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1947-11-08 第1回国会 衆議院 文教委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年十一月八日(土曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 松本 淳造君    理事 高津 正道君 理事 西山冨佐太君       田淵 実夫君    永井勝次郎君       松澤 兼人君    伊藤 恭一君       押川 定秋君    久保 猛夫君       中山 マサ君    米田 吉盛君       近藤 鶴代君    坂田 道太君       水谷  昇君    松原 一彦君       黒岩 重治君  委員外出席者         文部事務官   栗田 源助君         文部事務官   剱木 享弘君     ————————————— 本日の會議に付した事件  學制改革に關する件     —————————————
  2. 松本淳造

    松本委員長 會議を開きます。  學制改革に關する件を議題といたします。本日は新制高等學校學制等に關しまして、委員諸君の御意見、また當局に對し質疑を試みたいと思います。御發言を願います。
  3. 伊藤恭一

    伊藤(恭)委員 新制高等學校竝びに新制大學のことにつきましては、以前にも質問をいたしまして、大體の答辯を得ておりますけれども、特に大學の問題につきましては、二十三年度早々に大學設置委員會というものをつくつて、そうして十分檢討の上決定するというようなことでありまして、そうして二十四年度から整備のできたものから實施するという意味でありましたけれども、しかしながら、この問題つきましては、やはりただ單なる大學設置委員會において檢討してというようなことでなくて、やはり文教常任委員會において、十二分に國民の輿論を反映するところのものをつくらなければならないということを考えますから、政府においての現在の大體の基準というようなもの大體原案に類するものを説明してもらいたいと思います。  なお新制高等學校においても、現在全國に中等學校が三千七百校もあり、定時制高等學校となるものも、本校が千二百校、分校が三千七百校あるそうですが、それも暫定基準として大體定まつておると思いますが、これなどもはつきりここで説明していただいて、十分に檢討を加えたいと思いますので、政府説明を求めます。
  4. 剱木享弘

    剱木説明員 ただいまの御質問に對してお答えいたします。前にこの委員會で大學設置委員會を二十三年度早々に設置して、二十四年度から整理のできたものから逐次委員會にかけて大學になるように處置をするというふうに、お答え申し上げたと思いますが、その後の事情により、高校教育法が本年の四月一日から實施せられすでに新制大學が設置可能な状態にございますので、もし希望いたします學校がございますれば、認可をするだけの準備をいたしておかねばなりませんので、二十三年度から新制大學になりたいという學校がございますれば、それを受付ける準備をするために、大學設置委員會を早急につくることにして、今その委員會の官制その他について準備をいたしておるのであります。その點、前に申し上げました事情と多少違つてまいつたことを御了承願います。ただ官立については豫算その他の都合もございまして、二十四年度以降からいたしたいと思つております。ただいまもう申し上げたのは主として私立學校希望する學校に對してのものでございます。  それから大學の問題については、設置委員會は、定められた基準に基いて認可するかどうかという、行政の執行面に對する諮問機關考えられますので、大學をいかにつくつていくかという大體の方針でありましたが、運用については、いろいろな方針をお定め頂きますれば、その方針によつて設置委員會は動いていくと思いますので、その點いろいろ御指示のほどをお願いしたいと思います。  それから大學設置基準については、昨年から基準設置委員會を設けて、いろいろ研究を續けてまいつておりますが、ただいま大體の方針なり、内容基準設置委員會においてできたのでございますけれども、この基準も、まだ内部にわたつて、あまりに綿密過ぎます點がありますので、ただいま再檢討をいたしております。今まできめた基準も、大體その線に沿つてつたのでありますが、やはり學校自體の特異性というものを相當織り込むことのできるような基準にもつてまいりたいと考えております。  なおこの基準設定委員會基準がきまれば——ただいま檢討されているこの基準は、大學の基準協會というのが、文部省とは關係なしに自發的な團體として結成され、その基準協會に将來加入すべき大學の基準ということになつておりまして、その基準そのものを新たに設置されます大學に適用するや否やという問題は、大學設置委員會ができてから、委員會の議にかけて決定さるべき問題だと思います。ただ現在の状況から申しまして、基準協會のつくりました基準そのものが、そのまま來年年度もしくは二十四年度から新たに大學になるものに厳密に適用されるということは、國家財政の現状から非常に困難ではないかということが考えられますので、ある程度暫定基準というようなものが必要ではなかろうかと考えております。たとえば、これは大臣がかつて答辯なさつたように考えておりますが、今の學校教育法の建前として、四年制の大學を考えておるのでございますが、すべての大學をすぐ四年制に移行いたしますことは、設備及び教授その他の關係から、非常に困難があると思いますので、場合によつては、暫定的措置として三年生の大學を認めなければならぬのではないかというふうに考えておりまして、その點を今いろいろ事務的に研究いたしておりますが、こういう問題についても、當委員會の方でいろいろ御意見がありましたら、御教示のほどをお願いいたしたいと思います。從いまして、大學の基準の今、きまつております點は、いわば非公式なものでございまして、まだ正式にそれを取りあげるかということは確定いたしていないのでございますし、なお外部にも、正式にはまだ發表になつていないのでございます。ただその委員會で今まできまつておりますものを發表の形でいたしますことは、差支えないのではないかと思いますが、御説明申し上げることは、十分御相談の上で申し上げてみたいと思つております。それは非常に詳細なものでございますから、本日はこの程度でお許し願えましたらどうかと思います。  それから高等學校設置基準については、大學本則的な基準もきめ、また二十三年度から新制高等學校になる暫定的な基準も、併せて近く省令として出したいと思つております。これについては御説明申し上げても差支えないと存じますが、相當詳しいものがございますので、ただいま御説明申し上げますか、それとも別に申し上げましようか、それによつていかようにもいたします。
  5. 伊藤恭一

