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1947-07-04 第1回国会 衆議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年七月四日(金曜日)    午後二時三十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十号   昭和二十二年七月四日(金曜日)    午後一時開議  一 國務大臣演説に関する件(前会の續)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより数議を開きます。    ――――――◇―――――――   一 國務大臣演説に対する質疑(前会の續)
  3. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 國務大臣演説に対する質疑を継続いたします。大神善吉君。    〔大神善吉登壇
  4. 大神善吉

    大神善吉君 日本民族存亡の岐路に立つておる今日、この危機を突破し、國家百年の大計を立てることは、われわれ議員の最大の責任であると思うのであります。政府としても、その責任を痛感せられ、日夜苦心しておられるものと深く察し、片山内閣のすでに発表せる挙國一致、四党協定政策根本趣旨賛意を表し、その態度眞実性に対しては、特に共感するものであります。しかしながら、政治は高邁なる理念をもつとともに、そのときどきに應じた具体案実行力実行速度にあると信ずるものであります。かかる観点からして、政府発表並びに答弁には、具体案実行力、その速度において、欠ける点多々あるものと考えられる。ここにおいて、以下各省大臣に対して質問を行うが、具体的に、から國民の前に実現を公約し得る内容を、簡單明瞭に、かつ具体案をもたなければもたないと、僞りのない答弁をしてもらいたいのである。  まず第一に、片山首相は、道義高揚に対し、精神革命の断行を強調しておられるが、この点については、全面的賛意を表するものである。しかしながら、政治家としては、これが実現をいかなる具体的方法によらんとするかが実に問題であり、すでに発表せられておるところの内容は、戰時中東條式精神運動大同小異にして、その成果のあがらざることを懸念するものである。道義高揚を口にする前に、政治家はみずから道義的であり、その施策、精神が一貫しておらなければならないと信ずるものである。しかるに今日依然として、正直者ばかをみる政治が行われている。片山首相が、政治家として道義高揚実現するには、まづもつて正直者ばかをみない政治実現することにおいて、勇敢であらなければならぬと思うのであります。  その具体例については、枚挙にいとまがないほどでありまするが、一、二の例をあげてみまするに、供出の問題に関しても、正直に早く供出したものは價格が安く、しぶしぶだしておるところの人間には、放出物資、あるいはまた價格を値上げするというようなことや、また、侵略戰爭とも知らずに、今次大戰の犠牲となり、生命財産を失い、現在最とも弱き立場にあり、苦しみつつある引揚者、戰災者、いわゆる戰爭犠牲者に対しては、ただ單に恩惠的、同情的立場をもつてするものではなく、キリスト教的人道主義立場から、大衆愛をもつて、これらの人の犠牲を償う具体的方法は、政府義務として考えなければならないと思うのであります。この点につき、首相所信いかん。確答を求めるのである。  第二は、國会國権最高機関であり、國民代表たる國会を尊重するは、論をまたさるところでありますが、今日すでに、國民代表たる國会を無視し、國民生活全般に重大なる影響を及ぼす主食價格決定鉄道運賃の値上問題等、一方的政令をもつて片づけることは、戰時中軍閥が、天皇の名において、勅令をもつて独断專制をなしたる態度と、大同小異だと思われるのである。私は物價改正の緊急なるところは認めるが、種々の緊急対策を、國民代表たる國会に諮らないということは、実にけしからぬと思うのである。この態度は、言行一致せざるものであり、言行の不一致は、政府國民に対し、ますます信を失う結果となり、政治の根本的破壞であろうと思うのである。率直なる答弁を求めるのである。  第三は、過去の日本政治がその場主義で、無方針であつたのに反し、片山首相は高邁なる指導精神をあげて、これに基く施政方針発表したが、かくの如き態度は、われわれに対し、新鮮なる感じを與えたるものと思うのである。しかし、首相政治理念が、観念的抽象論に終らずに、敗戰後日本社会のあるべき姿を明確にされたいと思う。  この新國土建設目標を確定することは、計画を樹立する上においても、ぜひ必要である。希望を失い、前途の方向に迷つておる國民に、目標と感激を與えるものである。もし首相が眞に平和主義人道主義に徹するならば、この理念に基く具体的な新らしい社会形態が、考えられるべきであると思うのである。眞に人道主義、平和に徹した新日本國土建設目標は、都市農村の対立を解消し、都市田園化農村都会化が行われたるところの、農耕一体の態勢であると信ずるものである。かく農工一体の新國土建設に驀直に前進することによつて、食料問題、失業問題等根本的解決が與えられる。それでこそ、初めて國家百年の大計となるというのであろうと思う。首相所信いかん。  第四、経済危機が民俗の危機と呼ばれる今日、片山首相もこの危機を率直に認め、これが打開のために、挙國一致耐乏苦難の道を歩まんとしておる今であるが、この危機打開の途はインフレ防止にあり、今日、日本インフレ防止は、講和会議の締結と、政府予算の大削減とを断行するにあらざれば、いかなる妙手妙案を施しても、絶対に不可能であると信ずるものである。しかるに、経済緊急対策において、ことさらにこの点を避けておる形跡がある。單に実行予算をつくて節約するというような微温的な態度をとつておることは、案全体に拭うべからざる疑惑を與えさせられるものと思われる。  國民に強く耐乏生活を要求し、インフレ防止を説くも、政府みずからが苦難の先頭に立たないで、政府予算の大削減を断行する勇断を欠き、むしろ反対に物價引上の先鞭は、タバコ、鉄道等官業事業によつて常に行われ、敗戰の今日、國土日清戰爭以前の状態になつておるにもかかわらず、官廳機構はますます厖大しておる。この矛盾せる事実を体験しては、國民のほとんどが釈然とせず、よつて当局の明快なる答弁を求めるのである。  第五に、官界刷新には多大の期待と関心を寄せるものである。國民の前に、これが責任をもつて断行されんことを切望するのである。しかしながら、政府発表には具体性を欠き、実行に成否を疑う点が多いのである。よつて次の項目に明確なる答弁を求める。  現在官吏亡國と呼ばれている現状に対し、官吏の人員整理を行う意思ありや否や。行うとすれば、何日ころ、何人くらいか。また中央集権から地方分権へと、官界刷新政府が揚げておるにもかかわらず、最近に至り、中央の出張所が各府縣に生まれておる事実があるが、首相は、この矛盾せる現状に対し、いかなる態度をとるや。これが整理のため、断固たる実行に移るや否や、この点特に御回答を望む。  第六、講和会議について、政府日本の眞の現状挙國一致、誠心誠意訴えなければならないと思う。ついては、海外引揚同胞の残しているところのあの資産につき、いかなる考えをもつておられるや。  第七、教育問題について、六・三制、新学制完全実施に関する決意について、伺いたいのである。教科書の問題について、文部当局の失政により、現在いかなる状態において子供たちに給與されておるか、文相は十分御承知のことと思う。新憲法によれば、國民教育機会均等が約束されておるにもかかわらず、かつ武器を捨てた日本國民が、文化國家として立ち直るために、まず教育優先考えられる。從つて教育に関する國費支弁について、私は首相藏相文相に対し、教育費用はすべて國費をもつて賄うべきであると思うが、いかなる決意ありや否や地方、かつまた一般大衆に直接負担させるという現在のやり方は、不当なものであるゆえに、断固これをやめてもらいたいと思うのである。  第八に、石炭官営問題である。この石炭官営問題については、特に水谷商工大臣にお尋ねしたいのである。昨日、水谷商工大臣答弁の中に、資本を與えれば、その資本が横流れをすると言う言葉を聽いたのでありますが、石炭業者に対し、あまりにも侮辱したる言葉ではなかろうかと思うのである。三千万トンの増産を強いられておるところの水谷商工大臣は、眞に石炭業と、眞にあの炭坑内の仕事と、炭鉱の現在の立場については、ご存知ないものと思うのである。われわれは少くとも炭鉱地に生れ、坑内に降り、ボタを背負つたことのある人間である。これを國管にして、はたして三千万トンの増産ができるか否やということについて、明快なるところり数学的発表はないではないか。ただ單に、具体性を欠いたところの、その場限りの答弁にひとしいと思うのである。眞に三千万トンを掘り出さんとするならば、地方炭鉱業者――その実地を十分に観察して、そしてその隘路を見出さなければならぬと思うのである。  しかるに、その隘路たるや、いかなる所にあるか。諸君、それは私が教えてやる。現在の官僚機構は、資材を請求しても、おれは縣廳役人である、この問題は復興院の問題であるから、復興院行つてくれと言う。復興院に行けば、その願書は縣廳を通して出せと言う。あちらへ行つていいのか、こちらへ行つていいのかわからないのが、現在炭鉱業者の困つている、いわゆる官僚意地ばりの中に迷うている姿である。(拍手)  こういう機構をもつて石炭増産を叫んでいるようなことでは、実際において三千万トンの石炭増産は、おそらくむずかしいと思うのである。國管をもつてやらんとするならば、眞の実情を知り、しかして後、初めて國管をもつて施行するならば、いかなる方法により、いかなる数字により、いかなるものによつて初めて三千万トンがあがるという実例をここにうたつてもらつて、これを実行してもらわない以上、ただ机の上の空論にすぎないと思うのである。(拍手)この点においては、水谷商工大臣の、特に明快なる約束のできるところのご返答を請うのである。(拍手)    〔國務大臣片山哲登壇
  5. 片山哲

    國務大臣片山哲君) ただいまの御質問の初めの部分でありまするが、精神運動のことであります。すでに申し上げましたように、政府考えておりまする精神運動は、経済運動産業運動、それらと切り離して行うのではないのであります。石炭をたくさん出し、食糧問題について國民に迷惑をかけないようにする精神運動であります。すなわち経済上の問題を、精神運動協力いたしまして、國民生活の向上をはかつていきたい。  それがためには、國民全体が乏しきをわけ合う意味において、一人の人、少数の人が自由を独占しないようにしなければならない。少数の人が自由を独占しておつたのでは、大勢の方々に自由を與えることができないのであります。われわれが、その意味において料理店あるいは飲食店を閉鎖しなければならないと考えたのは、すなわち、そのためでありまして、家庭に十分なる配給が行き渡るようにしなければならない意味において、料理店飲食店に辛抱を願つているのであります。われわれは、乏しい状態を分け合うようにするために、みんな忍んでもらうという意味精神運動であります。敗戰の苦痛が、まざまざと今日現れてきている結果、配給も遅れて、まことに申しわけないのであります。政府は極力この問題に努力しておるような次第であります。  なお、具体的な政策が欠けておるではないか、こういう意見が述べられておるのであります。これは一時に施政方針演説の中に全部を盛りこんで、全部の具体案を一時に出すということは、はなはだ困難であります。そこで、だんだんと具体的の政策を出して、すでに本日も発表致したのでありまするが、だんだんと、出しまするところの法案でありまするとか、あるいは追加予算案でありまするとか、あるいは各所管大臣発表いたしまするところの具体的政策が、施政方針の総論に伴う各論であると、御了承を願いたいのであります。決して各論をそのまま打ち捨てて、少しもこれを諸君の前に出さないというような趣旨ではないのであります。しばらくお待ちを願いますれば、必ず諸君のお手元にこれを発表し、御協賛を得るようになるであろうと考えておるのであります。  なお、正直者ばかを見ないような政策をやれという御意見があります。ごもつともでありまして、政府は極力その政策実現すべくやつておるのであります。正しい人の生活を護らなければならない。不正直な、よこしまなことをして、樂な生活をしておると思う人を、抑えなければならない。御趣旨通りつておるのであります。これをだんだんとやるのには、政府が陣頭に立つてやります。役人も一生懸命にやりますが、やはり國民大衆諸君も、御理解を賜らなければならないのであります。料理店をそのままにおいて置けとか、あるいは、ぜいたくな生活をする人の自由を認めろ、こういうような御意見があるうちは、やはり正直者ばかを見る社会になるのであります。(拍手)どうかこの意味において、國民全体の理解ある運動として、精神運動ということに御協力を願つておるのであります。  なお、戰爭犠牲者に対します御意見がありました。これまた御同樣、私どももさよう考えておるのであります。深く同情し、深くその立場理解をもつて、何とか早く、それらの氣の毒なる方々の幸福なる生活が得られるように、努力しつつありますが、何分にも御承知のように困難な問題であります。内地における戰災者諸君にも、早く住宅を、早く著るものを、早く職業をと考えております。また外地から引揚げてまいりますところの引揚同胞に対しましても、國内において戰災を受けましたけれども、しかし大そうした打撃を受けなかつた人々の同情が、これら引揚同胞にほんとうに雨のように注いで、この気の毒なる同胞を救済しなければならないという心に燃えておるのでありますが、非常に困難な問題で、財政上の問題も伴い、國際上の関係も伴い、むつかしい問題でありますから、これは十分努力いたしまして、御希望に副うようにやりたいと思つておるのであります。これらの問題について、なお具体的な問題は、所管大臣から御答弁があると思います。以上をもつて、お答えに代える次第であります。(拍手)    〔國務大臣森戸辰男登壇
  6. 森戸辰男

