○徳田球一君 私は
日本共産党を
代表いたしまして、主として
片山首相並びに和田安本長官の
施政方針に対して、
質問せんとするものであります。しかし、ここに重要なることは、財政の問題が絡んでおりますので、特に栗栖大藏大臣に対しても、
質問せんとするのである。
第一点、これは高度民主主義に対してである。大体昨年の六月の議会におきまして、片山君は、吉田前
首相に対しまして、主義がないような
政治はためだ、その日その日だけの
政治ならば、これは保守反動だということを、きめつけたのであります。そのために、特にここに高度民主主義なる新しい
言葉をもち出しております。ところで、この高度民主主義なるものの
内容が、
人道主義であり、合理主義であり、かつ
社会民主主義であるといわれておりますが、しかしながら、問題はここにあるのではない。
言葉の上にあるのではない。
首相並びに和田安本長官の述べておりまするところの
施政方針を檢討いたしますれば、明らかに、
人道主義というのは、
労働者、農民、その他
一般人民大衆を彈圧し、これを
犠牲にして、大
資本家、大地主、腐敗堕落した
官僚のために、
人道主義を行うのである。はたしてこれが
人道主義であるか
否や、さらにその次に、合理主義に対して、この合理主義は、
資本家のために産業合理化を行うということである。低賃金をも
つてし、首切りをも
つてし、
資本家の利潤を保障するところの合理主義である。
社会民主主義に至
つては、
労働者、農民を彈圧して、そうして
社会党の看板を掲げて、
労働者、農民、
一般人民
諸君を、この
資本家に奉仕させようという、驚くべき
社会民主主義である。
なるほど、彼らは
社会主義の建設の
政策を全部放棄しておるのではないか。実際これはたびたび示される
通り、公約に完全に違反しておるのである。片山君は、参議院において、公約を実施するのは時期の問題であると言われておる。時期の問題ではない、すでに、ここに根本
方針が示されておるのである。この根本
方針において、
かくのごとく公約に違反し、
かくのごとく
社会民主主義をまつたく曲げ、そうしてこれを
資本主義に奉仕させようとしておる。この根本
方針をも
つてして、いかなる公約も、いかなる時期においても、これはなし得ないことは明らかである。このことがわからなければ、結局
政治なるものは空虚のものであろう。從
つて金融
資本を
中心とする大
資本家に大衆を賣るところのもの、これが新高度民主主義であることは、明らかである。片山君は、これに対していかなる
考えを有せらるる、これが
質問の第一点であります。
第二点は、
経済政策の根本点についてである。第一、吉田
内閣時代は、まさにやみと
インフレとに
重点を置き、金融
資本、大産業
資本、大やみ組織者、腐敗堕落せる高級
官僚が、短時間において大衆の富を掠奪するのが、この
政策であ
つたのである。しかるに、これはすでにもう不可能にな
つてきた。そこで
片山内閣、ここにおいて
重点を移し、
國家資本と結合せる金融
資本が、
官僚統制という武器を持ち、このたびは、企業を通じ大搾取を行おうとしているのである。しかして低賃金
政策をとり、大量首切りを
中心とする企業整備を行おうとする。すなわち産業合理化を行おうとする。しかして、ここに労働教化を強いようとしているのである。
さらに土地の取上げは、ほとんどこれを禁止することなく、公然と行われている。強権発動を武器として、総ざらいの
供出をなさんとしつつある。驚くべきことには、
戰時中にやつたところの、かの強権作付法を、現在これを復活しようとしておるのは、今さき、この壇上から平野君が述べた
通りである。
かくのごとくして行うところには、中小商工業者は没落し、大失業者は発生してくるのである。これらのものは、すべてこの
片山内閣が金融
資本に奉仕するために、大
資本家に奉仕するために、集中的に行われておるのではないか。しかして、その基礎のもとにさらに貿易を再開し、外資を導入しようと試みておる。この実際の企図がここに現れておる。この点を述べるであろう。
実際上、このためには
官僚統制を強化し、そうしてこれによ
つて、いよいよますます統制を強化しようとしておるのである。この点は、片山君が明らかにした
