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1947-11-05 第1回国会 衆議院 文教委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年十一月五日(水曜日)     午前十一時三十八分開議  出席委員    委員長代理 永井勝次郎君       野老  誠君    松澤 兼人君       松本 七郎君    押川 定秋君       久保 猛夫君    五坪 茂雄君       米田 吉盛君    坂田 道太君       圓谷 光衞君    豊澤 豊雄君       松原 一彦君    黒岩 重治君  出席國務大臣         文 部 大 臣 森戸 辰男君  出席政府委員         文部事務官   日高第四郎君     ————————————— 本日の會議に付した事件  學制改革に關する件     —————————————
  2. 永井勝次郎

    ○永井委員長代理 會議を開きます。  學制改革に關する件を議題といたします。本日は六・三制豫算財政的措置竝びに六・三制實施に關する明年度の計畫について文部大臣より御所見を承ることといたします。なお引續き委員各位の御所見發表なり御質疑を試みたいと思います。
  3. 森戸辰男

    森戸國務大臣 新學制、殊に六・三制に基く新制中學の問題については、委員諸君の非常な關心をもたれておるところでありますし、現内閣も、殊に文教の衝に當つておる私は、特にその重要性に鑑みまして、豫算審議が始まつて以來、この點について私どもの主張を最小限度の形として實現すべく強くその必要を説きまして、閣議においても皆樣の納得を得て、六・三制豫算總額三十一億のうち、國庫支辨十四億ということが内定いたしたいのであります。そうして建築につきましては、來年度自然増加生徒を入れるのでありますから、早く仕事が始められなければならぬ。殊に二部教授あるいは假教室子供のため、寒い所では、來年自然増加生徒を入れる教室のためにも用いたいという必要がありましたので、實は豫算内示いたしたのであります。そうして縣ではさらに市町村に大體の内示を行いまして、所によつてはすでに著手しておるような状況でありましたが、その後追加豫算の問題がいろいろ審議をいたされまして、急速に決定するに至らなかつたのであります。その間に關東の水害が起り、復舊に多くの資材を要するという事情もありまして、この問題を實はもう一度考え直すような事態に達したのであります。このことは、すでに御報告いたしたのであります。しかし六・三制の問題、新しい教育刷新具體的政策は、できるだけ貫徹しなければならぬし、私ども最小限と考えた十四億は公共事業費の中に盛られなればならぬと私どもは考えまして、いろいろ努力をいたしたのであります。殊に夏季の水害は、旱害も含めまして非常に大きなものでありましたので、これを放つておくということは、國土荒廢を促進することになり、殊に食糧問題にも重大な關係がありますので、それについて相當の資材費用とが要るということも、十分に考えなければならぬ。またほかの部面でも、たとえば刑務所に關する問題等、緊急に費用を要するものもありまして、いろいろそれらのこと慎重に相談をいたしまして、結局閣議ですぐにはまとまりませんで、總理に案をつくつていただくこととなり、それをもう一度閣議に出していただいて、結局公共事業費の配分は、總理裁定に基いて決定いたすことになつたのであります。これは十一月一日のことであります。大體一般會計公共事業費追加豫算は五十二億四千六百二十二萬一千圓として、その事業別割當については、そのおもなものとして六・三制學校整備補助として七億圓、災害復舊費として三十六億圓餘、そのうち今夏の水害費二十一億圓餘ということをとりあえず決定することになつたのであります。私どもとしては、この國庫支辨の十四億の約半額であります——もちろんこれは資材の裏づけのあるものでありますが、これでは六・三制を完全に行つていくことはなかなかむずかしいのであります。しかし他面におきましては、先ほど申し上げましたような日本の今日の經濟状態、殊に今夏における水害等事情を十分に考え、相當の不便も忍びつつ六・三制をやつていかなければならぬという事情も十分に了承いたすのでありますけれども、しかしこれだけではなかなかむずかしいので、私どもとしましては、さらにこの豫算處置によつて不足が出ますが、これは適當方法によつて充足してもらうというところに全力を盡していただくということを、實は考えておるのであります。この點におきまして、私ども最低限と考えておつたものが、さらに七億に約半減されたということについては、非常に遺憾に存じておるのでありますが、他面から申しますと、世の中には今日の事態では六・三制をやめた方がいいのではないかという意見もあり、またこれを延ばしたらいいのではないかという意見も、世上には往々にしてあつたのであります。殊に豫算が非常に少い額であるならば、六・三制は非常に結構であるけれども、しかしこういう不十分な形でやることは望ましくないから、そういうことでは延期したがいいというような考え方も、世上にはあつたのでありますが、この追加豫算の決定によりまして、政府意思は、いろいろ不十分な事情もあり、困難であるけれども、しかしその中にも六・三制はやつていこうという意思が明らかにされたのであります。そして今年通せなかつたことは、來年あるいは再來年においてもこれを計畫的に行つていこうということが、そこに盛られておると解釋してよいと私どもは存じておるのであります。こういう意味におきまして窮乏日本の、殊に災害によつて大きな不時の損害を受けた間にあつても、なお教育刷新の線を、苦しいながらも賢持していこうという政府の固い意思のあるところをも、御了承願いたいと思つております。他面におきまして費用というものは決して十分でなく、われわれの最低限と考えたものの半分という——もちろんこれには資材が十分裏づけられたのでありますけれども、なかなかそれで豫定通りに十分な最小限度を補つていくのにも困難でありまして、これがためには、當局といたしましては、また政府といたしましても、あらゆる努力をいたして、この最小限度に達しない額を充足していきたいと考えておるのでありまして、この點につきましては、委員諸君の十分なる御協力を仰ぎ、殊に國會における強い御支持を得たいと存じておる次第であります。
  4. 黒岩重治