    國務大臣森戸辰男君) 大神君の御質問に対して、御答弁申し上げます。文化國家において、教育が重要なものであるとおつしやつた点については、まことに御同感であります。その点につきまして、この教育の重要な手段であります教科書が、思うように子供たちの手に渡らなかつたと言う事につきましては、まことに私は当局といたしましては、遺憾に存じ、責任も感じておるのであります。  實は教科書は、学んでおる子供にとりましては、精神的の主食でありまして、何としても、この主食配給は遅配なくいたしたいと存じてをるのでありましたが、いろいろな事情から、殊にこのたびの教科書が、全面的に、まつたく根本的に新たに編纂せられなければならなかつたという事情、また用紙不足、また印刷能力点等におきまして、非常に遺憾な点がありましたことは、また御諒恕願うことができるのではないかと存じております。  しかし、さような事情がありましたけれども、小学校使用のものにつきましては、少なくとも前期分につきましては、新聞関係の特別な御協力によりまして、全部完了することができました。中学校用のものにつきましては、用紙事情と、小学校教科書の発行に重点をおきましたことと、中学校の開設が遅れて、その生徒の数などの決定が四月当初に報告を得られなかつた等の関係で、遅れたのでありますけれども、しかし、國語そのほかの十一種は、すでに発送を終つておりますし、数学ほか七種は、目下発送中であります。その他の四種は、すでに印刷中であります。かような事情でありまして、前期分については、まずほとんど印刷を終りまして、ただいま配給の過程にあるのであります。おそらくは、配給機構におきましても、多少不備なところがありましたけれども、不日全國の兒童に教科書が渡りまして、教科書について勉強してもらうようになると存じております。  それから第二の御質問でありますが、義務教育の経費は全部國庫で負担するようにしたらどうかというお考えであります。六・三の義務教育でありまして、これはもちろん公共の費用國民が負担すべきものであることは、お説の通りであります。しかしその中には、教員の俸給を中心とした経常費と、建築その他を中心とした臨時費とがありまして、それらについては取扱いを異にいたしまするに、なお國費によつて直接支弁すると言う半面と、他面では、行政、教育地方分権方針でやらなければならぬという、新しい國の政治方針とがありますので、それらの関連において、これは総合的に考えなければならぬと存じております。かようにいたしまして、当局におきましては、これらの点を総合的に檢討いたしまして、目下関係方面とも打合わせて研究を進めている状況であります。簡單ながらご説明申し上げます。(拍手)    〔國務大臣水谷長三郎登壇
  7. 水谷長三郎

    國務大臣水谷長三郎君) ただいま大神さんから、炭鉱資金の問題につきまして、私が昨日述べました点、すなわち、実際炭鉱資金を貸出す場合において、最も困つているのは、炭鉱経理内容がきわめて不明確なる点と、所要資金を融資しても、はたしてそれがその目的に使用されるかどうか、その判定がきわめて困難なことであると言つたその言葉をもたれて、これは炭鉱経営者を侮辱するものであるというようなおしかりをこうむりましたが、私は現に事実をありのままに、大胆率直に述べただけでありまして、なにも侮辱したということはございません。(拍手)  さらにまた質問者は語を励まされて、一体石炭國家管理を断行することによつて三千万トンは出ないじやないかというような御質問でございましたが、私はそれに関しまして、やや詳細にわたりまして、何ゆえ石炭三千万トンを掘り出すために國家管理を断行しなければならないかということを、自信をもつて述べたいと思う次第でございます。  本年石炭生産計画三千万トンを樹立するにあたりましては、政治的、経済的諸条件、技術的諸条件等十分檢討の上、樹立されたものであります。すなわち、昨年度の石炭生産は、年間の計画が二千三百万トンに対して、約五十万トン程度不足を生じたのでありますけれども、この不足は、決して切羽の長さ等、いわゆる炭鉱の出炭する力が、それほどに達していなかつたというわけでは、断じてないのでありまして、力は十分あるのでございまするが、食糧の不安定なこと、坑木その他資材が十分注ぎ込まれなかつたこと、石炭價格が十分でなく、炭鉱は常に資金に悩まされ通しであつたこと等に起因するのでございます。三千万トン計画を樹立するにあたりましては、これらの点を適正に解決すれば、必ず達成することができるものと考えまして、この計画を樹立した次第でございます。  そのためには、まず資材については、少くとも第四四半期以降は、炭鉱要求量のほとんど全部を、継続的かつ優先的に注ぎ込む決意をもちまして、まず第四四半期鋼材二万五千五百トンの強度供出行つた次第でございます。資金につきましても、二十二年度下期十五億円の優先的放出計画を立てたのであります。その他食糧問題、價格問題賃金問題等につきましても、それぞれ計画を樹立して、その完遂をはかるべく、これまで努力されてきたようでございまするが、遺憾ながら資材のうち、鋼材坑木等を除いては、なお必ずしも十分な実績を示すわけにはまいらなかつたのであります。かつ二十一年中の資材の投入の不足等によりまして、二十二年度にはいつても、三千万トン計画に基く第一四半期生産計画六百七十三万トンに対し、約四十万トンの減産の結果となりました。  もちろん、この第一四半期の成績が芳しくなかつた理由の中には、四月の総選挙がございます。五月の、特に北海道における災害などがあるのでございまするが、さらにまた炭鉱一般資金不足に悩み、これがため資材入手に困難を來したことも、その理由でございます。すなわち、たとえばある炭鉱では、坑木を目の前に控えながら、従來の代金が未拂になつておりましたため、入手ができなかつたなどのこともあつたのでございます。これは炭鉱実情当局が的確に握ることができなかつた結果、資金融通の査定が、資金不足の折から、内輪に決せられた結果によるものでございます。  さいわいにいたしまして、現在までのところ、各種の隘路も逐次打開されつつあります。すなわち、資材問題にいたしましても、鋼材以外の物資の納入もだんだんよくなつてきておりますし、また坑木のごときも、一應息をつく程度炭鉱の保有があるようになりつつあります。特に最も大きな問題であつた炭價の前ぎめ制度も、急速に解決いたしまして、ごく最近、九月までの價格発表される運びとなつております他方運轉資金企業資金放出も、次第に円滑になりつつあります。  こうした状況に加えまして、炭鉱労務者は、片山首班内閣成立機会といたしまして、石炭復興会議を起こし、この石炭復興会議は、決議をして、七月一日より労資協調して一大增産運動を展開し、第二四半期六百五十四万トンを完遂し、さらに第一四半期不足分を同期間内に取りもどす決意をもつて增産に邁進しつつあるのでございまして、われわれといたしましても、その增産に非常な期待をもつているのであります。  しかし三千万トン達成のためには、下期において、上期の減産分も含め、約千七百万トン、すなわち上期計画に対し、三〇%の増産をしなければならないのであります。今後資材資金食糧等の需給の見透しは、まことに樂観を許さぬ状態であるばかりでなく、インフレの進行は、加速度的に後進しつつあるのでありまして、所要資材資金食糧等を確保することは、現状のままでは、非常に困難となつてくるものて予想されるのでございます。  すなわち現内閣としては、インフレ克服のための三千万トンの確保は絶対に必要であるので、これを乘切るためには、どうしても炭鉱國家管理行つて、常に炭鉱実情を知悉して、國の責任において、必要な資材資金食糧等を、迅速かつ的確に炭鉱に納入するとともに、從業者の生活意欲を最大限に高揚して、能率の増進を期し、三千万トン達成に立ち向かえるような体制を確立したいと思つております。政府は、この方法によりまして、初めて三千万トンの達成が可能であると信じておる次第でございます。(拍手)  ただいまの演説中におきまして、値段がきまり、さらにまた資材資金が十分に流れたならば、三千万トン達成は可能であると言うお言葉がございましたが、いかに適正な値段がきまり、さらにまた資金資材重点的に流れましても、労働者がこれに協力しなければ、石炭は断じて出るものではないのでございます。(拍手)  しかもまた、この乏しい資材の……(発言する者多し)しかもまたこの乏しい資材のもとにおきましても、資金資材をば重点的に炭鉱に流すためには、その反面においては、多くの犠牲産業國民生活犠牲もあるということを、経営者は断じて忘るるわけにはいかないのでございます。(拍手國家といたしましては、こういう重点産業の結果、多くの犠牲産業國民生活犠牲にも温かき考慮を拂いながら、この重点によつて流したところの資金資材が正しく使われるために、國家経営に対して直接責任をとる体制を主張するのは、まさに当然のことであると、われわれは言わなければなりません。(拍手)われわれは、こういう観点において、石炭三千万トン完遂のために、國家管理を断々固として断行する決意ありということを、ここにはつきり申し上げておきます。(拍手)    〔國務大臣木村左衞門登壇
  8. 木村小左衞門

    國務大臣木村左衞門君) 地方特別官廳を濫立する傾向があるが、これは地方自治の発達を阻害するものではないかというご質問であります。昨日船田君からの御質問の要旨と同一でありまして、西尾國務大臣が御答弁せられたことと記憶いたしておりますけれども、もう一ぺん繰返して申し上げておきます。  最近特に中央官廳が地方に出先機関を設けたことは、主として二つの理由によるものと考えられます。すなわちその一つは、從來ややもすれば府縣割據主義の弊害が生じやすい。行政面、特に経済統制面におきまして、わが國現在の情勢からして考えますときは、全國的に統制のある活動を保たしめるためには、地方に直轄の機関を設置することも、事実やむを得ざるものがあることは認められます。他の一つは、地方公共團体、特に府縣知事が、一般住民により公選され、その補助職員の身分が、官吏より公吏に切りかえられましたために、府縣の性格がまつたく完全の自治体として規律せらるるに伴いまして、從來府縣知事が國の行政機関として処理すべき各般の委任された國家事務が、今後各府縣本位の観点のみに終始してこれを運用すると云うような傾向が、えて生じやすいのでありまして、中央官廳が、地方廳の職員に対して何等権限を有せず、單に事務に関してのみ指導監督をするのみでは、それらの廳の権限に属せしめられたところの不安の念とによるものとおもうのであります。  しかしながら、わが國民主主義の確立の基礎をなすべき地方自治地方分権の確立の観点からするならば、これらの出先機関が激増することは、まことに好ましくないことでありまして、必要やむを得ないものについも、愼重に檢討の上で行われるべきものであると信ずるのであります。私といたしましては、機会あるごとに関係方面にこのことを申し入れ、努力いたしておるのでありまするが、特に從來知事の権限に属していた事務を、特別官廳との間に分割して、いたずらに府縣住民の困惑を與え、あるいは住民の日常生活にきわめて重要な事務を、府縣住民の何ら関與しない出先官廳が行使するというような事態につきましては、実情精査の上、今後極力なからしめる所存であります。(拍手)  なお、現在の情勢下において、縣廳と各省出先機関との権能を調整いたしまするためには、地方自治法に規定せられてある、いわゆる知事は、部内の行政事務に関係ある事項につきまして、國の行政機関の長を指揮監督する権限の適切なる活用をはかつて、遺憾なきを期したいと思うのであります。また日本國憲法の施行と同時に施行されました。行政官廳法により、地方特別官廳の設置及び廃止は、今後は法律をもつて行わなければならぬことになつたのでありまして、政府が独断をもつて地方自治の領域をみだりに侵すがごときことは、今後は起り得ないと思うのであります。これをもつて答弁といたします。
  9. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 綱島正興君。    〔綱島正興君登壇
  10. 綱島正興