通り、統制の
責任は
役人にありと言
つておる。
役人がもつような統制、いよいよますます
官僚統制を強化せずして、何が來よう。さらにまた公團方式、これが
役人において行われる。これも
官僚統制を強化するものである。
國家管理方式、これらも、すべて
官僚統制を強化するものである。加うるに、
中央機関の
地方出張所を置き、せつ
かく自主化したというこの
地方制度に向
つて、
政府が
地方出張所において、この実際上の機能を奪おうとしておるである。(「自由党と結託せよ」と呼ぶ者あり)
社会党がこの点を衝かれれば、いよいよますます苦しくなるために、大きい彌次が飛ぶことは、ここでは覚悟の上である。何ぞ恐るるに足らんやだ。
第二に、現在普通銀行は
資金がますます欠乏しつつあり、
日本銀行にますます依存しようとし、さらに
日本銀行は、安本並びに大藏省に依存しようとしつつあるのである。このことは、特に独占
資本の利益と、その意図を、安本並びに大藏省を通じて行われるところの、最も驚くべき事実を発生せしむるものである。
かくして重要産業は、今や
政府の手中にあるところの復興金庫に殺到せざるを得なくな
つておるのである。この事実は、次のことによ
つて証明せられる。
全國銀行の貸出は、昨年九月には七十億であつた。しかるに本年三月には二十九億に下つた。これだけ銀行の能力がずつと減
つておる。貧弱化しておる。しかるに、これに反して復興金庫においては、昨年の九月には五億を貸出しておつたにすぎないが、今年の三月には十六億を貸しておるのである。一方が下
つて、他方がどんどん上りつつある。從
つてこれは、
政府、
官僚の手に金融がますます握られておるということを
意味するのである。
かくのごときは、
首相が産業民主化
政策を云々しておる、すなわち高度民主主義の一端とい
つておるこの民主主義が、事実において裏切られておるのではないか。
片山首相はいかなる見解をもたれるや。
第三点、
経済危機の原因についてである。第一、
経済危機の原因を、
片山首相並びに和田安本長官は、
敗戰の結果であると言われておる。これはあたりまえ。しかしながら、この
敗戰の結果はいかんともしがたいものではないか。これは吉田
内閣においても、吉田
首相その他が、たびたび言つたところである。
敗戰の結果であるから、いかんともしがたいということにおちつけば、これは何ら克服策を見出し得ないではないか。大事なことである。
その次は、人口の増大、これは
引揚同胞が多くな
つてきたということを
意味する。從
つてこのことは、いかんともしがたいことである。このことをも
つて、
経済危機の原因とするならば、これを克服する途は絶対にない。
意味をなさないことである。
しかるに、この次に加えました全
國民の消費に対する欲求が、非常に旺盛にな
つてきた。はたしてそうか。現在大衆の欲求は、実際食えないから、実際著るものがないから、実際住むものがないから、食わしてくれろ、著さしてくれろ、住宅を與えよという、最低の
人間生活の保持のための切なる要求ではないか。これをしも
國民の消費に対する欲求の旺盛なりとして、彈圧しようとするならば、人民に対して、これは死を強いるものでなくて何ぞや。まつたくこれはひどいことを言
つておる。
かくのごときには、実際吉田
内閣でさえ言わなかつた。片山君が保守反動といつた吉田
内閣でさえ、こういうひどいことは言わなか
つたのである。(
拍手)和田君のごときは、
官僚だから、こういうことに対してまつたく無感覚である。(「
社会党は共産党に
拍手しているぞ」と呼ぶ者あり)共産党が正しければ、
拍手するは正しいのである。
第三は、賃金と物價の惡循環、これこそ、
インフレの最大の原因だと言
つておる。しかしながら、この賃金と物價の惡循環は、やみが存在するため起
つておるのである。もしやみを徹底的に排し、ここに固定したところの統制
経済ができるならば、何でそこに賃金と物價との惡循環があり得よう。こういうことは、結果をも
つて原因とするところの、まつたく
経済の無知のいたすところである。
経済知識の何らない証拠である。すなわち、これを通じて見れば、片山君といい、和田君といい、まつたくブルジョア自由主義的な
