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高津委員 それではもう少し
事情を申し上げておきます。本年の八月二十五日に、
住職権を喪失するという決定をしている。懲戒書を讀んで見ますと
——これは本人に交付されたものでありますけれども、
按ズルニ
新合村内ニ於ケル思想的社會問題ガ
金子文榮ヲ中心トシテ闘争ヲ續ケ、惹イテハ
住職ノ信認ト不信認トニ別レ一方ハ農民組合トナリ一方ハ愛村聯盟トナリテ理論的ニモ感情的ニモ事毎ニ反目闘争ヲ事トシテ遂ニ廃止スル所ヲ知ラザル
状態ニ陥レル如シ
而シテ其波及スル所遂ニ村民ハ兩派ニ分裂シ高林寺檀徒亦甲乙互ニ相納レズ曾テノ模範村タリシ平和ノ郷土ハ化ケテ闘争ノ巷トナリ終レルモノノ如シ
若シ夫レ斯ノ如シトセバ職ヲ教化ニ奉ズル
寺院住職タル者ハ超然的
立場ヨリ之ヲ善導シ融合サシメ豪ヲ啓キテ理ヲ悟ラシメ短ヲ補フテ和ヲ講ズルノ
態度ニ出デザルベカラザルハ論ヲ俟タズ然ルニ
金子文榮ノ堅持スル理念及其行動ハ其職責ヲ離レ其本分ヲ忘レ自己批判ニ陶酔シテ一方的ニノミ走レルハ遺憾極リナキモノアリ
その他いろいろかいてありますが、要するに
日農側について
運動をしたから
地主側が非常に怒
つていろいろな
口實を設けて
住職を追い出そうとして、結局
地主側の要求が通
つて住職を追われるような判決ができておるのであります。私から
考えると、農地調整法によ
つて現在土地
改革が盛んに行われておりますが、この農地調整法を厳重に法の通りに守
つて行おうとしておる
日本農民組合の
運動というものは、ポツダム宣言の精神に適うものであり、連合軍の趣旨にも、また日本
政府の意向にもま
つたく適
つたものであ
つて、
日農側について行動したからとい
つてそれを首にすることは、非常に一方的な
處置だと思うのであります。村が平和にならないで、混亂をしておるから、その混亂の一方についた者は
住職を罷免することができるという判例が、もしここに生れるならば、つまりこういう農地
改革や農民
運動などで、どつちかについたからとい
つて、それを首にするという新判例をつくることは、實に重大な問題だと思うのであります。ゆえに
文部省は
宗務廳に對して、今月二十四日に行われる判決を延ばして、十分に調査するようにされるか。私個人の見解としては
地主についた場合でも、
小作についた場合でも、問題にならないと思います。それは本人の自由であると
考えます。むしろ農地調整法の精神からいえば、
地主側につくということが變なものだと、私個人は
考えております。私個人の
考え通りにいかぬにしても、
日農の顧問にな
つてその
運動を手傳
つたからとい
つてそれを首にするということは、實に重大な問題だと思います。
それからいわゆる懲戒書と稱する文書の中に、宗務を怠慢したからということがありますが、あの
住職は悪いのだから、もしあの
住職を呼んで葬式をすれば配給物をやらないとか、その他
地主がいろいろ迫的な言辭を弄するために、やむなくよその宗派の寺の者を呼んで來て葬式をや
つたり佛事をや
つたという
事實があります。しかしそれが済んだあとで、デマだ
つた、何でもなか
つたという話を聞いて、またその金子氏を呼んであらためて葬式をし直したという
事實がある。宗務を怠慢したというのは、
地主が妨害をして宗務を怠慢せしめたのです。その寺は大きな寺で、弟子も三人いるし、本人はいつも葬式があろうが、その他の佛事があろうがなかろうが待期しているのであ
つて、宗務を意識的に怠慢した
事實はないということを、いろいろな證明をも
つて來てわれわれに陳情している次第でございます。それらの點を考慮されて、輕擧盲動して悪例を遺し、古い勢力の味方にな
つて寺の
住職の言動を牽制したり、新しい
運動にはいれないようなことのないよう、私は
文部省に
希望する次第であります。これだけ材料を提供して、何か御
意見はないでしようか。