    ○綱島正興君 片山内閣國民期待いたしておりましたものは、食糧問題の解決やインフレ問題の解決、この危急なる問題の解決と同時に、経済問題の復興に基礎を置き得るや否やということに対する期待をもつてつたのでございます。ところが、いま一つ期待いたしましたものは、民主立憲政治の当初でございまするから、これはどうしても、ほんとうの民主政治行つてもらわにやならないそのためには、大体御本人に、民主政治というものはいかなるものかの高度の御理解を要求するものでございます。(拍手)  そこで私は、第一点において、わずかな期間ではありますが、片山内閣が組閣前後より今日までに至るまでになしてきたところの行爲のうちで、はたして民主的に値するやという一点であります。それと後段において、片山内閣がとるところの政策は、わずかに発表されただけでござりまするが、これがはたして客観的妥当性を有するかいかん。つまり作文に終らぬ性質のものか、作文に終る方がほんとうの性質のものか、こういう二つをお尋ねいたすものでございます。  そこでまず第一に、民衆が不思議に思いましたことは、組閣にあたつて、大藏大臣は他党に讓つてしまう。そのあとには、どちらかというと、官僚としてもはや試驗済――あまりいい試驗済でもない人を連れてきて、官僚の古手を安本長官に備えつけた。(拍手)一箇月経つても、まだ遅配・欠配について何ら改善の途が見えない。十年このかた、それこそ軍閥の背後におつて、黒幕役者として、軍閥を自由自在に使いこなしたところの官僚は、何ら自粛自制の模樣もなく、依然として片山内閣のうしろに蟠居しておる。(拍手)かようなことが、結論いたしますと、さすがな社会内閣も、これは官僚に会うと、手も足も出ないという結論に到達する。(拍手)  そこで私は、この質問をいたすに先だつて、特に社会党出身の御閣僚に一言申さねばならない。と申しますのは、皆さんがただいま華やかなうてなの上に乘つておられるのでございますが、これは実は、片山君の人格が割合立派であること、特にはその私生活が清淨であること、これは私は保証する。実に立派なお方であります。  また社会党の中には、それこそ練達堪能の士が多勢輩出しておられる。こういう点から考えて、当然な帰結ではございまするが、しかしながら大正昭和をかけてね社会運動のために倒れた犠牲者が、それこそ官僚の奇計謀略によつて、あるいは獄屋の中に血涙を絞り、心にもなく父母に背き、妻子に背かれて、一生陰惨深刻なる生活の中に終つた者が数多くある。それらの人の白骨の上にこの内閣の礎石が置かれている事実をお忘れなきよう。(拍手)從つて諸君は、その線に沿うたる御進退が必要であることを特に申し上げておきます。片山君は、それこそ民衆を負うて組閣をいたされたのでございますからして、経済危機の突破と、経済復興の責任を、非常な重い意味で負担しておられるのであります。從つてこの大衆の生活に必然に根拠づけられたところの政策、すなわち物的・客観的妥当性のある政策によつて事を進めていかれなければならぬのであります。  まず第一に、私は片山君の行動がはたして民主的なりやという点について、四点がけお伺いいたします。第一点は、政策協定に際して、政策重点をおかず、もつぱら政権獲得のために猪突猛進をいたされました。政策協定の点については、轉進背走をいたされた。この点がはたして民主的であるかどうか、こういう一点であります。(拍手)第二点は、御承知通り、ただいまは民主立憲政治でございますからして、國会を重んずることは、まことに必要なことでありますのに、その國会の欠くべからざる議長、副議長の選挙を、閣僚選考との振合わせにおいて空しく遅延いたしたる点、これがはたして民主的行動と言えるかどうか。(拍手)第三点は、休会開け國会の劈頭において施政方針演説をなさなかつた点、これがはたして國会を重んずる民主的行爲と言えるかどうか。第四点は、政府より法律案を提出することをいたされておる。すなわち憲法において、國会は唯一の立法機関なることが明らかにされているにかかわらず、それに反して、かようなことをいたされておるのであります。これらの点について、私の意見を申し上げて、それこそ高度民主主義の角度より、明確にして十分なる御答弁を要求いたします。(拍手)  第一点でありますが、組閣準備のために、四党において政策協定をなされましたが、社会党は、選挙において公約いたしたるところの主要産業及び金融機関の國有、新円の登録、國債利子の打切等の政策を打捨てられている。そうして六月十日決定経済緊急対策中には、必要不可欠産業にして低能率なるものについてのみ國家管理実行するというだけで、お茶を濁しておられるのであります。(拍手)  現下の政情といたしましては、なるほど單独内閣もできますまいし、一党だけの政策のご遂行は困難であろうと、それは私も了解いたします。しかしながら、主要政策を全面的に放棄するならば、政権をおとりになつたはいかない。これは絶対であります。かようなことを無視なさつて、しかしてみずから民主主義の実行と言われることは、何事を言つておられるか、了解に苦しむのであります。(拍手)この点だけは断じていかない。これがいく理由がどこにございましようか。高度民主主義の観点より、明確にして適切なる御答弁を要求いたします。(拍手)  それから第二点、議長の選挙を引延べたる点であります。これは私も傍聽いたしておりましたが、各派交渉会において、どうしても延べてくれと、殊に社会党から言つておられた。なるべく延べてくれ。理由はわからんが、とにかく何かあるだろう。延べてくれと言われている。一体延べてよろしいことと惡いこととがございます。  ご承知通り國会法の第六條においては、召集の当日に、議長もしくは副議長が欠けておつたときは、選挙を行わねばならぬということが書いてあります。そこでどういうことをされたかというと、結局たれが考えてもわかつておる。自由党が入閣するかしないかの振合いによつて、この議長選挙を引延ばされたことに相違はない。そうすると、この閣僚の選考の事情から、國会議員のこの議長の選考を、その振合いに從属せしめるという観念が、はたして民主的考えであるか。これが國会を軽んじない考えと言えるかどうか。  さらにそれは内閣責任ではないと、もし言われるならば、私は聽こう。閣外における行爲において、総理大臣が引責をすることは、たびたびございます。決して政治家責任は机の上だけに限定されておると言えない。曰く、民主主義は大衆の根ざしの上に成立されるものである。さような愚昧な、それこそ官僚から習つたような議論を、民衆政治家は絶対されてはならない。(拍手)そうやることは、民衆政治家の、それこそ轉落でございます。  そこで、当時社会党の執行委員長で、内閣の首班を予想されておつた片山君といたしましては、その最も多数党の態度を速やかに決定させて、かような重大なる國会における行爲は、これを、それこそ憲法の條章通りに履行するようにいたさなければならないのでございます。(拍手)これをないがしろにされたる当時の首相のご心境を承ります。これは精細にお承り申し上げます。  第三点は、首相施政方針演説を遅延された点でございます。なるほど組閣後ひまがないというお話もございましようが、休会明けからは、すでに七月一日までには八日を経過しておりました。わが國においては、数多くの官僚内閣や軍閥内閣ができましたけれども、これらにおいてさえ、議会を開いて休会して、ほとんど機能を喪失せしめて、そうしてしばらくしてから施政方針演説をやるというような前例は、ほとんどないと思います。これは一体どういうお考えであろうか。  またいやしくも一党の――雇われてきた人ではない、長年の間政治をやつた人でありますから、内閣を組織した以上は、それは一体どういう線で政治をやるのだという性格くらいは、知つておられなければならぬはずである。御用意のために何日かかつておりますか。さようなことについて十分なる御態度つて、初めて民衆政治家たる資格を備えられるものである。この点において、議会を軽んじたというそしりをお退けになることは、絶対に不可能であると私は思います。(拍手)  それから第四点は、ただいまは新憲法による議会でございまするし、非常に嚴粛に法規を考えていただかなければならぬのでございます。憲法の四十一條には、國会は唯一の立法機関なることが明記してございます。そこでこの議会こそは、唯一の立法機関でございます。立法行爲というのは、議案の作成及び提案の件、審議決定の件と、二つよりなつているのであつて、唯一の立法機関である以上は、これを管掌することは当然でございます。  七十二條に、たまたま、内閣総理大臣は、内閣代表して議案を國会に提出することを得とございますが、七十三條に、内閣のもつところの職務権限が明記してございます。その中には、議案の作成ということはないのでございます。予算案の作成とか、外交、條約の締結とかいうようなことは列記してございますが、七十三條の、内閣のもつておる行政一般の事務のほかになすところの事務についての、特別規定は何もないのでございます。議会は実は立法機関であり、これが眞実の立法の機能をもつておるかおらぬかが、立憲政治のわかれ目でございます。  片山君は、この間、モンテスキューの思想などが滲透していないことが、わが國の思想界において、いくらかの欠点になるようなお話がございましたが、モンテスキューの説は、三権分立は嚴正にして守らなければならぬところの立憲政治の基本思潮でございます。(拍手)それであるのに、どうしてかようなことを混同いたされるか。もしも七十二條の議案を提出することができるということが、特別規定であるならば、どうしても七十三條にそれが列記されねばならぬ。何となれば、基本規定に対するところの特別規定というものは、これを明記しなければ効力がないのでございます。もしも特別規定なるものが書いてないけれども、あるのだというならば、法律はつくらぬ方がよろしい。さような法律は、讀んでも少しもわからぬことに相なるのであります。かようなことを論議いたされてはならない。  なるほど、ただいま法律案を全部議員から出せと言つても困るじやないかという御議論もございましようが、それならば、それこそ各派交渉会でも開いて、一應の決議でもいたして、前提的に行政府の機能を利用するというようなことが、しかるべき処置であると私は考える。(拍手)かようなことに、実は大政党の面目とか、從来のかかり合いとかいうようなことを念頭におかれて、相してこの憲法の大精神を蹂躪される。  一体立憲政治において、立法府が有機的に立法行爲を管掌しないならば、これは何でございましよう。なるほど審議はいたします。案作成と審議とが、実質的の内容をもたねばならぬ。そうすることによつて、立法府は形づくられるのであります。わが國の從來の審議なるものは、行政府の諮問機関みたようなものだ。法案は全部行政府でできておる。ちよつとここへ顔を出し、またそれを行政府にもつてつて、行政府が勝手に行うということから、憲法がありましても、実は非立憲きわまるところの立法であることは、得に社会主義運動をされたお方が痛感されておることである。(拍手)  そこで、こういう点については、片山君などは、敏感に鋭敏に御判断を願わなければならぬ。それに、そのことがなかつたのは――片山君はわずかな期間であるが、これはほんとうに立派な民主政治をやろうということを、抽象的には考えておられるだろう。だれでも学校にはいる者は、一番になろうと思つております。勉強した者だけが一番になるのです。なるほど片山君は、高度民主政治をやろうとは思つておられるだろうが、具体的な個々の事実において、これを裏書きするような態度があつて、初めて成り立つのでございます。この点を欠如いたさるならば、片山君の高度民主政治実行なるものは、その実がないと申さねばならぬのであります。(拍手)この点において、片山君の立派な御答弁がございまして、なるほど僕が不明である、片山はさすがだ、こう思われるような御答弁をいただきたいと思います。(拍手)  殊にお考えを願わなければならぬことを、皆樣に申し上げる。(「早く質問趣旨を明らかにしろ」「默つておれ」と呼ぶ者あり)質問趣旨を明らかにするのだ。默つておれ。大正の初年にいて、護憲運動というものがございましたことを、御記憶でございましよう。そうして、その護憲運動のときは、もはや帝大におられた時代と思いますが、そのときにおいて、民衆がほんとうに命を賭けて憲法を擁護しようといたしたのであります。  その後、官僚内閣や軍閥内閣、その他政党内閣等がいろいろな惡事を行いました結果、民衆はほとんどこの立憲政治を見捨てて、実は專制政治を謳歌する憲法停止論、議会不用論までも出るようになつて、そのすきに乘じて、この民衆の感情を惡用いたしましたのが、御承知通り軍閥專制時代でございます。その結果が、今日の状態になつて、それこそ亡國の民として私どもは立つておらなければならぬような、悲痛な状態に陷つているのでございますから、それらのことも鑑みられて、いかに間に合わせの行爲をなすことが、実は國家將來のために非常なる不幸をもたらすかを、勘案を願いたいと思うのでございます。  次に後段に、片山君たちの行う政策なるものが、はたして大衆性があるかどうか、客観的妥当性を具有したものかどうか、こういう点でお尋ねいたします。  その第1点でお伺いをいたしますことは、この緊急対策を拝見してみますると、資本主義の破綻をば、計画統制経済によつて埋め合わせようといたされておるようでございます。一体、私どもの考えによりますれば、資本主義というものは、本來統制経済と相容れぬものと考えております。資本主義というのは、貨幣の物及び労力に対する唯一なるところの支配力を認定いたしたのが資本主義でございます。法律によるところの統制経済なるものは、これを否定する角度において確立されなければ、確立する方法がないのでございます。そこでこの相衝突するところの二つの政策を、同時併用さるることによつて、今日の経済状態がかようになつた主要なる原因があるのでございます。  それに、ただいまのこの緊急対策の中に、どういうことが一体盛りこまれておるかと申しますと、この資本主義の欠点を統制経済によつて補足されようというのでありますが、それを具体化したところの方策でございましよう。まず第一番において、一定の角度において今日のコストを賄える程度の物價体系をつくり上げる、そうしてこの物價体系によつて大体の安定をつける、それから、それによつて賃金と物價との惡循環を、実質賃金を支給することによつて断ち切る、こういう趣旨であつたようでありますが、その最後に、結局このことは働くよりほかに途はないという御結論のようでございます。そこでこの働くよりほかはないという結論は、なるほどもつともでございますが、はたして物價体系というものが安定的に決定され得るか否かということが、経済上の問題で、これは安本長官や水谷君にお尋ねしたいと思う。(「客観的妥当性はどうか」と呼ぶ者あり)それがないかどうかによつて、客観的妥当性が支配される。  そこで私は水谷君たちにお尋ねをいたしたいと思うが、わが國の統制経済なるものは、その一番初めにおいては、どういうところから始まつたかと申しますると、低物價政策のための價格停止令から始まつております。ところが、この價格停止令が、十日を出でずして、でこぼこがまいりまして、遂に物件別のマル公制度という物が生れたのであります。  およそ貨幣経済の上において、物価体系というものが、ほんとうにぴつたりきたといえば、この物價停止令のその瞬間が、一番ぴつたりきておりましよう。にもかかわらず、一箇月を出でずして、新マル公を決定しなければやつていけないという事情は、物價体系の安定状態を捕捉するということが、不可能であるというのであります。そこでその捕捉することのできない物價体系なるものをまず捕捉して、安定するというところに、僕は客観的妥当性を欠いておると申し上げるのである。  そこで次に、この実質賃金によつて惡循環を断ち切るというのでありますが、一体物件を配布して行うところの実質賃金の給與というものの財源は、どこにお求めになるのであろうか、そういうものがどんどん出てくれば、何も今日のようにならぬでも、それを出せばよろしいのであります。どうしてもそういうことが一体行われ得ると想像されたか、こういう点について、私はこの統制経済におけるところの――資本主義下における統制経済資本主義とが、相衝突するものではないという明かな御証明を願いたい。もしもこれが衝突すべき必然性をもち得るならば、速やかに資本主義に改めるか、どつちになさるかを、明らかになされねばならないのであります。(拍手)これが第一点でございます。  第二点についてお伺いをいたしまするが、私は農民党といたしまして、農民の立場から第二点を伺います。ただいま片山内閣から提出されております政策の中で、緊急対策という総論にようなもののほかに、農民階級においては、公團方式による配給制度の確立ということが、大体決定的に法案らしくなつておるようであります。もう一つは、農業生産調整法というものが提出されることになつておるようでありまして、これも、しばしばここの壇からも、農相よりご答弁があつたのでございます。そこでこれがはたして具体性ありやいかん、こういん点について、私は伺わなければならぬのであります。  この第一問の食料品、その他油糧品でございますとか、その他の飼料品でございますとかいうものが、配給公團というものに一定されるということは、これはどういうことになるかというと、その公團組織は、全額政府負担であつて資金もほとんど政府のさしがねできまる。そして公團の役人は全部官吏であるということであります。そしてこれによつて、特に農民に關する方面から申しますれば、農民に対する配給やその他をやつていかれるということになりますと、一体農民はまつたく官僚に隷属することになる。そういうものをつくれば、官僚の古手の收拾場になりましようが、とても私どもの方ではやり切れぬことに相成るのであります。  第二点の問題、政府は農業生産調整法をつくつて官僚方式をもつて農民を統制しようとしておられると私は思うのであります。なるほど、この調整法案の原案を拝見してみますると、民主的方法でやるのだ、そして農作物の生産を確保し、農業の発達を促進し、農業生産の調整を行うということが、その目的のようであります。ところが、農林大臣は、その法案の中に見ますと、勝手に各府縣生産割当をなすことができるように決定されております。また府縣知事は、この割当に基いて市町村長に割当て、市町村長は、その割当に基いて各個人に割当てることができるようになつております。但し知事と市町村長とは、各その地區におけるところの調整委員会の承認を得て、これを行うということになつておるようであります。  ところが、かようなことが行われましたとしましたならば、わが農村は、それこそロシヤ式の農村監督組織と、ドイツ式の官僚組織とを、二重に背負わされる結果に相なるのであります。(拍手)その上に農村は、都会における大資本の攻勢を受けるのでありますから、今後の農村は、古今東西に比類ないところの苦難と隷属を前提とした農村というものができ上るのであります。(拍手)  本來、これは農林大臣御承知でもございましようが、特に御承知を願わなければならぬことは、農業というものは、自然に順應して行うものであります。土地の氣象・風土に左右されるものであり、人爲的に創造される機械工業や、都市商業組織などとは、基本的に態勢を異にするのであります。農民は、人爲的煩瑣を避けて、天地とわれとの間に生活の根拠をおいて、狡智や術策に傷つけられることは、はなはだ迷惑なのであります。天地を呼吸して、このことだけによつて、実は苦難多き朝夕にかえておるのであります。農政を司る人は、どうしてもこの農業の実質と農民の心情というものをお酌取り下さらぬことには、決して実態に合わないことに相なるのであります。この自然順應性、これはまさに中央集権主義とは大反対なものでありますが、かような中央集権主義を企てる官僚や政党がありましたならば、たとい農村出身者や、それらでなくとも、いやしくも文化の本質を解するものは、これに大反対するのが当然であります。(拍手)  この国会の中にも、農村代表なんということで投票をもらつて当選されたお方は、およそ半分ぐらいおられるでありましよう。かような議員が構成する国会において、この農村の基本的事情に相反する法案が通過するならば、まつたく農村の怨みとなすところであります。(拍手)わが国は、それこそロシヤとかアメリカとは違いまして、山河相接しておる。そうして氣象・風土・雨量、ことごとに違つておりまして、耕地は一枚々々に特性をもつております。この耕地のもつておるところの一枚々々の個性に順應するにあらざれば、農作物は絶対にできないのであります。(拍手)そこで、なるほど種類、作付その他いろいろなものを全部政府から割付けはするけれども、農地委員会の同意を得てやるのだということを申されるかもしれませんが、もしも本当に農地委員会の同意を得て、それを適正にやろうというならば、農民を全部委員にしなければ、これはできないのであります。(拍手)  およそ農業における精農というものは、一つの田畑について、四年なり五年なりつくらねば、精農にはならないのであります。農村の農地というものは、いろいろ一つ一つの作物についての個性をもつております。さようなわけでありますから、この事情をよくくみとつておられて、その上に法制を組立てなければ、絶対相ならぬ。村長のところへ行かねば、自分の前田に何をつくつていいかわからぬような農業調整法ができるようでは、わが農民は、その自立性と自由性とを永久に失うことになるのでございます。  かようなわけでございますので、私もは、どうしてもこの農地調整法と公式営團というものには、反対いたさなければならぬ。私は個人的には農林大臣はよく知つておる方でありますが、この方が永年の間、農村のために努力をされたことは疑いもない。從つてこの人の歴史のために、私は官僚の虜になつたり、さようなことはやめて、ほんとうの民衆政治家の本来の面目に立ち返つていただきたいということを希望いたします。  さらに私が皆さんに申し上げなければならぬことは、農民の待遇問題でございます。ただいま農村に対しては、いろいろなことが行われております。その最も遺憾となすものは、強制供出と強権発動でございます。(拍手)お考えください。昭和五年の最も豊作時というたときでも、六千六百万石しかできておりません。昭和六年には五千九百万石しかできておりません。ただいまの農村の諸生産を計算いたしますると、ややこれに近いのであります。戰前とただいまと比べて、最も戰前に近い生産をしておるものは、たつたひとり農村だけでございます。(拍手)しかるにこの農村に臨むこと何ぞ酷なる。他の生産業者が生産減退をしたことに対して、いつ強権発動をいたされたか。(拍手)一体生産責任をいつ追究されましたか。  さつき商工大臣のお話を聞くと、貸した金もいつだかわからぬという始末であつた。それでさえ何の御追究もなくして、別なことをしようとしておる。何のために農村にのみかようなる強権の発動をされたり、圧迫をされるのであろうか。なるほど、ただいま食糧飢饉のために、どうにかして生産を増したいという御希望のあることはわかります。けれども、今申し上げるように、農村生産というものは、一定の制限に制約されるのであります。氣象・風土・土地の豊度、そういうものに根底的な制約を受けるのであります。でありますから、いかように申されても、できないものはできないのであります。  特に私が遺憾となしますことは、この農民の労働賃金の生産費原價を計算するにあたつて、評價されるところの労働賃金の低額なることでございます。御承知通り農村は一面は企業家であり、一面は賃金労働者でございます。しかるに、これに対して臨むに、まことに低賃金をもつて臨んでおられる。どうしても農村は、ただいまでは企業家なる部面よりは、労働力を賣つておる。それだけの報酬さえも得ていない。  そこで伺いたいのは、憲法二十八條の團結権、團体交渉権、團体行動権を、この勤労者たる部面をもつておる組織農民の行動の上に、承認する御意思ありやいかん。(拍手)農民に対してだけは、このことは断じて許さぬ。勤労だけは勤労者以上に勤労しろという御意見であろうかどうか。そういうことをお伺いをいたしておきます。(拍手)  さらに憲法二十九條には、公共の用に供される場合でも、私有財産といえども正当なる補償を受けることが保障されております。しかるに農産物價格が、はたして正当なる補償に値するかどうか。押しつけられて、なるほどやみをいたす人もございます。でございますから、どうにか食つておるようなものの、公定價格で賣りましたら、米一斗賣つても、タオル一つ買えないというような状態でございます。それで一体農村がやつていけるどうか。なるほど、今度は價格をつり上げられるそうでございますが、價格をつり上げられても、おそらくは他の勤労者の勤労價格の一番低位におかれておる現在、しかもつり上げ率も一番低位であろうと私は予測する。かようなことで、一体清純なる農村が保障されるであろうか。  農村の文化は御承知通り低いのであります。牛馬と寝るような低い生活をいたしておる。ただひとり樂しむものは傷つけられざる文化を享有することでなければならない。農村において望まるるものは、でき得べくんば、將來大なる消費はいたさぬけれども、精神的に高度なる文化と自由なる蓄積をもつことであります。(拍手)これらのものが、根本的に破壞されるような法制でございましたならば、それは農民の心を知らぬ法制である。  ただ大臣諸公のお考えを願わなければならぬことは、農作物は決して官僚の机の上にできるものじやない。(拍手)土地の個性に制約されたる耕地の上に、それこそ農民の掌のまめを通じてできるのであります。(拍手)この一事をぜひお忘れないようにお願いを申し上げます。  さらに私は、皆樣に申し上げたい一條がございます。(発言する者多し)さらに私が申し上げなければならぬことは、農村生産費に対する農作物の價格の、あまりにも低位なることでございます。この点について、農村関係の諸大臣は、よろしく御勘考を願わなければならぬ。何がゆえに農産物をこう低位におかれるか。そうして今までほとんど正直なるものの代名詞であつたような農村が、やみをやらなければ食われぬような状態に、何がゆえになされたか。これこそ、ほんとうに農村の冒涜でございます。何がゆえにさようなことをいたされるか。おそらくは低物價政策の維持のために、このインフレーシヨンで何ともならぬにもかかわらず。それでも、ちつとでも農民だけは低位におきたいという考えから、ことさらに引下げてかれるものと言うよりほかに、どうしても考えられないのである。(拍手)これが相当なる價格決定せられることを希望すると同時に、今までの價格が、決して他の物價と対比して相当なるものにあらざる事実を、私は主張いたしますが、それが相当なる價格にある事実の、それこそ公平なる立場からの御答弁を願いたいのであります。  最後に、私はお願いをいたしておきたいことがございます。かような事情がございますから、農村についての保健衛生の設備、医療設備の普及、それらは絶対欠くべからざるものであります。私は農村出身でございますけれども、永年東京におりましたがねこのごろ農村に帰つて、つくづく私が感ずることは、どうしても医療設備を十分にやらなければならぬ。    〔「今ごろわかつたのか」と呼び、その他発言する者多し〕
  11. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に。
  12. 綱島正興