考え方である。自由党の見解と異なるところなきのみか、一層惡いことを
考えている。(
拍手)すなわち、
社会民主主義の
立場を放棄し、まつたく
官僚に屈服していることを示すものである。自由党にしろ、
社会党にしろ、何ら施す途なく
官僚に操られて、そのまま、もとの自由党でも社會党でも、同じことを言わざるを得ない悲劇が生じてくるのである。すなわち、和田君が現在
危機突破の
中心勢力とな
つているのは、偶然ではない。すなわち、
官僚の力が一貫して通
つているということを
意味するのである。(
拍手)
しからば、わが党の見解はいかん。
経済危機の原因は、腐敗堕落しておるところの
官僚統制があるゆえである。この腐敗堕落している
官僚統制、実際上金融
資本、大
資本家、封建的やみ業者と、この堕落せる
官僚と結びついて、短期間に大もうけをしようとして一大投機をなし、一大犯罪をなす。やみと
インフレをあお
つておるのである。ここにこそ、まさに
経済危機の根本的原因が存する。すなわち、やみと
インフレとが旺盛である場合に、たれ人も投資、投機、すなわちスペキユレーションをやるのでなければ利益を得られないのは、当然のことである。そうして、ここに莫大な隠退藏
物資を生ずること、また当然である。さらに
資本家は
生産しても、もうからぬ。
生産をするにも、やみがもとである。從
つて生産をサボるのは当然である。
さらに、彼らに長期にわたり投資をすることをサボ
つている。水谷君などは、よく
考えておくがよろしい。
石炭などに対して投資が行われないのは、
石炭は少くとも二十年間かからなければ、回收することはできないのである。從
つて二十年先の見究めがつかぬ限り、ここに投資する
資本家はいない。だから、投資に対しても、またサボが行われるのは当然である。從
つて労働者は、最低
生活を維持するために、汲々としておるのである。賃金では食えない。やみをやらなければならぬ。買出しもやらなければならぬ。外にい
つて働かなければならぬ。これに汲々として、まつたく疲弊困憊しているのである。いかにしてここに
生産意欲を生ずるか。生じないのはあたりまえだ。だから
生産が全体として急速に萎縮していくことは当然である。これがこの
経済危機の根本的原因である。
実際上の事例をも
つて申しますれば、特殊物件に関する犯罪行爲が、最近どしどし暴露されつつある。第一は、世耕情報事件である。第二は、亀弁情報事件である。第三は、雜品輸入協会事件である。第四は、京都自由クラブ摘発事件である。これらのものは、政党も、
官僚も、
一般の封建主義者も、いかに腐敗堕落しているかを示す、最も重大なシンボルであると言
つてもよろしい。これに対しましては、新聞は某大政党が
関係があるかのごとく報じている。はたしてこれが眞相はいかなるものであるか。この
内容を
発表し、さらにいかに追究して、いかに徹底的に正常ならしめるかについて、片山君は高度民主主義の
立場から、徹底的にこれを処置する
義務ありと信ずる。それゆえに、これに対する
内容の
発表及び処置
方法について、特にお答えあらんことを
希望するのである。
その次は、暴力團の事である。現在やみを徹底的にやる者は、皆組織的暴力を用い、これによ
つて相手方に恐怖心を及ぼし、これによ
つて大やみを組織し、大やみを遂行しているのである。これらに対しまして、片山君が
内閣を組織する前から、ぼつぼつ暴力團狩りが始まりましたが、特に片山君が
内閣を組織して以來、ややこれに勢を得て、圧倒しつつあるかのごとくであるけれども、まだまだ足りない。これを徹底的に、いかなる
方法をも
つてやるかということに対して、特に答えられんことを望む。さもなければ、人々は安心することはできない。やみを撲滅することはできないのである。
さて、農業
生産物の
價格の不当不正のことに関してでありますが、このことは、前の農民党の綱島君が特に詳細に述べましたので、私がこれ以上述べる必要はないと信ずるのである。しかしながら、ただ一つだけ言
つておきたい。これは実例である。今の公定
價格でも
つて供出をするならば、今の報獎
物資に対してどれだけ受取れるかというと、わずかに半分だ。いかにみじめであるかがわかる。戰前から工業