    黒岩委員 三つの點についてお伺いしたいと思います。その一つは、ただいま御説明になりました今次の追加豫算に計上されました七億圓の殘りになりますところの、あとの七億圓であります。充足してもらおうと考えておるというそのお考えでありますが、他の方面から聽きますと、すでに閣議において殘額の七億圓については、豫備費、または追加豫算によつて必ず計上をする、こういう申合せになつておるということであります。さらにまた文相の過日の新聞發表にもそうした解釋のできるような御發表があつたと思います。これにつきまして、はたしてすでにそういうことが閣議において申合せになつておるのか、單に文相として充足してもらおうという希望をもつておる程度のものか、それからまた閣議申合せになつておるとしたならば、大藏大臣豫算に關するところの演説をしますときに、そのことを言明するようになつておるのか、また大藏大臣でなくて、文部大臣自身において本會議においてこれを言明せられる用意をなさつておられるか、こういうことにつきましてお答えを願いたいと思います。  第二點は、世間ではこの問題で文部大臣は辭任するであろう。かようなデマが飛んでおるのであります。文相はこの當初計畫しました責任を完遂せずして、退陣をせられるというようなことはあり得ないと思いますが、文相の御決意のほどを伺いたいと思います。  さらにまた第三點につきましては、明年度豫算につきまして、どれだけのものを確保しようと決意をせられておるか。これも差支えない範圍においてお答えを願いたいと思います。
  5. 森戸辰男

