が、この方途によ
つて達せられることを断言するものでございます。まず主要
食糧の突撃路は甘藷にありということにおいて、特に御留意おきを願
つておきたいと考えております。
次に、いわゆる
食糧計画というものは、先ほどの弁士も申されましたごとくに、米や麦、そればかりでは決して栄養カロリーがあるものではございません。これらの炭水化物に併せまして、あるいは畜産を導入し、あるいは魚介、海藻を介入することによ
つて、総合的な
食糧計画を樹立するにあらざれば、決してその完璧を得ることはできません。
この観点から、第二に申し上げたいことは、いわゆる水産業の発展に大きな力をいたしていただきたい。か
つてわが國の水産は、五百万トンも收穫があ
つた。ところが今日におきましては、その三分の一内外であるといわれておる。何がそうさせたか。戰爭による船舶の破損、その他資材不足、金融の面とか、
食糧の面とか、價格の面とか、隘路が山積しております。しかも、なかなかこの隘路打開は容易なることではございませんが、今日のごとき、生ける人間に
計画遅配を強制なさ
つておるような、この重大化の際におきましては、ここに傾斜的
生産方式をとられまして、ぜひとも水産に対する一大方途を講ぜらるべきであると考えております。
この重大なる
食糧問題解決にあたりまして、現在農林省の中に水産局がございます。しかも、船腹のことにつきましては運輸省へ行け、資材の問題につきましては商工省へいかなければ用が足りない。その間におけるところの有機的の連絡がない。しかも
努力が足りてないという観点からいたしまして、総合
食糧計画樹立の観点からしまして、この水産業の発展が今日のような
状態にな
つているのです。先般片山
内閣におきまして、これを
相当勇敢に取上げておいでになりまするが、この水産行政を一元化しまして、水産廳なり、
食糧省なり、水産省なり、強固なた一省を設けまして、勇猛果断に施策をいたしませんければ、決して
食糧の
増産は期して得られるものではないと考えております。この問題を併せ考えていただきます。
時間がございませんが、
日本農業に対しましては、どうしても畜産の導入が絶対不可欠のものでございます。この畜産の
状態が、今日は五分の一、六分の一というようなわけに、すべての頭数が減り、羽数が減り、今や減産の一途をたど
つておりまするが、これが
日本農業の
將來に大きな暗影を投ずるのみならず、しかも
食糧総合
計画樹立の面から申しましても、まことに憂慮すべき観点でございまするから、畜産の問題につきましても、
食糧の重大なる
一環として取上げて御施策を願いたい。
最後に、
供出の問題につきまして簡明に申しますが、この
供出問題におきまして、一番大事なことは收穫量でございます。
從來の收穫は、どういう
状態にその量をおとりにな
つたかと申しますると、その下部における町村の係員が、あるいは机の上においてつくり、系統官廳を経まして中央へ集まる。中央へ集ま
つた数字というものが、どうもこれでは予算に足らないということから、たとえてみますると、麦で申せば、大小麦千四百五十万石と報告せられておるものでも、それにいま五、六十万石足して、千五百三十万石にせなければいけないとか、そういうような実に根拠のない机上プランによ
つて收穫量がきめられてお
つた。こういう机上プランによ
つて行われる政治は、決してそこに正しい
供出や正しいすべての問題が行われるものではないと考えます。
そこで私は、特にわき道にはいりまするが、今後はどうしても科学技術という問題に
政府が
相当な力をいたされ、殊に自然科学
方面におきましては、技術者の養成というものは絶対に必要であります。現在
食糧の
増産とか、あるいは
供出に至りまする
一環の作用は、わずかに一町村に二名ないし三名
程度存在する技術員によ
つてやられております。ところが、本然の技術の仕事はおろか、会計とか庶務に没頭しておりまするから、本然の
増産とか増收は待望することができません。そこで、ぜひともこの技術員を大いに増員して、でき得べくんは、一町村、三
部落程度に一、二名を駐在さして、管区の
農民に対しまして、種まきから害虫駆除、あるいは調整脱穀、
供出に至るまでのすべての面を指導させる。こうなりますると、この駐在員が、管区に対しましては、ほとんど手をとるように、今年は麦がいくらとれた、さつまがいくらとれていると、
はつきりわかります。これを中心にした民主的ないわゆる收穫関係の委員と適正なるところの
数字をつく
つて、そして中央へ集められましたその
数字こそが、実態に即せるところの收穫量であるということに相なります。こうした根拠のある、根底のあるところの收穫量によ
つて、初めて正しい
供出も行われることになります。
供出の問題はどうかと申しますると、昨日來のお話でほとん
どもう盡きておりまするが、似て非なるところもございまするから、一点申します。どうしても
從來の
供出は天降り的で、その結果としまして、末端
機関では反別平均割にするところもあります。あるいは收穫量一片に偏重してかけるところもあります。いずれもこれらは
弊害があ
つて、正しい
供出制度ではございません。そこで、どうしても現在の
供出に対しまして、その
数字の七割を
土地に切りつけてしまいます。先ほど同僚の方が申されましたが、一筆ごとに対するところの
土地に切りつけた
供出量を決定する。それは
供出量の七割、あとの三割は、いわゆる経営規模とかその他の環境を織りこんでや
つていただきたい。正しい
供出制度によりましたならば、必ずそこに満点の
供出ができます。
その
供出のできたあげくはどうするか。これは先ほど同志の言いました
通り、
自由販賣制度、しかもそこにおいて欠陷があるとすれば、幾多の
弊害をためる方途があります。もしそれ、現在
政府が縁故米とか、あるいは小包米とか、その他幾多の方途で集められる御熱心な御施策は買われますけれ
ども、これは
農民の実態を知らざるものであります。現在の
農民は、現につい先般とりましたところの大麦を、水田に施しまして
肥料にしております。あるい
はつい先般北海道から、うの目たかの目で、魚肥一貫匁三百円という高價なものを買い、反当り十五貫くらいを施している。あるいはどの
方面から御
配給にな
つたか、大豆粉を馬鈴薯と取換えて、その大豆の粉が田面へ
肥料として施されている。これが実際惨憺たる
農民の深刻なるところの心理
状態であります。この
農民の深刻なる心理にタッチせずして、凡百の施策を施されるといえ
ども、それは單なる絵に描いたもち以外の何ものでもないということを断言せざるを得ないのであります。
結論は、私はどうしても
最後は、いわゆる自由價格というものを十分頭に入れて、
弊害をためる制度を立てられたならば、必ずや効果百パーセントなりと考えております。あえて当局の御賢明なる御裁断を願います。(拍手)