生産物と農業
生産物との差ははなはだしかつた。さらに戰後における大
インフレによ
つて、一層ますますひどく
なつた。その結果が
かくのごとく現れておるのである。報獎
物資と言うのは褒美だ。鼻くそみたいなものだ。その鼻くその半分にもあたらない
價格で賣
つているというに至
つては、まさにみじめそのものではないか。
かくして平野君、これでも
つて、君は
供出がはたして有効に行われていると思うか。こういう頭の惡さじや、てんで問題にならぬ。
さてさてこれに対して、さらに今度の物價
政策においても、一方においては、工業
生産物は戰前の六十五倍乃至七十五倍と言いながら、他方麦は四十八倍だ。すでにこの開きがある。開いているものを、さらに開けようとしている。ここに産業
資本家、金融独占
資本家に有利にして、これに農民を奉仕せしめよ、農民を奴隷化せよという
観点が、明らかに現れているのである。実際こういう
状態であればこそ違法である。強権を発動しなければならないのである。
強権を発動するにあた
つては、特に市町村
食糧調整委員会の承認を得ることにな
つている。この強権発動の問題につきましては、去る議会において、
社会党も最初これに反対し、さんざん揉んだあげく、
社会党はやつと、これを市町村
食糧調整委員会の承認を得てという條件で承認したのである。しからば現在行われている強権発動は違法である。その違法を、平野君は一体責めないのはどういうわけか。これらをやつた内務
官僚の
諸君に対して、徹底的にこれを摘発し、これを檢挙すべき
義務ありと思うが、いかん。その際にこの強権発動に反対したのは、わが共産党農民党の北君だけである。この強権発動に徹底的に反対した。いかに正しかかとつたいうことが、今わかるではないか。
社会党の閣僚
諸君、これに対して重大なる
責任を感じ、この後の処置に対して十分なる回答を與えられんことを望むものである。
さらに強権的作付法をも
つて、軍閥的強権を模倣するに至
つては、まつたくあきれかえつたものである。さらに土地の取上げを肯定するなど、
かくして農民の耕作意欲はまつたく滅却しつつある。現在では、首をくく
つて死んだり、あるいは氣違いに
なつたり、あるいはまた土地を放棄し、やみ屋になろうとしたり、いろいろのことが起
つている。持
つていても、瘠せている土地はどんどん耕作面積からこれをはねつけておる。こういう
状態で、はたして
食糧問題が解決できるや
否や。まつたくできるものではない。從
つてこの最大の原因、
経済危機の最大の原因、しかも根本的な原因は、
官僚統制が腐敗堕落しているためである。同時にこれが
政治の腐敗堕落と密接にくつついているということである。それゆえに、民主政権を樹立し、人民統制によ
つて思いきつた
政策をとらない限り、この
危機を克服することは不可能である。私はこの
政策、いわゆる人民統制をとるというこの
政策について、片山君がいかに
考えるかを聽きたいのであります。
第四点、これは
危機突破
政策であります。片山君及び和田君は、
危機突破
政策の最も根本的なものは
生産の増強だとい
つている。しかしながら、現在のごとくやみと
インフレとがあれば、先ほど言つたように、
生産の増強というようなことは、まつたく不可能である。まずやみと
インフレを撲滅して、しかる後こそこの問題は論ぜらるべきである。こんな問題は、全然問題にならぬ。しかるに傾斜
生産をも
つてこの
中心的な
生産増強をやろうとしている。そこに
石炭と、鋼鉄と、輸送力とを、この
重点にしているのである。しかしながら、これは既に吉田
内閣が一月から
行つて、
決定的に失敗しているではないか。ここに数字に現われているのである。
すなわち、
計画の遂行は、
石炭において、一月九三・四%、ところが三月には、さらに下
つて九二・一%である。けさ新聞を見て五月分がわか
つたのでありますが、五月分は九一.一%、どんどん下りつつあるではないか、これではたしてできるか。これがほんとうの傾斜
生産である。
その次は銑鉄である。銑鉄におきましては、一月は九三・一%、しかるに三月においては、破局的な
状態となり、五四・一%しか遂行されておらない。なるほど五月におきましては、二万トンを