    伊藤(恭)委員 なおパートタイム新制高等學校については、從來青年學校昇格されることは當然であります。なお新設についてはある地域で非常に熱望しておる所がありまして、これは府縣長官等意見もありましようが、私は熱烈に要望する所は、新設されてもよいと思います。そういうものについては、どうお考えになつておるのですか。
  6. 剱木享弘

    剱木説明員 パートタイム高等學校は、勤勞大衆青年を対象といたす教育でございまして、これは刷新委員會でも一應決議になつたわけでありまして、将來は義務教育にまで、もつていきたいという希望をもつておりますけれども、現在の事情としては、義務教育を六・三制の程度にするのも非常に困難なのでございますから、それを文部省としては採用せず、義務教育からはずしたのでございます。しかし、義務教育にするくらい重要な問題だと考えますから、この定時制高等學校が全國に普及いたしますことを、心から熱望する次第でございます。新しい定時制高等學校ができていくことは、非常に望ましいことであるばかりでなく、できるだけそれにもつていきたいというふに考えておるのでございます。ただ、今までございます青年學校が、昇格という形をもちまして、新制高等學校になるということは、實はこの考え方は避けたいと思いております。今までの青年學校と、新制パートタイム高等學校とは、その教育内容におきまして、またあり方におきまして、相當違つてこなければならぬのではないか。だから、新制定時制高等學校は、青年學校設備なり、いろいろな點は利用いたすといたしましても、學校といたしましては、青年學校昇格というような考え方でなしに、全然別な、新しい新制高等學校をつくつていくというふうに考えたいと思つております。
  7. 伊藤恭一

    伊藤(恭)委員 それにつきまして定時制高等學校の教職員の俸給などは、これは全額國庫負擔ということを、全國各地から非常な熱意をもつて要望しておりますけれども、國家の現在の財政状態からしては、相當困難な點があると思いますが、しかしながら、この前の質問のときは、文部大臣は極力國庫において補助したいというようなお話もありましたが、この點については、やはり政府とせられては、相當額を國庫補助するというような自信があるのでございますか。現在六・三制のこの關係においても、ああいうような、實にみじめな状態なつたということを、われわれは非常に遺憾としておりますが、この定時制高等學校についての御意見はどうでございますか。
  8. 剱木享弘