    森戸國務大臣 ただいま、殘りの七億をどうして充足していくかということについてのお話がありまして、あるいは一般會計の豫備金から、さらに追加豫算でやるという申合せ閣議であつたとかという風説もあるし、またお前もそういうようなことを言つたというお話でありましたが、私は實はそういうことを申した覺えはないのであります。足らないところは最善努力をいたすということを私も考え、閣僚諸君もそういうふうに考えておる、こういうことを申したのであります。そういうことが外に傳わつておるということについては、私は關知いたしておりません、何らかの誤傳ではないかと存じます。從つて大藏大臣財政演説の中にそういうことを織り込むかどうかということも、私は右樣事情でありますので、そういうつもりで最善努力をするというのであるから、豫算演説にはそのことははいらないのではないかと存じますが、これは私からお答えいたすことはできません。私自身會議質問がありましても、その點については、今申し上げたことをお答えするよりほかはないと考えております。  なお、その次に、文部大臣は、七億に削減されたから、責任をとつてやめるという風説があるがそれはどうかというお尋ねでありますが、私はそういうことを自分で申したこともなく、またやめるつもりもないのであります。實は新しい教育刷新仕事は、非常に大事な仕事でありまして、私はあらゆる努力拂つて、六・三制度その他教育刷新仕事を、完成いたさぬまでも、最善の結果を生みたいと努力いたしておるのであります。七億は私といたしましてはまことに不十分なものでありますけれども、しかしこれは七億の最終的にきまつたものではなく、まずとりあえず決定されたのでありまして、あらゆる努力拂つて、極力實際に行つた上で、不足の分は資材等調整を考えながら、いろいろな方途を盡してこれを滿たしていくことに、力を盡したいと思つておるのであります。それでありますから、むしろこれからの責任が大きいと思いまして、私は最善を盡すのが私の責任であると存じておるのであります。殊に私は中學學制の點については、日本の育ちつつある生徒たちの問題であり、實は勞働者、農民諸君は強い發言權をもつておるが、發言權がない數百萬あるいは千萬に餘る人々のためであり、またこれは將來日本のためであると現在は強く叫ぶけれども將來は叫ぶ力をもつていないのであります。そういう點で私どもはそういうもののことをほんとうに考えて進む人がなければならぬと存じておりますので、そういう意味でも、私はふつつかではありますけれども最善の力を盡して、その職責を全うしたいと存じておるのであります。  第三の點の、六・三制については、明年度豫算に、つまり明後年の計畫に關するものが中學については多いのであります。それから高等學校については、明年度のものがあるのでありますが、高等學校については、大體國庫の費用にはあまり仰がないということになつております。ただ勤勞青年教育施設としてのパート・タイムの高等學校について、國費が必要とされるのでありまして、そういう點を勘案しながら、この豫算を計上いたしておるのであります。しかしこの點につきましては、まだ詳しいことを具體的に申し上げる時ではないと思いますのでそのうち、おいおい時期が熟してまいりますれば、こまかいことを御報告いたしまして、皆さんの御檢討を願いたいと存じておる次第であります。
  6. 米田吉盛

    米田委員 七億圓を承認せられた根據、どういうわけで七億になつたか。たとえば、ちようど半分だからというわけか、あるいはほかにもつと理由がありますれば、それを伺いたいと思います。  それから、豫算がこういうように閣内で一應承認になつたので、大體議會でもこれは通過するものと考えてよいわけですが、その場合にこの七億圓をどう使われるかということを、ひとつ御研究の進んでおる範圍で結構ですから伺いたいと思います。
  7. 森戸辰男

    森戸國務大臣 七億圓を承認した根據といいますのは、私どもは實は十四億、政府はぜひ出してもらわなければいかぬと考えておつたのでありますが、總理が、公共事業全體のことを考えて、七億ということを裁定されたのであります。それに從つたのでありまして、こちらからこれが必要であつてこうということではないのであります。その點で總理裁定案といいますか、總理の案を受諾したということであります。  それから第二の點は、當然に起つてまいりますことは、これは十四億ということで計畫を立てておりましたが、さしあたり十分資材の裏づけせられた七億になつたので、この間の調整をしていかなければならぬのであります。それで、これについては、地方に通牒を發してどういうふうな今日の具體的状況にあるかということを至急に報告させ、それに基いてその措置をいたしたいということに、鋭意事務當局でその案を練つておる次第であります。この點は事務當局からお答えをいたすことが適當かと思います。
  8. 松原一彦