生産したと言
つて、やや
計画に近づいていると言われているが、この遂行率は、まだ十分調べ得ないのでありまするけれども、三月の
計画は二万九千八百トン、だから、この三月の
計画に及ばざること九千トン以上である。この
状態は、決して改善されておらないのである。
鋼材に至りましては、一月に七六・六%、三月は非常に下
つて六七・八%である。五月におきまして、やや回復したといいますけれども、三万九千六百トンである。三月の
計画の四万八千四百トンに比較すれば、及ばざること九千トンである。決していいものでないのである。しかるに
かくのごとく、傾斜
生産自体において失敗しているのみならず、この傾斜
生産が、他産業に対して実におびただしい惡影響を及ぼし、やみと
インフレとを煽り、縮小再
生産をや
つていることは、
諸君のとくに御
承知のことと思ひます。
ところで、
かくのごとく
石炭、銑鉄、
鋼材のごときは、やや好轉したようなこの時におきましても、五月においては、このとき既にもつと下
つていたのを、先月に比較して、火力発電が二〇・五%減、セメントが四・五%減、石けんが三六・五%減、マッチが一四・七%減という、驚くべき事実が現われているのである。いかに他産業を
犠牲にし、そしてこの
石炭、
鋼材、銑鉄に有利に導いたかがわかる。
しからば、この
石炭、銑鉄、
鋼材は、たれが所有しているか。これは三井、三菱、住友、その他の巨大
資本家、金融
資本家が、これを握
つていることは、明らかではないか。
諸君のなすところは、すべてこの
観点である。ここに集中するために、あらゆる産業を
犠牲にし、これが全人民の
生活を破滅さしているというこの事実、これを
諸君は記憶しなければならないのである。それゆえに、傾斜
生産は国家
資本と結びついて、巨大金融
資本の利益を擁護するものである。それ以外の何ものでもない。
しかるに、さらに重大なることは、基本
資材が得られないということで、輸出によ
つて基本
資材を得ようとしておる。しかるに
食糧が現在は足らない。輸出するならば、
食糧の輸入に充てなければならないのに、これを
犠牲にしまして、そうして大
資本家、金融
資本家の利益のために、われわれの
生活を
犠牲にして、基本財を輸入するというこの意図は、実に驚くべものである。
食糧の輸入において、すでに莫大なる海外負債をも
つている。しかるに、なおかつ基本
資材を輸入するために、われわれは莫大の負債をもたなければならない。
それから和田君は、特に
生産増強ためには、
労働者の
生産能率を向上しなければならないと言
つている。そうして現在の
生産能力は、戰前に比較して、二分の一または三分の一に低下したと言
つて嘆いている。しかし、これの
理由に対して和田君は、喋々として数百言を弄しているけれども、これはまつたく誤りである。この低下した
理由はいかん。これは
資本家が
生産をサボし、投資をサボし、
生産設備が崩壞し、そうしてスペキユレーション、投機に熱中したためだ。從
つて労働者諸君は、飢餓の中に労働を強いられている。
かくのごとき
状態において、はたして
労働者に
生産能率を上げることを要求することが正しいであろうか。まつたく間違
つているのである。
事実こういうことが現われておる。これは全逓大阪
中央郵便局支部
食糧危機突破大会から、私あてに來た電報でありますが、われらまさに死に瀕す、通信事業また停止せんとす、こういう電報をよこしておるのである。こんな
状態で、いかにして
生産の能率が上ろう。さらにまた、これは福岡
地方の電氣産業労働組合からの報告でありますが、彼らは、今欠配三十日、米價は二百七十円である。從
つて火力発電所の出動率は、わずかに五〇%に低下し、いい所でも七〇%しか上
つておらぬ。そのために、実際需要を必要とせらるる電力は、四十万キロワットであるにかかわらず、現在の
生産は、わずかに十万キロワットである。これは必要量の四分の一であります。昨年の六月でさえ二十七万キロワットあ
つたのでありますが、それの三分の一弱に落ちつつある。この原因がすべて欠配にあるということを、彼らは主張しておるのである。
人間が足りない。
石炭を放りこむ
人間がいなくな
つているからだ。いかにしてもねこれを救う途はない。
