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日高政府委員 ただいまの御質問は、比較的細部にわたりますので私から御
説明申し上げたいと思います。
新制高等學校は、發表いたしましたように、
來年度から出發することにいたしまして、同時に一年生と二年生と三年生をつくる
豫定であります。
新制高等學校の
認可には、
學校の
認可の
基準を設けることに
なつておりまして、
刷新委員會においては、なるべく
教育の
内容を抵下させないように配慮することを特に注意がありました。なるべく
従來の
高等専門學校のうちの相當學年に當るような
教育をして欲しいという注文がついておるのでありますから、もしそういうことを厳密にとりますと、
新制の
高等學校の数を非常に減らさなければならないというような
事態になりますし、また現在の
中等學校が約三千七百あると思うのでありますが、それらの大多数のものは、
新制の
高等學校になる志望をも
つておりまして、著々
準備中でありますから、もし
基準を非常に高くしますと、それらのものが一齊に
内容充實のための運動を起すおそれがありまして、それが統制なく
寄附金の
募集等を始めますと相當財政的な混乱をもひき起しますし、今、
大臣から申し上げましたような
新制中學の
實施にも、惡い影響を及ぼすおそれがありますので、はなはだ残念ではありますが、現在の
國力に相應するような
新制の
高等學校をつくる以外に途がないのであります。
新制高等學校の
實施につきましては、
暫定基準を設けて出發する
豫定にいたしております。
暫定基準につきましては
教育刷新委員會とも連絡をとりまして、
協議委員を委嘱して
閣議の結果、大
體暫定基準は決定いたしております。そうしてただ一點だけが今日まだ未解決に
なつておるのでありますが、それは教員の定員をいかに定むべきかというところに
なつておるのであります。
委員會の方ではその教員の定員を相當数増すように強く希望いたしておるのでありますけれ
ども、
實施につきましては、内務省の側とのいろいろな折衝の結果、大きな
經濟的負擔はかけないという約束をも
つて、
來年度から出發しなければならないことに
なつておりますので、この定員の定め方について、なお一點懸案が残
つておりますが、しかし概略は定ま
つております。その概略の線は、
従來の
中等學校が、大多数無理なしに
新制高等學校になれる程度の暫定設置
基準を定めてあるのであります。これは近日中に檢討いたしまして、省令をも
つて公布する
豫定でございます。
それから
定時制の
高等學校につきましては、大體今の目標では、
中心校を約千二百くらいに定めまして、それと連絡のある分校を約三千五百くらいの目標でつくりたいと思
つておるのでありますが、どの地方にいくつどういうふうにつくるかということにつきましては、地方長官の裁量に委ねてありますので、これはほんの
文部省の目標にすぎないのであります。われわれの
考えでは、
定時制の
高等學校については、なるべく魅力のあるいい
學校をつくりまして、初めから多数をつくらないで、幾分控え目にいい
學校をつくることによ
つて、大衆から
學校の増設が衷心望まれるような情勢においてつく
つていきたいと
考えております。
この
新制の
高等學校につきましては、多少世間に誤解もございますが、これは高等
普通教育を授けると同時に、専門的な
職業教育をも併せて授けることにいたしてございまして、大體三年
制度であります。これは一口に申しますと、アメリカの上級
中學校に似たようなものと
考えていいかと思うのでありますが、特別の
職業教育を行う場合には、三年以上にすることができる。そうして初めから、たとえば五年
制度の
高等學校もつくることができるのでありまして、五年計畫で高等
普通教育と同時に
職業教育を施すということも可能であります。これは
年限から言いますと、
従來の
専門學校を吸収することができるような
制度に
なつております。なお今の三年のほかに短期の
職業教育を施すために別科とかあるいは専攻科とかいうものを置くこともできるように
なつております。先ほど申しましたように、
新制高等學校の
内容の充實改善等につきましては、現在の
國力をも
つては、これに力を注ぐことができませんので、他日に委ねまして、別にその
内容改善及び充實等を講ずるつもりであります。
それから大學の問題でございますが、
新制の大學の設立の手續につきましては、いつか申し上げたと思いますが、大學の設立
基準というものが大方でき上
つております。これは司令部からの指導もございましたが、
文部省及び現在の官立及び私立の大學の
代表者によ
つて檢討を續けてまいりまして、今年の七月頃に大體
一般の大學の
基準と、文科系の大學の
基準と、理科系の大學の
基準と、
女子の大學の
基準とがほぼでき上
つておるのでありますが、目下多少檢討する必要が起りまして、全體を統一的にするために、もう一度檢討をいたしておるのでありますが、その大學の
基準ができ上りましたならば、その
基準によ
つて大學に昇格したい
學校を諮りまして、その審査の上で
文部大臣がこれを
認可する手續をとることに
なつております。その
認可の審査をいたしますのは、
學校教育法の第六十条に定められております大學設置
委員會と申します。大學設置
委員會につきましては、目下法制上の手續を急いでおりまして、近いうちに——おそらく
來年早々くらいに