    松原(一)委員 五十二億圓の公共事業費の中から、十四億圓の新制學校費用を捻出することは、このたび起りました洪水の跡始末を急ぎます上から見ましても、無理であることはよく心得ております。從つて、五十二億のわく内に追いこまれて、優先的にとらねばならない水害復舊と、それからすでに天下公約したる新制學校建設とが絡み合わされて、それを國内解決として閣議でおきめになろうとせられたる御苦心は十二分に拜察いたします。しかし、兩方ともにこれはのつぴきならぬ日本の重大問題でありますので、どうかわれわれは豫備費なり、その他の方面から、五十二億のほかに若干の補充を加えて、ここに十四億圓が完全に施行せられまするように、熟望しておつたことは、文相もすでに御承知の通りであります。また文相もそれをめざされたものと思うが、今の御説明によれば、七億という査定で不滿足ではあるが承認したということであります。ところが私昨日から今日にかけて文部當局の方々にもお目にかかつていろいろ調べてみると、北海道方面では、すでに雪の降るのを見越して、來年度の四月から増加すべき人員に應ずる教室、それを今の不足分冬越しに充てるというお約束であつたあの工事が大部分すでに終つておる。東北六縣では、そのうち約八割がすでに終つておる。まことにしかるべきことだと思う。そうなくてはなりません。だからこそあれは急いだ。冬が來ないうちに冬越し用意として冒險でありながらも、文部省はその地方配付豫算の額を町村にまで割當内示を承認せられたのであります。いやそれを各府縣知事に命ぜられたのであります。してみれば、今ここに計上せられた七億圓という半額をもつて、一體これをどう處理せられるのであるか。すでにできた所にはやる、今からかかる所は、資材を見越してこれから考えるでは間に合わはい。むしろ今できた所というのは、實は違法だと思う。あれは内示であつて、決して公然と命令したものじやない。しかし地方ではのつぴきならぬせつぱ詰まつた實情から、冒險にも地方府縣の建築課とよく協議の上に、寄 附金その他の融通をつけて、補助金のあることを見越して冒險的に建築をいたしたのであります。しかしこれは違法であります。けれども、やつた以上はどうしても支拂わざるを得ないのでありまして、これを支拂わないとなれば、町村長立場も、府縣知事立場もなくなるのであります。ところが決定した金は半額であります。一體どうなさるのであるか。もしすでに工事終つた所にはやるということであるならば、それはいわゆるやみ的な違法を行つたものが得をして、自重して待つた者が損をする結果になる。手をつけずに待つた者は、遂に冬越しもできないで、工事が間に合わない。内示をそのまま大膽に引受けて、公式の許可はないけれどもというて、かかつたものは得をしたという結果になるおそれが十二分にあるのであります。今、文相は、自分責任をとる氣持はないというお答えでありましたが、私は何も文相にやめていただくとかいつたようなことを開き直つて申す意味ではありませんけれども、先般來、この公約天下にして、内外の人々義務教育九年の遂行を約束せられたその政治的な責任からも、この十四億は、とにかく一應は果していただくなくてはならないということを再三申上げ、かつ文相もこれをば御承知になつてつたはずと私は心得ておる。今半額になつて、萬やむを得ない、自分責任を感ぜぬというような御口吻に對しては、私は國民とともに非常に不滿足の意を表したいと思う。殘念でございます。そんなことで、この重大なる時期の乗切りはつかないと私は思う。もともとこの六・三制の完全實施なんということは、できないにきまつておるのであります。こういう國家窮乏の際に、學校關係だけが完備したものであろうはずもなし、無理をやつているのでありますから、それにはいろいろなるくふうが要るのです。いろいろな政略があつていいわけです。新年度豫算が、何も先般來お示しになつたような何十億の豫算でなくてもいける道があると私は思いますが、いずれにしましても、今目の前における十四億の問題は、そう簡單に片づけるわけにはいかない。今その補助金の使途に關する質問に對しまして、文相お答えはすこぶるあいまいであります。要領を得ません。どうか國民が納得するように、はつきりした御説明を重ねて煩わすものであります。
  9. 森戸辰男

    森戸國務大臣 松原委員の御質問は、まことにごもつともであります。所によりましては、殊に寒い地方では、すでに内示した豫算を大體勘案して、學校を建てつつある状態でありまして、冬にさしかかると工事もできませんし、また假教室等も惡い所は、子供は勉強できません、そのために學校ができつつあるということは、あるいは違法でありましたとしても、やむを得ない事態でありまして、場合によれば、喜ばしいとも申してもいいかもしれないと存ずるのであります。そういうふうにしてすでに始められた地方もありますので、私どもはそういう地方について、その責任を囘避するわけではない。そうしてまだ著手されていない地方もありますし、そういう所にさしあたり許された七億圓をどういうふうに配分していくことが合理的であろうかということを、調査に基いて早急に決定したいと存じておりまして、進む工事は支障なく進むようにと考えているのであります。ただこの七億の豫算はまずとりあえず決定いたしたのでありまして、これがこれで動かぬということはないのであります。そこで私どもは、殊に私は、この最小限金額最小限度最小限度に基礎をおきながら六・三制によるところの必要な金額を確保いたしたいと考えておるのであります。中には資材を必要とする部面もあり、これにつきましては、將來資材割り方に關連しておるのであります。他面においては資材を必要としない部分もありますので、それぞれそういう事態を勘案しながら、實は最善努力を盡したいと存じておるのであります。もし資材が許すならば、政府といたしましては、實は災害復舊と六・三制とが競合しないような形で豫算を、殊に公共事業部分を組みたいと努力いたしたのであります。この二つはさしあたり物質的な角度であり、他面では精神的日本再建の負擔という點で、非常に大事な政策でありますので、これが競合しないような形で、おのおの最小限度が貫徹されるように努力いたしたのでありまするけれども、不辛にして不時災害が起る、そういう事態で、われわれが冷靜にまたこのことを考えて、許される範圍でこれを解決していかなければならぬという事態に、自然の災厄によつて追い込まれたのであります。そういう事態で、私はこれは決して十分なるものと考えないのみならず、最小限度をも割つておるので、六・三制の實現は各方面努力耐乏とがなければできぬと存じておりますけれども、しかし日本教育は、殊にこの敗戰窮乏日本教育は、そういう耐乏の下に行わざるを得ないという事態もまた、私どもは率直に認めていかなければならぬと存じているのであります。なお、この充足する方法について、もつと具體的一つ一つ指示しろということでありますけれども、この點につきましてはそういう方向に向つて、私どものみならず、内閣資材等を勘案して、最善努力をするということを申し上げるよりほかに除はないのでございます。そうしてそういう努力が殘されているときに、私どもはそれを放棄してはならぬ。そうして私ども責任はそれをこういう客觀的事態の下にあらゆる努力拂つて、その實現に導いていくということが責任であると考えているのであります。職をやめるということは、さきほど困難なことではない。しかし、この窮乏日本に、また多くの反對のある中に、最善の力を盡して六・三制を實現していくということは、もつと困難なことであると私どもは、少くとも私は考えておる次第であります。
  10. 圓谷光衞