石炭にあるのではなく、このことは、実に
食糧にある。このことを、水谷君、よく覚えてくれよ。(笑声)
しかして中小商工業者は、一週間に三日休業せざるを得ないのである。その結果は、精米所また休業し、從
つて一層ますます遅配を生じつつある事実がある。また梅雨中には水力発電がよくなるので、発電装置を修繕するのが定例であるけれども、現在はそれができないのである。從
つて來るべき渇水期に至
つては、電力の破滅的な減少、これはもう約束されている事実で、いかんともしがたいことになりつつあるのである。從
つて現在重要なことは、
食糧問題を解決することにある。
さらにもう一つ注意することは、隠退藏
物資が莫大なることである。これを摘発して、国営によ
つて重要産業に投下するならば、あえてあの暴虐なる傾斜
生産という
ばかばかしいことを行わなくとも済む。要するに、隠退藏
物資を摘発することを好まないがために、特に傾斜
生産に熱中するのである。すなわち、隠退藏
物資を摘発することは、腐敗堕落せる
官僚が破滅することである。大やみ業者が破滅することである。大
資本家が破滅することである。從
つてまた大金融
資本家も破滅することである。それゆえにあえてこれをなし得ないのである。どんどんやれ。
木村内相の報告によれば、昨年中わずかに八億いくら、今年は二千何百万円にすぎない。こんな
ばかげたことでどうする。徹底的に数百億円、数千億円と言う大隠退藏
物資を摘発せざる限り、断じて
危機克服はできないのである。(笑声)現にこの問題をめぐ
つて、世耕事件その他の数個の事件の起
つておることは、
諸君の
承知せられるところである。本日ここにこの
内容が
発表せられることを約束せられておる。何ゆえにこれを
諸君が笑ろうのか。
從
つて現在の
状態においては、この企業を通じての大掠奪の手段、これを否定して、人民のために
生産増強をする
政策、この
政策に轉換しなければ、絶対にいけないのである。すなわち、企業の黒字云々を問題にせずして、全人民のために赤字をなお構わずどんどんやるところに、この
危機を突破するところの重大なる根本的な因子があることを、
考えなければならないのである。これに対して、
片山首相はいかなる見解を有せられるか。併せて和田君からも返答いただきたい。
第二に、国民の消費を切詰めて
生産財を確保し、
計画的
経済の秩序を確立しようと言
つている。けれども、国営に対して何ら触れず、あくまでくされ果てた
官僚統制を強化するというのに、はたして国民が消費を切詰めることを
承知するだろうか。現にもしそれを
承知するとするならば、われわれは死に瀕しなければならない。座して死ぬような
ばかはいない。断じて秩序は守られないのである。このときは、暴動が起らないとたれが保証し得ようか。
そこで、大口新円所得者の不当購買力に対して効率課税をするとい
つて、これにつきましては、特に
社会党の
諸君は
拍手喝采して、加藤勘十君がこれを述べたときにもね
拍手喝采した。しかしながら、具体的の
政策は何もないじやないか。何を
発表したか。何もないじやないか。だからこれができないことは、四党協定においてこれをやらない。新円登録はやらないということを水谷君が保証した。水谷君が
社会党スポークスマンとしてこれはやれないということを保証した。しからばこれはやれないはずだ。ことに栗栖大藏大臣は民主党の出身である。民主党はこれに反対しておる。さらに栗栖君は自由党になお近い方であるからであるから、いよいよますますこれに反対するであろうことは、当然の理である。(
拍手)從
つて、これを避けるために秘密預金なるものを
考え出した。この秘密預金を
考え出したところに、この新円登録を
決定的に無効果ならしめることを
意味するのである。現に
片山内閣は、これを否定しないじやないか。まずこれを打破らなければならないはずである。これらの点に対して、具体的な
方法を指示せられんことを望むのである。
次に、物價と賃金との惡循環を打切ると言
つておるけれども、平均賃金を千八百円と定める。これは実は千六百円が基準である。物価は上るから、その返りの利益で二百円やるというのである。事実は千六百円である。ところが、この千六百円なるものは、昨年の十一月から一月までの間の実際上の