    剱木説明員 定時制高等學校教員給についてでございますが、青年學校教員給が、實はもと國庫で半額を補助いたしておつたのでございます。これが國庫補助の形を變えまして、分與税の形で九割近くのものを地方の財源に振替えまして、國庫補助の形を切りかえたのでございます。現在そのままになつておる状態でございます。そこで新たに定時制高等學校をつくります場合におきましては、分與税の形でまいりますと、どうしてもそれ自體がはつきり明確に定時制に使われるかどうかということの見さかいがつきませんので、文部省といたしましては、これをやはり國庫補助の形にもつていきたい。しかも全額國庫負擔の形で、できるだけ努力したいというふうに考えまして、今、來年度の豫算に計上すべく努力いたしておる次第でございます。
  9. 水谷昇

    水谷(昇)委員 ただいま御説明の、暫定的の三年制の大學についてでありますが、現在私立専門學校というのが、地方にはたくさんあるのであります。この専門學校について、文部省の豫定しております基準から考慮して、これらのたくさんな私立専門學校が、これから大學に進んでいけるのか、あるいは高等學校として一段下つていくものか、ひとつ文部當局の御意見を伺いたいのであります。  それから暫定的の三年の大學は、本質的にどういうようなお考えでありますか。これからできる高等學校にも、専攻科というものを置くことになつておるようでありますが、その高等學校に置く専攻科と比べてどういうことになるのか。本質的には變りはないのではないか。この三年制の大學に對してはやはり學士號を與えられるのか、高等學校専攻科に對しては、どういうような待遇をするのであるかということもひとつ御説明願いたい。  なおこの際に一つお伺いしたいのは、現在各種學校となつておるのでありますが、中學校卒業した生徒を三年間修業させて、つまり専門學校にする目的で設立をしたのでありますが、しかして縣の當局竝びに文部省當局の内示を得て、著々専門學校になれるように設備教授内容等準備いたしまして、それがほとんど完成の域に達したが、あいにく學制改革によつて、本年の三月三十一日に専門學校制度を一時打切つた。こういうような場合であつたがために、これから先は高等學校なら高等學校、大學なら大學として進んでいきますが、現在在學している一年と二年生は、ただいまのところ各種學校でありますから、たいへんに不安な状態にある。そこでこの文教委員會において、かつて政務次官からそういうような生徒が三年間修業した曉においては、高等學校卒業したものと同じように、たとえば高等文官試驗豫備試驗というものは受けなくてもいいとか、大學へさらに進んでいけるという資格を與えるような途が開けていることを言明せられてたようでありますが、それは確かにそうでありますか、あらためてこれを伺いたい。現在そういうような在校生は、さらにこういう學校で續けて進學することを不安に思つておりますから、この際、はつきりお聽かせを願つて、そういうような途が開けているならば、希望をもつて學業を續けていくことができ、そういうことができないんだというと、そういうような學校は成立たない、こういうことになりますから、この際、はつきり答辯を願いたい。
  10. 剱木享弘