    ○綱島正興君(続) これらの設備を十分にしていただきたいということを希望するのであります。  そこで私は皆樣に、諸大臣にお願いをいたしますことは、諸君はほんとうに民衆の味方として起たねばならぬ。机の上の計算で、決して國家大計というものはできるものではないということであります。かようなわけで、皆樣にほんとうに心から農村理解してもらつて、その上の政治形態をつくつてもらわなければならない。もしもこれに反した態度政治組織を企てられるならば、農民は断じて反対をいたさなければならない。(拍手)農民党はわずかに八名でありますけれども、おそらくわれわれのこの主張は、全農村の肺腑に必ず通ずるのであります。そこで私は政府に対して申し上げなければならないことは、どうしても合理的に農村を育成する態度を捨てないようにしていただきたいということであります。  以上をもつて、大体私の質問を終りますが、はたして片山内閣政治行動は民主的なりやという四点。それから政策は客観的妥当性を有するか、いわゆる唯物弁証法的に保証され得るや、こういう二点でございます。これをもつて質問といたします。(拍手)    〔國務大臣片山哲登壇
  13. 片山哲

    國務大臣片山哲君) ただいま綱島君から、現内閣組閣方法に、はなはだしく非民主的な事項がある、こういうお話でありましたが、決してそういうことはありません。それについて理由をこれから申し上げます。  諸君もお考え通り、今日最も必要なることは、民族危機突破という問題であります。何とかして祖國再建に向かわなければならぬ。この問題には全國民一致し、またわれわれ議席を有しておつた者も、異口同音にその問題を論じておつたのであります。つきましては、その当時まず挙國態勢をつくつて、四党連立政権の確立が必要であろうこういうことに、まず一段話が進みまして、そこでできましたのが、四党政策協定と言うものであつたのであります。大体の方向を定めたのであります。  但し社会党といたしましては、社会党のもつておる政策政策として現存いたしておるのであります。この政策を時勢に應じ、当時の社会情勢に應じた適当なる方法によつて漸時行つていかなければならない。最も急を要するところの経済緊急突破政策は、社会党の考えておりますところの政策から、だんだんと出てくるのであります。これを順次順序を逐うて、時代に應じて出していかなければならない。こういう考えのもとに、四党政策協定にわれわれは應じたのであります。これは、社会党の掲げておる政策、公約せる政策に反対の方向に進んでおるものでは、決してないのであります。そういう意味から、私どもは、決して政党の公約を無視するというようなことを考えてもおらず、かつまた政権獲得に浮身をやつしてやつたようなわけでは、決してないのであります。  次に、議長選挙がなぜ遅れたか、こういう質問を私になされたのでありまするが、私は議長選挙が行われました翌日に、諸君によつて首班として指名されたのでありまするから、私が首班として指名せられた以前のことについては、お答えすべき筋合いではなかろうと思うのであります。(拍手)  それからその次の問題は、施政方針演説が非常に遅れたのは、非民主的である、こういうような御意見がありました。これは私が指名せられて、その後三党連立内閣が現在のようにできまして、いろいろ重要なる問題を協議いたしました。さしあたり議会を控えまして、重要なる法案を出さなくてはならない。追加予算案をどうするか、また緊急経済突破対策をいかに立てるか、こういう問題にまず頭をつつこみまして、そうして協議いたしたのであります。そうして十一日に、御承知通り緊急突破政策を出しましたのであります。その後これに基きまして、法案の制定、追加予算案の編成、こういう順序に進んでいきますと、どうしても二週間、三週間の時日を要するのであります。これが大体の見当がつきました後に施政方針演説をやつて施政方針演説をやつた後に、法案の提出、あるいは政策の説明、予算案の追加問題の提出、こういう順序を逐つて進んだ方が、議事の運営上適当であらうと考えまして、七月の一日に施政方針演説をすべく、議会に要請をいたしたような次第でありまして、決してこの間非民主的のやり方をいたしていないということを、御了承願いたいのであります。  また、先ほどの問題について少しく補足いたしておきますが、議長問題と首班問題を絡めて、てんびんにかけておるのではないかというような意味のお話がありましたが、決してそういうことはないのであります。眞に諸君の自由なる討議によつて決定していただいたのであります。何らその間に、非民主的の、策謀的なやり方はないということを、明らかにいたしておきたいと思うのであります。  さらにまた綱島君は、憲法の條項によりまして、政府に法律案提出の権限なし、こういう御見解を御発表になりました。これは御指摘になりました憲法第七十二條には、お示しの通り、「内閣総理大臣は、内閣代表して議案を國会に提出し、」と、こういうことになつております。われわれの解釈によりますならば、この議案の中には、法律案も含んでおると解釈するのであります。從つてその意味を、前内閣において、吉田内閣におきましても、明らかにするために、吉田内閣当時制定せられました内閣法に、この点を明らかにされておるのであります。内閣法は、政府は法律案を提出することができるのである、議案という意味は、法律案も含んでおるのであるという建前を明白にいたしまして、疑義を一掃することを、前内閣は明らかにされたのであります。こういう意味から、何らこの点は疑義がなかろうと、私は深く信じておるような次第であります。  以上のように、決してわれわれは非民主的なやり方をいたしてはいないのであります。経済政策におきましても、いわゆる民主主義の徹底をはかることによつて、産業の発展をはかりたいと考えますると同時に、政治方法におきましても、官僚的な、封建的なやり方を一掃いたしまして、眞に民主的なやり方に徹したいと、私どもは深く決意をいたしておるということを、さらに明らかにいたしておきたいと思う次第であります。    〔國務大臣和田博雄君登壇
  14. 和田博雄

    國務大臣(和田博雄君) 統制経済資本主義とが両立しないのではないかというお話でありますが、これは意見になりますが、私は必ずそうとは考えません。日本の今の現状で、資本主義の自由な放任に任して、利潤を追求して、必要な生産の要素が、社会的に見て必要でない部面へ流れまして、それだけの社会的な浪費をがまんするだけのゆとりが、日本にはありません。(拍手)その限りにおいて、われわれは必要な生産資材を、社会的な立場から、必要な面に計画的に配給していくだけの、計画性をもつた統制経済を、やらなければならないのであります。(拍手)この限りにおいては、統制経済資本主義というものとは両立し得ると、かように考えておる次第であります。  第二番目は、物價の点であります。それは一つにおきましては、流通秩序というものを確立いたしまして、一面においては、やみに流れるものを防ぐ、そうして物價の安定と賃金の安定とをはかつていきまするならば、経済の安定することは、当然に考え得られるのでありまして、緊急対策は、その立場から立案しておることを、御了承願いたいのであります。    〔國務大臣平野力三君登壇
  15. 平野力三