労働者の生計費を基礎として定めたところのものである。しかるに、現在に至るまでに、この物價は二倍以上に上
つておる。從
つて千六百円では、生計費の半分に足るか足らないかというような
状態である。でありますから、もしこれに釘づけして、さらに物價を戰前の六十五倍とか、和田君は今度言い出した。この前は七十五倍――始終動揺するのが、これが
官僚の特性である。(
拍手)和田君の特性である。人の顔を見ちや、七十五倍、六十五倍と、始終きんたまが動揺しておるのである。
かくして、ここに二倍半ないし三倍の物價騰貴になるであろう。これでも
つて、千六百円の
生活費でも
つて、
人間が生きていけると思うか。この点を十分に解答してもらいたい。
さて、ここに
鉄道運賃のことでありますが、これを拔打に三倍半にしようとしておる。これは物價騰貴の先がけである。これが上れば、すなわち交通費が上る。一切の運搬費が上る。これは物價を上げるのに最もよい口實になるのだ。しかるに、これを上げるには議会の承認を必要とすることは、昨年の議会において明らかに声明せられておるところである。同時にまたこの問題は、鉄道事業法によ
つて、一ヶ月前に告示することが必要である。しかるに、これを拔打ちにやろうという、こういう乱暴なことをや
つて、
物價引上を合理化そうというところに、和田君のずるいところがあると思うが、いかん。(笑声)
労働者は賃金を二千六百円要求しておるのでありまするが、現在物價が上り、將來を見透かしたならば、二千六百円というのは、実際安いのだ。やみが上れば、これは食えないのである。にもかかわらず、
労働者諸君は控え目であり、つつましいのである。(笑声)決して、
諸君が笑うように、いたずらにストライキなんかやれるものではない。控え目であり、かつこの
経済危機突破に対して最も熱意あるものは、
労働者諸君であり、農民
諸君である。これがここに表現せられておるのである。和田君はこういう
状態では行けないことを知
つておるものだから、実質的に消費を充実し、
配給を増加することを、喋々と述べておる。そう述べざる得ない。拔道はここにある。
しかるに、平野君は何と言
つておるか。平野君は、
食糧は
不足し、十月までには二十八日の欠配は必至だと言つた。これが合いますか。一方では増配すると言う。一方では欠配すると言う。これは何だ、まつたく、つじつまの合わぬ話である。ごまかしの最もひどいものと言わざるを得ない。この神聖であるべき議会の壇上で、二人の閣僚がおのおのいい加減なことを言
つておる。これくらい、
ばかにしておることはないのである。われわれ議員は、断乎としてこれに反対する。これに反対し、明確なる回答を要求するのである。(「いい加減とは何だと呼ぶ者あり」)
從
つてかかる
状態では、やみを
防止することは不可能だ。たれか坐して死ぬものがあろうか。やはり、やみは断じてやまぬ。しかるに
政府は、公團方式をも
つて、切符制によ
つてやみを防ごうというのである。公團方式や切符制で行われるのは、
石炭と石油と肥料と鉄鋼と石けん、マッチ、電球、地下たび。マル公はこれだけだ。これ以外にも、たくさんの物がある。ここからマル公はどんどん破壞されていく。しからばこの大本に火がつくのは明らかである。こんな切符制をも
つてしては、断じてやみをやつつけることはできない。
のみならず、この切符を
資材会社というものが買付け、現品をと
つて、これを一手に集めてやみをやろうという、大やみをや
つて、大もうけをしようという
計画は、すでにわれわれの十分確かめておるところである。これは腐敗堕落しておる
官僚とくつつけば、最も大きなもうけをする。これは莫大なる富をも
つて、権力にまで口を出すところの、大きな危險を藏しておるのである。それゆえに、この
政策は、低賃金による搾取の強化であり、企業面を通じて搾取するところの
政策である。また同時にこの低賃金
政策は、首切りに代るに自由退職を強要するところの惡辣なる企業整備である。
企業整備の名において大量に馘首することは、なかなかむずかしい。であるから、賃金を低くして、食えなくすれば、どんどんやめていく。自然にやめていく。これで企業整備をやろうという、悪辣きわまるものである。すでに、これは労働組合において憂え、各工場において発生しつつある事実であります。