    剱木説明員 暫定基準として考えております三年制の大学につきましては、まだこれははつきりそういうようにするかどうかということは、確定いたしていないのでございますが、學士號を與えますのは、四年制の大學を出まして、一定の範囲を終了した者に限るという形になると考えられまして、三年制の大學卒業者に對しましては、學士號を與えないことになるかと思うのであります。ただ三年制を出ました場合に、四年制の大學に進學の途を開くようにいたしたらいいだろうと考えております。  それから私立學校等がたくさんありますのが、これが全部大學になるか、もしくは三年制の大學になるかという問題でございますが、その私立學校の性質によりましては、高等學校になりまして、そうして今申されましたようにその上に二年の専攻科を置くとかいうようなことを考えることが、かえつて學校の經営上、また、たとえば地方的に分布しております場合におきましても、地方民の要望にも副うことができるのではないかと考えられまするので、ある程度私立専門學校は、新設高等學校になることは望ましことだと考えておりますが、ただこれは基準委員會にかけまして、なれるかならないかということを決定さるべきものでありまして、文部省といたしまして、ある特定學校に對し、お前の方はぜひ高等學校になれというふうに強く勸獎するというこうは、いたさないつもりでございます。  それから高等學校専攻科と申しますのは、普通の高等學校の上にある特定の専門的な學科につきまして専修いたします者に對する課程でございまして、一般的な普通の大學の課程におけるような課程ではなく、ごく範囲が限られた問題についての修學をするように考えておるのでございます。從いまして専攻科を出た者と大學の三年制を出た者とは、相當性質が違いまして、大學の二年制でやります者は、やはり一般の大學と大體同じような課程を受けてまいりまして、将來希望すれば四年制の大學にも入り得るという状態になるのでありますが、専攻科の方は、そういつたようなことは考えられないと考えております。實はこれにつきまして、専攻科というようなもの以外、三年制の大學以外におきて、必ずしも四年の大學でなしにあるいは二年の大學、いわゆるジユニアー・カレツジというものが考えられないかどうか。そうしますと、そのジユニアーを出ましてから後期のシーニアーに移つていくということがもし考えられますと、非常に學校の轉換につきましては變な状態が起るのではありまして、そういうことができないかということを、ただいま研究いたしておるのでございますけれども、これは現在のところ非常に困難ではないかと考えております。要するに、新制の大學と高等學校二つにわかれていきます場合に、私立學校として考えます場合には、そのいずれに行つたら一番いいかということを、その際十分に考えられて、その態度を決定さるべきでありまして、ただ一概に大學になりたいというのでは、經営面から申しましても、非常に困難が生ずるのではないかと考えておるのでございます。  それからただいまの各種學校の點につきまして、さきにこの委員會でもはつきり申し上げました通りに、十分将來の希望のあるように處置をいたすつもりでございます。今相當準備を進めておりまして——まだ明確に處置は終つていないと思いますが、近々そういう處置をいたしますので、その結果御報告を申し上げたいと考えます。なお各種學校でございましても、設備その他内容等今十分實いたしますれば、その學校新制の大學になるという面につきましては、やはり設置委員會にかけまして、それが基準に合えば當然新制大學にもなり得ると考えられます。新制大學になりました場合に、今の一年及び二年につきましては、やはり實際學力程度によりましては、新制大學の一年——程度で申しますと今の一年終了者は大學の一年になるわけですから、考査によりましては入り得ると思います。それから将來の問題としましては、十二年の學校教育を受けておりますれば、大學への入學資格は認められ得ると考えます。
  11. 水谷昇

    水谷(昇)委員 ただいまから御説明の暫定的な三年制の大學がまずできるとすれば、それから四年制の大學に進學の途が開かれるといいますのは、三年制の大學を卒業した者は、四年制の大學の四年生にはいれるのか、また一年生から始めてやるのかということを御説明願いたい。  それからただいまの御説明による各種學校の件でありますが、現在在校している一年、二年に對してはなるべく早いところ文部省の方で御決定いただきまして、お示しいただきたいのであります。そうでないと、非常に現在在校しておる者が不安を感じておるような状態でありますから、ぜひこれは早いところお考え願つて、御發表願いたいと思います。
  12. 剱木享弘

    剱木説明員 三年の大學を卒業いたしました者が、四年制の大學の何年に入るかという問題でございますが、三年の大學につきましては、卒業につきまして、學校の中で何單位を受けたかという單位が問題になると思います。四年の大學に行きまして大学を終了するに必要なる単位をとればいいと思いますから、その三年の大學において終了いたしました單位にプラスしまして、四年の大學に習得いたしました——それが今大體基準では百二十單位というようなことを考えておるのでありますが、それに達すれば、そこで終了するという形になると思います。だから一年以上おればいいということになると思います。
  13. 坂田道太