    國務大臣(平野力三君) 綱島君の御質問の第一点は、公團方式による方法は、はたして農民の意思に副うかどうかというお問いであります。私は、綱島君が農村自治主義という立場において、日頃農村のことについて一つの卓見をもつておられることは、承知いたしておりますが、この際私どもが行いまする公團方式は、現在農村において不正な肥料や、やみの肥料が横行いたしておりますることは、農民としてまことに迷惑でありますので、この際肥料公團法によりまして、正確なるルートによつて、正確なる肥料を農民に届けんとするのでありますから、この方式は、決して農民の意思に反するものではないと考えております。(拍手)なお、食料公團の問題につきましても、みそであるとか、醤油、乳製品、砂糖、アミノ酸、カン詰、これらの食料品を現在の配給機構のままにおいたのでは、不正なるやみ價格が横行いたしますので、これまた食料公團法によりまして、正確なるルートの上に乘せんとするであつて、これまた決して農民の意思に反するものではないと考えておるのであります。  次に、農業生産調整法について攻撃がありましたが、この農業生産調整法は、現在の最も困難なる供出制度と、農村生産というものを結びつける上において、各部落々々から農業調整委員なるものを選挙して、その部落から選挙せられたる者をもつて構成するのでありまして、これは少なくとも現段階におきましては、部落の選挙によるということくらい民主的なことはないと思うのでありまして、この点、また御了解を得たいと思うのであります。  次に、強権発動についての御意見がありましたが、私といたしましては、常に主張いたしておりますように、あくまで農業政策は、農民の理解と納得の上にその対策を立つべきものであるという信念をもつておるのでありまして、断じて綱島君御指摘のような強権発動等によつてのみ農業政策を行うものでは断じてありません。  次に、農民の團結権のことを申されましたが、これは近く制定せられますところの農業協同組合法で、農民がきわめて自由なる形の上において、農民のきわめて自主的なる組合を形成することの出來る法律でありますので、この法律が制定されるのでありますのならば、綱島君御主張の農民團結権の問題は、解決すると思うのであります。  最後に、米價の問題につきましては、農村生産品が都会との均衡がとれないという御議論については、私も綱島君同樣、常に考えている一人でありまして、私どもといたしましては、これらの物價体系といたしましては、米價を基準として農産物價を制定し、この農産物價を基調として、あらゆる物價が制定されていくところの方途を考えたいと思うのでありまして、この点に関しましては、綱島君の御議論に対しまして、相当傾聽すべきものありと思うのであります。以上、簡單に答弁します。(拍手)    〔國務大臣一松定吉君登壇
  16. 一松定吉

    國務大臣(一松定吉君) 綱島君に、農村の医療保健問題に関しましてお答えいたします。御承知のごとく、今日農村における保健衛生設備が十分に行われておらぬがために、それらの保健衛生に関するいろいろな面が低下いたしておりますることは、はなはだ遺憾に存ずるのでありまして、あなたの御心配はごもつともであると私も思うので、そこで今回は、この保健所法の一部を改正いたしまして、そうしてこれらの点について欠陷を補つて、保健衛生に対して十分の施設を試みたいと、新たに法案を提案することになつておりまするから、そのときには、十分に御協賛をお願いいたしたいのであります。  なお、今日私どもの非常に遺憾に思つておりますることは、特に農村における医者の数の少いということ、すなわち無医村が、この戰前には三千数百箇町村あつたのでありまするが、最近においては、それが千八百町村ぐらいに減少いたしたことは、これは喜ぶべき現象であります。このことは、都会に住んでおりまする医師の人々が、田舎に疎開したという結果であるのでありまして、食糧事情等から見て、そういうような現象を見ることは、私どもは保健衛生の上から非常に喜ぶのであります。しかしながらだんだん秩序を回復いたしまして、物價等や食料事情等が緩和されるようになりますると、これらの人々が、また都会に集中するという危險もありまするから、こういう点に対しましても、多い考慮を拂つているのであります。  なお一番困つておりますることは、いわゆる國民健康保險の問題であります。これが今日組合の仲間において、十分活用せられておりませんことに、はなはだ遺憾に思つております。但し、この点につきましては、医者の方も、藥の問題だとか、あるいは診療費の問題だとかいうような、いろいろなことがありまするがために、この組合員に対して十分の滿足を與えられないという今日の現状であります、こういうことは、國家として等閑に附すべきものではありません。この点につきましては、少くとも医者が、自分が保健衛生のために天職を全うするというような考えをもつていただきたいと同時に、これらの人に対しまする待遇改善だとか、あるいは藥の十分なる補給だとかいう点について、政府は大いに考慮いたさなければなりませんので、こういう点も考えている次第であります。保健所法の一部が改正せられますると、各町村にそれらの出張所みたようなものをつくりまして、それらの指導員や保健婦等を充実して、そうして医者がときどきにこれらの無医村その他を巡回して、これらの診療等に当らせるというような設備を考えておりまするから、あなたの御心配も、あまり遠からざるうちに解消しようと思うのであります。さよう御了承願います。(拍手)    〔綱島正興君登壇
  17. 綱島正興

    ○綱島正興君 片山君の御答弁のうち、納得いかないことを、再び重ねてお尋ねいたします。政策は捨てたのじやない、追つてやると申されましたが、新円登録でございますとか、國債の打切りとかいうようなことが、追つてなさることが適宜なものでございましようか。いかがでございましようか。かようなことが、一体それが追つてやるということに当たるのであるかどうか、こういう点を伺います。  それから、いま一つ特に伺いたい点は、議長選挙の件は、自分が総理大臣になる前であるからして、自分の答弁の限りでないといわれたのでありますが、それは、前のことはたれでも知つております。たれでも存じております。しかしながら、國会を重んじ、國憲を重んずるということは、非常にこれは重大なことでございます。そこで大政党を率いておるその首領というものは、その政党の行動が妥当でなければならぬことに、御注意していただかなければならぬし、そのことについては、依然として私は責任をおもちになることが、民主政治であると思います。(拍手)そうして、このたびの議会の行動において、社会党の立場というものが一番重きをなしておつたことは、私は相違ない事実であると思つておる。そういうことに対して、何ら責任を感ぜぬと言われるならば、これはなるほどよろしい。  それから、さらに私は……    〔発言する者多し〕
  18. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  19. 綱島正興

    ○綱島正興君(續) 安本大臣及び平野君の御答弁においてわかりましたことは、皆さんは、世の中にやみを退治することができるという建前から考えておられるのだということが、わかつたのであります。それが客観的妥当性があるかどうかということでございます。ただいま、世の中の生活者の中の、少くとも九〇%以上は、やみをやつておらぬ者はございますまい。そうしてそれが、しかも退治ができるという前提のもとに立案されるということに、私は客観的妥当性がない、さように考えるのであります。  それからいま一つ、自由主義経済において無用なる消費をするにたえないというお話でございましたが、何も私どもは、自由主義産業をやらなければならぬということを主張しておらぬ。自由主義産業をやらなければならぬということを、少しも私は主張しておらぬ。そのうちに、自由主義によるか、統制経済一本建の、資本を否定した立場によるにあらざれば、ものがやつていけないという主張をしただけであります。私は自由主義でなければならないという主張は、いたしておりません。その点は、誤解のないようにお願いいたします。  そこで私は、願わくばこの内閣において、世の中からやみがすつかりぬぐい去られるようになるならば、それこそ國民とともにほんとうに感謝いたします。しかしこれは不可能であろうと私は想像する。その点に妥当性がない。肥料公團とか何とかいつても、結構このやみをやるような経済機構になつておるから、官吏がやろうが、たれがやろうが、やみは出てくる。村のものがやつておるなら、まだいい。まだ話のしよう、訂正のしようがある。知りもせぬ者がよそから來て、人に会うのに二人か三人で、陰でやみをやられた日には、農村は助かりません。その点をもう一遍ひとつ聽かせていただきたいと思います。    〔國務大臣片山哲登壇
  20. 片山哲

    國務大臣片山哲君) 簡單に御答弁いたします。社会党といたしましては、新円問題に対しまして、独自の政策をもつておりまするが、先ほど申しましたような四党政策協定というものがありまして、その四党政策協定の範囲内において、現内閣は財政政策、金融政策をやつておるのであります。すべて四党協定政策の線に沿うて、新円問題なども扱つておるのでありますから、その点、御諒承願いたいと思います。  それから議長問題でありますが、私がここでお答えいたすことは、やはり適当ではないと存じますから、先ほどの答弁通り御諒承願いたいと存じます。(拍手)    〔國務大臣和田博雄君登壇
  21. 和田博雄

    國務大臣(和田博雄君) やみを撲滅しまするために、われわれといたしましては、緊急対策にうたつておりますように、必要な統制をやる物資については、今までやみに流れておるものを、やみに流れないような組織をつくつて、やみと取組んで撲滅しようと思つておるのであります。これは、これからやろうとするのであつて、放任しておきますならば、やみはますますひどくなるのであります。われわれは、やみを放任しておくか、この際一つの組織をもつて、総合的にやみを退治するか、わかれ路に立つておるのであります。(拍手)    〔國務大臣平野力三君登壇
  22. 平野力三

    國務大臣(平野力三君) お答えをいたします。重要化学肥料に関する限りは、少くとも現段階において、そのやみをなくする方向をもつて私どもが進みますことは、当然過ぎるほど当然であると思うのであります。綱島君の一つの御議論によりますと、いかにもやみは防げないというような御議論をなさるのは、これは綱島君の一つの御議論でありますが、私どもといたしましては、あくまで、國家のきわめて重要なるところの肥料は、断じてやみを行わない、この方針を堅持するものであります。(拍手
  23. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 徳田球一君。    〔徳田球一君登壇
  24. 徳田球一