    圓谷委員 文部大臣の御心境と御努力に對しては、一應了といたしまするが、七億圓の殘りの問題については、最善努力をして、この窮乏の中にも六・三制の完全實施をするというお話でありますが、前々からこの十四億の豫算をとることについても、ただいまと同じようなお話で、最善努力を拂うということであつたのであります。そうしますると、七億の豫算の殘りというものは、最善努力拂つてもこれができない場合には、いかなる御責任を感じられるか。私は町村に一應割り當てまして、不足七億の缺損が村に起ると思うのでありますが、この缺損の起つた場合に、町村長請負師に渡し、村の機關に諮つて建設にとりかかつた場合に、この缺損の起つた場合における處置を、文部大臣責任をもつて、かりに村がこれの辨償を要求した場合にお支拂いになる御意思があるかどうかということをお伺いしたいと思います。  もう一つは、ただいま六・三案の完全實施ということは、なかなか容易でないと松原君もお話になつておりますが、片山總理施政演説において、新憲法の精神を活かすためにも、文化、教育を推進するためにも、種々なる困難はあるが、特に——特にという言葉を使つておられる、特に六・三制の完全實施をするためには、最善努力を拂うということをお述べになつております。森戸文部大臣も、たびたびそれを明言されております。これは國民に對して一つ公約であり、それを一應割當をして、今度は半分きり出せないということになると、まつたくこれは國民を欺瞞したことになつてうそをついたことになつてしまうのであります。私の所には、郷里から小さい子供の手を通してこの豫算の問題で心配してきておるのでありますが、事教育の問題に關する以上は、全國五十萬の教職員が、政府みずからがうそをつくのだということを子供に教えられたならば、これは教育上重大な問題が起るのではないかと思つております。過日文相は、心境坦々としておるというお話があつたのですが、坦々たる氣持ということは、責任をとつて國民におわびをするような決心もあるというふうに、私も考えておつたのでありまするが、ただいまの御説明で、七億圓以外の殘りは、どうもあいまいで、不確定で納得できないのでありますが、この點を必ず——これは最善努力でなく、必ずとるというところの御決意をお示し願われるならば非常にさいわいと思うのであります。ここに御明言を願いたいと思うのであります。
  11. 森戸辰男