準備が完了いたしまして、出發できるかと豫想いたしております。これは大體四十から五十人までの間の
委員を
文部大臣が委嘱いたしまして、さうしてそのうちにはあとで御
説明申し上げますが、現在の大學でも
つてつく
つております大學
基準協會というものから約半数の
委員をあげておりまして、他の半数は學識經験者をこれに充てる
豫定であります。そのうちには審査を受ける
學校の
代表者ともいうべき者を、いわゆる利益代表というのではなくて、現實の
事態をよく認識しておる、判断力のある人という
意味において、各
高等専門學校の
代表者も若干名加え、
政府關係の責任者をも若干加えまして、そのほかに
一般的な中立的な學識經験者をも加えて、運用の公正を期したいと思
つておるのであります。先ほど
大臣から御
説明のありましたように、
新制中學につきましても、相當
準備不足でもありますし、資材その他の用意も足りないのでありますが、これは一應強行する
豫定でおります。
新制の
高等學校につきましても、先ほど申しましたように、はなはだ貧弱な用意でありますけれ
ども、一應出發する
豫定でおるのでありますが、大學につきましては、
事情が許すならば、あまり無理をして強行しないようにいたしたいと思
つておるのであります。それにつきましても、やはり現在の
國力から申しますと、現在
日本にあります
高等専門學校の数が約三百六、七十あるかと思います。
青年師範學校等を入れますと、その上に百十ばかりあるかと思いますので、大體四百いくつかの
學校轉換問題でありますが、これらのものを一々の
學校を十分擴張もし充實もして
基準に適うような大學にすることは、現在の状況においては、ほとんど不可能なのでありまして、それについてあわてて大學にすることは、かえ
つて害を残すのではないかということを、非常に憂えておるのであります。ただいまのところ
文部省といたしましては、これはまだ正式に決定しておるわけではございませんけれ
ども、
關係方面ともよく連絡、打合せをいたしました上で、
學校法を一部修正いたしまして、三年
制度の大學をつくり得るようにいたしたいと思
つておるのであります。三年
制度の大學ならば現在の
高等専門學校を非常に擴張したり、充實をしたりしなくても、できるのではないかという見透しをも
つておるのであります。もちろん
内容の改善、教師の資質の向上等については、あらゆる
努力を拂わなければならないと思うのでありますが、資材もしくは資金等を巨大に必要とするような、いわゆる大學の建物や
施設の擴張ということは、現在では望めませんので、
内容的な方面の充實によ
つて、しばらくの間、暫定處置として三年制の大學を設けてはどうかと
考えております。それにはやはり
一定の
暫定基準を設けて、同じような手續や
順序を經て大學に轉換させていきたいと思
つておるのであります。この點はまだ正式に決定しておるわけではないので、多少の変更は免れないものと思いますが、そういう
方針で
準備を進めております。大學の轉換の
實施は二十四年度と一應目標を立てておりますが、これはまだ十分構想が定ま
つておりませぬのと、財政その他の現實の状況を十分考慮いたさなければなりませんので、
閣議決定には至
つておりません。近いうちにそれらのものを十分檢討いたしました上で、
閣議の決定を經て、正式に發表いたしたいと思
つておるのであります。
一つ大學轉換についてのつまづきに
なつております點を申しますと、これは醫
學制度の問題であります。つまり醫科大學の問題でありますが、醫科大學の構想については、
教育刷新委員會においては、六・三・三の
新制の
高等學校を
卒業した上で、二年程度の大學の前期の——醫科の専門
教育を受ける前に、
基礎的な文科的な教養を濟ました者を、四年の醫科の専門
教育を授けなければならぬ。こういう決定に
なつておるのでありますが、これは別に司令部の民間
教育情報部ではございませんで、公衆衛生福祉
状態に對する關心から、醫
學教育を高めなければならぬという點で、特に設けられました醫
學教育審
議會という
委員會がありまして、その醫
學教育審
議會では専門家が集まりまして、よい醫者をつくるためには、どういうふうにしたらいいかということを論議した結果、三年の
基礎的な
教育をした上に、四年の専門的な醫
學教育をしなければならないという結論に到達しております。一方は全般的な
日本の
教育の
根本方針を定める
委員會でありますし、一方は専門家の集ま
つた委員會でありますので、その兩方におのおの重要な
意味が含まれておりますので、それらのものを近日中に
適當に處理をいたしまして、
文部省の責任ある處置を決定いたしたいと思
つております。これはまだ懸案として残
つております。
もう一つは、
教員養成機關の轉換問題であります。これについては、
刷新委員會の結論と、
關係方面の意向との間に若干の相違がありまして、まだ決定に至
つておりません、これらの點は兩方ともに十分な
理由もあることでありまして、決して矛盾するものではなくて、むしろ相補うものであるというような
見解から、その調和ある歸結に到達し得る見込みをも
つて、目下
準備を進めております。この二點がきまりますと、大體大學に對する計畫が具體化し得るものと
考えておりますが、その具體化の上においては、なるべく早い
機會に
一般原則適用の具體案も發表いたしまして、世間の不安を除くと同時に、将來への
準備をいたしたいと思
つておるのであります。こまかい點につきましては、御質問に應じて、またお答え申し上げたいと思います。