    ○徳田球一君 私は日本共産党を代表いたしまして、主として片山首相並びに和田安本長官の施政方針に対して、質問せんとするものであります。しかし、ここに重要なることは、財政の問題が絡んでおりますので、特に栗栖大藏大臣に対しても、質問せんとするのである。  第一点、これは高度民主主義に対してである。大体昨年の六月の議会におきまして、片山君は、吉田前首相に対しまして、主義がないような政治はためだ、その日その日だけの政治ならば、これは保守反動だということを、きめつけたのであります。そのために、特にここに高度民主主義なる新しい言葉をもち出しております。ところで、この高度民主主義なるものの内容が、人道主義であり、合理主義であり、かつ社会民主主義であるといわれておりますが、しかしながら、問題はここにあるのではない。言葉の上にあるのではない。  首相並びに和田安本長官の述べておりまするところの施政方針を檢討いたしますれば、明らかに、人道主義というのは、労働者、農民、その他一般人民大衆を彈圧し、これを犠牲にして、大資本家、大地主、腐敗堕落した官僚のために、人道主義を行うのである。はたしてこれが人道主義であるか否や、さらにその次に、合理主義に対して、この合理主義は、資本家のために産業合理化を行うということである。低賃金をもつてし、首切りをもつてし、資本家の利潤を保障するところの合理主義である。社会民主主義に至つては、労働者、農民を彈圧して、そうして社会党の看板を掲げて、労働者、農民、一般人民諸君を、この資本家に奉仕させようという、驚くべき社会民主主義である。  なるほど、彼らは社会主義の建設の政策を全部放棄しておるのではないか。実際これはたびたび示される通り、公約に完全に違反しておるのである。片山君は、参議院において、公約を実施するのは時期の問題であると言われておる。時期の問題ではない、すでに、ここに根本方針が示されておるのである。この根本方針において、かくのごとく公約に違反し、かくのごとく社会民主主義をまつたく曲げ、そうしてこれを資本主義に奉仕させようとしておる。この根本方針をもつてして、いかなる公約も、いかなる時期においても、これはなし得ないことは明らかである。このことがわからなければ、結局政治なるものは空虚のものであろう。從つて金融資本中心とする大資本家に大衆を賣るところのもの、これが新高度民主主義であることは、明らかである。片山君は、これに対していかなる考えを有せらるる、これが質問の第一点であります。  第二点は、経済政策の根本点についてである。第一、吉田内閣時代は、まさにやみとインフレとに重点を置き、金融資本、大産業資本、大やみ組織者、腐敗堕落せる高級官僚が、短時間において大衆の富を掠奪するのが、この政策であつたのである。しかるに、これはすでにもう不可能になつてきた。そこで片山内閣、ここにおいて重点を移し、國家資本と結合せる金融資本が、官僚統制という武器を持ち、このたびは、企業を通じ大搾取を行おうとしているのである。しかして低賃金政策をとり、大量首切りを中心とする企業整備を行おうとする。すなわち産業合理化を行おうとする。しかして、ここに労働教化を強いようとしているのである。  さらに土地の取上げは、ほとんどこれを禁止することなく、公然と行われている。強権発動を武器として、総ざらいの供出をなさんとしつつある。驚くべきことには、戰時中にやつたところの、かの強権作付法を、現在これを復活しようとしておるのは、今さき、この壇上から平野君が述べた通りである。かくのごとくして行うところには、中小商工業者は没落し、大失業者は発生してくるのである。これらのものは、すべてこの片山内閣が金融資本に奉仕するために、大資本家に奉仕するために、集中的に行われておるのではないか。しかして、その基礎のもとにさらに貿易を再開し、外資を導入しようと試みておる。この実際の企図がここに現れておる。この点を述べるであろう。  実際上、このためには官僚統制を強化し、そうしてこれによつて、いよいよますます統制を強化しようとしておるのである。この点は、片山君が明らかにした通り、統制の責任役人にありと言つておる。役人がもつような統制、いよいよますます官僚統制を強化せずして、何が來よう。さらにまた公團方式、これが役人において行われる。これも官僚統制を強化するものである。國家管理方式、これらも、すべて官僚統制を強化するものである。加うるに、中央機関の地方出張所を置き、せつかく自主化したというこの地方制度に向つて政府地方出張所において、この実際上の機能を奪おうとしておるである。(「自由党と結託せよ」と呼ぶ者あり)社会党がこの点を衝かれれば、いよいよますます苦しくなるために、大きい彌次が飛ぶことは、ここでは覚悟の上である。何ぞ恐るるに足らんやだ。  第二に、現在普通銀行は資金がますます欠乏しつつあり、日本銀行にますます依存しようとし、さらに日本銀行は、安本並びに大藏省に依存しようとしつつあるのである。このことは、特に独占資本の利益と、その意図を、安本並びに大藏省を通じて行われるところの、最も驚くべき事実を発生せしむるものである。かくして重要産業は、今や政府の手中にあるところの復興金庫に殺到せざるを得なくなつておるのである。この事実は、次のことによつて証明せられる。  全國銀行の貸出は、昨年九月には七十億であつた。しかるに本年三月には二十九億に下つた。これだけ銀行の能力がずつと減つておる。貧弱化しておる。しかるに、これに反して復興金庫においては、昨年の九月には五億を貸出しておつたにすぎないが、今年の三月には十六億を貸しておるのである。一方が下つて、他方がどんどん上りつつある。從つてこれは、政府官僚の手に金融がますます握られておるということを意味するのである。かくのごときは、首相が産業民主化政策を云々しておる、すなわち高度民主主義の一端といつておるこの民主主義が、事実において裏切られておるのではないか。片山首相はいかなる見解をもたれるや。  第三点、経済危機の原因についてである。第一、経済危機の原因を、片山首相並びに和田安本長官は、敗戰の結果であると言われておる。これはあたりまえ。しかしながら、この敗戰の結果はいかんともしがたいものではないか。これは吉田内閣においても、吉田首相その他が、たびたび言つたところである。敗戰の結果であるから、いかんともしがたいということにおちつけば、これは何ら克服策を見出し得ないではないか。大事なことである。  その次は、人口の増大、これは引揚同胞が多くなつてきたということを意味する。從つてこのことは、いかんともしがたいことである。このことをもつて経済危機の原因とするならば、これを克服する途は絶対にない。意味をなさないことである。  しかるに、この次に加えました全國民の消費に対する欲求が、非常に旺盛になつてきた。はたしてそうか。現在大衆の欲求は、実際食えないから、実際著るものがないから、実際住むものがないから、食わしてくれろ、著さしてくれろ、住宅を與えよという、最低の人間生活の保持のための切なる要求ではないか。これをしも國民の消費に対する欲求の旺盛なりとして、彈圧しようとするならば、人民に対して、これは死を強いるものでなくて何ぞや。まつたくこれはひどいことを言つておる。かくのごときには、実際吉田内閣でさえ言わなかつた。片山君が保守反動といつた吉田内閣でさえ、こういうひどいことは言わなかつたのである。(拍手)和田君のごときは、官僚だから、こういうことに対してまつたく無感覚である。(「社会党は共産党に拍手しているぞ」と呼ぶ者あり)共産党が正しければ、拍手するは正しいのである。  第三は、賃金と物價の惡循環、これこそ、インフレの最大の原因だと言つておる。しかしながら、この賃金と物價の惡循環は、やみが存在するため起つておるのである。もしやみを徹底的に排し、ここに固定したところの統制経済ができるならば、何でそこに賃金と物價との惡循環があり得よう。こういうことは、結果をもつて原因とするところの、まつたく経済の無知のいたすところである。経済知識の何らない証拠である。すなわち、これを通じて見れば、片山君といい、和田君といい、まつたくブルジョア自由主義的な考え方である。自由党の見解と異なるところなきのみか、一層惡いことを考えている。(拍手)すなわち、社会民主主義の立場を放棄し、まつたく官僚に屈服していることを示すものである。自由党にしろ、社会党にしろ、何ら施す途なく官僚に操られて、そのまま、もとの自由党でも社會党でも、同じことを言わざるを得ない悲劇が生じてくるのである。すなわち、和田君が現在危機突破の中心勢力となつているのは、偶然ではない。すなわち、官僚の力が一貫して通つているということを意味するのである。(拍手)  しからば、わが党の見解はいかん。経済危機の原因は、腐敗堕落しておるところの官僚統制があるゆえである。この腐敗堕落している官僚統制、実際上金融資本、大資本家、封建的やみ業者と、この堕落せる官僚と結びついて、短期間に大もうけをしようとして一大投機をなし、一大犯罪をなす。やみとインフレをあおつておるのである。ここにこそ、まさに経済危機の根本的原因が存する。すなわち、やみとインフレとが旺盛である場合に、たれ人も投資、投機、すなわちスペキユレーションをやるのでなければ利益を得られないのは、当然のことである。そうして、ここに莫大な隠退藏物資を生ずること、また当然である。さらに資本家は生産しても、もうからぬ。生産をするにも、やみがもとである。從つて生産をサボるのは当然である。  さらに、彼らに長期にわたり投資をすることをサボつている。水谷君などは、よく考えておくがよろしい。石炭などに対して投資が行われないのは、石炭は少くとも二十年間かからなければ、回收することはできないのである。從つて二十年先の見究めがつかぬ限り、ここに投資する資本家はいない。だから、投資に対しても、またサボが行われるのは当然である。從つて労働者は、最低生活を維持するために、汲々としておるのである。賃金では食えない。やみをやらなければならぬ。買出しもやらなければならぬ。外にいつて働かなければならぬ。これに汲々として、まつたく疲弊困憊しているのである。いかにしてここに生産意欲を生ずるか。生じないのはあたりまえだ。だから生産が全体として急速に萎縮していくことは当然である。これがこの経済危機の根本的原因である。  実際上の事例をもつて申しますれば、特殊物件に関する犯罪行爲が、最近どしどし暴露されつつある。第一は、世耕情報事件である。第二は、亀弁情報事件である。第三は、雜品輸入協会事件である。第四は、京都自由クラブ摘発事件である。これらのものは、政党も、官僚も、一般の封建主義者も、いかに腐敗堕落しているかを示す、最も重大なシンボルであると言つてもよろしい。これに対しましては、新聞は某大政党が関係があるかのごとく報じている。はたしてこれが眞相はいかなるものであるか。この内容発表し、さらにいかに追究して、いかに徹底的に正常ならしめるかについて、片山君は高度民主主義の立場から、徹底的にこれを処置する義務ありと信ずる。それゆえに、これに対する内容発表及び処置方法について、特にお答えあらんことを希望するのである。  その次は、暴力團の事である。現在やみを徹底的にやる者は、皆組織的暴力を用い、これによつて相手方に恐怖心を及ぼし、これによつて大やみを組織し、大やみを遂行しているのである。これらに対しまして、片山君が内閣を組織する前から、ぼつぼつ暴力團狩りが始まりましたが、特に片山君が内閣を組織して以來、ややこれに勢を得て、圧倒しつつあるかのごとくであるけれども、まだまだ足りない。これを徹底的に、いかなる方法をもつてやるかということに対して、特に答えられんことを望む。さもなければ、人々は安心することはできない。やみを撲滅することはできないのである。  さて、農業生産物の價格の不当不正のことに関してでありますが、このことは、前の農民党の綱島君が特に詳細に述べましたので、私がこれ以上述べる必要はないと信ずるのである。しかしながら、ただ一つだけ言つておきたい。これは実例である。今の公定價格でもつて供出をするならば、今の報獎物資に対してどれだけ受取れるかというと、わずかに半分だ。いかにみじめであるかがわかる。戰前から工業生産物と農業生産物との差ははなはだしかつた。さらに戰後における大インフレによつて、一層ますますひどくなつた。その結果がかくのごとく現れておるのである。報獎物資と言うのは褒美だ。鼻くそみたいなものだ。その鼻くその半分にもあたらない價格で賣つているというに至つては、まさにみじめそのものではないか。かくして平野君、これでもつて、君は供出がはたして有効に行われていると思うか。こういう頭の惡さじや、てんで問題にならぬ。  さてさてこれに対して、さらに今度の物價政策においても、一方においては、工業生産物は戰前の六十五倍乃至七十五倍と言いながら、他方麦は四十八倍だ。すでにこの開きがある。開いているものを、さらに開けようとしている。ここに産業資本家、金融独占資本家に有利にして、これに農民を奉仕せしめよ、農民を奴隷化せよという観点が、明らかに現れているのである。実際こういう状態であればこそ違法である。強権を発動しなければならないのである。  強権を発動するにあたつては、特に市町村食糧調整委員会の承認を得ることになつている。この強権発動の問題につきましては、去る議会において、社会党も最初これに反対し、さんざん揉んだあげく、社会党はやつと、これを市町村食糧調整委員会の承認を得てという條件で承認したのである。しからば現在行われている強権発動は違法である。その違法を、平野君は一体責めないのはどういうわけか。これらをやつた内務官僚諸君に対して、徹底的にこれを摘発し、これを檢挙すべき義務ありと思うが、いかん。その際にこの強権発動に反対したのは、わが共産党農民党の北君だけである。この強権発動に徹底的に反対した。いかに正しかかとつたいうことが、今わかるではないか。社会党の閣僚諸君、これに対して重大なる責任を感じ、この後の処置に対して十分なる回答を與えられんことを望むものである。  さらに強権的作付法をもつて、軍閥的強権を模倣するに至つては、まつたくあきれかえつたものである。さらに土地の取上げを肯定するなど、かくして農民の耕作意欲はまつたく滅却しつつある。現在では、首をくくつて死んだり、あるいは氣違いになつたり、あるいはまた土地を放棄し、やみ屋になろうとしたり、いろいろのことが起つている。持つていても、瘠せている土地はどんどん耕作面積からこれをはねつけておる。こういう状態で、はたして食糧問題が解決できるや否や。まつたくできるものではない。從つてこの最大の原因、経済危機の最大の原因、しかも根本的な原因は、官僚統制が腐敗堕落しているためである。同時にこれが政治の腐敗堕落と密接にくつついているということである。それゆえに、民主政権を樹立し、人民統制によつて思いきつた政策をとらない限り、この危機を克服することは不可能である。私はこの政策、いわゆる人民統制をとるというこの政策について、片山君がいかに考えるかを聽きたいのであります。  第四点、これは危機突破政策であります。片山君及び和田君は、危機突破政策の最も根本的なものは生産の増強だといつている。しかしながら、現在のごとくやみとインフレとがあれば、先ほど言つたように、生産の増強というようなことは、まつたく不可能である。まずやみとインフレを撲滅して、しかる後こそこの問題は論ぜらるべきである。こんな問題は、全然問題にならぬ。しかるに傾斜生産をもつてこの中心的な生産増強をやろうとしている。そこに石炭と、鋼鉄と、輸送力とを、この重点にしているのである。しかしながら、これは既に吉田内閣が一月から行つて決定的に失敗しているではないか。ここに数字に現われているのである。  すなわち、計画の遂行は、石炭において、一月九三・四%、ところが三月には、さらに下つて九二・一%である。けさ新聞を見て五月分がわかつたのでありますが、五月分は九一.一%、どんどん下りつつあるではないか、これではたしてできるか。これがほんとうの傾斜生産である。  その次は銑鉄である。銑鉄におきましては、一月は九三・一%、しかるに三月においては、破局的な状態となり、五四・一%しか遂行されておらない。なるほど五月におきましては、二万トンを生産したと言つて、やや計画に近づいていると言われているが、この遂行率は、まだ十分調べ得ないのでありまするけれども、三月の計画は二万九千八百トン、だから、この三月の計画に及ばざること九千トン以上である。この状態は、決して改善されておらないのである。鋼材に至りましては、一月に七六・六%、三月は非常に下つて六七・八%である。五月におきまして、やや回復したといいますけれども、三万九千六百トンである。三月の計画の四万八千四百トンに比較すれば、及ばざること九千トンである。決していいものでないのである。しかるにかくのごとく、傾斜生産自体において失敗しているのみならず、この傾斜生産が、他産業に対して実におびただしい惡影響を及ぼし、やみとインフレとを煽り、縮小再生産をやつていることは、諸君のとくに御承知のことと思ひます。  ところで、かくのごとく石炭、銑鉄、鋼材のごときは、やや好轉したようなこの時におきましても、五月においては、このとき既にもつと下つていたのを、先月に比較して、火力発電が二〇・五%減、セメントが四・五%減、石けんが三六・五%減、マッチが一四・七%減という、驚くべき事実が現われているのである。いかに他産業を犠牲にし、そしてこの石炭鋼材、銑鉄に有利に導いたかがわかる。  しからば、この石炭、銑鉄、鋼材は、たれが所有しているか。これは三井、三菱、住友、その他の巨大資本家、金融資本家が、これを握つていることは、明らかではないか。諸君のなすところは、すべてこの観点である。ここに集中するために、あらゆる産業を犠牲にし、これが全人民の生活を破滅さしているというこの事実、これを諸君は記憶しなければならないのである。それゆえに、傾斜生産は国家資本と結びついて、巨大金融資本の利益を擁護するものである。それ以外の何ものでもない。  しかるに、さらに重大なることは、基本資材が得られないということで、輸出によつて基本資材を得ようとしておる。しかるに食糧が現在は足らない。輸出するならば、食糧の輸入に充てなければならないのに、これを犠牲にしまして、そうして大資本家、金融資本家の利益のために、われわれの生活犠牲にして、基本財を輸入するというこの意図は、実に驚くべものである。食糧の輸入において、すでに莫大なる海外負債をもつている。しかるに、なおかつ基本資材を輸入するために、われわれは莫大の負債をもたなければならない。  それから和田君は、特に生産増強ためには、労働者生産能率を向上しなければならないと言つている。そうして現在の生産能力は、戰前に比較して、二分の一または三分の一に低下したと言つて嘆いている。しかし、これの理由に対して和田君は、喋々として数百言を弄しているけれども、これはまつたく誤りである。この低下した理由はいかん。これは資本家が生産をサボし、投資をサボし、生産設備が崩壞し、そうしてスペキユレーション、投機に熱中したためだ。從つて労働者諸君は、飢餓の中に労働を強いられている。かくのごとき状態において、はたして労働者生産能率を上げることを要求することが正しいであろうか。まつたく間違つているのである。  事実こういうことが現われておる。これは全逓大阪中央郵便局支部食糧危機突破大会から、私あてに來た電報でありますが、われらまさに死に瀕す、通信事業また停止せんとす、こういう電報をよこしておるのである。こんな状態で、いかにして生産の能率が上ろう。さらにまた、これは福岡地方の電氣産業労働組合からの報告でありますが、彼らは、今欠配三十日、米價は二百七十円である。從つて火力発電所の出動率は、わずかに五〇%に低下し、いい所でも七〇%しか上つておらぬ。そのために、実際需要を必要とせらるる電力は、四十万キロワットであるにかかわらず、現在の生産は、わずかに十万キロワットである。これは必要量の四分の一であります。昨年の六月でさえ二十七万キロワットあつたのでありますが、それの三分の一弱に落ちつつある。この原因がすべて欠配にあるということを、彼らは主張しておるのである。人間が足りない。石炭を放りこむ人間がいなくなつているからだ。いかにしてもねこれを救う途はない。石炭にあるのではなく、このことは、実に食糧にある。このことを、水谷君、よく覚えてくれよ。(笑声)  しかして中小商工業者は、一週間に三日休業せざるを得ないのである。その結果は、精米所また休業し、從つて一層ますます遅配を生じつつある事実がある。また梅雨中には水力発電がよくなるので、発電装置を修繕するのが定例であるけれども、現在はそれができないのである。從つて來るべき渇水期に至つては、電力の破滅的な減少、これはもう約束されている事実で、いかんともしがたいことになりつつあるのである。從つて現在重要なことは、食糧問題を解決することにある。  さらにもう一つ注意することは、隠退藏物資が莫大なることである。これを摘発して、国営によつて重要産業に投下するならば、あえてあの暴虐なる傾斜生産というばかばかしいことを行わなくとも済む。要するに、隠退藏物資を摘発することを好まないがために、特に傾斜生産に熱中するのである。すなわち、隠退藏物資を摘発することは、腐敗堕落せる官僚が破滅することである。大やみ業者が破滅することである。大資本家が破滅することである。從つてまた大金融資本家も破滅することである。それゆえにあえてこれをなし得ないのである。どんどんやれ。  木村内相の報告によれば、昨年中わずかに八億いくら、今年は二千何百万円にすぎない。こんなばかげたことでどうする。徹底的に数百億円、数千億円と言う大隠退藏物資を摘発せざる限り、断じて危機克服はできないのである。(笑声)現にこの問題をめぐつて、世耕事件その他の数個の事件の起つておることは、諸君承知せられるところである。本日ここにこの内容発表せられることを約束せられておる。何ゆえにこれを諸君が笑ろうのか。  從つて現在の状態においては、この企業を通じての大掠奪の手段、これを否定して、人民のために生産増強をする政策、この政策に轉換しなければ、絶対にいけないのである。すなわち、企業の黒字云々を問題にせずして、全人民のために赤字をなお構わずどんどんやるところに、この危機を突破するところの重大なる根本的な因子があることを、考えなければならないのである。これに対して、片山首相はいかなる見解を有せられるか。併せて和田君からも返答いただきたい。  第二に、国民の消費を切詰めて生産財を確保し、計画経済の秩序を確立しようと言つている。けれども、国営に対して何ら触れず、あくまでくされ果てた官僚統制を強化するというのに、はたして国民が消費を切詰めることを承知するだろうか。現にもしそれを承知するとするならば、われわれは死に瀕しなければならない。座して死ぬようなばかはいない。断じて秩序は守られないのである。このときは、暴動が起らないとたれが保証し得ようか。  そこで、大口新円所得者の不当購買力に対して効率課税をするといつて、これにつきましては、特に社会党の諸君拍手喝采して、加藤勘十君がこれを述べたときにもね拍手喝采した。しかしながら、具体的の政策は何もないじやないか。何を発表したか。何もないじやないか。だからこれができないことは、四党協定においてこれをやらない。新円登録はやらないということを水谷君が保証した。水谷君が社会党スポークスマンとしてこれはやれないということを保証した。しからばこれはやれないはずだ。ことに栗栖大藏大臣は民主党の出身である。民主党はこれに反対しておる。さらに栗栖君は自由党になお近い方であるからであるから、いよいよますますこれに反対するであろうことは、当然の理である。(拍手)從つて、これを避けるために秘密預金なるものを考え出した。この秘密預金を考え出したところに、この新円登録を決定的に無効果ならしめることを意味するのである。現に片山内閣は、これを否定しないじやないか。まずこれを打破らなければならないはずである。これらの点に対して、具体的な方法を指示せられんことを望むのである。  次に、物價と賃金との惡循環を打切ると言つておるけれども、平均賃金を千八百円と定める。これは実は千六百円が基準である。物価は上るから、その返りの利益で二百円やるというのである。事実は千六百円である。ところが、この千六百円なるものは、昨年の十一月から一月までの間の実際上の労働者の生計費を基礎として定めたところのものである。しかるに、現在に至るまでに、この物價は二倍以上に上つておる。從つて千六百円では、生計費の半分に足るか足らないかというような状態である。でありますから、もしこれに釘づけして、さらに物價を戰前の六十五倍とか、和田君は今度言い出した。この前は七十五倍――始終動揺するのが、これが官僚の特性である。(拍手)和田君の特性である。人の顔を見ちや、七十五倍、六十五倍と、始終きんたまが動揺しておるのである。かくして、ここに二倍半ないし三倍の物價騰貴になるであろう。これでもつて、千六百円の生活費でもつて人間が生きていけると思うか。この点を十分に解答してもらいたい。  さて、ここに鉄道運賃のことでありますが、これを拔打に三倍半にしようとしておる。これは物價騰貴の先がけである。これが上れば、すなわち交通費が上る。一切の運搬費が上る。これは物價を上げるのに最もよい口實になるのだ。しかるに、これを上げるには議会の承認を必要とすることは、昨年の議会において明らかに声明せられておるところである。同時にまたこの問題は、鉄道事業法によつて、一ヶ月前に告示することが必要である。しかるに、これを拔打ちにやろうという、こういう乱暴なことをやつて物價引上を合理化そうというところに、和田君のずるいところがあると思うが、いかん。(笑声)  労働者は賃金を二千六百円要求しておるのでありまするが、現在物價が上り、將來を見透かしたならば、二千六百円というのは、実際安いのだ。やみが上れば、これは食えないのである。にもかかわらず、労働者諸君は控え目であり、つつましいのである。(笑声)決して、諸君が笑うように、いたずらにストライキなんかやれるものではない。控え目であり、かつこの経済危機突破に対して最も熱意あるものは、労働者諸君であり、農民諸君である。これがここに表現せられておるのである。和田君はこういう状態では行けないことを知つておるものだから、実質的に消費を充実し、配給を増加することを、喋々と述べておる。そう述べざる得ない。拔道はここにある。  しかるに、平野君は何と言つておるか。平野君は、食糧不足し、十月までには二十八日の欠配は必至だと言つた。これが合いますか。一方では増配すると言う。一方では欠配すると言う。これは何だ、まつたく、つじつまの合わぬ話である。ごまかしの最もひどいものと言わざるを得ない。この神聖であるべき議会の壇上で、二人の閣僚がおのおのいい加減なことを言つておる。これくらい、ばかにしておることはないのである。われわれ議員は、断乎としてこれに反対する。これに反対し、明確なる回答を要求するのである。(「いい加減とは何だと呼ぶ者あり」)  從つてかかる状態では、やみを防止することは不可能だ。たれか坐して死ぬものがあろうか。やはり、やみは断じてやまぬ。しかるに政府は、公團方式をもつて、切符制によつてやみを防ごうというのである。公團方式や切符制で行われるのは、石炭と石油と肥料と鉄鋼と石けん、マッチ、電球、地下たび。マル公はこれだけだ。これ以外にも、たくさんの物がある。ここからマル公はどんどん破壞されていく。しからばこの大本に火がつくのは明らかである。こんな切符制をもつてしては、断じてやみをやつつけることはできない。  のみならず、この切符を資材会社というものが買付け、現品をとつて、これを一手に集めてやみをやろうという、大やみをやつて、大もうけをしようという計画は、すでにわれわれの十分確かめておるところである。これは腐敗堕落しておる官僚とくつつけば、最も大きなもうけをする。これは莫大なる富をもつて、権力にまで口を出すところの、大きな危險を藏しておるのである。それゆえに、この政策は、低賃金による搾取の強化であり、企業面を通じて搾取するところの政策である。また同時にこの低賃金政策は、首切りに代るに自由退職を強要するところの惡辣なる企業整備である。  企業整備の名において大量に馘首することは、なかなかむずかしい。であるから、賃金を低くして、食えなくすれば、どんどんやめていく。自然にやめていく。これで企業整備をやろうという、悪辣きわまるものである。すでに、これは労働組合において憂え、各工場において発生しつつある事実であります。かくのごとくして、飢餓に基いて生産費は非常に安くなり、この安くなつ生産費をもつて、ダンピング輸出をして、これで貿易を再開しようというのである。これではまつたく民族を破滅させることになる。その低賃金の上に外國資本を導入するとすれば、これは外國資本に隷属することになる。金融資本家、高級官僚が、この外國資本を背景として支配権を確保することになるのである。すなわちかかる政策は、まさに民族を賣るところの政策と言わざるを得ない(「ノーノー」)これに答弁を與えてもらいたいのである。  ところで、労働者の要求は何だ。まず物價を決定し、大やみを撲滅し、公定價格を嚴重にした上に、賃金は団体交渉によつて定めるというのである。もし片山君及び和田君が、この政策を固持してこれを強行せるならば、労働者諸君は、まさに生産を放棄せざるを得ないのである。かくなれば、全経済は崩壞し、まつたく民族を破滅に陷れなければならない。從つて労働者諸君は、賃金闘爭によつて立ち上る――首切り反対、物價問題とともに、重大なる闘爭に立ち上る準備をしつつあるのである。政府は、この闘爭を未然に防ぐところの方法ありや否や、これを聽きたいのである。しからば、わが党の危機突破、経済復興政策の主眼目はいかん。根本的な点は、やみを撲滅し、インフレ決定的に抑え、経済を常軌に立て直し、社会主義への進展を準備することである。これなしには、何事もできない。  それで、その政策実行するために、第一に全金融機構を統合し、國営人民管理にしなければならない。これは巨大金融資本の支配を撤廃し、経済復興を金融によつて全面的に支持するところの根拠をこしらえることになるのである。やみの資金を封鎖し、秘密預金を暴露し、そして巨大資本家、組織的大やみ業者、腐敗堕落せる高級官僚に徹底的に課税するところのこの基礎は、この銀行を握ることにおいてのみ可能だ。この資金は、大体千五百億程度はあろうと、われわれは推定しているのである。第二に、公債の全面的買上げ償却への賃金は、大やみ成金業者にこれを負担せしむることである。第三には、石炭、鉄鋼、肥料、電力、セメント、海陸運輸機関等、重要産業の國営人民管理でなければならない。四は、隠退藏物資の徹底的摘発、國営による資材を運用することである。五は、土地の取上げの禁止、第三次農地改革による全耕地並びに山林原野の農民への交付。生産費を償う適正農産物價格、すなわち工業生産價格と均衡のとれた價格の設定、農民の民主的方法による自主的供出、農業必需品の完全配給であります。第六には、配給機構を人民管理に移し、そのもとに、各人に対し作業場並びに住居を単位として、生活必需品を現物で支給する。これが大体收入の七〇%ないし八〇%である。これを現物で給與するために、現金の授受は大分なくなり、やみインフレは、まつたくここに即時的に徹底的に抑制せらるるのである。しかしながら、なおかつこの統制はどうしても苦しいのであるから、二〇ないし三〇%を自由市場にもたらし、人民の管理と公共團体の管理によつて、組織的に大やみ業者の侵入を防がなければならぬ。これを要するに、官僚統制にかえるに、人民統制をもつてすることである。  ここで重要なことは、企業整備についてでありますが、政府は企業整備において、各資本家の黒字経営を主張しておるのである。かくのごとくすれば、巨大資本家のみを残し、中小商工業者は全面的に没落貧窮に追いやられる。莫大なる失業者を生む。これに小やみの嚴重取締をすれば、失業者数は大約八百万人と稱するのは、政府発表するところであります。專門技術家の推定するところによれば、一千万人である。全家族を加うれば、まさに全人口の半分に及ぶのである。政府の失業政策は、三人家族、月八百円であるというけれども、これでは食えるものではない。しかも三段構えの関門を設けて、これを支給するのに制限を加えておる。しからば無統制の大闘爭が起る危險があるのである、政府はこの防止策をもつておられるや否や
  25. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 徳田君、簡單に。
  26. 徳田球一