かくのごとくして、飢餓に基いて
生産費は非常に安くなり、この安く
なつた
生産費をも
つて、ダンピング輸出をして、これで貿易を再開しようというのである。これではまつたく民族を破滅させることになる。その低賃金の上に外國
資本を導入するとすれば、これは外國
資本に隷属することになる。金融
資本家、高級
官僚が、この外國
資本を背景として支配権を確保することになるのである。すなわちかかる
政策は、まさに民族を賣るところの
政策と言わざるを得ない(「ノーノー」)これに
答弁を與えてもらいたいのである。
ところで、
労働者の要求は何だ。まず物價を
決定し、大やみを撲滅し、公定
價格を嚴重にした上に、賃金は団体交渉によ
つて定めるというのである。もし片山君及び和田君が、この
政策を固持してこれを強行せるならば、
労働者諸君は、まさに
生産を放棄せざるを得ないのである。
かくなれば、全
経済は崩壞し、まつたく民族を破滅に陷れなければならない。從
つて労働者諸君は、賃金闘爭によ
つて立ち上る――首切り反対、物價問題とともに、重大なる闘爭に立ち上る準備をしつつあるのである。
政府は、この闘爭を未然に防ぐところの
方法ありや
否や、これを聽きたいのである。しからば、わが党の
危機突破、
経済復興
政策の主眼目はいかん。根本的な点は、やみを撲滅し、
インフレを
決定的に抑え、
経済を常軌に立て直し、
社会主義への進展を準備することである。これなしには、何事もできない。
それで、その
政策を
実行するために、第一に全金融
機構を統合し、國営人民管理にしなければならない。これは巨大金融
資本の支配を撤廃し、
経済復興を金融によ
つて全面的に支持するところの根拠をこしらえることになるのである。やみの
資金を封鎖し、秘密預金を暴露し、そして巨大
資本家、組織的大やみ業者、腐敗堕落せる高級
官僚に徹底的に課税するところのこの基礎は、この銀行を握ることにおいてのみ可能だ。この
資金は、大体千五百億
程度はあろうと、われわれは推定しているのである。第二に、公債の全面的買上げ償却への賃金は、大やみ成金業者にこれを負担せしむることである。第三には、
石炭、鉄鋼、肥料、電力、セメント、海陸運輸機関等、重要産業の國営人民管理でなければならない。四は、隠退藏
物資の徹底的摘発、國営による
資材を運用することである。五は、土地の取上げの禁止、第三次農地改革による全耕地並びに山林原野の農民への交付。
生産費を償う適正農産物
價格、すなわち工業
生産品
價格と均衡のとれた
價格の設定、農民の民主的
方法による自主的
供出、農業必需品の完全
配給であります。第六には、
配給機構を人民管理に移し、そのもとに、各人に対し作業場並びに住居を単位として、
生活必需品を現物で支給する。これが大体收入の七〇%ないし八〇%である。これを現物で給與するために、現金の授受は大分なくなり、やみ
インフレは、まつたくここに即時的に徹底的に抑制せらるるのである。しかしながら、なおかつこの統制はどうしても苦しいのであるから、二〇ないし三〇%を自由市場にもたらし、人民の管理と公共團体の管理によ
つて、組織的に大やみ業者の侵入を防がなければならぬ。これを要するに、
官僚統制にかえるに、人民統制をも
つてすることである。
ここで重要なことは、企業整備についてでありますが、
政府は企業整備において、各
資本家の黒字
経営を主張しておるのである。
かくのごとくすれば、巨大
資本家のみを残し、中小商工業者は全面的に没落貧窮に追いやられる。莫大なる失業者を生む。これに小やみの嚴重取締をすれば、失業者数は大約八百万人と稱するのは、
政府の
発表するところであります。專門技術家の推定するところによれば、一千万人である。全家族を加うれば、まさに全人口の半分に及ぶのである。
政府の失業
政策は、三人家族、月八百円であるというけれども、これでは食えるものではない。しかも三段構えの関門を設けて、これを支給するのに制限を加えておる。しからば無統制の大闘爭が起る危險があるのである、
政府はこの
防止策をも
つておられるや
否や。