    森戸國務大臣 十四億が内示されまして、村では仕事を始めておるものがある。それで半分になつたらいろいろ負債の關係でもめんどうなことが起るであろう。それについて責任を負うかというお話でありました。至極ごもつともなことであつて、私どもも、その點には十分に考慮をいたしております。それで實際に著手されたものがどれだけあるか、計畫中のものがどれだけあるかということも詳細に調べまして、それについての適當處置をとることを、ただちに當局に命じておるのでありまして、その點はその實情に即しながら處理いたしていくつもりでおります。  なお第二の點は、總理竝びに私は六・三制實現について最善努力をするという方針のもとに進んでおりますることは、今も當時もまつたく變りはないのであります。なお當時内閣が、内定ではありまするけれども追加豫算新制中學のために三十一億餘、そのうち國庫支辨十四億ということを内定いたしたことも間違いないのであります。ただこれはまだ確定の豫算ではないので、確定するまでにはいろいろな手續も必要であるということは、常識的にわかつておることであろうと存ずるのであります。しかしそういう事態で、先ほど申しましたようにそれが確定するまで待つということは、實は當期竝びに來年度教育に差障りができるというので實は十四億あるいは三十一億の金額について内示をいたしたのであります。しかし内示内示であります。そのときの條件は、これはきまつた豫算ではないのであります。この追加豫算將來確定豫算になるときには、これと違つたものになるかもしれないのであります。しかし右申したような事情から、これをそのときまで待つていおると、かえつて掲げた目的に背くこともあるから、こういうふうになつたということを内示しておく、こういう意味でありますから、實は政府うそをついたということではないと私は思います。これは實はまだ閣議での内定でありますからそれが豫算に示されてそれがきまつたのではなく、豫算の進行中一つの過程を、實は早く知らせたというわけであります。しかしその知らせたことと、實際にきまつたのと開きがあると、地方では非常に困るのは、私もよくわかつておるのであります。そこはいろいろ問題が起つてきますので、それについては、私どもはそういう狂いのないようにしなければならないと思つております。ただ内定されまして追加豫算が決定せらるる過程において、今囘の水災という、まつたく豫期しない、そうして資材を過度に必要とする天災が起つたという、われわれの豫測し得なかつた事態の起つたということも、私どもは考慮に入れてよいのではないかと考えておるのであります。もちろん、それを含んだものであることが一番よいのでありまするが、他面日本の現在の資材の状態が、この兩方を全うできないという時代においては、全體をバランスして殊に夏の災害と、六・三制を中心として追加豫算公共事業において含まれるということは、これは實はやむを得ないことと存じまして、總理裁定を私ども最小限度から離れたけれども、しかしそういう客觀事態を考慮して、承認をいたした次第であります。  それでは殘りの七億圓は確信をもつて必ずできるということを今誓えというお話でありますが、これはまだ少々無理でありまして、冬はそういう天災は起らないと思つても、またいろんな事情も起るかも知れませんので、私はそれは必ずそうなるということを、ここで確言いたすことは、ちよつとできないと思いますけれども、しかし事態が正常に進んでいけば、そういう方向における最善努力がなされて六・三制制度を實施して行こうということには、みんな贊成であり、閣僚諸君も御贊成を願つて實現できるものと私は確信し、そうしてそこに最善努力をいたすというのが、われわれの心境でありますので、その努力の結果いかんということが私にはいろいろと考慮される問題であります。
  12. 松原一彦