    ○徳田球一君(續) なるべく簡單にやります。そこで水谷君の言うのに、保守陣営の人が勤労階級に向つて言い得ないことを、社会党が言うてやるのだ。そうして現在の苦しい経済再建を、労働者協力してもらうのだと言つておる。これは何だ。これは結局するところ、乏しさに耐えろという、片山君及び和田君の言うところである。結局するところ、社会党に進展する途を捨てて、そうして大資本家、金融資本家に奉仕せんとする、この労働者に対する攻勢の武器となろうとしておるではないか。私は特に片山君に向つて、新民主主義がかくのごとき無謀なものにならざらぬように、この政策を改められんことを希望するものである。  しからば第五点、健全財政についてである。予算は実際上不可能に陷つておる。莫大の收入を予定しておつたところ、実際上大衆課税はすでに行詰つておる。郵便貯金は大幅に値上して、五十一億に上昇の見込のものが、全業務收入見込において、すでに四月の実績は二九%減收になつておる。増加所得税は不当課税だというのだ。大藏大臣もこれを認めて、これを再査定しようとしておるのである。かくのごとくとして、現在見込んでおるところのものに、すでに大穴があいておるにもかわらず、賃金の増加、物價の引上げによつて政府は四百億程度の追加予算を組まざるを得なくなり、全計において千五百億となるのである。しかるに、これは政府の見積りである。実際においては、六・三制を実施しなければならないので、三千億程度になるであろう。かかる点におきまして、実際財政が一大破綻をしている。これをいかに具体的にするかということについて、数字をもつて明らかにしたいのである。  第六点、これは新日本建設運動である。これに対しては、すでに綱島君の述べた通りである。ここで必要なのは、自由を防衞し、言論、出版、集会、大衆デモ、ストライキ、これを避けるように、これを十分に行わしむるように、この圧力をもつてやるように、政府は擁護しなければならないと思う。  第七点、これで終ります。社会党は、民主戰線を捨てて反共陣営に陷つたからこそ、ここで自由党、民主党と協定せざるを得なくなつたのである。それゆえに社会党はこの協定を破棄して、この大金融資本家の利益のためにすることをやめて、勤労大衆の利益のためにやらなければならないと思う。ゆえに、社会党はここにおいてまわれ左をなし、そうして民主戰線をつくらなければならない。社会党、共産党、労働組合、農民組合、その他の民主的諸團体と結合して、そうしてここに民主戰線の内閣をつくつて、ほんとうに人民のための政策を行うべきであると信ずる。もしこれができないとするならば、議会を解散して、総選挙をもつて、民主党、自由党を敵にまわして、断固戰うべきだと信ずる。かくして、初めて社会党は十分なる性格を発揮するものであると信ずるのである。これで私の質問を終ります。    〔國務大臣片山哲登壇
  27. 片山哲