    坂田委員 高等學校改革内容については、近く省令において發表されるということでありますが、この點につきまして、ご質問をいたします。從來高等學校、は文化あるいは理科というふうに二つにわかれておつたのであります。そうして文科出生徒というものは、どちらかといえば理科的な知識に乏しく、理科出身生徒は、どちらかといえば文科的な教養に乏しく畫一的な人間教育の弊に陥りまして、全人格的な人間總合的人間教育に缺けていたと思われるのでありますが、今囘の改革によりまして、今後は理科文科とをあくまで存置されるのでありますか、それともそれを廃止して、一貫した一つの總合的な教育をされるのでありますか、その點につきまして御質問いたします。
  14. 剱木享弘

    剱木説明員 新制高等學校は、舊制高等學校とは全然その立場を異にいたしまして、一應お考えいただきます場合は、舊制中等學校の線に沿つておるとお考えいただけばよいのではないかと思います。從つて一般普通科のやります毎日やる課程は、ただいまあります中學校とか女學校というような種類に属するもの、それから實業學校で農業とか水産とか工業とかいつたものを加味してやります實業的な高等學校、こういうふうにわかれてまいると思います。文科とか理科とかいうように區別は、いたさないと考えております。
  15. 松本淳造

    松本委員長 他に御意見はございませんか。
  16. 水谷昇

    水谷(昇)委員 新制高校學校及び新制中學校を併設できるか。現在私立中學校、将來高等學校になる中學校でありますが、そこには新制中學の制度も併置して生徒を募集しておるようでありますが、現在縣立中學校、これが新制高等學校になねた場合に、新制の中學も兼營できるかどうかということをお聽きしたいと思うのであります。
  17. 剱木享弘

    剱木説明員 私立學校につきましては、その點は自由に併置できるのでございますけれども、縣立學校におきましては、大體設置主體が、義務教育につきましては市縣村になつておるわけでありまして、從つて縣立學校、いわゆる新制高等學校が、新制中學校を併置できないことはないのでございますけれども、その際におきましても、やはり市町村の設置義務一部分といたしまして、いわゆる地域制によつた計畫の中の一部分として設置することができると思つております。ただその際におきましても、私立學校等におきましてはその制限はないのでございますけれども、縣立におきましては、その併置いたしております中學校が豫科的な存在になりまして、その中學校を出た者は當然そこに併置いたしております高等學校に入学できるということは認められないのでありまして、新制高等學校は、併置しておる學校からも、やはり公平な立場入学審査をやらなければならないのであります。
  18. 松本淳造

    松本委員長 他に御意見はありませんか——ありませんでしたら、學制改革に關する件は一應本日は打切ります。     —————————————
  19. 松本淳造

    松本委員長 なおこの際高津委員より曹洞宗宗務廳栃木高林寺住職不當處分の件に關し、當局質疑をいたしたいとのことでありますから、これを許します。高津委員
  20. 高津正道

    高津委員 文部省にお尋ねしますが、栃木県阿蘇郡新合村の曹洞宗高林寺住職金子文榮氏が、日本農民組合運動に左祖しておつて地主側から反對を受けて、長い間曹洞宗宗務廳において、いわば裁判に附せられておつたのでありますが、八月二十五日附で、住職を罷免するという一應の判決を受けて、それに對して現在控訴をしておる事實があるのでございます。これは宗教の各新聞が報道し、ほかの一般新聞も詳しく報道しておるところでありますが、從來の例を見ますと、寺院住職地主側についておるのが大多數であり、それが普通であります。そして小作側についておるものは、非常に例が少い。もつとも最近は時勢を見て、小作側に賛成しておる人もずいぶん殖えてきておるようでありますけれども、寺院全體からいえば、地主側について動いておる。今問題になつております高林寺就職金子文榮君は、日本農民組合新合村支部の顧問をしております。これを、曹洞宗宗務廳の方では、處分するのにいろいろな理由をつけておりますが、時事新報は曹洞宗庶務部長談話を揚げております。その中で宮島庶務部長が「われわれとしては思想的なことは問題にしておりません。ただ僧侶が宗教行事に怠慢であつたのでは困ると思い今度の處置に出ました。もはや審判會の決定をまつほかありません。」と、こういう談話發表しておりますが、思想には關係しないけれども、宗教行事に怠慢であつたということを口實にしております。問題は地主小作との争いで、日農についておるということが問題なのであります。地主側の猛烈な運動があつて宗務廳の方ではその人間を處分するのに、宗法の中にはそういう明文がなかつたので、第五百七十九條の左記各號の一に該當するものは六箇月以上一年未満の分限停止に處するという九號までしかないものに、一項目殖やして處分をしておるのであります。しかもその宗法なるものは、去年の十二月に發表されたもので、金子文榮氏を處分するために新たに附け加えたことは言うまでもないのであります。こういうように、住職日農關係すれば首にするという曹洞宗主務廳態度に對して文部省はどのよう考えておられるかという御意見を承りたいと思います。
  21. 栗田源助