    松原(一)委員 私は今の文相の御答辨には、どうしても納得できかねるのであります。しかし、難きを強いるものではありません。ただ今囘の追加豫算が九百億を超す大豫算のうちに、わずか十四億の文教の費用が織り込まれないはずは實はないのであります。この點においては、私は現内閣は文化、文教の方面に對し、非常に理解をもつ内閣だと信じておつたが、裏切りのはなはだしいものがあると不滿に思うのであります。五十二億のわくの中から出せというので出ません、それは無理です。水害復興をわれわれは優先に認めたいと思つておりますから、これから一文も削ろうとは思いません。しかし九百億餘の中からあんばいをするのであれば、わずか七億ぐらいの金が出ないはずはないのであります。但し出ないところに一つの隘路がある。それは安本の資材の裏づけが六億近いものしかないという帳面づらの隘路があります。これはまつたくの安本の帳面づらの隘路であつて、事實今日手がついていない。補給金によつて建築を急いでおるのに、手のつかないのは大都會であります。大都會には資材がない。これは事實であります。しかし一面町村には資材があることは安本でも認めておる。それは帳面に載つておられないだけの話である。その證據には、地方における木材などは、すでに丸公以下で手に入るのであります。ただ粗漏な調査から事實を誤つておるのである。米がない、主食がないと言いながら、日本に餓死者がないというこの現實は、いかに日本の統計が誤つておるかを指摘しておると同じように、資材はあるのであります。そのある資材をないものとして、六億何千萬圓くらいのところに釘づけにしてしまい、わずか七億足らずの金を九百億の中から融通し得なかつた政府の熱意を、心から遺憾に思うのであります。これで文化國家建設、苦しい中から義務教育を延長していこうとする大努力を拂われたものとは、どうしても思われません、遺憾千萬であります。のみならず、實際においては、これは今のようなことであれば、やれないのであります。この點、私どもは出身閣僚に極力この十四億の完成を求めました。その報告によれば、文相はいろいろの點から言を濁しておいでになりますが、われわれの聞くところによりますと、それは年内には必ず出す、あらゆる方法を講じて必ず出す、豫備費の中からも、あるいは資材の面からもできなければ追加豫算をとつてでも出すから、決して信を失するようなことはしないから了解してくれという話があつて了解しておるのであります。今、文相の言われる通り、努力はするけれども、しかしそこはまだ確定の自信はないようなお言葉であるならば、われわれは最初の公約通りに出身閣僚を引き下げる決心をもつてつた。野に下つて主張しようと思つてつた。しかし現内閣人々もより苦しい中からとにもかくにも公約だけは果そうとする誠意は示されたものと見て、私どもは了解をいたしたのであります。文相も今日はいろいろ苦しい事情もありましよう、言明しかねる點もありましようから、一應私どもは了解いたしまするが、どうか至急に善後策を講じられて、公約を全うせられるように御努力を願いたい。  なおいま一つは、來年の新年度のこのままの施設ではどうしてもやつていけないという學校が、全國に何パーセントあるか、その實數を至急に御調査を願いたい。昨日も私は中學教育關係の方にも申し入れ、今日、日高局長にもお願い申したのでありますが、至急に御調査を煩わしたい。そして私どもは今のうちから來年の四月の善後策を講じたいと思います。どうしてもいけないというならば、われわれもやはり考えざるを得ない。しかしそのパーセンテージはどのくらいであるか二部教授ぐらいは當り前であつて、當然の話である。戰後の日本において、そんな完成した教育はできようはずはない二部教授、三部教授はやむを得ないと思います。手段はいくらもあろうと思います。ぎりぎりの場になつて、どうにもこうにもならないというふうにいかないうちに、今のうちから御調査をいただいて、われわれにも御相談にあずからしていただきたいのであります。そうすればわれわれは四月からのやり方に對して十二分に考えたいと思うのであります。以上のことを申し上げまして、文相の御言明になりがたい點を忖度しつつ、私はこの豫算が必ず全額本年度内には、支拂いのできるものと信じて私の質問を打ち切ります。
  13. 森戸辰男

    森戸國務大臣 ただいまの松原委員の御質問竝びに御鞭撻、ありがたく拜聽いたしました。實は公共事業新制學校建設費が入つておる、そういう立て方になつておりますので、實は災害復舊新制學校とが競合するような形になつておる。立て方としてはこれは性質の違うものだから、文教は文教として、災害復舊の土木事業は土木事業とする方が、全體を示す上からはいいのでありますが、また一部の意見では、學校を建てるというのは、一種の土木事業で資材の面を重視しなければならぬというところから、公共事業の中に入れるということになつたわけであります。そこで資材水害その他の災害等を復舊することになり、しかも先ほどから言つておる夏以來の稀有の災害が起つてから、殊に利根川の治水等では非常に大きな資材を必要とするところから、新制中學の方にもそれが反映するという事態に至つたのであります。これは非常に私ども遺憾なことと思つております。また他面御質問のありましたように、九百億以上の中から七億という金が出ないというのは、文教に努力しておるところの内閣としてはどうであるかという御質問で、これも至極ごもつともであると思います。ただこの點は、資材ということに關連いたしておるのでありまして、資材が許されれば解決すると思うのであります。しかしまた他面日本の現實の資材のあり方とその調査が、統計的に必ずしも正確でない、あるいは實情を反映しないという點があり、この點は大いに努力して事態を明らかしたらよいのではないか。統計面に現われておるより、多くの資材があるのではないかという御質問でありますが、これは至極ごもつともなことでありまして、安本等でその點はもう少し資材の點を明らかにして、その裏づけでこの問題が解決されるような土臺をつくつてもらうことも一つ努力方法であると思つております。そういう點で、私ども實は最善努力をいたしたいと思うのであります。松原委員は、これについていろいろ話がありましたけれども、私責任の地位に立つておる者といたしましては、足らないところを資材調整を考えて最善努力をしていくことをお答えするしかないのであります。そして實際には六・三制の不足が現實に滿たされていくことに最大の重點をおいて考えることで、實はいろいろ具體的なというか、そういう希望の數字を述べたり、そういうことをすることではなく、また外からできなければどうするということを表明することではなくして、現實に六・三制の制度ができていくような線に沿うて最大の努力をいたしたい、こういう心境でおりますから、皆さんの御勸告、御鞭撻は實にありがたく拜聽いたしまして、最善努力をもつて六・三制がこの窮乏の間、災害に遭つた國土に十分行われるように努力いたし、また皆樣の御協力をお願いする次第であります。
  14. 黒岩重治