    國務大臣片山哲君) 徳田君の御質問は、独自の立場に立つての御意見が多かつたと思うのであります。つきましては、要点をつまんで一、二御答弁をいたし、政府考えておる点を明らかにいたしたいと思います。  政府は、決して金融資本家の手先ではありません。経済危機突破政策、また私の施政方針演説、またその後発表いたしましたる諸政策等によつて、この点はきわめて明確になると思うのであります。また徳田君は、私の演説の中に、高度民主主義、民主主義を徹底せしめるその論旨を明らかにする意味において、これは人道主義であり、合理主義であり、社会民主主義であるということを説明し、その内容を明らかにいたしたのでありまするが、この点につきまして、人道主義等は、特権階級が無産大衆を圧迫する手段として用いられたる主義であるということを言われましたが、私の考えておりまする人道主義、合理主義、社会民主主義は、決してそのようなものではないのであります。眞に勤労大衆の福利増進をはかる、大いなる主義であるということを申し上げたいと存ずるのであります。これはおそらく、わが國勤労大衆の一般的解釈と合致するであろうと思うのであります。政府は、必ずその意味において、わが國勤労大衆の師事を十分に受け得るであろうということを、信じておるのであります。なお、摘発の問題、隠匿物資、また経済上の問題につきましては、所轄大臣より答弁があることと存じます。以上をもつて答弁にかえたいと存じます。(拍手)    〔國務大臣和田博雄君登壇
  28. 和田博雄

    國務大臣(和田博雄君) 簡單にお答えいたします。経済危機の原因につきましての色々のご説でありましたが、これはわれわれは、事実を客観的に率直に述べたのでありまして、このままにこれを放つておけば、非常に危險な状態になるということを申し上げただけであります。  それから労働の生産性の低下の点につきましては、私の説明の中にも、ただ單にこれは労働者責任だけではなくして、資材が乏しく、また原料も乏しく、施設自体が老朽になり、経営者側の熱意もないということをあげていることをご承知願いたいと思うのであります。  それから傾斜生産の点について、その前提として、当然にやみを撲滅し、必要な資材が正規のルートに乘つて配給されることにつきましては、流通秩序の確立ということが、緊急経済対策を行う上においての前提條件であるということは、私が繰返し述べている点でありまして、隠匿物資の摘発等の点につきましても、緊急対策をよくお読みくださるならば、ちやんと総合的にはいつていることを、御了承を願いたいと思うのであります。  それから実質賃金の確保の点につきまして、私と農林大臣との間に、非常な矛盾があるというお話でありましたが、矛盾はないのであります。現在の食糧事情を農林大臣が率直に述べられ、それを今のままに何らの政策を行わずに放つておきますならば、農林大臣の言われたような、二十日程度の遅配になるということを申し上げておるのであります。われわれは、食糧緊急対策発表いたしまして、あの線に沿いまして、できるだけこの実質賃金の確保、食生活内容の確立に努力いたすということを、私も申し述べておるのでありまして、決して答弁に矛盾があるとは考えません。  それから物價と賃金の惡循環を断ち切るということでありますが、私は物價をきめて、賃金をそのままにしておきますならば、これは全体の生産量の殖えない限り、どこまでも惡循環が続いていくのでありまして、物價と賃金とは同時的にきめなければならないということを申し上げたのであります。ただその際に、私は基準年次の七十五倍ということを、一度も申し上げたことはありません。基準年次の六十五倍程度ということを申し上げておるのでありまして、私はそういう確信でやつておることを、御承知をお願いしたいと思うのであります。  あとは、六百円の水準の点についてでございますが、現在の給與が生計費の二分の一に過ぎないと言う根據が、どういう御調査に基づいたものでありますか、よくわかりませんが、勤労者の生活水準が、戰前に比べまして非常に低下しておる事実につきましては、われわれもきわめて関心をもつておる点でありまして、これからの端境期にあたるこの四ヶ月間の食糧事情を考慮しますると、その生活をただちに引上げるということが、非常に困難であるという事実を、率直に認めておるのであります。政府行つております労働者の家計調査の結果によりますれば、東京都においては、四月においては、かなり樂になつておるという結果も出ておるのでありまして、結局物價というものを考えまするときには、公定價格によつて買いましたその数量と、やみ價格によつて買いましたその数量と、これを組み合わして、全体として考えなければ、ほんとうの家計に対する物價の影響というものはわからないのであります。從いまして、われわれはこういう観点から配給秩序を確立いたしまして、あらゆる手を使つて、やみを撲滅して、生活内容というものが、ゆたかになるようにしていこう、ここに賃金の実質的安定を求めて、物價と賃金とを同時的に決定した物價水準というものを維持していこう、こう考えておる次第であります。大体その程度だろうと思いますが、落ちたところがありますれば、あとで補足することにいたしまして、大体この程度で終ります。    〔國務大臣木村左衞門登壇
  29. 木村小左衞門

    國務大臣木村左衞門君) 暴力行爲の取締りはどうしておるかというお尋ねのように拝聽いたしました。徳田君のお説のごとく、終戰後、この暴力行爲が非常に多くなりまして、犯罪の激増とその惡質化に伴いまして、まことに目に余るものがありまするので、昨年の九月、全國一齊に取締りを断行いたしたのであります。その結果は、数字で現れておりますところをみますと、恐喝が千六百二十、傷害が千十八、殺人が二十九、暴行爲が七百五十九、強窃盗が一万一千九百十、その他合わせまして、合計で三万五百十二名という多数に上つております。これはそれぞれの実情に即しまして、適当なる処分と処置とをとつたのであります。  ひいて今年の総選挙の以前に、これは地方選挙民の自由意思によつて希望でありまして、選挙に暴力行爲が介在すると、選挙の公正を阻害するおそれがありますので、三月にまた一齊に全國的にこれを行いました。これは一一詳しく申し上げませんが、その合計は一万九千六百十四名であります。  最近警視廳が、例の尾津組というものを、この種のものとして、檢挙いたしておりますることは、新聞の報道によつて承知のことと思うのであります。これは、ただいま取調中でございまして、結果はまだ申し上げられないのであります。これを手始めといたしまして、一齊にこういう不良の一掃に努めておりまするが、この方法は、團体を背景とし、または輩下の強力なる者を頼んで、これを利用して、威力でやつておるというような者を、根本的にこの際彈滅するという方針をもつて、警視廳が臨んでおりますので、内務省といたしましては、大いにこれを督励いたしまして、いつもこの種の取締りは、えて線香花火のように、ぱつと拡がると思うと、あとがなくなるようなことが多いのでありますけれども、今回は根本的に、徹底的にやるべしという方針で、今督励をいたしてやらせております。  それから最近、摘発物資の拂下を斡旋してやるというようなことを称しまして、あるいは自己において処理するところの権限があるかのごとく呼称いたしまして、この間の事情に通じないところの農業会であるとか、水産会あるいはその他の團体との間に取引契約を結んで、契約金とか、前渡金の名義のもとに金円を徴收して、これを他の用途に消費しておるところの詐欺的行爲が続発いたしておるのであります。その大部分は、軍服・作業服・綿布等の繊維品の架空取引契約でありますが、現在までに判明しただけでも拾六軒に及びまして、その被害は八十数件、六千余万円の巨額に達しておるところの状況であります。それぞれ関係警察において目下取調中でありまするが、これらの事案につき捜査を進めてまいりますと、この種の取引に介在する多数の人物で、詐欺的行爲者と目しておりますところの人物でもありましても、いざ取調べてみますと、やはりこれらも欺かれれて、眞に取引が可能なるごとく信じておるというようなことの数段階に被害者的立場があるような状況でありまして、この範囲の点において、確たる証拠を得られない場合も多々ございまして、道義的にはきわめて憎むべき行爲者も、詐欺犯人として檢挙されないことも、この種のものには多く認めるのでありますから、捜査当局といたしましては、非常にこの点に苦心をいたしております次第であります。被害者の性格が、農漁民であるとか、勤労者、引揚者等の醵出いたしたところの、零細かつ貴重な資金の集積でありまするから、民心に及ぼす惡影響はきわめて大きいものがありまして、各種團体、会社等に対しては、ブローカー連の誘惑に乘ぜられてはならないように警告を発しまする等、防犯的措置を講ずるとともに、善良なる勤労大衆を食いものにするがごとき各種の惡質行爲に対しましては、今後とも断固たる取締りをやりまする方針でございます。  ただ指名してお話の世耕問題とか何とかおつしやつたことを承りましたが、この問題につきましては、目下内容については詳細に申し上げかねまするから、さよう御承知を願います。(拍手)    〔國務大臣栗栖赳夫君登壇
  30. 栗栖赳夫

    國務大臣(栗栖赳夫君) 徳田君の御質問に対し、私に関係のある部分だけを御答弁いたします。金融統制の強化に伴いまして、それが官僚的の弊に陷るおそれはないかという御質問であります。私は昨日申し上げました通り、金融統制の運営にあたりましては、終戰後の諸般の事情を考慮に入れまして、民主的にこれを取扱い、官僚統制の弊に陷らぬように努めておる次第であります。  郵便料金等の收入の落ちておるというお話がありましたが、これは一年の会計年度を通じてみなければ、にわかに判断ができぬと思うのであります。  それから、政府は引続き増加所得税の調査追求をいたしますし、またインフレ利得者に対しては、税をもつて追求をいたすはずでありまして、つとめて大衆課税というような弊に陷るようなことは避けたいと思うのであります。  本年度の追加予算の編成は、目下著著進みつつあるのでありまして、いずれ皆樣の前でこれをごひろうし、御承認を願うことと思うのでありますが、お話のごとく支出が非常に多くて、税その他の收入が非常に少いというようなことは、断じてなく、私は健全性を十分保持し得るものと、ここに信ずるものであります。以上をもつて、簡単ながらお答えとします。(拍手)  なお、ここで一言報告をいたさしていただきたいと思うのであります。それは、神奈川税務署の端山という関税課長をいたしております者が、去る六月二十三日に、川崎市におきまして、酒類の集團密造の摘発に参加をいたしまして、十分に職責を果し、帰る途中、川崎駅に至る間におきまして、暴漢に襲われ、内出血をいたし、二十六日に死亡いたしたのであります。まことに、税務機構の強化、税務官吏の充実、こういうことを申しますこの際におきまして、この関税課長の壯烈なる殉職は、私は税務官吏の亀鑑であると存ずる次第であります。同氏に対しては、明日東京税務局その他の合同慰霊祭を施行いたしますし、またその冥福を祈るとともに、遺族に対しては、能う限りの慰藉の手段を講じたいと思うのであります。一言報告いたします。(拍手)    〔政府委員田中源三郎君登壇
  31. 田中源三郎

    政府委員(田中源三郎君) 大臣に代り、私よりお答えいたします。    〔「大臣はどうした」と呼び、その他発言する者多し〕
  32. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  33. 田中源三郎

    政府委員(田中源三郎君)(続) ただいまの徳田君の御質問は、鉄道賃金の値上は議会の協賛を経べきものであり、かつ一定の実施期間をおいてこれを施行すべきが当然ではないかという御質問でございます。    〔発言する者多し〕
  34. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  35. 田中源三郎

    政府委員(田中源三郎君)(続) 御質問の点はごもつともと存じますが、今回の鉄道運賃の改正の問題は、新物價体制の策定の総合的観点に立ちまして設定せられましたものでありまして、單に鉄道のみこれを切り離してなすこと能わざる事情にあることを、ご了承願いたいと存ずるのであります。(拍手
  36. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) もうよろしいですか。
  37. 徳田球一

    ○徳田球一君 騒いで一つも聞こえません。とにかく聞こえるように言つてくれ。もう一遍答弁を願います。
  38. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 打合せの時間もとうに延長されておりますから、質疑は次の適当の機会に願いたいと思います。  これにて國務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。  なお、明五日は定刻より本会議を開きます。議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。(拍手)    午後五時五十九分散会