    栗田説明員 ただいまの御質問につきましては、實ははつきりした御囘答を申し上げる材料をもち合わせておりませんし、新聞紙上のことも、はなはだ面目ないことでありますが、實は知らないでおつたような次第であります。また當事者の方からも別に文部省の方には陳情というようなものもまいつておりません。實はお話を聽きましたので出がけに曹洞宗宗務院の方へ尋ねてまいりたいと思つておりましたが、その時間もありませんでしたので、事情も聽取することができなかつたわけでありますが、ただいまのお話により十分調査をいたしまして、この次の機會に御囘答をさせていただきたいと思うのでございますが。いかがでしようか。
  22. 高津正道

    高津委員 それではもう少し事情を申し上げておきます。本年の八月二十五日に、住職権を喪失するという決定をしている。懲戒書を讀んで見ますと——これは本人に交付されたものでありますけれども、  按ズルニ新合村内ニ於ケル思想的社會問題ガ金子文榮ヲ中心トシテ闘争ヲ續ケ、惹イテハ住職ノ信認ト不信認トニ別レ一方ハ農民組合トナリ一方ハ愛村聯盟トナリテ理論的ニモ感情的ニモ事毎ニ反目闘争ヲ事トシテ遂ニ廃止スル所ヲ知ラザル状態ニ陥レル如シ  而シテ其波及スル所遂ニ村民ハ兩派ニ分裂シ高林寺檀徒亦甲乙互ニ相納レズ曾テノ模範村タリシ平和ノ郷土ハ化ケテ闘争ノ巷トナリ終レルモノノ如シ  若シ夫レ斯ノ如シトセバ職ヲ教化ニ奉ズル寺院住職タル者ハ超然的立場ヨリ之ヲ善導シ融合サシメ豪ヲ啓キテ理ヲ悟ラシメ短ヲ補フテ和ヲ講ズルノ態度ニ出デザルベカラザルハ論ヲ俟タズ然ルニ金子文榮ノ堅持スル理念及其行動ハ其職責ヲ離レ其本分ヲ忘レ自己批判ニ陶酔シテ一方的ニノミ走レルハ遺憾極リナキモノアリ その他いろいろかいてありますが、要するに日農側について運動をしたから地主側が非常に怒つていろいろな口實を設けて住職を追い出そうとして、結局地主側の要求が通つて住職を追われるような判決ができておるのであります。私から考えると、農地調整法によつて現在土地改革が盛んに行われておりますが、この農地調整法を厳重に法の通りに守つて行おうとしておる日本農民組合運動というものは、ポツダム宣言の精神に適うものであり、連合軍の趣旨にも、また日本政府の意向にもまつたく適つたものであつて日農側について行動したからといつてそれを首にすることは、非常に一方的な處置だと思うのであります。村が平和にならないで、混亂をしておるから、その混亂の一方についた者は住職を罷免することができるという判例が、もしここに生れるならば、つまりこういう農地改革や農民運動などで、どつちかについたからといつて、それを首にするという新判例をつくることは、實に重大な問題だと思うのであります。ゆえに文部省宗務廳に對して、今月二十四日に行われる判決を延ばして、十分に調査するようにされるか。私個人の見解としては地主についた場合でも、小作についた場合でも、問題にならないと思います。それは本人の自由であると考えます。むしろ農地調整法の精神からいえば、地主側につくということが變なものだと、私個人は考えております。私個人の考え通りにいかぬにしても、日農の顧問になつてその運動を手傳つたからといつてそれを首にするということは、實に重大な問題だと思います。  それからいわゆる懲戒書と稱する文書の中に、宗務を怠慢したからということがありますが、あの住職は悪いのだから、もしあの住職を呼んで葬式をすれば配給物をやらないとか、その他地主がいろいろ迫的な言辭を弄するために、やむなくよその宗派の寺の者を呼んで來て葬式をやつたり佛事をやつたという事實があります。しかしそれが済んだあとで、デマだつた、何でもなかつたという話を聞いて、またその金子氏を呼んであらためて葬式をし直したという事實がある。宗務を怠慢したというのは、地主が妨害をして宗務を怠慢せしめたのです。その寺は大きな寺で、弟子も三人いるし、本人はいつも葬式があろうが、その他の佛事があろうがなかろうが待期しているのであつて、宗務を意識的に怠慢した事實はないということを、いろいろな證明をもつて來てわれわれに陳情している次第でございます。それらの點を考慮されて、輕擧盲動して悪例を遺し、古い勢力の味方になつて寺の住職の言動を牽制したり、新しい運動にはいれないようなことのないよう、私は文部省希望する次第であります。これだけ材料を提供して、何か御意見はないでしようか。
  23. 栗田源助