    黒岩委員 意見を申し述べたいと思います。文相が辭任の意思をおもちにならぬということは、すでに内示したところの責任を完遂する決意があるということを伴うのであります。しかしいろいろな情勢から、この席において文相自身の口から必ずやるということは言えないであろうということも想像できるのであります。かような見解のもとにおいて、文相の御決意通り當初の計畫が完全に實行せられるような御努力を、その責任においてしていただきたいということを要望するわけであります。もしそれができないという段階になりましたならば、おのずから文相としての御決意があられることを私は確信いたします。なお豫定されておりますところの殘りの充足の途が、早急に開かれるような御努力をお願いするとともに、できるならば本會期中に、國民に向つてはつきりと、あとの七億圓はどうするという途を明確に示せるような御措置な願いたいと思います。早急にこれをしなければ、國民の間にはいろいろの誤解が生れまして、考え方に混亂を起すような結果が特に教育者そのものにあることも想像されるものであります。すでにどの方面から出た言葉か存じませんが、數箇月以前から六・三攻勢という名稱のもとに勞働攻勢を計畫しておつたようなふうもあるのでございます。この際この問題をきつかけにして、教育者の思想を混亂に導くことになりましたならば、教育上ゆゆしい問題であります。地方民の失望に加えて、教育者の反感が高まりますところに、私どもは憂慮すべき事態が起ることを憂えるのであります。こういう點から考えまして、文相の今心の中におもちになつておられます計畫は、なるべく早い時期において、國民具體的に示すような途をおとりになることを、切に希望する次第であります。
  15. 森戸辰男

    森戸國務大臣 今、黒岩さんの御意見、まことに感謝いたします。最善を盡して豫定された額が滿たされるように努力いたそうと思つております。これは必ずしも私一人の考えではなくして、政府としてもそういう方向に努力をいたすものと考えております。  第二に、それができるだけ早くわかるようにということでありますが、これもまことにその通りであります。ただ他面、今、追加豫算が決定されて議會に提出されたのでありますから、その事態を勘案しながら、この問題は考えていかなければならず、また客觀事態を考えながら、最善の形でそれが實現されるように努力しなければならぬので、その時期の點は、できるだけ早くということが當然のことでありますと同時に、またその要求がもつともとして容れられるような形をとることも、また冷靜に考えて處したいと存じております。  なおこの問題について、六・三攻勢というようなことも考えられていることは、實は六・三制の問題が起つた時からすでにそういうこともあるということを私はよく存じているのでございます。あるいは少くとも七億になつたという事態が、最小限度といいますか、七億から始めなければならないというような事態が、そういう運動に一つのきつかけを與えるということもあり得るかと存じております。そういう事態のもとで、私どもはできるだけ早くこの問題が解決されるように、心から考えているのでありますが、他面において眞實に日本によい教育の制度、六・三制をこの窮乏の間に打建てていこうとする現實的な熱意と、この問題を政治的な問題にし、特殊の他の目的をもつた運動とは嚴重にわけて考えなければならぬと私どもは思つております。そういう點については私どもは、教員組合においても、内外の事態客觀的に考慮されながら、問題は日本の新しい教育をよくしていくというところに重點があるということを十分に考慮におきながら、この制度がよく打建てられていくような、民主的な國民の間の運動としてそれができるように、私は心から願つている次第であります。
  16. 永井勝次郎

    ○永井委員長代理 文部大臣は、一時に宮内省においでにならなければならない豫定になつているそうでありますから、本日はこの程度で散會いたしたいと思いますが、いがかですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 永井勝次郎

    ○永井委員長代理 本日はこれにて散會いたします。次會は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時五十三分散會