    栗田説明員 問題はただいまよくお聽きしましてわかつたのですが、しかしなお、現在では宗教団体内部の問題につきましては、宗教自由の關係で、從前は宗教團體法があつたのですが、それが廃止されまして、いわゆる行政官廳として監督というようなことが、現在ではほとんどできない状態にあるわけであります。しかしながら、これが宗教に關する問題で、社會問題となつておるような場合は、行政官廳として、どうしても直接手をつけなければならないことになるのではないかというふうに考えておる次第であります。一應そういう關係から、なお本省としましても雙方調べまして、どういう状態にあるかを見まして、その上で確固たる囘答をさせていただきたいというふうに考えております。     —————————————
  24. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 お願いいたしますが、教員養成に關する小委員會は非公式に今日まで會合を開きまして、それぞれ材料も集めておりますが、一通り材料で整理しましたので、十二日午後一時から小委員會をこの會場で開きたいと思いますが、お許しをいただきとうございます。いかがですか。
  25. 松本淳造

    松本委員長 よろしうございます。
  26. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 委員諸君にもお願いしますが、これは七人の委員から成つておりますが、教員養成に關する問題は、學制改革の一環であります。學制をきめる中にありますのでどうか學制の小委員の諸君もなるべく多數御参加いただきたいと思います。
  27. 久保猛夫

    ○久保委員 小委員會ができますときに、私ちようどいなかつたのですが、學制改革委員會と、教員養成機關に關する小委員會とを別にしたことは非常におかしいと思う。なぜかと申しますと學制改革の中で、これから眞に研究せねばならぬのは教員養成機關の問題だけで、その他の問題は大よそ見當がついてしまつておるのであります。學制改革の小委員會内容となるものは、新學制によりそれを設置するための技術的なこまかな問題については、いろいろ考えがあるかもしれませんが、それは大體行政的な問題でありまして、根本的に考えるべきことは、教員養成機關の問題にかかつておるわけであります。これを拔きにして學制改革の小委員會はあり得ないわけです。もしできれば二つの小委員會を一緒にしてもらいたいと思います。
  28. 松本淳造

    松本委員長 お諮りいたします。ただいま久保委員から、教員養成の小委員會學制改革に關する小委員會とを切り離して置くことは少しおかしいと思うので、もしできれば一緒にしていきたいという御意見でありましたが、いかがですか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  29. 松本淳造

    松本委員長 大體皆さん御賛成のようでありますから、今後右兩委員會は一緒にいたすことにいたします。  他に御意見がございませんければ、本日はこれで散會いたします。     午後十一時四十七分散會